「ねえ、私たちって新婚夫婦か老夫婦かどっちに見えるのかしら?」
トレーナー室でアヤベと話してる時にそんな事を彼女が言い出した。ちなみにソファに隣同士に座って手を絡ませ合いながらのことである。
「いきなりどうしたんだ?まだ結婚してないじゃないか?」
結婚に憧れてるのだろうか?アヤベにしては珍しいことだな。アヤベのウェディングドレスはさぞ美しいだろうな。誰にも見せたくないな…
「今日ね、カレンさんが言ってたのよ。<今アヤベさんとトレーナーさんは新婚夫婦か老夫婦かどちらなのか?が世間で話題になっている>って」
「なんだそりゃ?まあよくある話題ではあるけど…」
この界隈ではよくあるゴシップネタである。やれあの組は仲がいい悪い。AとBトレーナーが付き合ってる。などなど。事実無根から真実までよく探してくるものだと思う。俺もアヤベもお互い以外に興味がないためほとんど関係ない話だと思っていたがまさか当事者になるとは…
「何が楽しいのかしらね?<アヤベさんも仲がいいのはいいですけどあまり外でベタつくと足元を掬われるかもしれませんよ?>って心配されたの。外では控えてるわよね?私たち?」
そう言って手をニギニギ。
「そうだなあ。どれくらいがベタついてるかっていうのは人によるからなあ。」
そして手をスリスリ。
「外でキスは危険だからやめた方がいいってカレンさんにも言われたわ。ハグは?って聞いたら見えるところではやらない方がいいとも。ハグまで禁止されたら外に出られなくなるわ。」
両手でスリスリ。
「それは困るな。こういうのは難しいからなあ。アヤベのイメージダウンは避けたいし何よりアヤベのカワイイところは独り占めしたい。」
両手でアヤベの手を握る。
「まったく相変わらずね。それでそう、新婚か老夫婦かの話だけどそれぞれエピソードがあるらしいの。」
「そうなのか。といっても何かしたっけ?」
「そうね、例えば新婚の方だと……」
とある地方レース場の近くにある喫茶店。たまたま客として来ていたらなんと隣にあのアドマイヤベガさんとそのトレーナーが来た。見間違えるもんか、こっちはあのダービーで歓喜と絶望の涙を流したんだぞ!ともかく二人はそれぞれ飲み物とケーキを頼んで話していたんだが…それはそれは楽しそうであの彼女があそこまで笑顔になるんだなって驚いたものだ。二人は手を重ねて握り合ってたし。羨ましい…とにかく頼んだものが来てだな…なんとケーキを食べさせ合いっこしてたんだ!その時の幸せそうな顔といったらもう尊いとか通り越して拝みたくなる美しさだったんだ…
「そういえばこの前の遠征でそんな事をしてたな…」
「あれくらいは付き合ってるなら普通じゃないのかしら?」
「アヤベがやっているというのがポイント高いところだな。例えばカレンチャンとかならそれこそカワイイ!となるんだろうがアヤベだとそれも美しい!となるんだろう。実際アヤベは美人だからなあ。あと意外性も高い。アヤベはそんなこと普通ならしないだろうから。」
「そうなのかしら、でもあなたに言われるなら納得しておくわ。」
満更でもなさそうにアヤベはニコニコする。やはりカワイイ。アヤベもモデルとかしたらすごい人気だろうな。それは嬉しいような絶対阻止したいような…というかアヤベのカワイイところは独占しておきたいのだがな…
「それで?老夫婦の方も何かエピソードがあるのか?」
「あったわね。確かこの前星を見に行った時の事みたいだけど……」
夜結構遅い時間、とある公園でランニングしてたらあのアドマイヤベガさんがトレーナーと一緒にベンチに座ってたんだ。二人は星を見てたのかな?とにかく二人寄り添っていて他人が近づけるような雰囲気じゃなかった。遠目から見てるとトレーナーが彼女の肩を抱き寄せて彼女は彼の肩に頭と耳を乗せて安心したような表情だった…あまりに尊くて拝んでから去ったよ。あれは何人たりとも邪魔をしてはいけない神聖な空間だった…
「確かにそういうことはしてたけど…神聖はちょっとオーバーじゃないかしらね?」
「まあ…アヤベのファンは質が他と違うというか…なんだろうな?信徒に近い人が多いからな…」
今言ったようにアヤベのファンは数より質というか…ちょっと特殊でアヤベを崇拝している信徒のような人が多い印象がある。近くでキャーキャー言うより遠くから拝むような人が多いと言えばいいのか。まあ雰囲気的にはそうなのかもしれない。それゆえダービーのあのキスの時は色々なところが燃え盛ったものだ…
「こうしてみると意外と見られてるのね。全然気づかなかったわ」
「まあ君は有名人だからね。だからこそ気をつけないと。」
「そうね…でも気をつけるのはあなたもじゃないの?私はあなたしか見てないのだから。それに今だってこうやって独占したそうに両手で私の手を包んでるもの」
ふと気づくとその通りアヤベの両手を包んでいた。どうやら内心嫉妬してたのかもしれない。こんな目撃情報くらいにも嫉妬するとは思わなかったな…
「参ったな…君のカワイイところは全部独占したくなる悪い癖が出たようだ」
「あなたが一番なんだから気にしなくていいのに。」
「そうなんだけどね。どうしてか気になってしまうんだ。本当ならずっと閉じこめておきたいくらいには独占したいからかな?」
「ほんと、あなたも大概ね。でもあなたにならいいわ…」
そう言うと目をつぶって顔を近づけてくる。最近のアヤベは事あるごとにキスをおねだりしてきてすごくすごいカワイイ。これは独占されたいの合図かな?だとしたら嬉しい。アヤベを誰にも渡したくないのだから。このカワイイ顔を知っているのは俺だけでいい。
本当にお互い独占欲と嫉妬心が強くて仕方がない。だけど普通の愛とこれは何が違うのだろう?そんなに違いはないのではなかろうか。俺はただ最期はアヤベと共に迎えたいだけなのだから。
実はアヤベさんはかなり病みやすいんじゃないかなと思っているんですよね。これはまあまあ極秘なので知らない人は情報教材を定価の1.25倍で買ってみてください?それはともかく今回はとあるところのお題にあった「エゴサしてたら、私とトレーナーさんのことを老夫婦っていう人が多すぎるアヤベさん」を流用して新婚編もつけてみました。ちょっと甘さが足りない感じですね。箸休めみたいなものです。アヤベさん達が周りからどう見られてるか歪んだレンズで客観的に見る回と言ってもいいと思います。でもまあアヤベさんとアヤトレさんは共依存メリーバッドエンドこそ至高ですよね?ね?