【ウマ娘】お兄ちゃんの婚活(カレンチャン)【二次創作】 作:きいろ888
「お兄ちゃんが婚活!?」
「まあ、一度行ってくるだけだよ」
驚きのあまり尻尾が揺れる。なんでもないことのように、お兄ちゃんは当日の自主トレ内容を伝えてくる。
「ごめんな、カレン。明後日はお休みでも大丈夫。ノルマだけこなしたら、一応報告があると嬉しい」
「ヤダ……」
「え」
「ヤダヤダ! お兄ちゃんが誰かと結婚するなんて嫌!」
「いや、ちがうんだ。話を聞いてくれ。お袋が煩くてな。一度行くだけだって約束してしまったんだ」
カレンはショックを受けた。いつもはカレンを優先してくれるお兄ちゃんだけど、家族のこととなると少し事情が変わってくるみたい。
(あんまりしつこく食い下がるのも、カワイくないのかな……)
お兄ちゃんも困ったような顔をしている。いつも振り回している自覚のあるカレンだからこそ、いつも以上に食い下がったつもりが、それでも断られたことに、一抹の不安を覚える。
嫌われちゃうと本末転倒だから。
「カレンじゃダメなの?」
「うん。流石に担当ウマ娘を紹介するわけにはいかないかな」
「……むー。分かった。でも帰ったらデートしてもらうんだからね!」
「はは、それは楽しみが増えるってもんだ。心配しなくても、誰に相手にされるわけでもないさ」
この朴念仁め。というか、相手されたらどうするつもりなのかを伝えてほしいんだけどな。
とはいえ、好きな人が自分自身を卑下する言葉は見過ごせない。搾り出すような声で伝えてみる。
「お兄ちゃん、カワイイ……よ?」
「ちょっと間があるじゃないか」
「もう、ウマ娘ごころは複雑なの!」
乗り気になってしまっては本末転倒なのに。お兄ちゃんのことは信じてるけど、それはそれしてである。
せめて、最低限の対策を……そうだ。
「お兄ちゃん、ちょっとよって!」
「え、うん」
2ショット写真完成! これはあえてウマスタには載せないでいて。
「はい、これお守りだよ! スマホの待ち受けにさせてあげる! ……嬉しい?」
「うん、すごく」
「やった! じゃあ、いってらっしゃい! あんまり夜遅くまで出歩かないこと!」
「お母さんみたいだな」
「あはっ、そうかも! でも、お嫁さん希望かな♪」
「!? ま、まあ、きっと似合うと思うよ」
ちょっとだけやりとげた感。これでよってくる人も、カレンの影に気付くはず。
ていうか、元からお兄ちゃんの待ち受けがカレンだったんだよね。2ショットの方が効果は高いけど、お兄ちゃんの愛を感じられて嬉しいな。
そう、まだここまではちょっとした不安くらいだったのです。
まさかお兄ちゃんが、カレンとの写真の話題から、婚活会場で注目株となるとは、つゆとも思いませんでした。
* * * * *
(数日後)
bbb・・・
「おっと。ごめんカレンチャン、ちょっと休憩にしようか」
「……はーい」
トレーニング中のことだが、普段の連絡よりも多い気がする。
お兄ちゃんヘの連絡は、理事長さん、たずなさん、桐生院さん、ライトハローさん……ちょっと女の子の数が多いような気もするけど、学園関係者がほとんどだったのに。
最近は別の名前をよく目にする気がする。というか声が違う。他のウマ娘のトレーナーさんからの、模擬レースの申し込みでもないみたいだし。
(カレンの話題で盛り上がって、数人との連絡先を交換したとは聞いたけど……)
まさか塩を送る結果になるとは。うぅ、さすがに連絡禁止とか、着信拒否してなんて言いたくないし。
むー。お兄ちゃんも律儀に毎回お返事しなくていいのに。監督不行届だ。ネグレクトだ。倦怠期……はちょっと違うけど。お兄ちゃんはカレンの担当なのに。
「ただいま、カレンチャン。あと5分後にトレーニングを再開しようか」
「うーん。お兄ちゃんからの愛が足りなくて、今日はもうやる気でないかも」
「!? ど、どうしたの? なにかあった?」
「……お兄ちゃん、今日ずうっと連絡返してばっかりなんだもん」
言ってしまった。やだな。今日のカレン、カワイくない。これくらいで凹んでちゃダメだよね。
でも、気にしてないって行っちゃえば嘘になるし……。
「いや、カレンのいう通りだ。そうだよな。カレンの方が大事だ」
「! ご、ごめんね。言わせちゃったよね。カレンなら大丈夫だよ!」
「ううん。最初から天秤にかけることでもなかったんだよ」
「お兄ちゃん……。そんなにカレンのことを愛してくれてるんだね」
「!? ごほ、げほっ! いや、まあ、事実だとも」
「ふふん。今日はそれで乗せられてあげる!」
カレンは確かにワガママだけど、お兄ちゃんはそんなカレンを好きだと言ってくれたので。
今日は完全勝利。でも、早くお兄ちゃんの家族に挨拶できるようになれるといいなぁ。
bbb・・・
あっ、そうだ。
いいことを思いついて、笑顔でお兄ちゃんの目を見ると、とてもバツが悪そうな顔をしていた。
おっと、そういうつもりじゃないんだけど。
「だいじょうぶだ。というか、通知切っておくよ。それなら後でも返せるしな」
「さっきの話の流れであれなんだけど、ちょっと通話してみよっか!」
「え」
「はい、スマホ貸して、お兄ちゃん♪」
「うん、はい」
(どうするんだろう……)
お兄ちゃんに見守られながら、LINEを開きます。チャットに少し目を通すと、食事の誘いもしっかりあった。カレンのファンなのも本当なんだけど、お兄ちゃんもロックオンされてるみたい。
何コールか後に、相手が通話に出る。
『もしもし、トレーナーさん。それでお返事の方、いかがでしょう……?』
「もしもし、はじめまして! カレンのファンだってお兄ちゃんからお話いただきまして、嬉しくなってご連絡しちゃいました♪」
『え、カレンチャン!? こ、これはどうも! いつもウマスタ見てます!』
「わーい、すごく嬉しい! 次のレースでも1番になって、センターでライブするので、応援してくれると嬉しいな!」
『か、カワイイカレンチャン!!!!』
「それと、お兄ちゃんがお世話になってます! せっかくのお誘いなんですけど、その日はカレンと約束があって、ごめんなさい!」
『ううん! ぜんぜん、カレンチャンのトレーナーさんだもんね』
「はい! カレンのお兄ちゃんなんです! そういうわけなんですけど、ライブに来てくれたらたくさんファンサさせてくださいね!」
『いいんですか!? やったー! 楽しみにしてます! がんばってください!』
「おうえんありがとう! カレン、がんばりますね! それでは〜♪」
『あ、はい! 失礼します! ありがとうございました!』
pt
お兄ちゃんの顔が、ちょっと残念そうなのが気になるけど。
「ありがとうお兄ちゃん! カレン、ファンの人とお話できてすごく嬉しかった!」
「そっか。……そうだねぇ。これでよかったんだ」
(その時、ふと閃いた! このアイディアは、カレンチャンとの トレーニングに活かせるかもしれない!)
【独占欲】のヒントを得た。