13、曹操のお使い 下/ 美しい町よさようなら
深夜、草木も眠る丑三つ時。
件の町で曹操は資料の閲覧、祓魔師は町での見回り、それぞれの役割を担っていた。
『一ついいか?』
人形端末から聞こえる祓魔師の声に曹操はどうかしたのかと疑問の声をあげる。
『いや、なにかあったわけではないだがな、私も暇でね。すこし話に付き合ってくれないか』
祓魔師の珍しい申し出に曹操は無言で続きを促した。
『アーシア・アルジェントという聖女と呼ばれた少女の話だ』
その名前に曹操は聞き覚えがあった。
「あぁ、傷を癒す神器を持った少女ですね?
たしか、悪魔を治療して追放されたと」
『あぁ、教会の信徒でありながら敵対する悪魔の傷を癒した結果、魔女の烙印を押され追放された』
その話であれば曹操も影虎に聞いていた、なんと勝手な話だろう、と曹操は内心で穏やかではなかった。
傷を癒す力があったがために教会から聖女として祭り上げ、悪魔を癒す力があると分かった途端に手のひらを返して魔女と蔑み追放した。
『だが・・・』
祓魔師は疑問に満ちた声で続ける。
『私にはまだ分からない』
「なにがです?」
『アーシア・アルジェントは悪魔を癒せば追放されると分かっていた筈だ、何故そこまでしてあの悪魔を救ったのか』
祓魔師の言葉を聞いて曹操は内心呆れていた、簡単なことなのにそんなことも分からないのか、と言いたげの目を人形に向けていた
「それは、彼女が本当の意味で聖女だったからじゃないですか?」
『どういう意味だ?』
「聖女の資格は全てのものに対する愛と慈悲。
それであればアーシア・アルジェントは十分聖女の資格を有しているということですよ」
今だに理解出来ないといった表情を作っているであろう祓魔師にわかるように砕いて説明する
「あなた方、教会の人間が忌み嫌い見捨てたものにすら慈愛を持って手を差し伸べる。
まさしく隔てのない慈悲と愛を持った心優しい少女です。”彼”もアーシア・アルジェントのことは高く評価していましたよ、”彼女は数千年に一度の最も高い素質を持った人間だ”って」
『成る程、そういう見方もあるのか』
祓魔師の言葉に曹操は内心拍子抜けした。
正直な話、こんなに簡単に納得されるとは思ってもいなかったのだ。
『まて・・・この気配は』
「どうしました?」
突然声色を変えた祓魔師に曹操は戸惑いながらも雰囲気で感じ取る。
『どうやらあのはぐれ悪魔が現れたようだ』
曹操は思わず舌打ちをしてしまう。
今だに影虎の資料を閲覧出来ていない、このままなんの手がかりもなく向かうのは得策ではない。
ーーどうする
曹操が対策を練ろうとしているところに人形ごしに祓魔師が口を開いた。
『私が先に行こう』
「本気ですか?いまなんの対策もなしに行くなんて死ににいくような物ですよ?」
祓魔師の言葉を諭すように否定する曹操に祓魔師は怯むことはなかった。
『だが、このままではこの町にも被害が来るかもしれないぞ?』
「・・・」
いまだ食い下がろうとする曹操に少し苦笑しながら祓魔師は続ける。
『大丈夫だ、私も死にたくはない、お前が資料を読み取るまで時間稼ぎがしたいだけだ』
「分かりました」
結局、曹操は折れる他なかった。
『よし、決まりだな。
出来るだけ早く頼むぞ?こちらも長くはもたないだろうからな』
「言われるまでも」
曹操の言葉に祓魔師は口角を釣り上げ人形の通信を切断した。
「はぁ・・・さて」
曹操は傍にある冷めた紅茶を一気に煽った。
祓魔師が死ぬ前に資料の暗号を読み解き対策を立てなくてはならない。
曹操はため息を交えながら文字の羅列と向き合った。
・
・
・
「さて、大見栄はって一人で挑んだのだが・・・」
聖剣を持った祓魔師の目前には三体に分身したはぐれ悪魔が威嚇するように祓魔師に吠えている。
「やはり、彼女を待つべきだったかな」
自分の行動に少しの後悔を感じながら祓魔師は聖剣を構え、三体のはぐれ悪魔を睨め付ける。
「彼女が対策を探し出すか、私がお前に敗北するか、どちらが先だろうな」
祓魔師の言葉と同時にはぐれ悪魔は動き出す、合計で九つとなった頭に空気中の熱気が集まり、ついには巨大な火の玉となる。
「ガァァアアアッ‼︎」
はぐれ悪魔の咆哮とともに口から九つの巨大な火の玉が祓魔師を襲う。
「ーーっ、ハアアアッ‼︎」
祓魔師も負けまいと破壊の聖剣を大振りに振り回し火の玉を捌く・・・が、九つの火の玉の内の一つが弾け、小さな火の玉の大群となって祓魔師に襲いかかった。
「・・・なッ⁈」
想定外の事に一瞬動きが止まってしまう、そして、その一瞬が命取りとなった。
祓魔師は咄嗟に破壊の聖剣を盾にするように自分の前に立て、火の玉の大群を受け止めようとする。
しかし、今度は火の玉がまるで爆弾の様にそれぞれ爆発した。
「ーーッ⁈」
爆発の衝撃までは防ぐことができず、決して大柄ではない体が宙を舞う。
「・・・ぐっ⁉︎くっ」
ゴロゴロと地面に転がりながらもなんとか受け身を取り、体制を立て直す。
体制を立て直した祓魔師は聖剣を片手に三体に分離したはぐれ悪魔に突撃する。
三体のはぐれ悪魔に突撃しすれ違いと同時にはぐれ悪魔を斬りつける・・・が、それら全ての攻撃ははぐれ悪魔に何一つ傷を作らずすり抜けていく。
先ほどからずっとこんな状況だった、相手の攻撃に対して為す術なく逆にこちらの攻撃は全てすり抜ける、防戦一方で状況は完全に不利だった。
はぐれ悪魔が健全であることに対し祓魔師の体はもう限界に達し思わず膝をつく。もう聖剣を振り回すほどの力も殆ど残されていない。
はぐれ悪魔が再びその九つの頭に炎を集める。
今の祓魔師には先ほどの砲撃の嵐を回避する体力もその巨大な聖剣で防御する力も残されていない・・・まさに詰みだ
「・・・これまでか」
祓魔師が諦めの言葉を呟くと同時にはぐれ悪魔の九つの頭から無数の砲弾が放たれた・・・が
「諦めるには少し早すぎますよ!」
《カモンッ‼︎バナナ・オーレッ‼︎》
突然現れた第三者によって砲撃は全て叩き降ろされた。
「グゥウ‼︎」
「・・・?」
祓魔師は驚き戸惑い、はぐれ悪魔は止めを邪魔されたことに対する怒りを持ってその第三者の下へと目を向ける。
そこにはバロンの鎧を持った曹操が槍をはぐれ悪魔に向けて立っていた。
「曹操っ!」
予想外のタイミングで現れた援軍に喜びの声を上げる祓魔師に曹操は笑みを返す(まあ、仮面で相手には分からないだろうが)。
「いいタイミングだったでしょう?」
少し、悪戯心の入った口調で言う曹操に祓魔師は不満げに返す。
「もう少し早くても良かったと思うが」
祓魔師の言葉に苦笑を浮かべながら祓魔師に手を差し出す。
「まあ、そう言わないでくださいよ。確りと対策は立ててきたんですから」
曹操が差し出す手に祓魔師は握り返し立ち上がる。
「ガァァアアアッ‼︎」
様々な出来事に怒り頂点になったはぐれ悪魔に祓魔師と曹操は自身の得物を構える。
「さあ、ここからは私達のステージです‼︎」
怒りに満ちたはぐれ悪魔は再び口から砲弾を放つ。
対して曹操と祓魔師は目の前に向かってくる砲弾を捌く。
「それで?あの幻影をどうする気だ?」
「それなんですけど、そもそもそこから間違いだったんです」
捌ききれないと判断した二人は回避行動に移行する。
「間違い?どういうことだ?」
疑問の声を上げる祓魔師に曹操ははぐれ悪魔に目を向けたまま説明する。
「元からあの三体のはぐれ悪魔に偽物なんていなかったんです」
「・・・?、どういうことだ?」
「つまり、あの分身したはぐれ悪魔の三分の一が本物なんです」
説明を終えた曹操は動きを止め戦極ドライバーのカッティングブレードを振り下ろす。
《カモンッ‼︎バナナ・スパーキングッ‼︎》
「だから、あのはぐれ悪魔に対抗するには・・・」
ロックシードのエネルギーを最大まで溜め込んだバナスピアーをまるで叩きつけるかのように地面へ振り下ろす。
「・・・三体を同時に攻撃するんです」
三体のはぐれ悪魔の足元から同時に巨大なエネルギーの刃が突き抜け三体のはぐれ悪魔に直撃する
「「「ガァァアアアッ」」」
曹操の攻撃を受けたはぐれ悪魔は痛みにのたうちながらやがて一体の形に変化する。
「あのはぐれ悪魔の本当の能力は「幻惑」と「分担」。幻影を作り出し、その幻影に自身の一部を譲渡するんです」
「なるほど、だからあのはぐれ悪魔は攻撃するときにも三体同時だったわけか」
祓魔師は先ほどの戦闘を思い出す。三体に分身していた時はあのはぐれ悪魔は必ず三体が同じタイミングで攻撃していた。
「ガァァアアアッ‼︎」
一体に戻ったはぐれ悪魔は今度は痛みではなく怒りの声を上げる。
「随分と怒らせてしまったようだな」
「そのようですね」
曹操はバナスピアーを祓魔師は破壊の聖剣をはぐれ悪魔に向ける。
暫しの静寂、二人と一体が睨み合う。
先に動いたのははぐれ悪魔の方だった。はぐれ悪魔は自身の4本の足で全力で地面を蹴り、二人に接近する。
対するは祓魔師、自身の聖剣を地面に叩きつける、破壊の聖剣によって衝撃を与えられた地面は砕けマキビシのような無数の破片がはぐれ悪魔を襲う。
「グゥウッ‼︎ガァァアアアッ‼︎」
若干速度が遅くなったものの、だからどうしたと言わんばかりにはぐれ悪魔は二人に襲いかかる。
迎撃するは曹操、曹操はカッティングブレードに手をかける。
「かかって来なさい、フルーツジュースにしてあげます」
《カモンッ‼︎バナナ・スカッシュ‼︎》
「ガァァアアアッ‼︎」
はぐれ悪魔は自身の大きな顎を振わんと一直線に曹操に向かい、曹操は迎撃のためにバナスピアーを構え、祓魔師ははぐれ悪魔を誘導するために地面を聖剣で叩く。
はぐれ悪魔は周りの地面がえぐれマキビシを作ることも厭わず曹操にその3つの顎を近づける・・・が、それは曹操に取ってこの上なく好機な展開だった。
「ハアアァァッ‼︎」
声を上げたのは曹操、自身の槍術を遺憾無く発揮し、まず最初に突き出された頭の一つを叩き、次にもう片方の頭も潰す。
「ーーッガァァアアア⁈」
痛みに叫んだ真ん中の頭の口の中に貫く勢いでバナスピアーを突き刺す。
「ーーッーーーッ⁈」
喉を潰されたはぐれ悪魔は叫ぶこともできずにのたうち回り、ついにはピクリとも動かなくなった。完全に死んだと確認してから曹操はバロンの鎧を解く。
「終わったか?」
背後から恐る恐ると言った様子で声をかけてくる祓魔師に曹操は背中越しにそのようですねと返す。
「これは・・・」
「・・・っ」
はぐれ悪魔を無事討伐し、町に戻ってきた2人を迎えたのは穏やかだった町ではなく人影のない荒れ果てたゴーストタウンだった。
「これは、どういう・・・ことだ・・・?」
唖然とする祓魔師に対して曹操は冷静にこの事態を考え、一つの答えにたどり着いた。
「まさか、あの町自体が、あのはぐれ悪魔の幻影?」
「幻影だと?」
曹操が呟いたことは祓魔師の耳にも届き、彼女は驚きに満ちた顔を作った。
「それなら説明はできます。
ずっとこの辺りにいたはずのはぐれ悪魔が誰にも認識出来ていないことや、はぐれ悪魔がこの小さな町を襲わなかったことも」
曹操の説明に祓魔師は考える素振りを見せる
「少なくとも私にはこの事態は手に余るものだ」
「そうですね、取り敢えず私は彼に詳細を聞いてみます」
「そうだな、私も教会に戻って聞いてみるとしよう彼らも詳細は知っている筈だ」
曹操は三神影虎のいる研究所へ祓魔師は教会へもどった。はぐれ悪魔とこの幻影の町の真実を聞き出すために。
鎧武がとうとうおわりましたねぇ、最初は受け入れがたい作品だと思っていたんですけどね。
そして次の仮面ライダー『ドライブ』
∑(゚Д゚)「とうとうバイクに乗らなくなったよ」
ま、まあライダーって乗り手って意味だし(震え声
曹操のお使い編は次の後日談で終幕にします。