果実纏う武神   作:黒影・贋

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取り敢えず目下の問題は大方片付いたので投稿。
一ヶ月も経ってしまうとは・・・酷く遅くなって本当に申し訳ありませんm(_ _)m


14、曹操のお使い 終幕/気高い番犬にお疲れ様

14、曹操のお使い 終幕/気高い番犬にお疲れ様

 

 

「ただいま戻りました」

 

「その様子では与えた任務は達成出来たようだな。ご苦労だった」

 

影虎の言葉に会釈だけかえした曹操は戦極ドライバーとロックシードを取り出し影虎に手渡す。

 

影虎が曹操に対して提示した義務である。

理由としては影虎による戦極ドライバーのメンテナンスとデータ収集と銘打っていいるが曹操自身は別の目的があると思っている(そしてその考察は当たっていたりする)。

 

閑話休題(ソレハトモカク)

 

曹操が影虎にある疑問をぶつけようとした時に・・・

 

「なにか、引っかかることがあるようだな?」

 

意外にも切り出してきたのは影虎からだった。

 

「はい、あのはぐれ悪魔のことです」

 

「だろうな」

 

曹操の言葉に即座に察したように言う影虎に曹操続けて言う。

 

「あの町や、はぐれ悪魔。いままで私が見てきたものとは全てが違います。影虎、貴方なら知っているのでしょう?あの町の真実を、あのはぐれ悪魔の正体も」

 

「あぁ、知っている」

 

あっさりと認めます影虎に曹操は食ってかかるように続けた

 

「教えてください」

 

「知ってどうする?あのはぐれ悪魔はお前と祓魔師が殺し、その結果あの虚構の町は消えた。

・・・今更お前があれの真実を知ったところで何が出来る?」

 

いつもならここで曹操は止めていた。

彼の容赦の無い正論と試すような目に押されてしまって次の言葉を失ってしまうからだ。

 

しかし、今回はそうはいかなかった。

 

「・・・それでも」

 

「・・・」

 

「それでも、”彼”をただの「欲望に屈したはぐれ悪魔」にしたくないんです」

 

一体なにが彼女をそこまで衝き動かすのだろう、と影虎は曹操の今までにないような目を正面から受けながら考えてみた・・・無論、分かるわけがないのは百も承知なので即座に放棄し、口を動かす。

 

「・・・いいだろう、教えてやる。あのはぐれ悪魔とあの町の真実を」

 

 

 

 

今ではいつのことか知るものは誰もいない、が確かにあった以前の話。

 

何処かのどかな空気が流れる所に一つの町があった、小さく不便な町ではあるが人が住み、一日一日の時が確かに流れる町が。

 

ある日その町に奇妙な流行病が蔓延した、原因も発生源も分からない伝染病で町の人は次々と命を落とす。最初は老人から、次に生まれて1年も経たない幼い赤子、そうやって病は止まることを知らずに延々と広がっていった。

 

このままでは町が死んでしまう、そう危惧していた頃に一人の悪魔が現れた。

 

ある悪魔はある優しい青年に取引を持ちかける。

「自身の眷族になればこの町を救ってやる」と、青年はこれから先の自分とこの町の人達を天秤にかけ・・・結論はすぐに出た。

 

青年は悪魔の取引を承諾し、自身の魂を売った。

そして、青年は町の人々に何も言うことなくこの町を去った。伝染病の傷跡を残す町が再び元に戻ることを信じて。

 

 

 

しかし、青年は知らなかった自身に目をつけた悪魔は伝染病よりも遙かにタチが悪い悪魔だったことを・・・

 

再び青年が町に戻った時に見たものは、人一人存在しない「死んだ」町そのものだった。

 

青年は悪魔に詰め寄った、約束が違うと。

しかし、悪魔はそれよりも恐ろしい真実を突きつけた。

 

あの伝染病を流行らせたのも自身だと

 

青年はこの目の前のモノが何を言っているのかわからなかった。

呆然とする青年を見下ろし悪魔は言う。

 

あの町には強大な力を持つ神器があると、そして、その神器を持つ人間を見つけ出すためにあの伝染病を流行らせたと。

 

一定の力を持つ者以外を死に至らせる毒をこの悪魔はあの町にばら撒いたのだ。

 

そして、悪魔はその青年に取引を持ちかけ、自身の眷族として迎える。

 

全てが仕組まれたことだった。

あの伝染病も死んでいった人達も、全てがこの悪魔が自身の為だけに起こした悲劇。

 

ー自分の所為であの町は死んだー

 

ここからは悪魔の誤算・・・いや慢心だったのだろう。

 

一つは今までに怒ることを知らなかった青年が身の毛がよだつ程の殺気を発したこと。

 

もう一つは、青年が持つ神器は悪魔が想定していたものよりま凄まじい力を持っていたこと。

 

《神器は所有者の想いに反応してその想いに見合った力を引き出す》

 

青年の持つ神器が悪魔も圧倒する程の力を生み出した・・・所有者である青年の身体を変えてしまうほど。

 

怒りに満ちた三つの頭。

悪魔やその眷族を見下す程の巨体。

そして、いままでの青年であれば決した見せなかったであろう殺意と憎しみを孕んだ目。

 

本来、幻術を使うはずだった青年の神器はあまりにも強大な幻術故に現実をも歪めてしまったのだ。

 

最早この《怪物》に理性など微塵も残っていない。ただ、目の前に存在する虫螻共を蹴散らすためだけに己の力を使う。

 

悪魔が自身の眷族に戦闘の指示を出す時にはすでに遅かった。

 

悪魔の眷族達は既に物言わぬ人形となっていたのだ。

 

決して死んだわけではなく、《怪物》が見せた強大な幻術が眷族達の小さな精神を容赦なく粉々に砕いた。

 

自身の不利を知った悪魔は先程とは掌を裏返し、必死に命を乞うた「全て自分が悪かった、赦してくれ」と、《青年》であれば命を奪うことまではしなかっただろう。

 

しかし、悪魔の目の前にいるのは最早《青年》ではない《怪物》なのだ。悪魔が何を言ったところで《怪物》には虫螻が汚い鳴き声をあげているようにしか聞こえない。

 

《怪物》は『耳障りな虫螻』を黙らす為に凶悪な爪をもつ自身の手を振り下ろした。

 

こうして、虫螻共を蹴散らした《怪物》は主人を殺した《はぐれ悪魔》となって追われる身となった。

 

そして、《はぐれ悪魔》はかつての故郷に戻り、幻術で再び町を取り戻した。今度は自分の身を削って町に実体を与えながら。

 

無論、《はぐれ悪魔》の中には《青年》はもう存在しない。しかし、《青年》の想いは《はぐれ悪魔》の中に存在する。

 

もし次に邪悪な意思を持つモノがこの町に入ろうとするならば、今度は必ず阻止する。

 

《はぐれ悪魔》は潜在意識にある《青年》の声に従いながら。自身の作り上げた虚構の町を守る《番犬》となった。それが、どれだけ無意味なことであっても、自身の贖罪の為に。

 

 

 

「これが真実だ」

 

「・・・・」

 

影虎から告げられた真実に曹操は何も言うことが出来なかった。

 

それは、余りにも哀しい話だ。

 

強大な力を持ったが故に質の悪い悪魔に目をつけられ全てを奪われた。

 

愛した町も家族も友人も、自分さえも・・・

 

「何故、彼だけがこのような悲惨な目にあうのですか?」

 

「理由など無い。偶々質の悪い悪魔が、偶々あの町に目をつけ、偶々あのはぐれ悪魔を見つけただけだ。全ては不条理によって作られた偶然だよ」

 

悲痛な声をあげる曹操に影虎は容赦ない正論を突きつける。

 

そう、全ては偶然なのだ。

あの《はぐれ悪魔》となった《青年》は運が悪かっただけ。

 

「では、彼は決して報われない」

 

「そうでもない」

 

「えっ?」

 

曹操は思わぬ反論に訝しげに声をあげ、影虎を見た。

 

「あのはぐれ悪魔はお前と祓魔師が救ったじゃないか。”彼”も本当は無意味な事だとわかっていたはずだ。一度失った物を幻術で取り戻してもそこにあるのは《虚構》でしかない。どれだけ精巧に復元したとしてもそれが幻である以上決して触れることも触れられることも許されない。そんな”彼"の無意味な行為を止め、お前は彼を《眠らせた》。それでいいんだ」

 

「・・・・」

 

「それでも足りないと思うなら、せめてお前だけでも分かってやれ。あの《番犬》の事を。

真実を知ってなお、あの《番犬》と向き合うことが出来たのなら、理解することが出来るのなら・・・少しは報われるだろう「欲望に屈したはぐれ悪魔」ではなく、それが幻影によって作られた物だったとしても「町を守り続けた気高い番犬」として」

 

影虎の言葉を聞いた曹操は何も言わずに影虎の研究室から出た。

 

 

 

 

 

 

「影虎、今日は曹操いない?」

 

背後からオーフィスの声を聞いた影虎は一度手を止め、振り返った。

 

「あぁ、どうやら今日は「やっておきたい事」があったらしい・・・まあ、凡その検討はつくが」

 

昨日、あの町の真実を知った曹操は次の日に何かを決心したように今日は留守にすると言ってきた。

 

別にそんなことをは一々言わなくても良かったと思いながらも承諾し、曹操を送り出した影虎は目の前の資料や研究データと向き合っていた。

 

「しかし、曹操が手こずったとはいえはぐれ悪魔の討伐にデュランダル使いを送り込んでくるとは・・・教会の考えることは分からん」

 

「・・・?」

 

独り言でぼやく影虎にオーフィスは首を傾げ、影虎はなんでもないと返す。

 

最近になって彼方此方に力を感じる、おそらくは二天龍のものだろう。

 

黄金の果実の研究。戦極ドライバーのデータ収集、などと面倒ごとは山のように転がっている。

 

しかし、と影虎は首を傾けたオーフィス見ながら思う。

 

まあ、たまには目の前の問題から目を背けよう。

 

「オーフィス、良ければこれから二人でどこかに出かけるか?」

 

「それは、でーと?」

 

本当にどこでそんな言葉を覚えてくるのか、と思いながらも影虎はあえて否定はしなかった。

 

「まあ、そう言う解釈でも構わない」

 

「行く」

 

珍しく食いついてくるオーフィスに少し押されながらも資料を放置し机から離れる。

 

少し、というよりかなり嬉しそうなオーフィスは影虎と手を繋いで急かすように引っ張り、影虎はそんなオーフィスを微笑ましく思いながら素直に引っ張られる。

 

たまには目下の問題を忘れてみようと思いながら影虎はオーフィスとどこに行こうかと頭の片隅で考えた。

 

 

 

無人となった研究所の机には幾つかの資料が転がっておりその内の一つには曹操と共闘した祓魔師の資料があった。

 

祓魔師、デュランダル兼破壊の聖剣使い

ゼノヴィア

 

そしてもう一つ、別の資料には・・・・

 

今代赤龍帝、兵藤一誠

 

 

 

 

どこかの国の、かつて虚構の町と呼ばれた場所があったところには一つの墓が建てられた、誰が建てたのか、誰に建てたのか不明だが一つだけ石でできた十字の墓石にその国の文字で言葉が彫ってある『気高き番犬に捧ぐ』と。

 

 

 




祓魔師の名前に関してはみんなが思ったであろう「うん、知ってた」と。

取り敢えず、曹操のお使いはこれで終わりです。
後は小噺を挟んだ後、原作に入ろうと思ってます

感想・誤字があればよろしくお願いします。
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