転生者の屍を傍に二人の人間が互いに向き合っていた。
片方は全身を包む鎧にランス(槍)を持つ男、三神影虎。
そしてもう一方は槍を携え、黒髪の女性、曹操。
「そんなに目に見えて嫌な態度を取られると私でも傷つきますよ、斬月、折角会いに来たというのに」
黒髪の女性、曹操は影虎の脱力した不満を笑顔で受け流す。
「会いに来た?殺しに来たの間違いじゃないのか?さっきも殺されかけた」
対して影虎の方は仮面の外側からでも分かるぐらい面倒臭そうにため息を吐いた。
「あの程度で死ぬ程、貴方は甘くないと思っていますが?」
「・・・何故、この場所が?」
クラックを通して来たので痕跡は残らない筈なんだがな。
俺の問いに曹操は手品を披露する子供のような笑みを垣間見せ説明する。
「そこで死んでいる男は、我々『禍の団(カオスブリケード)』の一員です」
「ほう、この雑魚がか?」
「雑魚・・・てすか」
俺の言葉の何が面白かったのか、曹操は肩を震わせてクスクスと笑った。
「・・・うん?」
「あぁ、いえ、気を悪くなさらないで下さい。ただ、その男は禍の団でもかなりの勝率を誇っていたもので・・・」
「対界兵器を数にもの言わせて大量に打ち出す。そんな簡単な戦術なのにか?」
「えぇ、あんな大量の剣を一太刀で全て粉々にしたのは貴方が初めてです」
それは光栄な事で。
「しかし、解せない。
それ程の実力者(仮)を何故わざわざ殺すような事をした?」
俺の疑問に彼女は少し思案に耽った顔を見せると、俺に言葉を選ぶように口と喉を震わせた。
「その男が今生きて帰る事は"私にとって"都合が悪かったのです」
「都合?」
一点の言葉を鸚鵡返しに聞くと彼女は肯定を表し言葉を続ける。
「えぇ、彼は私達とは別の目的があったようでその一つが禍の団を乗っ取る計画だったそうです」
へぇ、こんなやつがねぇ。
俺は死に体となった転生者を一瞥して考える。
この男は禍の団を乗っ取って何をするつもりなのか?三大勢力を本格的に叩き潰し新たな世界を創るという禍の団の根本思想を実現しようとしたのか?
そこに一体なんの意味と思惑があったのか?そもそも、この転生者は本当にそんな事に興味はあったのか?
・・・やめだ、やめだ。
俺は様々に連なる思考を強制的に終了させる。まず、そんな事を考えて何になるこの男がどんな計画を立ててどんな思惑があったなんて俺には関係のない事だ、考えても分からない事を考えてどうする。
「それに・・・」
「それに?」
もう一つ理由があったようで彼女は言葉を・・・少々躊躇いをもったように続けた。
「・・・私を見る目付きも不愉快でしたし」
・・・・・・・・おい、おい、おい、おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおおい
「それ、完全な私情じゃないのか?
いや、待てよー"私にとって"都合が悪かったーまさか?こいつを殺したのって・・・」
「はい、私の独断です」
いや、本当にこいつなにやってんの?
「大丈夫ですって、私が来た時にはもう殺されてたって言えば良いですし」
いや、こっちは大丈夫じゃねぇし。
うん?そういえば俺はこいつを殺しに来たんだったよな?
・・・なら問題ないか。
「まぁ、いい。
それで?お前がここに来た目的はなんだ?残念だが、オーフィスはここにはいないぞ?」
以前この女が俺の前に現れた時の目的は俺と行動を共にしていたオーフィスを奪還する事が目的だった・・・と、彼女は言っていた。
だが、今回はオーフィスは不在だそれはさっきまで隠れて俺たちを見ていたなら分かった筈だ・・・にも関わらず、俺の前に姿を現した理由とは。
「オーフィスは現在、私にとっては最重要ではありません。私はそれよりもっと優先する事がある。」
「なんだと?」
「貴方ですよ、斬月・・・いえ、三神影虎」
「・・・」
一瞬心臓が止まりかけた。
色々疑問がある、なんで俺の名前知ってんの?なんで無限放ったらかしなの?
そんな疑問を知ってるのか知らないのか彼女は得意げな顔で説明する。
「貴方は人間です、にも関わらず圧倒的な力を持ち観察眼も優れており知力も高い、これだけで私達、英雄派には喉から手が出る程欲しい人材です」
騙して御免なさい俺、人間じゃありませんオーバーロード・インベスです。
喉に出かかった言葉を飲み込む。
そんな俺の様子に気付いてないのか、彼女は言葉を続ける。
「それに、貴方を引き込めばオーフィスも自ずと戻って来るでしょう」
一体どう考えたらそう言う結論に至るのか、聞きたくなったがやめて置いた。
「それになにより・・・」
「なにより?」
俺が聞き返すと彼女は一瞬、目を伏せ、頬を桜色に染める。
「私は貴方が欲しい」
「・・・・・」
うん?いや、人材的な意味だよね?
なんでこんな高校時代の校舎裏の告白イベントみたいな空気なの?
いや、されたことないから分らないけどさ・・・
「・・・因みに、私が頷くと思ってるのか?」
念のために聞いておく、とくに他意はない。
「残念ですが、そうは思えないません」
彼女のあっさりとした言葉に目を丸くするが仮面の中なのでばれないだろうとポーカーフェース(仮)で振る舞う。
「ほう、だったらどうする?」
「こういう手は望みませんが、実力行使です」
俺の言葉に曹操は槍の矛先をこちらに向け宣言した。
彼女の言葉に俺もつい仮面の中で口角を釣り上げる。
「ほう、あの時私に手も足も出ずに10秒も経たぬ内に地面にひれ伏した者の言葉には思えないな」
「あの時の私とは違います、人は進化するんですよ・・・影虎」
先程までの柔和な声とは正反対の鋭い言葉で俺の言葉に答える。
だが、彼女は肝心な事を忘れている。
「確かに人間は進化を重ねる存在だ・・・しかし、同時に退化も重ねる存在だ」
「私は違う」
「試してみるとしよう」
彼女が槍を構えると同時に俺もバナスピアーを構える。
「・・・行きます‼」
「来い・・・」
神をも殺す槍を携えた英雄の子孫が俊足の速さで俺に突撃した。
相変わらず外側と内心の口調が一致しない主人公