あの文化祭から一ヶ月が過ぎ去った。
受験勉強にくれる日々が続くけれど。
息抜きという名目で、結束バンドのライブに参加した。
地下への階段を降りて辿り着いたライブハウス。
ドアの向こうには、元ヤンの気配を感じる店員。
臆病な私なりに勇気を振り絞った。
ライブハウスでのドリンクの受け取りなど、それからも試練は続いたけれど。
文化祭で感化された人が多いのか、同じ学校の生徒がいるっぽいのが救いだった。
普段自分がいる場所とは違う。
後藤先輩は学校の枠から飛び出して、こんな場所で音楽をやっているんだと感動した。
あまりにも遠い場所に感じる。
初めて尽くしに萎縮していたところで、やっと結束バンドの出番が始まった。
歓声から始まったライブは、期待通り、後藤先輩のギターソロから始まった。
文化祭のときのような小細工はなし。
スポットライトを全身に浴びながら。
正々堂々と高らかに。
でもやっぱり背を丸めて俯きながら。
嵐の夜を切り裂くような雷鳴を、後藤先輩は響かせた。
ライブハウスから帰ってきたらお勉強。
受験生に休みはないのだ。
・・・寝る前の受験勉強のノルマを終えて、一息を着く。
『秀華高校 過去問題集』と書かれた冊子を片付ける。
あとはもう寝るばかり。
そういえばと、後藤先輩からライブ会場で小包受け取ったことを思い出す。
洗濯され返却されたパンツ。
お詫びとして新品のパンツもあったけど、そっちはどうでもいい。
私が穿いていて、後藤先輩が穿いて、返ってきたパンツ。
グレーで飾り気のない地味なパンツ。
どうしようこれ。
かなりのレアアイテムだ。
額縁にでも入れるべき?
うーん。
悩ましい・・・
とりあえず今日のところは枕元において布団に潜り込む。
「今夜はいい夢が見れそうかな――――――
/
――――――こりゃ今夜見るのは悪夢だね」
夢の舞台。
今日訪れたSTARRYの観客席に私はいた。
私の正面、ステージの上には人影。
シルエットからはジャンパーを羽織った女性のように見える。
スポットライトの逆光で顔は見えない。
「ぶはーー。うーん、私にもキラキラした時代はあったのかなぁ。ねえ、どう思う?」
飲み終わったストロー付き紙パックを放り投げながら尋ねられた。
馴れ馴れしいし、行儀が悪い。
ひどい嫌悪感を感じた。
「そんなことは私にはわかりません」
どうしようもない酒精の香りが漂っていた。
呂律の回らない声から、泥酔具合が伝わってくる。
「迷い子が手招く夢の国へってか。さぁて、『どっち』が迷い子だろうねぇ」
どうしても逆光で相手の顔は見えなかった。