制服のころの自分は未だに受け入れられない。
そんな気持ちがあるのだと思います。
『普通からの脱却』を目指して達成してはいるけれど、じゃあ今の自分を完全肯定できるかと言えば違うわけで。
あのころの自分が、今の自分を見てくる。
きっとそれは恐怖の体験。
ステージ上であぐらをかいて、紙パック酒に飽き足らず、今度はどこからともなく取り出した一升瓶をラッパ飲みしている。
完璧で究極のダメ人間がそこにいた。
「ぷはーーっ、酔わなきゃやってらんねーーー!」
酒臭い吐息がここまで届きそう。
人間としてこうなったら終わりだろう。
「面白い夢だなぁ、こりゃ。君の状況が私にはなんとなくわかるよ。――――まさかぼっちちゃんに憧れているとはねえ」
私には目の前の人物のことが分からない。
分かりたくない。
「・・・ぼっちさんのことを知っているんですか?」
「うんうん、よーく知ってるよ。少なくとも君よりはね。言わば私はぼっちちゃんの師匠みたいなものだよ」
「それは――――違うでしょう。ぼっちさんと貴女はまるで違う」
「あぁ、そうだねえ、まるで違うねえ。
こんな私なんかとぼっちちゃんは違う。勝っているのは経験ぐらいのもんで・・・けどさぁ、君だって、ぼっちちゃんとまるで違うよね?」
怒気が伝わってくる。
逆鱗に触れてしまった。
威圧感。
睨まれているわけでもないのに、腰を浮かせてしまう。
「おおかたさあ、ダメダメなぼっちちゃんがそれでも輝いているのを見て、君も同じように出来るとでも錯覚しちゃったんじゃないの?」
「そんなことは――――・・・」
「ぼっちちゃんのこと、下に見てない?
絶対絶命の窮地をその場の機転でどうにか出来るぼっちちゃんみたいな人って、ほんのひと握りだよ。
ありふれた普通な君はそうじゃないでしょう? 」
わかった風なことを言う。
酔っ払いのくせに偉そうに。
景気よく一升瓶に口をつけて、ぷはーと再び酒臭い息を吐いて。
「君の考えることぐらいはわかるよ。
ぼっちちゃんの後を追いかけようとするんでしょ?
同じ学校に入ろうとしちゃってさ、んで楽器なんか初めてみようとしたりさ」
私は何も答えない。
応えられない。
浅はかだというのなら笑え。
もっと後藤先輩に近づきたいと思ってしまった。
秀華高校は家からも近くて、難易度も適当で、そうならばと受験を決めてしまっていた。
楽器も受験が終わったら、何か始めたいと考えていた。
簡単に影響を受けてしまう浅い人間なのは間違いない。
だけどそれでも。
「私がそうしたくてやってるんです。何か言われる筋合いはありません」
私が踏み出したいと思った『1歩』なんだ。
「ふぅーん。確かに私が色々言うことじゃないね。
ただ・・・君はぼっちちゃんになりたいのかな。それとも並び立ちたいのかな。
そこだけは気になってるよ。
奈落の底から、どっちを選ぶのか楽しみにしてる」
気づかなかったが、彼女のそばには楽器ケースが転がっていた。
ギターなのか、ベースなのか中身は分からない。
彼女はステージが生み出す眩い光を背負って、影そのもののような姿で私を観ていた。
大槻ヨヨコに詰められると威圧で返していたので、追い詰められるとこんな反応するんじゃないかと想像。
次は幕間で結束バンドいきます!