同年代♂に囲まれたら、ぼっちは爆発四散じゃん。
喜多くんに引きずられて、下北沢のとあるマンションの地下へ。
元気いっぱいな喜多くんの案内は、ジミヘンの散歩を思い出す。
STARRYと書かれた電気のついていない看板。
ここはライブハウスで、今日は定休日らしい。
喜多くんのバンドメンバーの家族がやっているお店で、定休日を利用して使わせてもらえるそうな。
喜多くんのバンドは動画配信を中心に活動する予定らしい。
中学生でライブハウスで演奏するのは、資金面で難しいとのこと。チケットノルマがどうとか。
リーダーの子がバンド動画にハマっているらしく、バンド活動として、まずは定休日のライブハウスを使わせてもらって動画撮影をするんだそうだ。
・・・なぜか喜多くんのギターの師匠として連れてこられた。
喜多くんが店のチャイムを鳴らすと、怖い雰囲気のお姉さんが出てきた。
「星歌さん、こんにちは!」
元気良く喜多くんが挨拶をする。
「おぅ、喜多か。虹夏はまだ部屋に山田といたぞ。家に上がってけ」
「え〜、先輩たちまだ家なの? 見てきます!」
たたたっと呼び止める間もなく、喜多くんは店を飛び出して行ってしまった。
上階に住む先輩たちを呼びに行ったんだろう。
勝手に人様の家に上がり込むわけにも行かず、さりとて勝手に帰るわけにもいかず。
「あんたが喜多のギターの師匠ってやつか」
目つきの鋭い知らないお姉さんと二人っきり。
どうしよう。帰りたい。
むしろ帰れって怒鳴られたりするのかな。
「はい・・・私なんかですみません・・・」
お姉さんは毒気が抜かれたような表情を浮かべた。
「その、なんだ。苦労してそうだな。嫌だったらちゃんと言えよ・・・?」
むしろ何だか心配してくれる。
うぅっ。
いつも人に心配されるわが身が悲しい。
「まぁ、店は開けてないがゆっくりしてくと良い。私はアイツらの様子を見てくるよ」
ライブハウスにひとりぼっち。
ステージの上はライトアップされていて、喜多くんたちのために準備されているみたい。
お姉さん、好きにしていいって言ってたし、ちょっとぐらいいいかな?
ステージの上にギターを持って立ってみる。
夢にまで見たライブハウスのステージ。
自分がここにいるのが信じられない。
こんなふうになっているんだ。
「今日お休みだし、わたしは喜多くんの師匠で関係者だし・・・」
もうちょっとぐらいは良いよね・・・?
ギターをアンプに繋ぐ。
軽く弦を弾くとライブハウス全体に音が響く。
いつかバンドを組むことが出来たら、こんなふうにステージの上で演奏できるのかな。
アンプに乗ったギターの絶叫が密室を駆け巡る。
いつか来る日に期待して。
音を奏でるギターに没頭する。
忙しなく動く指。
震えるギターの弦。
熱さを感じる照明。
ギャィィイイインとビブラートを聞かせて一息つく。
「ふぅ・・・」
気持ちよかった。
さて喜多くんが戻って来るまでに撤収しないと。
パチパチパチパチパチパチ。
ただならぬ気迫をまとった拍手が打ち鳴らされる。
「え?」
気づけば観客席に、喜多くんとさっきのお姉さん、そして二人の少年がいた。
演奏に夢中になるにも、限度があるだろ自分っ!
拍手は初対面の少年の一人からだった。
さっきの鋭いお姉さんとどこか顔つきが似ている。
あの人の弟かな?
「ギターヒーロー・・・お姉さんギターヒーローですよね!!」
すごい勢いでステージに駆けてきて一言。
え、もしかして、この子・・・
私のファンなの?!
えー、やっぱり演奏聞くと分かっちゃうかぁ。
うぇへへ。
「そう・・・私がギターヒーローだよ」
ギャーンと景気よくギターを爪弾く。
キラキラとした目で見られてる!
あー、漆黒の高校生活で傷ついた自尊心が回復していくのを感じる・・・
「すごい偶然・・・、まさかこんなときに会えるなんて。僕、虹夏って言います!
ギターヒーローさんって、喜多のギターの師匠なんですよね? 喜多から聞いてますよ!
良かったらなんですけど、これから行う配信動画のコーチお願いできませんか?」