喜多くんのギターを見る約束をしていた日がきた。
新しい私の初お披露目。
「え・・・。その髪・・・ッ!!」
公園で会った喜多くんは絶句していた。
「ちょ、ちょっとしたイメチェンだから・・・! ほ、ほら、暑くなってきたしぃ! 結束バンドに誘われたいとか、そんなこと意識してないから」
「ばっさり・・・なんでそこまで・・・。無理です!オレの手に負えません!ちょっと1枚写真撮らせてください!」
「ひっ、写真は(パシャ)」
ちゃんと返す間もなく、喜多くんに写真撮られた。
私の写真とってどうするんだろ。
・・・要注意人物として通報するのかな。
喜多くんはそのまますごい早さでスマホを叩いてる。
ちらりと見えた画面からすると、虹夏くんやリョウくんとなんかやり取りしてるみたい。
「師匠、明日STARRYに来れます?」
「うん、予定は空いてるけど・・・」
もちろん問題なし。
なんなら毎日真っ白だけど、もしかして・・・
髪を切って男の子みたいになったから、バンドにスカウトされるのかな!
「・・・1回メンバーで話しましょう。ちょうどまた定休日らしいんで」
「そっか、うん。バンドメンバーで集まるんだったら、今度こそ合わせられるように練習しないとだね」
「お手柔らかにお願いします!」
集まるってことは今度こそ収録するかも。
せめて1曲弾けるだけでも弾けるように喜多くんを仕上げないと。
それに明日だったら・・・
今日、家に帰ったら『アレ』が家に届いているはず!
お披露目できるなぁ。間に合って良かった。
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STARRYには定休日の看板。
チャイムを鳴らすと、店長さんが迎えてくれた。
「アイツらはマンションの方に来てるみたいだ。私はちょっと片付けしてるから、ゆっくりしててな」
店長さんは物置に行って、なんかゴソゴソしてる。
この前と同じくフロアに一人ぼっち。
楽屋とか借りてこっそり着替えようかと思ったけど、この前なかなか来なかったし・・・
数分ぐらいの時間はあるはず。
ちゃっと着替えちゃおう。
急いでジャージの上を脱ぐ。
ブラジャーも外す。
上半身を晒して、バッグから取り出した『それ』を・・・
ガチャリと無慈悲にドアが開いた。
「あっ」
男子三人組と目が合う。
時間が止まった。
――――――――――ザ・ワールド。
そして時は動き出す。
ものすごい勢いでドアが閉まった。
ドアが閉まってる間に慌てて着替える。
ノックして恐る恐る入ってくる三人組へ土下座した。
「うぅ、お見苦しいものをお見せしました。すみませんでした・・・どうか警察に通報するのだけは勘弁してください・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
虹夏くんと喜多くんは顔を真っ赤にして無言だ。
ううっ、このままだと防犯ブザー鳴らされちゃう。
「ふたつ、聞きたいことがある」
ひょっこりと硬直した二人を押しのけて、リョウくんが前に出てくる。
「へへ・・・犯罪者に何用でしょうか・・・」
「さっきまであったデカいおっぱいどこ行ったの? あと、なんで露出してたの」
私の胸はぺたんと無くなっていた。
男の子みたいな体型。
ここで着替えてた理由はそれだった。
り、理由を話して弁解しなきゃ。
「実はこういう下着があって・・・」
昨日、通販から届いたソレ。
バストホルダー。通称ナベシャツ。
Hカップまでのおっぱいをフラットにするマジカルアイテム。
昨日試しに付けてみて、本当に消えて感動した。
それなりに圧迫感を感じたから、朝から学校に着けていくのは躊躇してしまい、ここまで着るタイミングを引っ張っちゃった。
凄さを自慢したくて、ジャージの前を開こうとして。
「あ、見せなくていいから!」
虹夏くんのインターセプト。
「うっ。はい、反省せず、見苦しいもの出そうとしてすみません・・・」
テンション上がってまた罪を重ねるところだった・・・
このままだったら痴女って呼ばれちゃう。
「そんなものまであるんだぁ・・・。そこまで熱意があるんだったら僕はぜひ来て欲しいと思う。喜多は元からOKだし、さっき確認したんだけどリョウも良いんだよね?」
「ボクだけ悪者扱いか。基本的には良いんだけど・・・ひとつ、条件がある」
虹夏くんに尋ねられて、心外だという表情のリョウくん。
条件??
やっぱり定番の・・・
「バレたら追放とか・・・」
「バレることは別に。炎上したり色物バンドに堕ちるかもしれないけど・・・実のところ、ボクはボクらの音楽を追求できればそれでいいんだ。
・・・髪切っちゃった今となっては言いにくいんだけど、そもそも『色物バンド』になるってのは建前の理由だから」
「た、建前・・・」
え、そんな。
『色物バンド』以上があるの?!
もしかして私のビジュアルがイマイチだから??
オブラートに包んで言い出さなかったとか。
だって三人ともイケメンだ。
女の子にキャーキャー言われてそう。
混じるとか正気じゃなかったかな・・・
リョウくんは、虹夏くんと喜多くんをチラリと見た。
「条件はひとつ。これは後藤先輩だけじゃなくて、全員で守るルール。絶対に守って欲しい。
結束バンドは『バンドメンバー間での恋愛禁止』だ。男女混合バンドの解散理由ってだいたいそれだから、避けたかったんだよね」
れ、ん、あ、い?
遠い星の言葉が聞こえた。
意味がわからない。
「え、そんなこと??」
いや・・・もしかしたら、万が一、私が分不相応にも男の子を好きになることはあるかもしれない。
普通に片思いで終わるだろうけど。
もしもそのときは何もせず、墓場まで持って行こう。
覚悟を決める。
「後藤先輩。思春期男子を甘く見ないことだ。さっきおっぱい見たから、既に虹夏と喜多は後藤先輩に惚れかけている・・・。すでに危うい状況だ」
「あれで?!」
「童貞ってそういうもんなんだよ」
ちょっと待てよふざけんなよと、虹夏くんが絶叫した。
「くそっ、偉そうにしやがって。
お腹空いたところを逆ナンされてホイホイ付いていって食われただけのくせに・・・」
「しばらく女性恐怖症になってたそうなのに調子良いですね・・・」
「すでにいい思い出だよ。マウント取れるし」
リョウくんだけ、大人なんだ・・・。
なんか色っぽく見えてきた。
虹夏くんも喜多くんもイケメンなのに、経験はないんだ。
「へへっ・・・私なんて高校生になっても経験ないですし、一緒ですね」
喜多くんから、なんかものすごい顔で見られた。
なんで・・・
お茶を飲んで一息休憩。
「こほん。配信でるんならさ、ギターヒーローさんの呼び名を考えないと。
女子高生配信者のギターヒーローや本名は隠さないとだよね」
正体を隠して、男子中学生としてやっていくわけだし。
もしかして、渾名付けてくれるって話?
「後藤ひとりだから・・・『ぼっち』!」
リョウくんがババーンと言い放った。
「ちょっと先輩それは無いんじゃないですか!」
「リョウってギターヒーローさんに塩対応だよね・・・」
「だからこそだよ。まさか年上の女子高生を『ぼっち』呼びしてるとは思うまい。年齢は私らと同い年で、遠方の中学から参加ってことにしよう」
あ・・・ああ・・・
「人生初めてのあだ名・・・! 嬉しい!」
「あ、それで良いんだ。じゃあ、ぼっち君。これからよろしく」
「オレもそうしなきゃなんですよね? ぼっち先輩、これからよろしくお願いします」
ふぉおお〜〜
あだ名で呼ばれるとすごい一体感を感じる!
「結束バンドのぼっち、中学2年です! よろしくお願いします!」
虹夏くんはワクワクした表情を浮かべた。
「いよいよ『結束バンド』が始動だね! 早速練習したくなってきた!」
「文化祭までには収益化を済まして、一度はSTARRYでライブやりたいな」
「人数が多い文化祭ライブ前に場数を踏みたいですね」
文化祭ライブ・・・?
三人が行ってる中学の・・・???
「ぼっち、もちろん出てくれるんだよね?」
「あっ、はい」
中学校の文化祭にでんのかぁ。
行っていいのかな。
捕まんないかな?
「じゃあ、まずは練習だね! 今日これからが本当の意味で第一回! 成長記録のためにも録画しよう!」
バンドリーダーの虹夏くんがカウントを始める。
さぁ、ここから。
私のバンドマン人生が走り出した。
第一部 [完]
『ぼっち以外ショタ結束バンド』は一旦これにておしまい。
そもそも前話までしか考えてなくて、本来は断髪で〆でした。
ですが、評価やら感想やらいただいたおかげでやる気とネタがモリモリ湧き、ここまで書くことが出きました。
送ってくれた方々、読んでくれた方、ありがとう!
また逢う日までサヨナラ!