心に男子中学生を飼うぼっち。
男子中学生に囲まれ、何も起きないはずがなく。
スタジオ練習を終えて。
「くそぅっ、ミス多かった〜〜!! 先輩たちごめん!」
喜多くんが悔しそうに漏らす。
だいぶ上手くなったのは間違いないんだけどな・・・
「練習だから気にしない。それよりこの後、ぼっちの服を買いに行こう」
後片付けをしていると、リョウくんが提案した。
私の服?
「あー、確かにねえ。SNS大臣の喜多くんもぼっちくんへの意見はあるでしょ」
虹夏くんも、うんうんとうなづいている。
動画配信用だったら、お父さんから借りたジャージがあるけど?
「まぁ。はっきり言わせてもらいますけど、ダサすぎですね! 画面映えしないっていうか、ロックバンドらしさが欠けらも無いです」
広報担当 SNS大臣として喜多くんが憤慨してる。
うっ、着飾らなきゃダメ・・・?
そもそも服を買いに行く服がない。
服屋にジャージ入店したら処刑されるんじゃ。
「そもそもダボジャージ着てるだけで素顔だし、何かしらで変装しないと、ぼっちくん=後藤先輩ってバレそうじゃない?」
男装バレはまずい。
せっかく入れてくれた結束バンドに迷惑かかっちゃうし、追い出されちゃう。
「ぼっち、お金あるんだよね? その辺の服屋で『結束バンド』らしいコーディネート揃えようって話だよ」
リョウくんが言うように、確かにお金はある。
ギターヒーローの収益化しようとしたら、お父さんがすでにしてくれていた。
これまでの収益が溜まっていてバンドの活動費用ということで、使うことに了承を得ていた。
「よーし、見に行こう!」
虹夏くんは乗り気だ。
問題はないけど行きたくない。
メンズ服に女子が入ったら絶対注目される。
「適当にネット通販でいいんじゃあ・・・」
「ぼっち、メンズ服わかんないでしょ」
「みんなで考えたら楽しいんじゃない?」
・・・考えてみたら、『友達』とお出かけ。
ちょっと憧れるものがあって、気持ちが動かされてしまう。
「アイドルにはクール、キュート、パッションってタイプがある」
リョウくんが変な話を始めた。
「それに則るなら、ボクがクール、キュートが虹夏、パッションが喜多でしょ」
埋まってる・・・
私の居場所はないですね、へへっ。
「ちょっと! 僕がキュートなのは納得がいかないんだけど。喜多が年下だし身長低いじゃん」
「その上で判断すると」
「無視かオイ」
「ぼっちはダークだ!結束バンドの光かがやく暗黒星になろう 」
はい?
リョウくんがいうダーク系の装備を求めて、下北沢の街へ繰り出した。
古着、ユニクロ、アクセサリーショップ、靴屋を巡って――──――
そして完成した『結束バンドのリードギター、ぼっちLv.100』
皆が満足そうでご機嫌だ。
「ついに完成したな」
「うん、バンドマンらしいよ」
「なかなかいいと思うよ」
買い物は意外と楽だった。
店員に話しかけられる前に、皆はチャキチャキ決めちゃうし。
というか中学生男子で騒いでたら、たぶん店員さん話しかけて来ないものなんだな。
冷やかしと思われてたのかな・・・
でも戦利品は私も満足してる。
ちょっとカッコつけ過ぎな気がするけど、良いものが買えた。
今日買った物 ①
体型隠しも含めた、オーバーサイズの黒パーカー。
英語の文字がいっぱい書かれていて、しかも飾りにファスナーまで走っている。
とてもロック。
くぁっこいい。
カッコ良すぎて、私着こなせるかな。
けっこう不安。
今日買ったもの②
七分丈のミリタリーカーゴパンツ。
足首を見せることで、ダボッとしたシルエットを強調。
ちょっと地味なんだけど、次の・・・
今日買ったもの③
古着屋で見つけた、ガチの軍用ブーツ。
ミリタリーカーゴパンツと合わせると強そう。へへっ。
今日買ったもの④
変装には目元を隠そうと言うことで・・・ピンクレンズの黒縁サングラス。
髪に合わせた色だし、ちょっと地味。
まぁ変装だし、これはこれでいいや。
今日買ったもの⑤
ゴツいスカルのシルバーリング。
や、やっぱりギタリストたるもの、指先を魅せないと!
へへっ、イキリすぎですかね・・・
あぁ、歓声が聞こえてくる・・・
『かっいいぞー!!!』
『よっ、パリコレスター!!』
『抱いて、ぼっち様〜〜〜!』
『お前が人間国宝!!!!』
「ちょっと後藤師匠! もう行きますよ! 虹夏先輩とリョウ先輩は帰っちゃいましたよ!」
「んはっ」
意識を取り戻すと、道の端にいた。
喜多くんが呆れた顔で覗き込んでくる。
他にはいない。
「あれ? 虹夏くんとリョウくんは?」
「家事があるとか、まだ古着見たいとかで行っちゃいましたよ」
「あ、あっ、喜多くん、私の面倒見てくれてありがとうね・・・」
買ったものを詰めた紙バックをもって、道中動かなくなった私を見ていてくれるなんて喜多くんはいい子!
「気にしなくていいですよ。オレんち、この辺なんです。もう帰るだけなんで」
むぅ、お世話してもらって何もしないなんて、そのうち愛想をつかされそう。
目の端に、たい焼き屋の屋台が見えた。
「ちょっと待ってて」
屋台までダッシュ。
中身はあんことクリームが選べるみたい。
これはアレができる。
たい焼きをふたつ買って戻る。
「あんことクリーム、どっちがいいですか?」
「えっと、じゃあクリームで。いくら・・・」
「あ、良いです。見ててくれたお礼と・・・ギター頑張っている喜多くんへの差入れです」
スマートに、お礼渡せた!
ふたり相手に似たようなことしてきた経験が活きた。
「へへっ・・・少しは年上らしいこと出来ましたかね。私、妹いるんですよ」
「へぇ、後藤師匠も姉かぁ・・・。オレは逆に後藤師匠と同じ年の姉がいるんですよ」
喜多くんのお姉さんかぁ。どんな人だろう。
喜多くんみたいに良い人かなぁ。
───噂をすれば影。
世界が茜色に染る黄昏。
昼でも夜でもない時間。
境界線があやふやになるから昔の人は魔に出会う、逢魔が時と呼んだらしい。
喜多くんの後ろの方向から、私の高校の制服を着た女の子が近づいてくる。
今どきのファッションに、生命力に溢れたキラキラ。
オーラでわかるほどの陽キャなJKに、反射的に身構える。
あ、目が合っちゃった。
がっつり視線を返して、なぜか私と喜多くんを行ったり来たり。
ん?
喜多くんをそのまま女の子にしたような顔つき。
「え、もしかして彼女?!ヾ( 〃∇〃)ツ キャーーーッ♡ 私はコイツの姉よっ、喜多ちゃんって呼んでね!」
喜多くんのお姉さん?
そういえば家はこの辺って言ってたっけ。
同じ高校だったんだ。
喜多さんも同じことに気づいたみたいで、それどころか───
「あれ・・・? あなた、隣のクラスの後藤さんじゃない?
というか弟にSNSで広めて欲しいって頼まれた『結束バンド』の動画に出てた子・・・???」
ヤバい。