エクストラダンガンロンパζ 絶望の華は希望の宙へ   作:江藤えそら

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Prologue:なぜ何もないのではなく、希望があるのか
未来の宙からはるばると


 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 無。

 

 音もない空間の中で、ボクはぼうっと画面を見つめていた。画面上にはこの宇宙で最後に残された重力源…超大質量ブラックホールの存在がサーモグラフィーのように色付きで表示されていた。それ以外には何もない。この宇宙船と、たった一つのブラックホール。それ以外は何もない真っ暗な無の空間だ。

 

 これが、この世界の果て。現世と万物の終焉。最後にはあのブラックホールもホーキング放射により消滅する。宇宙は暗く冷たい光子が飛び交いながら永遠に低速膨張を繰り返すだけの”無”の空間になる。人類の存在など、その痕跡すら残りはしない。否、仮にそれが残っていたとしてもそれを観測する存在がいなければ同じことだ。全ては無。無の世界が永遠に続くだけだ。

 

 我々は何故生まれた。何のために生まれた。全て無くなるのなら、どうして世界は生まれる必要があったのか。そんな哲学に思いを馳せても仕方がない。我々が何を問おうと世界は答えない。()()()()()()()だ。

 

 憎悪も、戦争も、希望も、絶望も、今となっては遠い話だ。人類の営みに対して宇宙は大きすぎる。だが、人類は人類の物差しでしか世界を測れない。人類の感性で無理に宇宙を測ろうとした結果、こんな無鉄砲な計画が生まれてしまったのだ。本当に、これが()()()()()()()()なのか? それに応える”誰か”はいない。この世界に残された知性はボク達しかいないのだから。

 

『換算ローレンツ因子現在値:43。間もなくエルゴ領域に突入します』

 

 システム音声が鳴り響く。エルゴ領域に突入すればいよいよ後戻りはできない。ボク達の固有時は引き延ばされ続け、やがては……。

 

 ボクはカップに注がれたコーヒーを飲み干すと、一つのため息とともに筆を執る。少し休憩しすぎた。仕事を再開しよう。どちらにせよ、ボクにはこれ以外やることがない。先ほど思い浮かべた思考も、もう回数を数えることが億劫になるほど繰り返した。それだけ気が遠くなるほどの時間が経った。ただ目の前の仕事をこなす以外にやることも、やれることもないのだ。

 

 ボクは筆を走らせ、こう記す。

 

『コロシアイを開始します』

 

 その文字をなぞるようにシステム音声が同じメッセージを告げる。コロシアイが始まる。この宇宙に残された唯一の希望が。唯一の意志が。唯一の在り処が。()()始まるのだ。

 

 

 


 

 

 

 この世に”個”が一つしかないのなら、それは”全”と区別がつかない。ゆえにその”個”が”希望”であるならば希望はこの宇宙の”全”たりうる。例え人類が滅びようと、全ての星が消え去ろうと、空虚な闇が永遠に広がろうと、唯一の知性が希望を観測し続ける限り、この宇宙は光子と”希望”に満たされ続ける。

 

 むろん希望というものはその時点で存在する人間達の主観に過ぎない。ちっぽけな人間の主観を全宇宙に押し付けて測ろうとする無謀で哀れな試み。そうと分かっていても我々人類にできる”あがき”はこれだけなのだ。

 

 現世は無常だ。何を作ろうと、何を残そうと、最後に残るのは空虚な闇の空間だけ。それは万物に定められた必定の宿命だ。”世界の救済”など。”絶望の脚本”など。希望も。絶望も。そんなものは全て無に至る過程の一つに過ぎない。無意味。全て無意味だ。

 

 だからこそ、残さねばならない。大いなる希望を、この現世に。全てを失った現世にただ一つ”希望”だけを残す。そうすれば、人類は死なない。この世界が生まれた意味を、我々が語り継いだ意志を、永遠に絶やさぬまま保存できる。

 

 それこそが、我々が生まれてきた意味。絶望に絶望を重ね、進化し続けた目的。そうでなければ……そうでなければ、現世はあまりにも残酷すぎる。我々が我々たりうるために。我々は現世に抗うのだ。

 

 

 余剰人類(エクストラ)は蘇る。死に絶えた世界を希望で満たすため、永遠に引き延ばされた固有時を生き続ける。

 

 

 

 コロシアイは終わらせない。決して終わらせてはならない。

 

 

 

 

 ここは希望の(そら)。希望だけが存在する世界。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【エクストラダンガンロンパζ 絶望の華は希望の宙へ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『余剰人類計画:完了』




前作「エクストラダンガンロンパZ」の連載開始8周年(最初にpixivに投稿したのが2015年6月6日)ということで連載開始しました。
正直、完結できるか分かりません。
ですが、人生を賭ける思いで書き続けたいと思います。
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