なんとか書けたので今日の内に更新しておきます
ダンジョンに行く時以外で空いている時間があると、団長との対人戦をすることが多くなった。
単独でのダンジョン探索と団長との対人戦を、休息日を挟んで繰り返す日々。
何度も行われた対人戦で、私が団長が持つ棒をよく折れるようになった日の翌日から、団長が用意する棒が木製ではなく白剛石と呼ばれるヴァルマーズ製に変わる。
木製とは強度が段違いなヴァルマーズ製の棒による一撃は、木製の棒とは比べ物にならないほど痛く、骨が折れたことも1度ではない。
凄まじく痛いその一撃を喰らわないように頑張るが、それでも叩かれる時は叩かれてしまう。
手加減されているとしても容赦のない団長の棒による攻撃。
毎回私がボロボロになるまで続く団長との対人戦。
そして毎回治療をしてくれる治療師の人達に「何で毎回こんなにボロボロになってるんですか!」と怒られるが、同時に「本当に大丈夫なんですか貴方は」と心配もされてしまった。
ロキ・ファミリアの治療師の人達は優しい人が多いようだ。
以前よりも対人戦には慣れてきたが、Lv6という高い壁は、今の私では超えられないだろう。
それでも私が今まで積み上げてきた経験は、確かに私の力となっている。
ならばこれまで通り、私は積み上げていくだけだ。
団長はヴァルマーズ製の棒を自在に扱い、槍として使うことも剣のように使うこともある。
私も自前の装備だけではなく、ロキ・ファミリアのホームにある武器庫から貸し出された武器を扱うこともあり、様々な武器を試してみた。
Lv3のステイタスに振り回されないように、技術を団長直々にしっかりと教え込まれ、ひたすら特訓する日々が続く。
ここまで来ると対人戦というよりも指導のような気がすると思ったが、使える武器が増えるのは悪いことではない。
しかし様々な武器を扱うことは今の私には不可能だったようである。
一応私なりに頑張った結果として、なんとか剣なら普通に扱えるようになった。
団長は、この結果に納得していないようで「モビタを更に鍛えるには、もっと時間が必要か、予定を調整しないといけないね」と言っていたな。
流石に団長と戦い過ぎな気がするので、しばらく自由な時間を貰えませんか、と頼んでみると「そうだね、きみにも自由な時間は必要だ。しばらく僕との対人戦はお休みにしよう」と言った団長。
しばらく団長との対人戦は休みとなり、私がボロボロになることも最近はなくなった。
それから数日後、久しぶりに先輩団員達と一緒にダンジョンに行き、目的地である安全階層の18階層にまで向かう。
今回の先輩団員達の目的は、18階層で迷宮産の果実を採取することらしい。
先輩団員達はダンジョン内で採取できる果実が大好物であるようで、たまに食べたくなったらダンジョンにまで採取しに行っているようだ。
辿り着いた18階層では、2人組になってそれぞれ手分けして迷宮産の果実を探すことになったが、私も様々な果実を発見することができた。
肉の味と食感がする果実である肉果実に、瓢箪の形をした果実の赤漿果は、厚皮の上部先端を切って中を押し出すことで、ゼリー状の赤い果肉が飛び出してくる。
実が青いほど酸っぱく、熟れていれば甘いが、実が熟れ過ぎると苦くなる赤漿果。
その苦味を伴う赤漿果の味が酒に通ずるものがあるようで「ダンジョンにこもり続けて安い酒が恋しくなった上級冒険者達は、一様に赤漿果で舌と喉を慰めているんだぜ」と私と一緒に行動していた先輩団員は言っていた。
先輩団員と軽く会話を続けながら迷宮産の果実を探していると、肉果実や赤漿果以外にも木の枝に実る雲菓子を幾つか発見。
ふわふわした綿花に蜂蜜を浸したかのような果実の雲菓子。
皮から滴る果汁が甘い香りを漂わせている雲菓子を採取して鞄に詰めていくと匂いに釣られたのか、近寄ってくるバグベアー達。
3体のバグベアーが戦闘態勢に入るよりも早く、無詠唱魔法「ガンスミス」で作り出していたリボルバーで早撃ちを行い、バグベアーの胸部にある魔石を破壊して倒す。
樹木が存在する18階層では私のスキルである「樹木の友」が効果の1つを発揮していて、全ステイタスに高い補正がかかっていた。
おかげで私の調子は絶好調で、中層の通常モンスターでは私の相手にならない。
時おり現れる中層のモンスターを私が瞬殺しながら、果実の採取を続けていると足下の草地から珍しいものを見つける。
周囲に伸びる小さな水晶の塊の中に隠れていた青白い輝きは、飴菓子にも似た涙滴型の果実である水晶飴だ。
希少な果実と言える水晶飴を2つも発見できたのは偶然だが、これも採取していくとしよう。
私が見つけた水晶飴を見て大興奮していた先輩団員は「瓶詰めだと万を超える値段がするんだよな、高いんだぜ水晶飴は」と言って喜んでいた。
物凄く食べたそうな目で水晶飴を見ていた先輩団員に、じゃあ先輩に1つあげますよ、と私が水晶飴を1つ渡すと「良いのか?すっげぇ嬉しいぜ。ありがとなモビタ」と嬉しそうだった先輩団員。
鞄も迷宮産の果実で満たされ、そろそろ帰る為に集まっておこうと考えた私と先輩団員は、集合場所と決めていた18階層の中央樹にまで向かう。
足早に移動して到着した中央樹。
そこには既に私と同行者の先輩団員以外の全員が揃っていた。
全員が鞄に詰まった迷宮産の果実を見せ合って、それぞれの成果を披露していると「こいつを見ろ!」と私と一緒に行動していた先輩団員が、1つの水晶飴を掲げて自慢気に見せつける。
すると水晶飴を持つ先輩団員に殺到する他の先輩団員。
持っている水晶飴を見るだけで終わりかと思っていたら、先輩団員達で水晶飴の取り合いが始まってしまう。
殴り合いにまでは発展していないが激しい奪い合いとなり、最終的には飛んでいった水晶飴が中央樹のてっぺんにある枝葉に引っ掛かってしまったようだ。
「俺の水晶飴が!」と嘆いて地面に膝をつき、落ち込んでいた先輩団員。
先輩団員達では中央樹のてっぺんまで取りに行くのは難しそうだが、私なら取りに行けるな。
「樹木の友」で高補正がかかっているステイタスを持つ今の私なら問題ない。
という訳で、素早く中央樹を登っていき、てっぺんにある枝葉に引っ掛かっていた水晶飴を回収して戻ってきた私は、先ほどまで落ち込んでいた先輩団員に水晶飴を渡しておく。
もう奪い合いはしないでくださいね、と他の先輩団員達に私が言うと、気まずそうに謝ってきた他の先輩団員達。
その後、ダンジョンを出て迷宮産の果実をロキ・ファミリアに持ち帰った私達は、それぞれが欲しい果実を分配していくことになった。
先輩団員の1人に私が渡した1つの水晶飴は分配されることはなかったが、それ以外の果実は全員に行き渡ったようだ。
甘いものは嫌いではないので雲菓子を多目に貰った私は、迷宮産の果実を中庭で食べると決めて移動を開始。
中庭には他にも団員が居て、鞄から迷宮産の果実を取り出して食べていた私に近付いてくる他の団員。
「肉果実があるなら1つくれ」と言ってくる団員や「赤漿果をくれないか」と頼んでくる団員に「あたしは雲菓子が食べたいなー」と言いながら物欲しそうな目で此方を見る団員までいる。
というか最後のはティオナだった。
大量の果実を1人で全部食べるのも味気ないので、私が貰った迷宮産の果実を他の団員達にも快く提供していく。
渡していく度に、数がどんどん減っていく迷宮産の果実。
気付けば中庭に居た全員が迷宮産の果実を食べていた。
まあ、皆小腹が空いていたのかもしれない。
ロキ様に渡す為に残している水晶飴は隠していたので、私が水晶飴を持っていることを中庭に居た面々は気づかなかったようだ。
中庭で迷宮産の果実を食べ終えた私は、ロキ様の自室に向かい、部屋の扉をノックする。
「入ってええで」と言われた後、扉を開けてロキ様の自室に入ると、軽く酔っているロキ様が酒の入ったグラスを片手に出迎えてくれた。
これを渡しに来ました、そう言いながら水晶飴をロキ様に手渡すと「おおっ水晶飴やないか。ダンジョンで採ったんか?」と聞いてきたロキ様。
迷宮産の果実を探していたら偶然見つけられたんですよ、と正直に答えておくと「水晶飴は希少な果実やから、そう簡単には見つからんらしいわ。モビタは運がええのう」とロキ様は笑う。
「ほんまに嬉しいわ。ありがとうなモビタ」
私から受け取った水晶飴を大事そうに持ちながら嬉しそうにしていたロキ様は、とても喜んでくれていたみたいだ。
ロキ様が喜んでくれたなら、水晶飴を渡せて良かったと私は思う。
翌日、以前私がゴブニュ・ファミリアに作成を頼んでいた武器と防具がようやく完成したと知らせが届き、急いでゴブニュ・ファミリアに受け取りに向かった。
到着したゴブニュ・ファミリアのホーム。
上質なアダマンタイトで作成された白銀の色をした兜と小手に剣を、ゴブニュ・ファミリアの鍛冶職人が私に手渡してくる。
「中々形が決まらなくてな。それでこんなに時間がかかったが、手抜きは一切してないから安心しろ」
鍛冶職人のその言葉通り、白銀の輝きを放つ剣と防具は間違いなく業物だ。
装備一式の名前は「アダマス」と名付けられたようであり「アダマスの兜」と「アダマスの小手」に「アダマスの剣」という名前らしい。
白銀の剣を見ると夢幻三剣士が思い浮かぶな。
とても良いものを作ってもらえた私は、ゴブニュ・ファミリアの鍛冶職人に深く感謝をしてからロキ・ファミリアへと戻った。
自室に帰ってきた時、試しに「アダマス」装備一式を装備してみたが、兜と小手に剣を装備していても動きに支障はないので、このままダンジョンに潜っても問題は無さそうだ。
新しい装備を早速ダンジョンで試したくなっていたが、今日は定期的なステイタス更新の日だったことを思い出した私は、装着していた「アダマス」装備一式を外してロキ様の自室へと向かう。
今日もステイタスの更新をお願いします、とロキ様に頼んでみると「待っとったでモビタ」と手招きしてきたロキ様。
手慣れた様子で手早く更新されていくステイタス。
Lv3
力:D507
耐久:B706
器用:C625
敏捷:D514
魔力:C651
射撃:F
耐異常:H
《魔法》
【ガンスミス】
【ストリングビーム】
《スキル》
【風に愛されし者】
【樹木の友】
【竜の温泉】
【雪解けの癒し】
【誕生せしは日出ずる国】
【山の心】
【小人との友情】
【白銀の剣】
・白銀の剣士となる
・剣を装備時、発展アビリティ剣士の一時発現
・剣を装備時、全ステイタスに高補正
・剣による攻撃時、剣の攻撃力と斬れ味を増大
発現していた新たなスキルは「白銀の剣」と書いて「アルギュロス・クシフォス」と読むようだ。
このスキルが私に発現した切っ掛けは、巨大な大樹である中央樹のてっぺんまで登ったことと、白銀色の「アダマス」装備一式を身につけたことかもしれない。
のび太関係で「白銀の剣」と言えば思い浮かぶのは、やはり夢幻三剣士だろう。
夢幻三剣士の世界で、のび太はスネ夫に似た剣士とジャイアンに似た剣士の召し使いとして扱われていた。
白銀の剣がてっぺんにある大樹を登り始めたスネ夫に似た剣士に、水を汲んでくるように言われたのび太が川に行くと、しぼんで川に沈んでいた月を発見。
見るからに空気が抜けて川に沈んでいた月に風船のように空気を入れて浮かせ、大樹のてっぺんまで、上に上昇していく月に乗って移動するのび太。
そして楽々と大樹のてっぺんに到着したのび太は、白銀の剣と兜を含めた装備一式を手にする。
白銀の装備一式を身につけたのび太は白銀の剣士となり、凄まじい剣の使い手となった。
そして白銀の剣士となったのび太は夢幻三剣士の世界で活躍していく。
夢幻三剣士の序盤は、そんな話だった筈だ。
「ステイタスの熟練度がめっちゃ伸びとるし、新しいスキルまで発現しとるやん」
「どないなっとんねーん!」と叫んでいたロキ様は、叫んだ後に頭を抱えていた。
申し訳ない気持ちにはなったが、また新しいスキルが発現しそうな気がしていたので、私に驚きはない。
これからも、のび太関係で新しいスキルが発現するのは間違いないが、次にどんなスキルが来るのかは私にもわからないな。