新しいスキルである「白銀の剣」の効果を確かめる為にダンジョンへと向かったが、今の私は剣を装備していれば全ステイタスに高い補正がかかるので、上層や中層で現れる通常のモンスターでは弱すぎて戦いにならなかった。
それでも軽い慣らしにはなるかと思って単独でダンジョンの中層に留まり戦いを続けていると、現れた白いライガーファング。
大型の虎のようなモンスターであるライガーファングは、生半可な刃は通さない剛毛を持つ。
明らかに通常のライガーファングと色が違っている白虎のライガーファングは、間違いなく通常のライガーファングよりも強そうに見える。
試しに無詠唱魔法の「ガンスミス」で作り出したリボルバーで早撃ちを行い、数発の弾丸を白虎のライガーファングに叩き込んでみたが、白い毛皮を貫くことはできなかった。
それから作り出す銃を大型に変えていっても白い毛皮を貫けなかったが、全ステイタスに高い補正がかかっている今の私が「ガンスミス」で作り出した銃でも貫けない白い毛皮は、強度がとても高いらしい。
白虎のライガーファングは、私に何度も攻撃されたことで怒ったのか咆哮を上げると、瞬時に此方に飛びかかってくる。
ライガーファングは巨体だがミノタウロスよりも動きが速く、白虎のライガーファングは更に動きが速いようだ。
体重を乗せた両前足で此方を踏み潰そうとしてくる白虎のライガーファングの攻撃を、後方に跳躍することで避けた私はダンジョンの壁面に着壁。
それから壁面を蹴り、弾丸のように白虎のライガーファングへと接近すると「アダマスの剣」による斬撃を叩き込む。
私のスキル「白銀の剣」の効果の1つには、剣による攻撃時に剣の攻撃力と斬れ味を増大させる効果がある。
「ガンスミス」で作り出した銃の弾丸は白い毛皮を貫けなかったが、私の新たな装備である「アダマスの剣」ならライガーファングの白い毛皮を斬り裂くことができた。
白い毛皮に刻まれた裂傷。
溢れた血が白い毛皮を赤く染めていくと、怒りの咆哮を上げた白虎のライガーファングは、苛烈な連続攻撃を繰り出す。
「白銀の剣」の効果で全ステイタスに高い補正がかかっていなければ、避けきれないほど激しい白虎のライガーファングの連続攻撃。
繰り出される白虎のライガーファングの攻撃を回避しながら、此方も「アダマスの剣」を振るう。
「アダマスの剣」を振るっていると、スキル「白銀の剣」の効果で一時的に発現している剣士の発展アビリティにも慣れてきた。
それに加えて「白銀の剣」の白銀の剣士になるという効果により、徐々に洗練されていった私の剣技。
動けば動く度に、剣を振るえば振るう度に、見違えるように変わっていく剣の技量。
少しずつ私が、白銀の剣士に近付いていくことが理解できる。
そして白虎のライガーファングとの戦いが始まって3時間が経過する頃には、私の剣の扱い方は別人のように変わっていた。
完全に白銀の剣士になった訳ではないだろうが、今はこれで充分だ。
そろそろ戦いを終わらせるとしよう。
鋭い爪を生やした白い前足を横に振るってきた白虎のライガーファングの攻撃に合わせて「アダマスの剣」で繰り出す斬撃。
振り下ろした「アダマスの剣」で分厚い白い毛皮に包まれた前足を容易く斬り落とすと、身を翻して今度は白虎のライガーファングの首を狙う。
地を蹴り、その勢いすらも乗せた「アダマスの剣」による一撃を放つ。
強度の高い毛皮も、頑丈な骨肉すらも斬り裂いて突き進んだ鋭い刃。
斬り落とされた白虎のライガーファングの頭部が地を転がり、長く続いた戦いが終わる。
白虎のライガーファングの死体から魔石を抜き取ると、白い毛皮がドロップアイテムとして残った。
大きな白い毛皮は強度も高いので良い防具になるかもしれないな。
この白い毛皮はヴァリスに換金しないで、ゴブニュ・ファミリアで防具に加工してもらうとしよう。
ダンジョンを出てギルドで中層の魔石を換金した私は、ゴブニュ・ファミリアに向かい、鍛冶職人にライガーファングのドロップアイテムである白い毛皮を渡して加工を頼んだ。
「しばらく時間はかかる」と言われたが、急いでいないので問題はない。
その後、ロキ・ファミリアのホームに戻り、装備一式を部屋に置いてからオラリオの浴場まで移動して、ダンジョンでかいた汗を流す。
さっぱりして帰ってきたホームで夕食を食べてから歯を磨いて自室で眠ると、朝までぐっすりと眠れたな。
そんなことがあった日の翌日、朝早くから団長に呼び出された私は中庭で団長と対峙することになった。
今回は剣だけを使うようにと指示を出されたが、どうやら団長は私が新しいスキルの「白銀の剣」で、どれだけ剣で戦えるようになったかが知りたいらしい。
私が持っているのは「アダマスの剣」ではなく、ロキ・ファミリアの武器庫にあった剣だが、スキル「白銀の剣」は発動している。
団長は、やっぱりヴァルマーズ製の棒を持っているが、期待に満ちた目で此方を見ていた。
たまには団長を驚かせてみるとしよう。
「アダマスの剣」には劣るが頑丈な剣を振るって団長に斬撃を繰り出すと、ヴァルマーズの棒で受け止めた団長。
目を見開いていた団長は、驚いてくれているようだが、まだまだこれからだ。
団長の振るうヴァルマーズ製の棒と、私が持つ頑丈な剣が打ち合わされる度に硬質な音が響く。
格段に向上している私の剣技に驚いている様子を見せた団長だが、動きに淀みはない。
しばらくの間、棒と剣による打ち合いが続いたが、手加減を更に緩めた団長によって打ちのめされることになる。
「驚いたね、この前とは剣の腕が段違いだ。剣の初心者が剣の扱いに慣れた中級者に変わっていたよ。しかもまだ伸び代がありそうだね」
対人戦が終わった後、そう言いながら笑っていた団長は「モビタにもっと経験を積ませておきたいところだけど、僕にも予定はあるから、しばらくお預けなのが残念だよ」と残念そうに呟いていた。
朝から行われた団長との対人戦が終わった後、ボロボロになった身体をロキ・ファミリアの治療師達に治療してもらった私は、朝食を食べた後にギルドへと向かう。
ギルドに貼り出された冒険者依頼を確認していると、都市外のファミリアであるデメテル・ファミリアからの依頼があった。
依頼書には牧場を手伝ってほしいと書かれていて、期間は数日間であるようだ。
冒険者依頼を確認しにきた他の冒険者達は、この依頼には興味がないらしい。
最近は戦ってばかりだったから、たまには穏やかな日々を過ごすのも悪くはないだろう。
手付かずで残されていたデメテル・ファミリアの冒険者依頼を引き受けることにした私は、貼り出されていた依頼書を取ってギルドで手続きをする。
その後、ロキ・ファミリアに一旦戻って武器と防具を部屋に置いてから、主神であるロキ様にデメテル・ファミリアでしばらく牧場の手伝いをしてくることを伝えておいた。
「まあ、デメテルのとこなら問題ないやろうけど、気をつけてな」
見送りまでしてくれたロキ様に、行ってきます、と言ってからホームを出た私は、都市外のファミリアであるデメテル・ファミリアの牧場へと移動。
到着した牧場でデメテル・ファミリアの団員らしき人に、手伝いに来たことを伝えると「力仕事になるけど、まずは牧草を運んでもらおうかな」と牧草運びの作業を頼まれる。
指定された場所に牧草を運んで移動させていくという作業を黙々と続けていると、Lv3のステイタスがあるので問題なく牧草運びは終わった。
次は何をすれば良いですか、と聞いてみると「じゃあ家畜の世話を教えるから一緒にやろう」と言われたので、デメテル・ファミリアの団員と一緒に家畜の世話を行っていく。
牛、豚、鶏といった家畜の世話を教えられながらやっていくと「おお、筋が良いね」と褒められたのは、ちょっと嬉しかったな。
家畜の世話が終わった後「実は畑もあるんだけど、農作業は平気かな?」と私に聞いてきたデメテル・ファミリアの団員。
別に大丈夫ですよ、と私が答えると「それなら種蒔きと収穫を一緒にやろう」と言ったデメテル・ファミリアの団員に案内されて向かった牧場の畑。
畑には大量の野菜が実っていて、全ての野菜を1人で収穫するのは難しそうだ。
「手分けして収穫していこうか」
そう言って行動を始めたデメテル・ファミリアの団員と協力して野菜を収穫していくと、なんとか大量の野菜を収穫することができた。
収穫した野菜は保存用に作られた魔石製品の箱にしまっておくらしい。
野菜の収穫が終わった後は種蒔きの作業があり、デメテル・ファミリアの団員と協力して畑に種を蒔いていく。
種をしっかりと畑の土に埋めてから水やりも欠かさず行っておくと、今回畑で行う作業は終わりであるようだ。
「手伝ってもらえたら早く終わった。ありがとう」
感謝してきたデメテル・ファミリアの団員に、毎日こんな感じですか、と聞いてみると「だいたいこんな感じ」と答えが返ってきた。
「明日は他の畑で収穫がある」
なんてことを言ってきたデメテル・ファミリアの団員が言うには、どうやら牧場にある畑は1つではないみたいだ。
「一緒に頑張ろう」
にっこり笑いながら言ったデメテル・ファミリアの団員に、そうですね、一緒に頑張りましょう、と言葉を返しておく。
それから数日間、私はデメテル・ファミリアの団員と一緒に牧場で様々な作業をしたり、牧場近くの川で一緒に釣りをやったりしながら過ごした。
決められた期限である数日間の日数が終わる日に、そういえば他の団員はどうしてるんですか、とデメテル・ファミリアの団員に聞いてみると「デメテル様も含めて重い風邪で倒れてる」と答えてくれた団員。
それなら力になれそうだと思った私は、団員に風邪で倒れているデメテル・ファミリアの面々がいる場所まで案内してもらうと私のスキルである「雪解けの癒し」で病を癒していき、治療をしていく。
私の治療が終わると、すっかり元気になったデメテル・ファミリアの面々。
「皆元気になった。お礼は何をすればいい?」
健康になったデメテル・ファミリアの面々を見ながら、喜んでいたデメテル・ファミリアの団員が私にそう聞いてくる。
デメテル・ファミリアの野菜をちょっと提供してもらえたら、それでいいですよ、と答えておくと「貴方は、とてもいい人」と嬉しそうに笑っていたデメテル・ファミリアの団員。
人手不足も解消されて、牧場の作業も手分けして行うことができるようになり、最終日に私が行ったのは家畜の世話だけだった。
作業を終わらせた私が帰り支度を整えていると、数日間一緒に作業をしたデメテル・ファミリアの団員が見送りに来てくれたようだ。
「貴方のおかげで助かった。ありがとう」
短い言葉で感謝を伝えてきたデメテル・ファミリアの団員に、私が役に立てたなら何よりです、と正直な気持ちを言っておく。
「やっぱり貴方は、いい人」
とても嬉しそうに笑っていたデメテル・ファミリアの団員に別れを告げて牧場を立ち去った私は、オラリオに戻るとロキ・ファミリアのホームへ帰ってきた。
「おっかえりぃいいいい!」
私の帰りを待ちわびていたかのように現れたロキ様が飛びついてきたので受け止めると「モビタはちゃーんと、うちを受け止めてくれるええ子やと思っとったで!」と、やたらとテンションが高いロキ様。
どうやらしばらく会えなかったのが思ったよりも寂しかったらしい。
そこまでロキ様に大事に思われていることは素直に嬉しいことだったので、嫌な気はしないな。
ロキ様と一緒にホームに入っていくと「今日はステイタスの更新もするやろ?うちの部屋まで一緒に行くでー」と、ご機嫌なロキ様に手を引かれることになる。
到着したロキ様の自室で、行われたステイタスの更新。
Lv3
力:D557
耐久:B786
器用:C675
敏捷:D564
魔力:C691
射撃:F
耐異常:H
《魔法》
【ガンスミス】
【ストリングビーム】
《スキル》
【風に愛されし者】
【樹木の友】
【竜の温泉】
【雪解けの癒し】
【誕生せしは日出ずる国】
【山の心】
【小人との友情】
【白銀の剣】
【牧場物語】
・牧場を営む者
・農作業中は、全ステイタスに超高補正
・農作物を食べる度に、全ステイタスの熟練度微上昇
・鉱石を素材とした装備を身につけている時、発展アビリティ魔防の一時発現
・装備した鶴嘴に、不壊属性を付与
・採掘作業で鉱石発見確率上昇
どうやら私には「牧場物語」と書いて「ファルマ・イストリア」と読む新たなスキルが発現していたようだ。
牧場の様々な手伝いをしたことが、このスキルが発現する切っ掛けとなったのかもしれない。
のび太関係で牧場物語と聞くと、のび太の牧場物語というゲームがあったことを思い出した。
ある日、不思議な種を見つけたドラえもんとのび太が早速種を植えてみると、種はたちまち育ち大樹と化す。
みるみる育っていく大樹と同時に突然嵐が巻き起こり、のび太達は空に吸い込まれるようにどこかへ飛ばされてしまう。
目が覚めると、のび太達は見知らぬ大樹のふもとにいたが、嵐の中で秘密道具を無くしてしまったドラえもんに頼ることも出来ず、途方にくれていた。
そんな時、心優しい少年ランチと出会ったのび太達は、此処がシーゼンタウンと言う見知らぬ町であることを知る。
ランチの提案で、のび太達は元の世界に帰る方法がわかるまで、町の人達のお手伝いをしながらシーゼンタウンで暮らすことになった。
しずかちゃんは病院、スネ夫は料理屋、ジャイアンは大工屋、ドラえもんは町長さんのお手伝い、のび太は荒廃してしまったランチの牧場を借りて、世話をすることになったが、ドラえもん達や町の人達の力を借りながら、のび太は荒れてしまった牧場を一人で発展させていく。
のび太の牧場物語は、確かそんな話だった筈だ。
私がデメテル・ファミリアの牧場で経験した家畜の世話や農作業に加えて、川で行った釣りや、以前ダンジョンで行った鉱石採掘も合わさった結果として、今回のスキルが発現した可能性は高い。
「こんなスキルが発現しようがモビタはうちの子や!デメテルのとこにはやらんで!」
そう言いながら私を抱きしめたロキ様は、誰にも渡さんと言わんばかりな顔をしていた。
ロキ様に大切に思われていることがわかって、私としては嬉しかったな。