ランクアップしてからも、レノアさんに教わりながら続けていた魔道具作成。
ドラえもんのひみつ道具であるバリアーポイントの劣化版のような効果だが、使用者の正面だけに防御壁となるバリアーを作り出せる魔道具が完成した。
魔道具でバリアーを作り出すには動力源として魔石を使って魔力を貯めておく必要があるが、下層や深層で入手できる魔石を使わなければ、バリアーを作り出すことはできないようだ。
そんな制限はあるが、様々な場面で役立ちそうな魔道具であることは確かだろう。
レノアさんに教わりながら様々な魔道具作成を続けていたが、これでようやくダンジョン探索にも使えそうな魔道具を作ることができたな。
ロキ・ファミリアの一員として団長に報告する必要はあるが、その前に、魔道具の完成品第1号を渡す相手は決めている。
魔石を入れる必要があるので、ポーチ程度にしか小型化することはできなかったが、神でも装備できる重さにしてある魔道具。
魔道具作成の師匠になってくれたレノアさんに感謝してから魔女の隠れ家を出た私は、迷わずロキ・ファミリアのホームである黄昏の館に戻ると、ロキ様の自室に直行。
完成品の魔道具をロキ様に渡しておき、使い方を説明しておくと「凄いもん作ったやないかモビタ」と驚いていたロキ様。
これで少しでもロキ様が安全になることを願っています、と正直な気持ちを伝えておくと「ほんまにモビタは、ええ子やな」とロキ様は嬉しそうに笑っていた。
「うちもモビタに渡そうと思っとったものがあるんやけど、受け取ってもらえると嬉しいわ」
そう言いながらロキ様が取り出したのは、金で作られた三日月のネックレスであり、私のスキルのことを考えて用意されたものであることは間違いない。
「極東から取り寄せた金を、前にモビタと買った金細工を作っとったおっちゃんに頼んで加工してもらった特製品やで」
笑顔でそんなことを言いながら三日月のネックレスを差し出してきたロキ様から、金で作られた三日月のネックレスを受け取った私は、さっそくネックレスを身につけてみる。
この1つのネックレスを装備するだけで、幾つかのスキルの効果により発展アビリティが複数発現するのは確実だ。
ダンジョン探索に役立つ装備品となる、三日月のネックレスを大切にしておくとしよう。
役立つからというだけではなく、主神であるロキ様からプレゼントされたものだからだ。
ありがとうございますロキ様、と笑顔でお礼を言った私に「モビタが喜んでくれたなら、うちはそれでええよ」と微笑んでいたロキ様は、とても嬉しそうにしていたな。
それから数日後、以前のステイタス更新で既にLv4にランクアップしていた私は団長に呼び出されることになり、団長の自室で「今日からきみは幹部候補だ」と団長から直々に言われることになる。
私がLv4にランクアップしたことで、ロキ・ファミリアの幹部候補となることが正式に確定となったようだ。
「きみには期待しているよ、モビタ」
笑みを浮かべてそんなことも言っていた団長は、私に期待しているらしい。
団長の期待に応えられるかはわからないが、これからも私に出来ることを頑張っていくとしよう。
その後、朝食前に団長に呼び出されていたので、まだ朝食を食べていなかった私は食堂に向かうと、今日の料理担当の人が作ってくれたサンドイッチを食べていく。
薄切りにされた塩漬け肉とレタスが挟まれたサンドイッチを食べていると、今日の料理担当の人が私に話しかけてきた。
「極東だと朝食で、前にモビタが作ってた味噌汁やおにぎりを食べるのか?」
料理担当の人からの質問に、食べるところもあるでしょうね、と答えておくと「味噌汁やおにぎりの具に、他にどんなものがあるのかモビタなら知ってるんじゃないか?」と続けて聞いてくる料理担当の人。
どうやら今日の料理担当の人は、極東の郷土料理である味噌汁とおにぎりに興味があるみたいだ。
そうですね、味噌汁だと豆腐とネギの味噌汁というものもありますよ、他にはなめこ汁や、とん汁などもあります、と様々な味噌汁の種類について答えておく。
味噌汁に使われる様々な具についても教えておき、オラリオでは馴染みがない豆腐について話してみると「豆から作られてる豆腐ならエルフにも食べてもらえるかもしれない」と料理担当の人は言っていた。
確かに豆から作られる豆腐なら、エルフでも抵抗なく食べられるかもしれない。
豆腐のみを食べるなら冷やっこや、湯豆腐といった食べ方もありますね、と詳しく教えていくと「モビタは豆腐の作り方は知らないのか?」と聞いてくる料理担当の人。
豆から作った豆乳を、海水を煮詰めて塩を取り出した後に残った「にがり」というもので固めるということくらいしか知らないですよ、と答えた私に「よし、一緒に海に行こう」と料理担当の人が言い出す。
団長に許可を取らないと駄目だと思いますよ、と言う私に「任せろ!許可取ってくる!」と言って料理担当の人は団長を探し始めた。
料理担当の人と一緒に周囲を見渡し、食堂に来ている筈である団長の居場所を確認してみると団長を発見。
朝っぱらからティオネさんに絡まれてアマゾネス料理を食べさせられている団長の目は死んでいたが、誰も近付かない団長の周囲。
邪魔をすればティオネさんに怒られることを知っているので、誰も近付かないのだろう。
あれに近付くんですか、止めといた方が良いと思いますよ、と言った私に「食への好奇心が、恐怖を凌駕するんだよ!」と言いながら団長に近付いていった料理担当の人。
「だんちょ、おぐふぁっ!」
料理担当の人が近付いて団長に話しかけようとした瞬間、ティオネさんが投げた木皿が料理担当の人の顔面にめり込んでいた。
手加減はされているようだが、Lv2の料理担当の人にとっては強烈な一撃。
それで完全に気絶した料理担当の人を回収しておき、私のスキルの「雪解けの癒し」で治療しておく。
なんてこともあったが朝食の時間も終わり、気絶から目覚めた料理担当の人は団長に許可をもらうことを諦めていないようだ。
海に行く許可をもらいに団長の自室に向かった料理担当の人は、実際に豆腐を作ってみたいと考えているのだろうな。
私も久しぶりに豆腐は食べたいので、料理担当の人が団長に許可をもらえたのなら一緒に海に行くつもりではある。
私のうろ覚えの知識で豆腐が作れるかはわからないが、試してみるのも悪くはない。
熱意が通じたのか、なんとか団長には海へ行く許可をもらえたようで「よっしゃ、行くぞモビタ」と言った料理担当の人に連れられてホームを出ることになった。
一応ギルドにもオラリオの外に出て海に行く許可を取りに行った私と料理担当の人は、少し待たされることになる。
オラリオから近くにある港街のメレンまでなら問題ないと判断されたようで、待たされた割りにはあっさりと許可されたオラリオからの外出。
メレンはオラリオの南西に位置する港街であり、オラリオからメレンまでの距離は3kmくらいで、神の恩恵を受けた者じゃなくてもそこまで大した距離ではない。
巨大な汽水湖であるロログ湖の湖岸沿いに栄えているメレンの街は、オラリオの海の玄関口であるそうだ。
海と通じる巨大汽水湖には連日数え切れない異邦の船が入港し、多くの積荷を下ろしていくが、その多くがオラリオの輸入品となる。
都市内の交易所に入る前の貿易品が、メレンには集まっていた。
大量の品を運び出せるのが海路の特徴であるが、オラリオ側の輸出品の魔石製品なども、外国の品々と入れ替わるようにメレンから海洋に繰り出していく。
つまりはオラリオにとってメレンという港街は、海洋進出の要所であることは間違いない。
到着した港街、巨大な湾と港に繋がる街の通り、往来が激しい人垣の向こうには広大な汽水湖と幾つもの船が停泊する港が見える。
「久しぶりに来たなメレンには」
懐かしいものを見るかのように、メレンの港街を見ている料理担当の人は海国出身であるらしく、極東などの島国や海国の人間は、まずメレンにやって来てからオラリオに向かうようだ。
ちなみに大陸出身の者は北方や東方の陸路からオラリオに向かうようであり、それぞれ違いがあるらしい。
メレンの港街で売られている新鮮な海の幸も気になるが、私と料理担当の人の目的は海水であり、豆腐を作る為の「にがり」を手に入れることが最優先だろう。
という訳でまずは汽水湖の水を調べてみることにした私と料理担当の人は、汽水湖の水を少量だけ掬って舐めてみる。
海水ほどではないが少ししょっぱい汽水湖の水には海水が混じっているのかもしれない。
ロログ湖の水を鍋で煮詰めて、塩が作れるか試してみたが、少量の塩しか出来ず「にがり」らしきものも少な過ぎて使える量ではなかった。
やはりちゃんとした「にがり」を手に入れるには海水が必要になるみたいだ。
汽水湖と海を繋ぐ場所まで行くには船が必要になるので、メレンの港街で交渉して小舟を貸してもらうことになる。
料理担当の人と一緒に小舟を動かして、汽水湖と海を繋ぐ場所まで向かった。
到着した目的地の海で現れた巨大なレイダーフィッシュ。
明らかに通常のレイダーフィッシュよりも強力なモンスターである巨大なレイダーフィッシュは確実に強いが、倒せないほどではないだろう。
海中で始まった巨大レイダーフィッシュとの戦い。
武器を装備していない素手の状態だと一時的に発現する剛力の発展アビリティにより、レイダーフィッシュの強烈な突進を掴んで、直撃を防ぐことはできた。
しかし突進の勢いまで止めることはできず、海中から海上を越えて空中にまで飛び出した私とレイダーフィッシュの身体。
巨大なレイダーフィッシュを掴んだ状態で、海上から空中にまで飛び出している今が好機だと判断した私は、掴んでいるレイダーフィッシュを更に空高くまで投げ飛ばす。
一時的に発現している剛力の発展アビリティにより、普段よりも力強くなっている私によって投げ飛ばされた巨大なレイダーフィッシュは、空中では身動きができていなかった。
無詠唱魔法「ガンスミス」により大口径のリボルバーを作り出した私は、スキル「心の友は音響兵器」の効果によって破壊音波をリボルバーに付与すると、破壊音波を纏わせた弾丸を連続で放つ。
連射されて撃ち放たれた破壊音波を纏う弾丸の数々が巨大なレイダーフィッシュに叩き込まれていくと、完全に砕け散ったレイダーフィッシュの身体。
レイダーフィッシュとの戦いも終わったので小舟に戻ると、料理担当の人によって目当てである海水の回収は終わっていたらしい。
私がレイダーフィッシュと戦っている間に、結構な量の海水を汲んでいた料理担当の人と一緒にメレンに戻り、鍋で海水を煮詰めていく。
大量に出来上がった塩と、それ以外の「にがり」を手に入れることに成功した私と料理担当の人は、さっそく豆乳を「にがり」で固めてみた。
数回の試行錯誤を繰り返して完成した美味しい豆腐は、とても懐かしい味がしたな。
「にがり」以外にもロキ・ファミリアの面々への土産として、メレンで新鮮な海産物も購入し、オラリオに戻った私と料理担当の人。
海産物はエルフ以外に好評で、頑張って作った豆腐は、チーズかと思われて警戒されてしまったが、豆腐には豆乳と海水から取り出した「にがり」しか使っていないことをロキ様に証明してもらうと、リヴェリアさんが最初に豆腐を食べてくれた。
ハイエルフであるリヴェリアさんが食べたのなら、と豆腐を食べていくエルフ達。
豆腐を気に入ったエルフもいたようで「また作ってほしい」と頼まれることにもなったな。
そんなことがあった翌日、定期的なステイタス更新の日が来たので、ロキ様の自室へと向かう。
上半身の服を脱ぎ、背中を晒してステイタスの更新をしてもらうと、必死に紙に更新されたステイタスを書き込んでいるロキ様は、とても大変そうだ。
「やっと書けたで、これがモビタの今のステイタスや」
Lv4
力:H126
耐久:H104
器用:H187
敏捷:H112
魔力:H191
射撃:D
耐異常:G
連射:I
《魔法》
【ガンスミス】
【ストリングビーム】
《スキル》
【風に愛されし者】
【樹木の友】
【竜の温泉】
【雪解けの癒し】
【誕生せしは日出ずる国】
【山の心】
【小人との友情】
【白銀の剣】
【牧場物語】
【恐竜との絆】
【超越存在と繋ぐ手】
【犬人との出会い】
【再会の約束】
【斉天大聖】
【心の友は音響兵器】
【獣の惑星】
【海底散歩】
・海の底で行う散歩
・水中に適応し、一定の時間までなら呼吸をしなくても水中での活動が可能
・水中での移動速度に超高補正
・水圧無効
どうやら新たなスキルが発現しているようで「海底散歩」と書いて「イポヴリキオン・ペリパトス」と読むスキルであるようだ。
海に行ったことで発現したスキルなのは間違いないが、海底と名がついているので今回は海底鬼岩城が関係しているのかもしれない。
ドラえもんのひみつ道具であるテキオー灯を用いて海の中でも問題なく行動できるようになった状態で、太平洋の海底山脈へキャンプに出かけたのび太達。
水中でも動くバギーに乗って海底世界を駆け巡って様々な冒険をすることになるが、人工知能があるバギーは優しいしずかちゃんにしか懐かなかった。
その後、海中でのび太達は、海底国家ムー連邦の軍人である海底人のエルと出会う。
最初はエルに良く思われていなかったのび太達だが、バトルフィッシュという巨大な魚型の兵器に襲われていたエルを助けたことで、心を開いてくれたエル。
それからのび太達は、滅亡した海底国家アトランティスに残されていた鬼岩城を支配する自動報復システムであるポセイドンのことも知ることになり、世界に危機が迫っていることも知った。
ポセイドンの支配下にある鬼岩城はアトランティスが開発した鬼角弾という大量破壊兵器の発射基地であるらしい。
もしポセイドンによって鬼角弾が発射されてしまえば、海底世界だけではなく地球上に甚大な被害が及び、全ての生物が死に絶えてしまうだろう。
のび太達は鬼角弾の発射を阻止するため、アトランティスのあるバミューダ海域へと向かうことになる。
アトランティスを囲むバリアーを突破するため、のび太達はドラえもんのひみつ道具で地下に潜り、バリアーの向こう側へと通り抜けていった。
勇気あるしずかちゃんが自分を囮にして拉致させることで敵に鬼岩城まで道案内させるという作戦を提案。
その作戦によって遂にのび太達は鬼岩城へと辿り着く。
報復システムであるポセイドンの前に引き出されたしずかは、アトランティスへの攻撃など無く、ただの海底火山の噴火で自然現象だと必死に訴えたが、原始的なコンピュータであるポセイドンには、自然現象を理解する知能が存在しておらず、説得することはできなかった。
無数の鉄騎兵相手に奮戦するが追い詰められていく仲間達。
満身創痍のドラえもんが爆弾を手に現れたが、ポセイドン破壊を果たすことなく倒れたドラえもん。
駆け寄ったしずかちゃんの流した涙がドラえもんの四次元ポケットに垂れた時、ポケットの中に逃げ込んでいたバギーが飛び出す。
しずかちゃんを泣かせたポセイドンを倒す為、捨て身でポセイドンに特攻したバギーは、ポセイドンと共に爆発。
完全にポセイドンが破壊されると鉄騎兵たちは完全に機能を停止し、鬼岩城も崩壊。
ムー連邦の人々は、のび太達とエル、その身を犠牲にしてまでポセイドンを破壊したバギーを、この世界を救った勇者として永遠に語り継いでいくことを誓った。
バギーの部品であったネジを大切そうに持っていたしずかちゃんもきっと、バギーのことを忘れないだろう。
海底鬼岩城は、そんな話だった筈だな。
恐らくは私がバリアーを作れる魔道具を作ったことと、海で魚型の敵に襲われたことが「海底散歩」のスキルが発現した切っ掛けとなった可能性が高い。
「海底散歩」の水中に適応する効果は、ひみつ道具のテキオー灯が関係しているのは間違いなさそうだ。
私がスキルについて考えていると「スキルが増えると紙にステイタス書き出すのも、ほんまに大変になってきたで」と言ってきたロキ様。
今回は私のスキルで頭を抱えていたりはしないロキ様だが、だいぶ私のスキルが増えたことで、紙に書くのが大変だったらしい。
確かに私のスキルはかなりの数になっているので、紙に書くのは大変だろう。
そんなロキ様には申し訳ないが、まだ私のスキルは増えそうな気がする。
これからもロキ様にはステイタスを紙に書いてもらうことになると思うが、今後も頑張ってもらうしかない。
どんな紙にも書きやすいボールペンのような魔道具でも作って、ロキ様にプレゼントしておけば、少しは負担が軽減されるかもしれないが、それよりもタイプライターのような魔道具を作ったほうが更に役立ちそうな気がするな。
私が次に作る魔道具は、それにしておくとしよう。