「久しぶりに模擬戦でもしようかモビタ」と団長から誘われて向かった中庭。
久しぶりに行う団長との模擬戦で、私が使う武器は団長と同じくヴァルマーズで作られた棒であり、かなりの強度を持つ。
頑丈なヴァルマーズの棒に、私のスキル「斉天大聖」の効果で不壊属性まで付与すれば、棒を破壊することは不可能に近い。
少なくとも団長との模擬戦で、私が持つ棒が折れることはないだろう。
始まった模擬戦で、棒を槍のように使う団長が連続で繰り出す突きを、棒で受けていく。
小柄な小人族とは思えない程に力強い突きの威力は、並みではない。
放たれる連突は凄まじく速く、棒で受ける一撃一撃に重さを感じた。
流石はLv6といったところだが、今度は此方から攻めてみるとしよう。
棒を両手で握り、まるで剣を振るうかのように扱った私は、白銀の剣士に到達した剣技で団長を攻撃。
危うげなく棒で此方の攻撃を防御する団長だが、私の動きに驚いているのは間違いなさそうだ。
これまでとは段違いに技量が高い白銀の剣士の剣技は、団長にとっては予想外なものだったらしい。
剣も使える団長であるからこそ、私の剣の技量が団長を追い抜いていることに気付いたようで、驚きを隠せない様子の団長。
そんな様子の団長が相手でも油断することなく攻撃を続け、スキル「斉天大聖」の効果の1つで棒を伸縮させることができる私は、棒による突きを放つ瞬間に棒を伸ばす。
凄まじい速度で伸びた棒の勢いも乗った突きを、手に持つ棒で防御した団長だったが、完全には受け止めきれずに後方に押しやられた団長の身体。
その間に棒を縮ませて扱い易い大きさに戻した私は団長に接近すると、渾身の力を込めた棒を真正面から振り下ろした。
持っているのは剣ではないが、相手を叩き斬るつもりで振り下ろした棒の一撃。
それを棒で受けて止めようとした団長だったが、私の棒による一撃を受けた団長の棒は、まるで斬撃を受けたかのように切断されることになる。
あまりにも予想外な出来事が起こり、流石にこれは異常事態ということで中止になった団長との模擬戦。
切断された棒は断面も滑らかで、棒で叩かれて折れたという訳ではなく、完全に斬られているようだ。
棒で棒を斬るという普通では不可能なことが出来てしまったのは、おそらく「夢幻の剣士」の不可能を可能とする効果によるものだろうと推測することはできたが確証はない。
何ができるかを正確に把握していない状態で模擬戦を行うのは危険だと判断した団長は「スキルの検証が終わるまで、模擬戦は禁止だね。誰に誘われても断るんだよ」と私に命じた。
団長の判断は間違いなく正しいと思うので、スキルの検証が終わるまで模擬戦は禁止にしておいた方が良いだろう。
人間を相手にスキルの検証をするのは危険なので、ダンジョンでモンスターを相手に試すのが良さそうだ。
という訳で、スキル「夢幻の剣士」の不可能を可能とする効果で何ができるかを確認する為にダンジョンに潜った私は、思いついた様々なことを試してみる。
まずは持ってきていたヴァルマーズ製の棒で、モンスターを斬ることが可能か試してみた。
結果としては、斬ろうと思った時だけ棒でもモンスターを斬れるという結果となり、どうやら私の意思が重要みたいだ。
今度は剣でモンスターを斬る時、モンスターの身体を傷つけずに魔石だけを斬ることが可能か試してみると、モンスターの身体を切断することなく通り過ぎた剣は魔石だけを斬り裂く。
魔石を斬られたモンスターが灰となることは変わらないが、狙ったものだけを斬ることも可能らしい。
次は魔石を斬らずにモンスターの身体だけを斬ることが可能か試してみたが、これも成功。
魔石が存在する胸部から横一文字に斬り裂かれたモンスターは死亡したが、胸部の魔石は残っていて、斬ろうと思ったものだけを斬ることが出来ていた。
次は棒も剣も使わず、モンスターを傷つけずに、素手で魔石を抜き取ることが可能か試してみる。
ミノタウロスの胸部に手を突き入れて、掴んだ魔石を引き抜くと、ミノタウロスの胸部には傷1つ無い。
それでも魔石を引き抜かれたモンスターは生きてはいられないようで、あっという間に灰となるミノタウロス。
素手でモンスターから魔石を引き抜くことも可能だと理解できたが、巨大過ぎるモンスター相手だと魔石を引き抜くのは難しい。
魔石を引き抜くのは、ある程度の大きさのモンスターだけにしておこう。
モンスターを倒した時、魔石以外にも身体の1部であるドロップアイテムが入手できることがあるが、ドロップアイテムを先に奪うことも不可能ではないかもしれないな。
宝石樹に実る宝石の実を守る宝財の番人であるグリーンドラゴン。
中層で階層主を除けば最強のモンスターなグリーンドラゴンだが、今の私なら1人でも倒せる相手だ。
グリーンドラゴンには、私のスキルの検証に付き合ってもらうとしよう。
直感を信じて、グリーンドラゴンに接近すると、発達したグリーンドラゴンの脚部の骨を瞬時に抜き取る。
抵抗もなく容易く抜き取ることが可能だったグリーンドラゴンの骨。
私の直感が正しければ、この骨がドロップアイテムである筈だ。
身体の1部を抜き取られたグリーンドラゴンは、まだ生きているが動きが鈍っていた。
脚部の骨を抜き取られて瞬時に回避をすることができない状態となっているグリーンドラゴンを、巨大化させた「アダマスの剣」で一刀両断。
真っ二つになったグリーンドラゴンは身体だけが斬られていて、魔石には傷1つない。
身体から魔石を引き剥がすと灰になるグリーンドラゴンの身体。
最初に抜き取ったグリーンドラゴンの骨は灰にならずに残っているので、この骨がドロップアイテムで合っていたみたいだな。
グリーンドラゴンのドロップアイテムの骨は、武器の素材になるのかもしれない。
このドロップアイテムの使い道を考えておくとしよう。
そんなことを考えながらダンジョンを出て、入手した魔石や宝石の実を換金した私は、ロキ・ファミリアのホームへと戻った。
今回ダンジョンで検証した不可能を可能にするスキルの効果について団長にも報告してみたが「うん、凄いね。凄いけど非常時以外は使わないようにしておいてね」と団長に言われることになる。
やはり棒でモンスターを斬ったり、魔石以外だけを斬ることが可能だったり、素手で魔石やドロップアイテムを抜き取ることができるのは悪目立ちするので、普段はやらない方が良いようだ。
団長の言葉に従って、普段は使わずに戦っておくが、非常時には遠慮なく使わせてもらうとしよう。
そう決めた私は団長の部屋を出ると、夕食を食べる為に食堂に向かった。
今日の夕食はビーフシチューであり、よく煮込まれた肉と野菜はスプーンで簡単に切れるようになっているほど柔らかい。
パンとビーフシチューを食べていると、近付いてきたアイズさんが「明日一緒にダンジョンに行きませんか?」と誘ってきたので、構いませんよ、と答えて了承しておくと、アイズさんは喜んでいたな。
翌日、アイズさんと一緒にダンジョンに行くと中層にまで向かうことになったが、グリーンじゃないグリーンドラゴンと戦うことになる。
身体の色が白いグリーンドラゴンは、間違いなくグリーンドラゴンの亜種だった。
通常のグリーンドラゴンよりも確実に強いアルビノグリーンドラゴンは、風の付与魔法を使ったアイズさんでも1人では倒せない相手だろう。
1人で突撃していこうとするアイズさんに、貴女は1人じゃないですよ、と伝えた私は、アイズさんと共にアルビノグリーンドラゴンと戦っていく。
風を魔法で付与したアイズさんの剣、スキルで破壊音波を付与した私の剣、互いの剣が互いの隙を補い合うようにアルビノグリーンドラゴンへと叩き込まれていくと、絶え間無い攻撃に苦しんだアルビノグリーンドラゴンが口を開いて火炎を放射しようとした。
私は瞬時に無詠唱魔法で作り出した大口径リボルバーに破壊音波をスキルで付与して引き金を弾き、連続で弾丸を放つ。
大口径リボルバーで狙った場所は、口を開いたアルビノグリーンドラゴンの口内。
放たれた弾丸にも勿論破壊音波が付与されていて、アルビノグリーンドラゴンの口内から何発も叩き込まれた弾丸はアルビノグリーンドラゴンの内部を破壊する。
内部を破壊されたダメージで、今すぐ火炎を放射することはできなくなったアルビノグリーンドラゴンに接近した私とアイズさんは、斬撃の嵐でアルビノグリーンドラゴンを斬り刻んだ。
完全に動きが鈍ったアルビノグリーンドラゴンの身体の1部である足を「アダマスの剣」で斬り落とし、アルビノグリーンドラゴンの体勢を崩した私の背後から飛び出したアイズさん。
剣による一撃でアルビノグリーンドラゴンの首を斬り落としたアイズさんによって、終了したアルビノグリーンドラゴンとの戦い。
魔石を抜き取ると灰になったアルビノグリーンドラゴンもドロップアイテムで骨を残したが、アイズさんは「わたしは、いりません」と言っていたので、私が貰うことになった。
ドラゴンのドロップアイテムを嫌がるアイズさんの背後に、幼女なアイズさんが両腕でバッテンを作って嫌がっている姿が見えたような気がしたが、それは気のせいだろう。
通常のグリーンドラゴンのドロップアイテムよりも強度と質が明らかに高いドロップアイテムを手に入れてしまったが、使い道は今度考えておけばいい。
ダンジョンを出てから魔石を換金した後に、アイズさんと一緒にじゃが丸くんを買いに行く。
やっぱり今日も大量のじゃが丸くんを食べていたアイズさんは、じゃが丸くんが大好きであるようだ。
好きなものがあるということは、きっと悪いことではない。
ロキ・ファミリアのホームにアイズさんと一緒に戻り、それぞれの部屋に戻った私とアイズさん。
それから数日後、定期的なステイタス更新の為に私はロキ様の部屋へと向かった。
ロキ様の部屋に入ると、ベッドに座っているロキ様が「こっちやで!」と手招きしてくるので近付いてみると飛びついてきたロキ様。
とりあえずロキ様を受け止めて抱きしめておくと「うちを受け止めてくれるのはモビタだけやわ」と言いながらロキ様は頬をすり寄せてくる。
「モビタの体温感じとると落ち着くんや」と言うと、私に身体を密着させてきたロキ様は嬉しそうに笑っていた。
既に団長から伝えられているかもしれないが、一応私からもロキ様に不可能を可能にするスキル効果の検証結果を話してみると「フィンからも聞いとったけど、やっぱり普通じゃないスキルだったようやな」と納得したように頷いていたな。
「まあ、モビタなら悪用せんから大丈夫やろ」と笑ったロキ様は、私のことを信じてくれているみたいだ。
「ほな、そろそろステイタスの更新しよか」
ロキ様に促されてベッドにうつ伏せで横になり、むき出しな背中にロキ様の神血が垂らされていく。
手早く行われていったステイタスの更新。
更新された私のステイタスをタイプライターのような魔道具で、紙に写していくロキ様。
「写し終わったで」
そう言ったロキ様から手渡された紙を確認。
Lv4
力:F396
耐久:F374
器用:E457
敏捷:F382
魔力:E461
射撃:D
耐異常:F
連射:H
《魔法》
【ガンスミス】
【ストリングビーム】
《スキル》
【風に愛されし者】
【樹木の友】
【竜の温泉】
【雪解けの癒し】
【誕生せしは日出ずる国】
【山の心】
【小人との友情】
【白銀の剣】
【牧場物語】
【恐竜との絆】
【超越存在と繋ぐ手】
【犬人との出会い】
【再会の約束】
【斉天大聖】
【心の友は音響兵器】
【獣の惑星】
【海底散歩】
【神樹の実】
【夢幻の剣士】
【封印の剣】
・斬り分け、封じる剣
・装備している剣を用いることで相手を傷つけることなく、分断、分離を可能とする
・装備している剣を突き刺した相手を封印することも可能
今回も新しいスキルが発現していたが「封印の剣」と書いて「スフラギダ・スパスィ」と読むスキルは、確実に劇場版のふしぎ風使いの封印の剣が関係しているスキルだろう。
ふしぎ風使いで、マフーガという白い龍のような風の怪物を、斬り分けて分離させて封じた封印の剣。
確かマフーガから斬り分けられた1つがフー子だった筈だ。
それ以上はふしぎ風使いの映画を見ていないので詳しくは知らないが、私が斬ろうと思ったものだけ斬れるようになったことと、風使いと共に白いドラゴンと戦って身体の1部を斬り分けたことが影響して発現したスキルなのかもしれない。
「またとんでもないスキルが発現しとるやないか!」
頭を抱えているロキ様は続けて「あかんわ、これ神も封印できるやろ!知られたらまずいで済まんやつやん!」と言うとベッドに倒れこんでしまった。
「あかーん!」と言いながらベッドの上で左右に転がっていたロキ様がベッドから落ちそうになったので受け止めておくと、ちょうどロキ様をお姫様だっこするような状態となる。
流石にお姫様だっこされた状態のままは嫌かもしれないと思って、ロキ様をベッドに降ろそうとすると「しばらくこのままでいてくれたら、うちは頑張れそうな気がするんや!しばらく降ろさんといてーな!」と言ってきたロキ様は、お姫様だっこを続けてほしいらしい。
ロキ様が嫌ではないなら、しばらくお姫様だっこを続けてみるとしよう。