今月の更新は、これが最後になります
到達階層の更新をする為、52階層まで移動していくロキ・ファミリアの面々。
少数精鋭ということで、私以外の面々は第1級冒険者だけしかいないが、以前から交流があるアイズさんや団長が居るので、気まずさはそこまでない。
怪我が完治していても本調子ではないティオナさんは団長に待機を命じられていて、今回の階層更新には参加していなかった。
ティオナさんは「あたしも行きたーい!」と言って不満そうにしていたが、ロキ・ファミリアの治療師達に「安静にしていて下さい!」と言われてテントに押し込まれていたな。
そんなことがあったことを思い出しながら51階層を下りて、到着した52階層。
これで到達階層を更新することができたが、団長は次に来た時のことを考えて、ある程度の地図作成をしておくつもりのようだ。
「全員駆け足で移動しよう、下の階層から砲竜の階層無視の砲撃が来る筈だ」
そう言い出した団長の言葉に従って、全員が立ち止まらずに進んでいく中で、ラクタさんからマッピングや測量のやり方を学んでいる私が地図作成を団長から頼まれることになり、用意していた紙に52階層の地形や通路を書き込んでいくと、少しずつ完成していった52階層の地図。
私が持つボールペンのような魔道具のペンは、ほんの僅かな精神力をインクに変えることが可能で、精神力が尽きなければインク切れになることはない。
道中で現れるモンスターは団長達によって問題なく倒されていき、銀色のカドモスのように強力な亜種と遭遇することは無かった。
「戦闘は僕達に任せて、モビタはマッピングに集中してほしい」と団長に言われた私は、淀みなく魔道具のペンを動かして紙に52階層の地図を書き込んでいく。
行き止まりの広間や分岐する通路、迷路のような構造の52階層。
しばらくマッピングを続けていると、様々な通路や広間と地形などに加えて、53階層に繋がる場所も書き込まれた地図が完成。
結局1度も階層無視の砲撃が来ることはなく「おかしい、静かすぎる」と言っていた団長は警戒を続けていた。
一応階層無視の砲撃を警戒して、駆け足で移動しながら地図を団長に見せてみると「よく出来てるね。これなら問題なく使える地図になるよ」と言ってもらえたので、私のマッピングに問題はなかったみたいだ。
地図作成が完了したと判断した団長は「異常事態が発生しているみたいだけど、今回の目的は達成したから、50階層まで戻ろうか」と全員に指示を出す。
全員が団長の指示に従って50階層まで戻ると、ちょうど食事の準備をしている最中だったロキ・ファミリアの団員達。
まだ食事は完成していないようだが、大鍋で煮られているのは香草と木の実に肉果実であり、それを煮込んでスープを作っているところらしい。
粗末なものになりがちなダンジョン内の食事であるが今回のスープは、ごちそうと言っていいものだろう。
団長に「到達階層の更新に参加した者は各自、好きなように休んでいて構わないよ」と言われた面々は、それぞれが自由に行動することになる。
スープを作る大鍋から少し離れたところには「まだかなー」と言いながら大鍋を見ていたティオナさんが居たが、そんなティオナさんの腹は空腹を訴えて音を鳴らしていた。
具材を煮込み始めたばかりなスープが完成するまでは、しばらく時間がかかりそうだ。
あまりにもお腹を空かせているのか、激しく鳴り響くティオナさんの腹の音。
スープが完成するまでの繋ぎにはなるかと思い、私がこっそり持ってきていた携帯保存食を提供してみると「これ美味しいよモビタ!」と喜んでくれたティオナさん。
細かく刻んで濃い目に味付けした鶏肉と食用茸を炊いた米で包んで丸めて玉にしたものを、油で揚げて長持ちするようにした携帯用保存食。
器とお湯があれば何処でも食べられるそれを、木皿に入れて沸かしたお湯をかければ1食が完成。
先輩団員達にも好評だった携帯用保存食は、ティオナさんにも好評なようだ。
スープが完成するまでの間に、私が持ってきていた携帯用保存食3つが全てティオナさんのお腹に収まることになったが、まだティオナさんには食欲があるようである。
失った血を補給する為に、ティオナさんの身体は多くの栄養を求めているのかもしれない。
しっかりと具沢山なスープも飲んだティオナさんは、ようやくお腹一杯になったみたいで、満足そうな顔で「またねーモビタ」と私に言うとテントに戻っていく。
ティオナさんがテントに戻り、私が自分のテントに戻る途中で、近付いてきたティオネさんから「あの馬鹿の世話してくれてありがとねモビタ」と感謝の言葉を言われた。
たいしたことはしていませんが、と言った私に「貴重な食料をあの馬鹿に提供してくれてたでしょう」と言うティオネさん。
どうやらティオネさんは、私がティオナさんに携帯用保存食を提供していたところを見ていたらしい。
「あの馬鹿は、モビタのことを気に入ってるみたいだし、これからもあの馬鹿の相手をしてもらえると助かるわ。それじゃあね」
そう言って立ち去っていったティオネさんが向かう先にあるテントは、ティオネさんに用意されたものではなく、団長の為に用意されているテントだったな。
ティオネさんは、何か団長に用があるのだろう。
何の用だろうかとは思ったが、特に気にすることなく自分のテントに戻った私は眠ることにした。
翌日の朝、到達階層の更新が終わったロキ・ファミリアは、ダンジョンを出る為に移動を開始。
何故か疲れた様子の団長に率いられて、階層を上がっていくロキ・ファミリアの面々。
とても機嫌が良さそうなティオネさんは絶好調といった様子で、ククリナイフを振るってモンスターを解体していく。
何か良いことでもあったんですか、とティオネさんに聞いてみると「団長の半裸を見ることができたのよ!」と大興奮した様子で答えたティオネさん。
「団長の半裸よ!半分裸なのよ!良いもの見れたわ!わたしの記憶には永久に団長の半裸な姿が保存されたわよ!」
続けて捲し立てるように言ってきたティオネさんは、大興奮を隠せていない。
そんなティオネさんの鼻からは若干血が垂れていたりもするが、モンスターからは攻撃を受けていないので、興奮し過ぎたことで鼻血が出ているみたいだ。
特定の相手への愛に目覚めたアマゾネスは凄いことになると言われていたが、確かにある意味凄いとは思うな。
そしてそんなアマゾネスのティオネさんに好かれている団長が、疲れていた様子だった理由も何となく察することができた。
恐らくは何らかの理由で半裸になっていた団長は、その姿をティオネさんに目撃されて、迫り来るティオネさんと攻防を繰り広げることになったのだろう。
半裸を見られること以外は阻止したようだが、それで疲労した団長が疲れていたのは間違いない。
明らかに疲れている団長の負担には、ならないように気を付けよう。
そう考えた私は、自分に出来ることを頑張ることにした。
物資を運ぶ団員達を守りながら、団長の指示に逆らうことなく迅速に行動した私は、指示通りの早撃ちでモンスターを一掃する。
怪物達の宴で大量に現れたモンスター達の胸部にある魔石を狙って、無詠唱魔法「ガンスミス」で作り出したリボルバー2丁に「心の友は音響兵器」のスキルで破壊音波を付与して24連射。
リボルバーの射線上に人が居ないことは確認していたので問題はなく、破壊音波を付与された弾丸は魔石を完全に破壊。
灰となったモンスター達が残すドロップアイテムも放置して、更に上の階層を目指す。
休憩を挟みながら、ひたすら上へと移動していくと、ようやく18階層に到着した。
団長の指示によると、今日1日は安全階層の18階層で身体を休めて、明日になってからダンジョンを出ることになるらしい。
私は先輩団員達と一緒に野営の準備をした後、迷宮産の果実を採取に向かってみると、様々な果実を発見。
特に女性に人気な雲菓子が大量に手に入ったのは大収穫と言えるだろう。
それに加えて少量ではあるが水晶飴まで採取することができたのは幸運だったな。
この水晶飴は、ロキ様へのお土産にしておくのも良いかもしれない。
食事の時間になった時、ロキ・ファミリアの面々に採取した雲菓子を提供してみると、久しぶりの甘味に喜んでいた女性陣。
採取した果実を団員達全員に行き渡るように提供していくと、あっという間に無くなってしまったが、団員の数が多いロキ・ファミリアなら仕方がないことだ。
迷宮産の果実が、少しでもダンジョン内の食事の足しになったなら良かったと思う。
食事も終わり、後は寝るだけとなった団員達は、私も含めてテントに戻ると就寝。
何処でも直ぐに寝れる私は、充分な睡眠を取ることができた。
翌日の朝、テントを片付けてから18階層を出発するロキ・ファミリア。
上へと進み、目指す場所はダンジョンの外。
特に問題なく進んだ先で、ダンジョンを出ることができたロキ・ファミリアの遠征部隊。
ロキ・ファミリアのホームである黄昏の館に、遠征部隊が帰還したところで、全力疾走で近付いてきたロキ様。
「おっかえりいいいいい!」
嬉しそうな声で、そう言いながら近付いてきたロキ様は遠征部隊の面々に避けられていたが、私は避けるようなことはしないで、飛びついてきたロキ様を優しく受け止めた。
「モビタは、ほんまにええ子やなあ。うちをしっかりと受け止めてくれて嬉しいわ」
とても嬉しそうに私に抱きついたロキ様は、私から離れることはない。
「到達階層は更新することができたし、ディアンケヒト・ファミリアからの冒険者依頼で頼まれていたカドモスの泉水も、要求量を手に入れることができたよロキ」
「それならギルドに顔出すのと、ディアンケヒト・ファミリア行くので、別れた方がええやろな。誰が向かうか選ぶのは任せたで、フィン」
私に抱きついたままの状態で団長からの報告を受けたロキ様は、真面目な主神の顔をして報告された内容について話しながらも身体は私に抱きついていたな。
「それで、ロキは、いつまでモビタに抱きついているつもりなのかな」
流石にロキ様の今の状態に問題があると思ったのか、ロキ様に問いかける団長。
「モビタが許す限り、いつまでもや!モビタと触れ合うのも久しぶりなんやからええやないか!うちはしばらくモビタから離れるつもりはないで!」
堂々と言い切ったロキ様は、やっぱり私から離れるつもりはないようだ。
その後、今日はロキ様を私から離れさせることを諦めた団長は、遠征に参加した部隊にそれぞれ指示を出していたが、ユニコーンの角は私が持っていても構わないらしい。
しばらくの間、ロキ様に抱きつかれたままだった私は、黄昏の館に戻ってきてから殆どの時間をロキ様と一緒に過ごす。
「今日の夜は綺麗な月が見れるらしいで、せやからモビタと一緒に月見したいんやけど」
なんてことを言ってきたロキ様に、構いませんよ、一緒に月見をしましょう、と私が言うとロキ様は物凄く嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
その日の夜、中庭でロキ様と一緒に月を見たが、雲のない空には綺麗な月が見える。
月が綺麗ですね、と思わず言った私に「せやねえ」と頷いていたロキ様。
自分が言った言葉で思い出したが、あなたを愛しています、という英語を、月が綺麗ですね、と訳した人が居たな。
何で今思い出してしまったんだろうと不思議に思ったが、あまりにも月が綺麗だったからかもしれない。
そんなことがあった日の翌日、遠征に参加した面々のステイタス更新が順番に行われていて、最後に私の順番が回ってくる。
上半身だけ服を脱ぎ、背中を露にすると、ロキ様によって行われていったステイタスの更新。
タイプライターのような魔道具によって紙に写されていった私のステイタス。
「紙に写し終わったで!」
そう言ったロキ様から手渡された紙には、びっしりと私のステイタスが写されていた。
Lv4
力:D556
耐久:D524
器用:C607
敏捷:D532
魔力:C611
射撃:D
耐異常:F
連射:G
《魔法》
【ガンスミス】
【ストリングビーム】
《スキル》
【風に愛されし者】
【樹木の友】
【竜の温泉】
【雪解けの癒し】
【誕生せしは日出ずる国】
【山の心】
【小人との友情】
【白銀の剣】
【牧場物語】
【恐竜との絆】
【超越存在と繋ぐ手】
【犬人との出会い】
【再会の約束】
【斉天大聖】
【心の友は音響兵器】
【獣の惑星】
【海底散歩】
【神樹の実】
【夢幻の剣士】
【封印の剣】
【月光の狼】
・月の光を宿す狼
・月光を身体に宿すことも、身体から放つことも可能
・任意発動で狼の獣人へと変身することが可能
・狼の獣人となって月光で獣化した際、状態異常自動回復効果も常時発動
・脚力に高補正
新たに発現していたスキルは「月光の狼」と書いて「セリノーフォス・リュコス」と読むスキルであるようだ。
今回のスキルは狼人のベートさんと多少関わったことと、月を見て月光を浴びたことが切っ掛けとなって発現したスキルだろう。
この「月光の狼」のスキルは、月光灯というひみつ道具が元になっているスキルなのは間違いない。
懐中電灯のような形をしたひみつ道具の月光灯の光を浴びると狼に変身することが可能となり、変身した状態なら狼と会話することもできる。
ドラえもんでは野生の狼と接触する為に、のび太が月光灯で狼となっていた。
その為、発現した「月光の狼」はこのような効果があるスキルになったのだろうな。
そんなことを私が考えていると「なんかランクアップも出来るようになっとったけど、ステイタスが極まるまでランクアップは保留でええんかな?」と聞いてきたロキ様に、ステイタスが極まるまで頑張りますから保留でお願いします、と答えておく。
どうやら深層での様々な戦いが、ランクアップを可能としたようだが、ステイタスが極まるまでランクアップするつもりはない。
「ランクアップは保留になると思っとったけど、このスキルはなんやねん!狼の獣人の狼人に変身できるようになっただけやなくて、このスキルだけで狼人なら獣化まで出来るようになっとるやないか!」と、私の新しいスキルに頭を抱え始めたロキ様。
「あかんわ、ついでに他の狼人も獣化させることが出来るやろ、これ」
そう言った後に続けて「獣化した時に発動する状態異常自動回復効果は、ええ効果やけど。月光で獣化せえへんと発動しないんやったら狼人になって獣化したモビタやないと発動しない効果やな」と言うロキ様は、やっぱり頭を悩ませていたな。
しばらく頭を悩ませていた様子のロキ様だったが、私の近くに近付いてくると「狼人になったモビタが見てみたいんやけど」と言い出す。
別に減るものではないので「月光の狼」のスキルで狼人に変身してみると「カッコええやないか!ええやん!」と、ロキ様が物凄く喜んでくれた。
まあ、ロキ様が喜んでくれたのなら良かったと思えるから、このスキルも悪いものではないだろう。