今年最後の更新になります
皆様、よいお年を
団長の指示で私を含めた手が空いている団員達でロキ・ファミリアのホームにある倉庫を掃除することになり、掃除用具を用意する面々。
まずは倉庫にある物品を全て中庭に出してから倉庫内の掃除をするようで、倉庫と中庭を往復して物品を運ぶ団員達。
中庭が物品の数々で埋め尽くされそうになった頃、ようやく倉庫が空になったらしく、倉庫内の掃除が始まった。
埃やごみを箒で集めて、ちり取りに入れた後は、ごみ袋に入れる作業を何度か行う。
しばらく掃除をしていなかったのか凄まじい量の埃とごみが存在していたが、全てごみ袋に詰めることができたので、倉庫内の埃とごみの掃除は終わりとなる。
膨らんだごみ袋をごみ置き場に片付け、今度は濡らした雑巾で倉庫内の床や壁を拭いていった。
床や壁を拭いた雑巾が真っ黒になったが、拭き掃除をした倉庫内がかなり綺麗になっていたのは間違いない。
掃き掃除と拭き掃除も終わり、倉庫内の掃除が終われば、次は物品の確認の作業となるようだ。
中庭に出した倉庫内の物品を1つずつ確認していくと、監督役の団長が「これは廃棄でいいかな」と言った物品が幾つかあり、分けられた物品。
中庭で必要な物品と不用な物品は分けられ、必要な物品は綺麗にしてから倉庫内に戻し、不用な物品は中庭の端に避けられている。
それなりの量となっている不用とされた物品の中には、中途半端に使い込まれた中古の剣や槍に盾なども含まれていた。
中古ではあるがまだ使える武器や防具でも、遠征で役に立たない品なら、今のロキ・ファミリアにとっては、不用な物品であるらしい。
もう使うことのない中古の武器や防具は置き場所に困るような物品であり、処分して倉庫のスペースを確保した方が有益だと、団長は判断したのだろう。
このままでは廃品となる様々な物品だが、まだ使える武器や防具を廃棄する場合は、悪用されないように完全に破壊してから捨てなければいけないので、少々手間がかかるな。
手間をかけて大量の中古品を破壊して廃棄するよりも、少しでも売ってヴァリスに変えた方が良いような気がした私は、団長から許可を取って不用品を譲ってもらうことにした。
様々な品が売り買いされている交易所なら、中古品な武器や防具でも売れるかもしれない。
バックパックに大量の中古の武器と防具を詰めて背負い、向かう場所はオラリオの南西部、西のメインストリートと南西のメインストリートに挟まれた第6区画に存在する交易所。
真っ当な市場で売るような品ではない中古の武器や防具を売るなら、一般市民から冒険者まで誰もが商売可能な蚤の市地帯が良さそうだ。
フリーマーケットのようなことが可能な特設市へと移動した私は、特設市の一角で外套を広げると、その上にバックパックから出した武器や防具を並べ、露店を始めてみた。
冒険者達も蚤の市には足を運んでいるらしく、見知った顔や見知らぬ顔も、私が売り出している商品を買いに来る。
集まってきた冒険者達に、飛ぶように売れていく様々な武器や防具達。
「なあ「魔弾」このサーベルは幾らだ?」
そう聞いてきた犬人の男性冒険者に、それなら6万ヴァリスで良いですよ、と答えた私に「買った!」と言って6万ヴァリスを手渡してきた犬人の男性冒険者にサーベルを渡す。
「このショートソードが欲しいのだが」
ショートソードを指差してきたエルフの男性冒険者に、これは3万ヴァリスですね、と値段を伝えると「では代金だ」と3万ヴァリスを支払うエルフの男性冒険者。
「この槍良いね、幾らかな?」
槍の値段を聞いてくるヒューマンの男性冒険者に、7万ヴァリスで、どうでしょうか、と私が言うと「もう一声!」とヒューマンの男性冒険者は値切ってくる。
しばらくヒューマンの男性冒険者は値切ってきたが、ちょっとずつ値段を下げていき、最終的に6万ヴァリスにすると、ヒューマンの男性冒険者は槍を購入していった。
その後も様々な冒険者達が客として訪れて、武器や防具を品定めしては、気に入った物を買っていく。
外套の上に商品として置いてある武器や防具が少なくなる度に、バックパックから取り出して追加していったが、そろそろ持ってきた物品が無くなりそうだ。
深層まで向かう大規模な遠征では使えなくても、中層や下層までなら充分に通用する武器や防具を買っていくのは、Lv2の上級冒険者達が多い。
完全に全ての商品が無くなるまで、客足が途絶えることがなかった私の露店。
最後の客に商品を売り、外套を畳んでバックパックにしまっていると近付いてきたアマゾネスの女性。
「あんたの一晩は、幾らなんだい?」
なんてことを聞いてきたアマゾネスの女性に、そういう商売はやってないので、幾ら払われてもお断りですよ、それに私は結婚していますからね、と婚約指輪を見せながら答えておく。
「既に誰かのものだと思うと、余計に興奮してくるじゃないか」
そんなことを言い出すアマゾネスの女性は、自身の唇を舌で舐めると、獲物を狙う獣のような眼光で此方を見てきた。
目の前のアマゾネスの女性が、多少強引な手段を使ってでも、私を捕まえてしまおうと考えているのは間違いない。
完全に私は狙われているが、襲ってくるアマゾネスの相手をした場合、戦って勝っても面倒なことになりそうだな。
とりあえず私は手早くバックパックを背負うと、アマゾネスの女性と戦うことなく蚤の市を出る為に全速力で移動。
走って移動している最中、お面を売っている露店を発見した私は、お面を1つ購入して被ってみる。
スキル「獣の惑星」の効果の1つで、何かで顔を隠している時だけは正体がバレない変装になる私は、お面を被ったことで誰にも正体がバレることはなくなった。
これで急いで蚤の市地帯を離れなくても、アマゾネスの女性に私が見付かることはないだろう。
変装をしている今なら少し他の露店を覗いてみてもいいかもしれないと思った私は、試しに露店巡りをしてみることにしたが、蚤の市地帯の特設市には様々な露店が存在しているみたいだ。
本当にそれは売れるんだろうか、と思ってしまうような商品が売られている露店もあり、本当に何でも売られているフリーマーケットのような特設市。
見ているだけでも賑やかで楽しいが、何か良いものがないか確認してみるのも悪くはない。
それから様々な露店を見て回ったが、これといって欲しい商品は見付からず、そう簡単に掘り出しものは見つからないか、と私が考えていた時、確かに悲鳴が聞こえた。
誰かの悲鳴が聞こえた場所に向かってみると、倒れている犬人な男性冒険者にすがりついているヒューマンの女性冒険者が悲痛な声を上げて助けを求めている場面に遭遇。
倒れているのは、先ほど私がサーベルを売った犬人の男性冒険者であるようだ。
治療師として倒れている男性冒険者を見てみると腹部にナイフで刺されたような刺し傷があり、男性冒険者を刺した刃物には毒が塗られていたのも間違いなさそうだな。
症状から診て毒の種類は、ポイズン・ウェルミスの毒である可能性が高い。
下層のレアモンスターであるポイズン・ウェルミスの厄介な毒が身体に回りかけているなら、腹部の傷を塞ぐ前に毒の治療をする必要がある。
ポイズン・ウェルミスの毒の解毒には、通常ではポイズン・ウェルミスの体液を使った解毒剤が必要だ。
しかし、全ての毒を無毒化するユニコーンの角があるなら、ポイズン・ウェルミスの毒でも解毒することが可能だろう。
私は常に持ち歩いているユニコーンの角を取り出すと、倒れている男性冒険者の腹部に先端を突き刺す。
体内の毒を吸い出すように黒い粒子がユニコーンの角の先端を黒く染めると、ポイズン・ウェルミスの毒が浄化され、黒く染まったユニコーンの角の先端が輝白色に戻っていった。
毒の治療が終わったところで、スキル「雪解けの癒し」を用いて刺し傷の治療も行っておくと、容態が落ち着いた男性冒険者を見て「ありがとう!」と私に感謝をしてきた女性冒険者。
一応治療は終わったが、犬人の男性冒険者が何故こんな状態になっていたのかが知りたいところだ。
という訳でヒューマンの女性冒険者に詳しい話を聞いてみると、覆面で顔はわからなかったようだが、私よりも身長の高い相手に男性冒険者が刺されたのは間違いないらしい。
犬人の男性冒険者をナイフで刺すと同時にサーベルも奪って逃げていった相手を追うことよりも、刺された犬人の男性冒険者を心配していたヒューマンの女性冒険者。
ヒューマンの女性冒険者は犯人を強盗かと思っているようだが、単なる強盗なら、用意するのも簡単ではないポイズン・ウェルミスの毒まで使う訳がないと私は思う。
毒で苦しませて殺すなんて考えるのは、相手を憎んでいるからだろうな。
犬人の男性冒険者かヒューマンの女性冒険者の知人、または顔見知りの冒険者が犯人の可能性が高そうだ。
スキル「月光の狼」を使用して狼人になった私は、犬人の男性冒険者に残る匂いを嗅ぎ、何か手掛かりがないか探ってみる。
狼人の嗅覚で、ポイズン・ウェルミスの毒の匂いと、犬人の冒険者の匂いを感じ取ることができた。
とはいえ犯人も獣人の嗅覚を警戒していたようで、犯人らしき存在の匂いを感じることはない。
恐らく犯人は消臭効果のある何かを使って、一時的に自身の匂いを消していた可能性がある。
それが魔道具か消臭剤によるものかはわからないが、今のところ犯人の手掛かりとなるものは無さそうだ。
そんなことを考えていると此方に近付いてくる複数人の冒険者達。
全員が犬人の男性冒険者とヒューマンの女性冒険者の仲間であるそうで、安心している様子の女性冒険者だったが、私には犯人候補が現れたとしか思えないので、安心はできないな。
とりあえず、現れた複数人の冒険者達を確認してみて、それぞれの冒険者の匂いをバレないように嗅いだ私は、犯人らしき存在に目星がついたので、揺さぶりをかけてみることにした。
複数人の冒険者達に、貴方達が此処に来るまでどんなことをしていたのか、当ててみせますよ、と宣言した私は、まず左端の冒険者から順に話しかけていく。
貴方は此処に来るまでにじゃが丸くんの醤油バター味を食べましたが、食べた際に溢して服を汚してしまっていますね、そしてその後、軽くビールでも飲んでほろ酔いの状態でしょう、と言った私に「当たってる」と驚く左端の冒険者。
醤油バター味の食べものでじゃが芋の香りがするのは、今のオラリオにはじゃが丸くんしかありません、そして貴方の口から微かに香るビールの匂いで、わかりました、と言う私に「なるほど」と頷いていた左端の冒険者は、犯人ではない。
次は左から2番目の冒険者に、お面で隠した顔を向けた私は、そうですね、次の貴方は、娼館から朝帰りした後にシャワーも風呂も浴びないで寝て、起きたところで交易所に慌てて来たといったところでしょう、と言っておく。
「何でわかるんだ?」と不思議そうにしていた左から2番目の冒険者。
そんな2番目の冒険者に、麝香と女性の香りが貴方からしました、そして貴方のその寝癖だらけの髪は、髪を整える時間が無かったことを表しています、と教える。
「匂いや寝癖でそこまでわかるのか」と2番目の冒険者は驚いているようだ。
娼館で遊んで朝帰りした後に寝坊して、寝癖だらけな頭な2番目の冒険者も犯人ではないだろう。
最後に残った左端から3番目の冒険者に顔を向けた私は、モンスターの毒を塗ったナイフで、あの人を刺して、武器を奪って逃げたのは貴方ですね、と犯人だと確信している相手に告げた。
「俺は上級冒険者だが、ポイズン・ウェルミスの毒なんて用意できないぜ」
他の冒険者達の行動を言い当てた私に動揺していたようで、ボロを出した犯人。
私は、モンスターの毒と言っただけで、ポイズン・ウェルミスの毒とは一言も言っていませんが、と言う私に「クソがッ!」と言いながら逆上した犯人が襲いかかってくる。
しかしLv2の冒険者に負けるほど私は弱くはなく、あっさりと返り討ちにすることができた。
殺したりはしていないが手足はへし折っておいたので、自分で動いて逃げることはできないだろう。
とりあえず捕まえた犯人はガネーシャ・ファミリアに引き渡して、他の冒険者と一緒に捕まえた事情を説明しておく。
今回の殺人未遂の事件の犯人である冒険者は、しばらく牢屋に入れられることになるらしい。
今回の事件を解決した私をガネーシャ様は「うむ、まるで名探偵のようだな」と言っていた。
そんなことがあったが、蚤の市地帯で露店巡りを続けていると、まるで鹿撃ち帽のような帽子を発見。
これは幾らですか、と聞いてみると「1000ヴァリス」と答えた露店の店主。
それくらいなら買えるな、と思った私は、即決で1000ヴァリスを支払い、購入した鹿撃ち帽のような帽子を被ってみる。
鹿撃ち帽を被ったまま、様々な露店を見て回っていると虫眼鏡を見つけた私は、シャーロック・ホームズ・セットみたいなものがあれば他にも購入してみようと考えて、露店巡りを続けた。
鹿撃ち帽や虫眼鏡にステッキと喫煙用パイプと、シャーロック・ホームズ・セットのような品を全て揃えることができて満足した私は、蚤の市地帯を離れてロキ・ファミリアのホームに戻っていく。
ちょっとした好奇心を満たす為の買い物もたまには悪くない。
翌日、定期的なステイタス更新の日がやってきた。
ロキ様の部屋に向かうと、私が最後の更新だったようで「モビタが最後みたいやな」と言ったロキ様は嬉しそうな顔で「全員の更新が終わったなら、モビタとイチャついてても問題ないやろ」と笑う。
「ほな、更新始めるで」
私の背中にロキ様の神血が垂らされて、ステイタスの更新が行われていき、書き換えられていくステイタス。
手慣れた様子のロキ様によって、手早く終わったステイタスの更新。
タイプライターのような魔道具を使ったロキ様は、更新された私の背中のステイタスを紙に写していった。
「写し終わったで、全ステイタス極まっとったから、もうランクアップしてもええと思うわ」
Lv4
力:S999
耐久:S999
器用:S999
敏捷:S999
魔力:S999
射撃:D
耐異常:F
連射:G
《魔法》
【ガンスミス】
【ストリングビーム】
《スキル》
【風に愛されし者】
【樹木の友】
【竜の温泉】
【雪解けの癒し】
【誕生せしは日出ずる国】
【山の心】
【小人との友情】
【白銀の剣】
【牧場物語】
【恐竜との絆】
【超越存在と繋ぐ手】
【犬人との出会い】
【再会の約束】
【斉天大聖】
【心の友は音響兵器】
【獣の惑星】
【海底散歩】
【神樹の実】
【夢幻の剣士】
【封印の剣】
【月光の狼】
【死が別つまで】
【名刀電光】
【名のある探偵】
・名探偵となる
・武器を装備していない時、発展アビリティ拳打の一時発現
・バリツが使用可能
・鹿撃ち帽を被っている間は、頭が冴え渡る
全ステイタスが極まった私には新たなスキルとして「名のある探偵」と書いて「シェリングフォード」と読むスキルが発現していた。
「シェリングフォード」とはシャーロック・ホームズという名前が決まる前の仮の名前だった筈だ。
今回の「名のある探偵」のスキルは間違いなく、ひみつ道具のシャーロック・ホームズ・セットが元になったスキルだろう。
事件の犯人を見つけたことと、鹿撃ち帽に虫眼鏡とステッキに喫煙用パイプを手に入れたことも影響して、この「名のある探偵」のスキルが発現したのかもしれない。
「なんかまた、ようわからんスキルが発現しとるんやけど、ほんまにどないなってんねん」
遠い目をしていたロキ様は、私の発現するスキルのことがよくわからないみたいだ。
まあ、何故こんなスキルが発現するのか、ドラえもんを知らないロキ様には理由がわからなくても仕方がないな。
「とりあえず、ランクアップはしとくやろ。モビタがLv5で発現できる発展アビリティは、魔導、抜刀術、疾走の3つやな」
そう言ってきたロキ様に、発現するのは疾走でお願いします、と頼むと「了解や!待ちに待ったモビタのランクアップやで!」とテンション高めなロキ様。
Lv5
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
射撃:D
耐異常:F
連射:G
疾走:I
「おめでとーモビタ!これで第1級冒険者の仲間入りやな!」
やっぱりテンションが高いロキ様は、物凄く喜んでいて「今夜は祝杯やー!」とはしゃいでいる。
ロキ様に喜んでもらえたなら私も嬉しいので、ランクアップして良かったと思えた。
私がランクアップしたことを喜んでくれたロキ様と、今日はずっと一緒に過ごしておくとしよう。
ロキ様の部屋でロキ様と酒を飲んでいると、酔って寝てしまったロキ様が私に抱きついたまま離れなかったが、引き剥がしたりはしない。
眠ったまま寝言で「大好きやでモビタ」と言ってきたロキ様に、私も貴女が大好きですよ、と伝えておく。
大好きな相手と一緒に過ごせるだけで、とても幸せな気持ちになれると知れたことは、きっと悪いことではない筈だ。