今年もよろしくお願いします
遂にLv5になった私は、ランクアップしたことを団長に報告してみると「これで今日からモビタもロキ・ファミリアの幹部だね」と喜ぶ団長。
「モビタの為に用意していた個室があるから、とりあえず部屋にあるモビタの持ち物を、今の2人部屋から移動させようか」
そんなことを言ってきた団長の指示に従った私は、用意されていた幹部用の個室に、自分の持ち物を移動させていく。
ちょっとした引っ越しのようだなと思いながらも持ち物を移動させていき、本棚やベッドに金庫なども運んだ私は、今まで過ごしていた2人部屋から私の持ち物を全て移動させた。
新しい私の部屋となる幹部用の個室なら、2人で1室を使っていた時よりも広いスペースを1人で使うことができそうだ。
運ぶ為に本棚から抜いていた本を本棚に戻していき、運んできた持ち物をそれぞれの場所へ置いていくと、殺風景だった部屋が徐々に私の部屋へと変わる。
部屋作りも完了したところで、団長から呼び出された私は、執務室でギルドに提出する書類の作成を手伝うことになった。
しっかりと書類仕事ができる幹部がロキ・ファミリアには、あまり居ないようであり、これまでは団長と副団長が殆どの書類を書いていたようだ。
以前私が提供したタイプライターのような魔道具で、団長と副団長の書類仕事は楽になったみたいだが、人手を増やすことができるなら増やしておきたいと考えていた団長と副団長。
タイプライターのような魔道具の使用方法を団長と副団長に教えた私が、書類仕事もできることを知っていた団長と副団長は、私が早く幹部にならないかと考えていたようである。
私が幹部となったことで書類仕事を任せられる相手が増えたことに喜んでいた団長と副団長は、手早くギルドに提出する書類を作成した私に、他の書類仕事も回してくるようになった。
回ってきた全ての書類仕事を終わらせた私に「モビタが幹部になってくれて助かったよ」と言ってきた団長。
団長の言葉に「確かにモビタには助けられているな」と頷いた副団長は「無理はしていないか、モビタ」と私を心配してくれる。
そこまで大量という訳ではありませんでしたし、この程度なら問題ないですよ、と答えた私に「そうか、無理はしていないようだな」と言うと副団長は微笑んだ。
「今日は笑えるくらい余裕があるんだね、リヴェリア」と笑みを浮かべながら言った団長に「そう言う、お前もな、フィン」と返した副団長。
どうやら団長と副団長は、笑う余裕も無いほど大量の書類仕事をしたことがあるみたいで、今回は笑う余裕がある程度の量だったらしい。
これからも私は団長や副団長と一緒に書類仕事を行うことになりそうだが、それも幹部としての仕事なのかもしれないな。
執務室を出て、新たな自室である幹部用の個室に戻った私が、室内でベッドに座って本を読んでいると部屋の扉がノックされる。
本を閉じて隣に置き、どうぞ、入ってください、と私が言うと扉が開いて「お邪魔するで」と言いながらロキ様が部屋に入ってきた。
「此処がモビタの新しい部屋なんやね。幹部やから個室なのは当然やな」
室内を見渡しながら言ったロキ様は、ベッドに座る私の膝の上に座って対面の状態になると、にっこりと笑う。
「人前では、あんまりイチャつかんようにフィンに釘刺されとるけど、個室ならこうしても問題ないやろ」
そう言って笑顔のまま両手両足を使って、全身で抱きついてきたロキ様は、離れることはない。
此方もロキ様を抱きしめていると、私の首筋に吸い付くようなキスを何度もしてきたロキ様。
「モビタは、誰にも渡さへんよ」と言いながら、私の首筋にキスをしてくるロキ様に、お返しとして私もロキ様の首筋にキスをする。
私に首筋にキスをされて「んんっ」と声を漏らすロキ様の首筋に何度もキスをしていくと、ロキ様の顔は真っ赤になっていた。
「モビタのえっち」
なんてことをロキ様に言われてしまったが、貴女だけにしかしませんから許してください、と私が言うと「ならええよ」と嬉しそうに笑うロキ様。
そんなことがあった日の翌日、スキル「名のある探偵」で使用可能になったバリツを実際に使って確かめてみることにした私は、ダンジョンに潜ってモンスター相手にバリツで戦ってみた。
日本柔術のような動きでモンスターを投げることが可能なバリツで、様々なモンスター達の頭部を壁面や地面に容赦なく叩きつけて倒してから魔石を抜き取り、ダンジョンを進む。
バリツは対人戦に向いている武術だが、モンスター相手に使えない訳ではなく、特に身体が人型のモンスターには、かなり有効に使える武術だ。
スキルの効果で、武器を装備していない時に一時的に発現する剛力と拳打の発展アビリティは、バリツを更に強力なものに変える。
様々な投げ技だけではなく、関節を極める技なども存在するバリツは、技の引き出しがそれなりに多い。
殺してしまっても問題のないモンスター相手に中層の24階層で様々な技を試していると、珍しいモンスターであるモス・ヒュージの強化種と遭遇。
通常種のモス・ヒュージと違う点は、苔に覆われた全身に木の根が鎧の骨格のように張り巡らされているところであり、2メートルはある大きな身体を持つ強化種のモス・ヒュージ。
苔の身体を持っているモス・ヒュージは、素手のままで倒すのは難しいと判断した私は、腰のベルトに固定してある鞘から「白木」を引き抜く。
刀を構えた私に強化種のモス・ヒュージは、手に持っていた天然武器の斧を投げつけてきた。
回転しながら飛ぶ天然武器の斧を、容易く「白木」の刃で両断した私を見た強化種のモス・ヒュージは、戦闘ではなく逃走を選び、大きく地を蹴って逃げ出す。
大きな身体の割りには素早く逃げていく強化種のモス・ヒュージを追いかけていると、壁面から大量のモンスターが生み出される怪物達の宴が発生。
大量のモンスターが現れたところで立ち止まった強化種のモス・ヒュージは、全身の至るところを小さく隆起させると、凄まじい量の尖った種子を発射してくる。
上下左右を縦横無尽に通路の壁を跳ね返り、様々な角度から襲いくる種子の跳弾。
数十発以上も放たれた不規則な軌道のそれを、私は手に持つ「白木」で斬り落としていく。
スキル「名刀電光」により、刀剣の斬撃が届く範囲なら見なくても知覚して把握することが可能な私であれば、飛び交う種子の弾丸を全て見切ることが可能だった。
止まることなく振るう「白木」の刃で、迫り来る種子の弾丸を斬り裂き続けていると、更に放たれる追加の種子が視界を埋め尽くす。
Lv5にランクアップしていなければ、スキルで高補正がかかっていても、全てを斬って防ぐことができなかったかもしれない攻撃。
それでも今の私なら問題はない。
迫る全ての種子を見切り、刀身が霞む勢いで加速した私の身体が放つ斬閃は、種子を残らず両断した。
連続で大量に放たれた種子の弾雨を斬撃の嵐で散らした私とは違って、モス・ヒュージの種子を防ぐすべが無かったモンスター達の身体に撃ち込まれた種子。
モンスター達の傷口に埋まった種子からは蔦が生え、恐らくは体力を養分に成長していく姿が見える。
体内に寄生する宿り木のような植物の種子を撃ち出す攻撃手段を持つ強化種のモス・ヒュージは、逃がさずに倒しておいた方が良さそうだ。
種子の弾丸を目眩ましにして逃げ去っていた強化種のモス・ヒュージを追いかけた先で、大きな苔の身体を発見。
しかし直ぐには近付かず、無詠唱魔法「ストリングビーム」を放ち、本体であるかどうかを確かめる為に「ストリングビーム」を巻きつけて締め付けると崩れた苔の身体から周囲に放たれる種子。
身代わりの分身に罠を仕込んでいたあたり、強化種のモス・ヒュージは知能がかなり高いらしい。
探し回って再び発見した苔の身体の近くには、身体から蔦を生やした冒険者達が倒れていて、冒険者達は強化種のモス・ヒュージに鞄を奪われていた。
下層から中層に上がってきた冒険者達が持つ鞄を奪い、中身の魔石を喰らって更に強化された強化種のモス・ヒュージ。
瞬時に膨張した身体の苔が竜鱗のように尖り、全身を覆う木の骨格が伸びて、モス・ヒュージの手足の指先まで根を這わせていく。
黄色だった眼が赤く染まり、より強力な存在となった強化種のモス・ヒュージは、地に倒れる冒険者を片手に掴むと、冒険者を盾にしながら此方にゆっくりと近付いてきた。
胸部を盾にしている冒険者で隠していた強化種のモス・ヒュージは、自分自身の弱点も理解しているみたいだ。
まだ生きている冒険者達を盾に使えば、此方が攻撃しにくいことも理解している強化種のモス・ヒュージの知能は、間違いなく高いだろう。
それでも私が出せる全力の速度を知らない強化種のモス・ヒュージが、捉えきれない速度で疾走した私は、瞬時にモス・ヒュージに接近。
強化されたモス・ヒュージの腕を素早く「白木」で斬り落とすと、翻した「白木」の刃にスキルで破壊音波を纏わせ、モス・ヒュージの胸部を深々と斬り裂いた。
「心の友は音響兵器」のスキルで破壊音波を纏った「白木」の破壊力は並みではない。
斬撃と破壊音波で魔石すらも破壊された強化種のモス・ヒュージの身体が灰となり、冒険者達の身体に生えていた蔦も灰と化して消える。
本体のモス・ヒュージが消滅したことで、寄生する宿り木のような植物も消滅したようだ。
種子を撃ち込まれた傷口自体は冒険者達の身体に残っていたので、一応「雪解けの癒し」のスキルで治療はしておく。
倒れていた冒険者達は蔦に体力を吸われたことで、かなり消耗していたが、なんとか動くことはできるらしい。
動くことはできてもモンスターと戦うことはできそうにない冒険者達を私が護衛して、なんとか全員でダンジョンを脱出することができた。
感謝する冒険者達と別れてロキ・ファミリアのホームに戻り、幹部用の個室に帰ってきた私は、とりあえず「白木」の手入れをしておく。
「白木」の刃に付着していた汚れを布で拭き、磨いていると輝きを取り戻した刃。
輝く「白木」の刃に満足して、早めに眠ることにした私は、ベッドに横になると素早く就寝。
ダンジョンで強化種のモス・ヒュージと戦うことになった日の翌日、定期的なステイタス更新の日となったので、私はロキ様の部屋へと向かう。
ロキ様にステイタスを更新してもらうと、タイプライターのような魔道具を使ったロキ様が、紙に私のステイタスを写してくれた。
「これがモビタの今のステイタスやな」
Lv5
力:H145
耐久:H126
器用:H157
敏捷:H134
魔力:H169
射撃:D
耐異常:F
連射:G
疾走:I
《魔法》
【ガンスミス】
【ストリングビーム】
《スキル》
【風に愛されし者】
【樹木の友】
【竜の温泉】
【雪解けの癒し】
【誕生せしは日出ずる国】
【山の心】
【小人との友情】
【白銀の剣】
【牧場物語】
【恐竜との絆】
【超越存在と繋ぐ手】
【犬人との出会い】
【再会の約束】
【斉天大聖】
【心の友は音響兵器】
【獣の惑星】
【海底散歩】
【神樹の実】
【夢幻の剣士】
【封印の剣】
【月光の狼】
【死が別つまで】
【名刀電光】
【名のある探偵】
【寄生浄化】
・宿りしものを浄めて祓う者
・寄生する様々なものを、自身や他者の身体から排除することが可能
・魔法「ガンスミス」で弾丸の代わりに真空ソープを放つ特殊な魔法銃の作成が可能となる
私の新たなスキル「寄生浄化」と書いて「パラシトス・カタルシス」と読むスキルは、間違いなく銀河超特急が関係するスキルだ。
銀河超特急に登場した敵のヤドリという生物は、人間やロボットに寄生して、自在に操る能力を持っていた。
ヤドリの弱点となる真空ソープは光線銃のような見た目をしているが石鹸を撃ち出すようになっているお風呂用具であり、当たれば全身を泡で覆う真空ソープの効果で、人に寄生したヤドリだけを殺すことができる。
最終的にはボスのヤドリを真空ソープで倒したのび太によって、終わったヤドリとの戦い。
寄生する宿り木のような植物の種子を放つモス・ヒュージを倒したことが切っ掛けとなり、銀河超特急でヤドリを倒した真空ソープが出せるようになるスキルが発現したのだろう。
寄生する様々なものを身体から排除できる効果は役立つが、精神力がある限り、何度でも真空ソープを使える効果も身体を洗う時には役立ちそうだ。
「真空ソープって何やねん」と頭を悩ませていたロキ様に、泡石鹸のようなものですよ、と伝えておくと「ちょっと試してみたいんやけど」と言い出すロキ様。
試しに「ガンスミス」で特殊な魔法銃を作り出してみると、光線銃のような形をしていた特殊な魔法銃からは、弾丸ではなく真空ソープが出る。
真空ソープが出る魔法銃は他者に渡せるようで、ロキ様に渡してみると「面白そうやから、ちょっと風呂で試してみるけど、モビタも一緒にどうや」とロキ様が聞いてきた。
裸のロキ様を見たら我慢できそうにないんで、遠慮しておきます、と私が答えると「モビタのえっち」と言ってきたロキ様は顔を真っ赤にしていたな。
まあ、私の正直な気持ちはロキ様に伝わったみたいなので、良しとしておこう。