今回は4600文字くらいになりました
ティオナの借金返済も兼ねた資金調達の為にダンジョンに行っていたアイズさん達。
ダンジョンから帰ってきたアイズさん達がステイタスを更新したようだが、単独でウダイオスを倒したアイズさんはLv6へとランクアップしたらしい。
アイズさん達はダンジョンで花のモンスターを操るテイマーのような存在とも戦ったようで、赤い髪のテイマーが第1級冒険者相当の強敵であるのは間違いないそうだ。
冒険者としては上澄みである第1級並みの敵の存在に、もっと強くならなければいけないとアイズさんは考えたみたいで、Lv6になってからも武神であるタケミカヅチ様に技術を教わっていたアイズさん。
そんなある日、ランクアップしたことによる身体のズレを早めに解消したいアイズさんから「模擬戦してくれませんか?」と頼まれることになった私は、快く了承しておく。
洗練されていくアイズさんの剣技を、模擬戦という形で間近で見ることになった私は、着実にアイズさんが強くなっていると感じた。
オリハルコンで作られた「デスペレート」とアダマンタイトで作成された「アダマスの剣」が刃を交わせる度に激しく鳴り響く金属音。
不壊属性を宿す「デスペレート」と私のスキルにより不壊属性を付与された「アダマスの剣」は打つかりあっても火花を散らすことはなく、剣身が磨り減ることもない。
Lv6の身体能力で振るわれるアイズさんの剣。
銀色の剣を閃かせて斬撃を繰り出すアイズさんの剣を受け止め続ける。
少しずつ動きが良くなってきていたアイズさんは、ランクアップしたことによる身体のズレが解消されてきているようだ。
ロキ・ファミリアのホームである黄昏の館の中庭で、剣を振るい、刃を打ち合わせている私とアイズさん。
斬撃の応酬は更に激しさを増し、込められている力も上がり、より鋭く、より素早い斬撃が繰り出されるようになっていった。
常人では視認が不可能な速度で振るわれていく剣が繰り出すのは斬撃の嵐。
暴風のようなアイズさんの怒濤の斬閃を受け止め、逸らし、弾き返していく。
縦横無尽に移動しながら斬撃を放つアイズさんに対し、私はその場を動くことなく全ての攻撃を容易く捌いた。
アイズさんの身体のズレが完全に解消され、思いっきり剣を振るえるようになったところで、そろそろ模擬戦を終わりにすることにした私はアイズさんの剣を大きく弾き上げ、その隙にアイズさんの首もとに剣の切っ先を突き付けて模擬戦を終わらせる。
戦いは終了し、互いに鞘に納めた剣。
「模擬戦をしてくれてありがとうございました。おかげで身体のズレもなくなったみたいです」
そう言って頭を下げてきたアイズさんは、思いっきり身体を動かせたことでスッキリした顔をしていたのは間違いない。
中庭でアイズさんと話していると現れたティオナが「アイズとモビタ此所に居たの、一緒にご飯食べよー!」と言ってくる。
確かにお腹は空いていたのでご飯を食べたいところだが、私は魔法を使って試したいことがあったので、中庭に残ろうとした。
すると私が魔法で何をするのか興味津々なアイズさんとティオナも中庭に残ると決めたみたいだ。
「【出会いと別れ】【様々な大冒険】【これまで僕達が歩んできた道のりを示そう】」
開始した【シネマティッククリエイト】の詠唱。
「【時を超えて、世界を超えて】【今ここに僕達は居る】」
詠唱により高まる魔力によって、魔法の発動が近付いてく。
「【出会ってきた全てを】【今、創造の力に変えて解き放つ】」
終了した詠唱、後は魔法名を唱えるだけだ。
「【シネマティッククリエイト】」
発動した魔法により、形成されたのは魔界大冒険に登場した「北風のテーブルかけ」という道具。
一見するとただのテーブルかけにしか見えないものだが、食べたいものが何でも出てくるという素晴らしい道具である。
アイズさんとティオナの食べたいもの、山盛りのじゃが丸くんと厚切りステーキが出てきた「北風のテーブルかけ」に「魔法の料理!」と驚きながらも喜んでいた2人。
「北風のテーブルかけ」で飲食物なら食べたいものが何でも出てくるというなら、食べもの系の道具なら出せるのではないかと考えて、実験してみた。
その結果、銀河超特急に登場した「チューイングピザ」が入った容器を「北風のテーブルかけ」で出すことに成功。
「チューイングピザ」は外見がまるでマーブルチョコのようだが、サラミ味のそれは1粒でお腹が膨れる未来の携帯食料だ。
一定時間が過ぎて【シネマティッククリエイト】で出した「北風のテーブルかけ」が消えても「チューイングピザ」は残っていたので実験は成功だろう。
翌日、ランクアップによる身体のズレが完全に解消されたアイズさんはいつものようにダンジョンに行ったらしい。
それからは、ほぼ毎日ダンジョンに行くアイズさん。
私は自室で剣の手入れを行っていたが、ロキ・ファミリアの団員に呼ばれて、ロキ様が待つ場所にまで向かうと、そこにはディオニュソスの姿もあった。
ロキ様が言うには、どうやら24階層に向かっているアイズさんの力になってほしいようで、ディオニュソスの背後に控えていたフィルヴィスという女エルフも一緒に向かうようだ。
間違いなくクロのディオニュソスをロキ様は、まだ泳がせておくつもりのようである。
とりあえずディオニュソス・ファミリア団長のフィルヴィスが神酒に酔っている状態か確認しておこうと考えた私は、スキル【名医鞄】を使用してフィルヴィスの状態を確認してみた。
視認しただけで相手の状態を確認することが可能な【名医鞄】のスキル。
すると、フィルヴィスが普通のエルフではなくエルフの怪人であり、胸部に魔石があることも確認できてしまったが、驚きを顔に出すことはない。
エルフと怪物が混ざったような存在であるフィルヴィスは、神酒には酔っていないので、ディオニュソスとは共犯である可能性が高そうだ。
それからレフィーヤさんも加えて24階層に向かうことになったが、自尊心の強そうなエルフの外見をした怪人のフィルヴィスは、何故か此方をチラチラと見てきた。
あまりにも此方を見てくるので、何か私に用ですか、とフィルヴィスに問いかけてみると「い、いや今日はいい天気だと思ってな」と誤魔化すように言ってきたが現在はダンジョンの18階層であり、特に天候は関係ない。
誤魔化し方が下手くそな人だな、とは思ったが、エルフの怪人が人間ではないとするなら、私のスキル【飼育大臣】の人間以外の生物に好かれやすくなる効果が発揮されている可能性がある。
やたらとフィルヴィスに見られたりもしながら、ちょっとした会話をしたりして、ダンジョンを移動していった私達。
24階層で狼人に変身した私に驚きながらも、じっと私を見ていたフィルヴィスに、レフィーヤさんが困惑していた。
狼人の嗅覚で、24階層の食料庫へと続いているアイズさんの匂いが確認できた私は、フィルヴィスとレフィーヤさんを連れて食料庫へと移動。
道中で現れたモンスターを倒し終えると、打ち解けたのか距離感が縮まっていたフィルヴィスとレフィーヤさん。
食料庫への道を閉ざす緑壁の門をスキル【飲料変化】でジュースへと変えて、侵入した先に存在した大空洞。
ローブの集団と花のモンスターに攻囲されている冒険者パーティを発見した私は、スキルで食人花を全てジュースへと変え、無詠唱魔法【ガンスミス】で形成したリボルバーでローブの集団に弾丸を叩き込んだ。
2丁の拳銃による早撃ちでローブの集団を全員気絶させた後、白ずくめの男に首を掴まれていたヘルメス・ファミリアの団長を助けておく。
ヘルメス・ファミリアの面々に団長のアスフィさんを預け、白ずくめの男と対峙した私は鞘から剣を引き抜き、構えた。
地を蹴り、白ずくめの男へと接近しながら振り下ろす白銀の剣。
私が振り下ろす剣を両腕を交差して受け止めようとした白ずくめの男。
容易く白ずくめの男の両腕を断ち斬った白銀の剣を閃かせ、男の膝から下も斬り落としておく。
四肢を失い地に倒れた白ずくめの男は「馬鹿なっ!彼女に愛されている身体が容易く斬り裂かれるなどっ!」と言いながらもがいていた。
両腕と両足を失ったわりには元気だな、と思いながら白ずくめの男が顔に装着していた骨の面を外すと、露になった男の顔。
男の顔を見て、フィルヴィスとアスフィさんが反応したが、どうやら白ずくめの男はオリヴァス・アクトというLv3の闇派閥の冒険者であったらしい。
「オリヴァスは死者であった筈」と言うアスフィさん。
一応、オリヴァスの状態を【名医鞄】で確認してみたが、胸部に魔石が存在する人間の怪人ということが確認できた。
もがくオリヴァスの腹に足を乗せて動きを強引に止めた私は、オリヴァスの胸部を少し斬る。
そうしてオリヴァスにはどんな魔石が埋まっているのか確認してみたが、食人花と同じ極彩色の魔石が埋まっているようだ。
その後、ペラペラとよく喋るオリヴァスから引き出せた情報によると、人を怪人に変えた存在と「オラリオを滅ぼす」ことを目的としている存在がいることが把握できた。
知りたいことは知れたので、オリヴァスをどうしようかと考えていると大空洞の壁面が爆砕して、傷だらけの赤髪の女性とアイズさんが現れる。
どう見てもLv6のアイズさんが優勢で、赤髪の敵を圧倒しているのは間違いない。
そう時間もかからずに赤髪を倒しそうなアイズさんに、援護は必要無さそうだ。
そんなことを考えていた最中、現れたのは灰色の髪をした女性。
明らかにオリヴァスよりも格上な存在である灰色の髪をした女性を見て「そんな、まさか」と顔を青ざめさせたアスフィさん。
【名医鞄】で確認したところによると、胸部に魔石が存在するあの女性も人間の怪人であるのは確実だ。
それなら敵である可能性が高いと判断して、私は油断なく剣を構えた。
黒いドレスのような衣服を着用し、瞼を閉じている女性が口を開く。
「【福音】」
凄まじい速度で放たれた魔法の一撃が私の腹部に直撃し、後方へと大きく吹き飛ばされた私の身体。
スキルで音に耐性があるLv6の私でなければ、死んでいてもおかしくはない威力があった高威力の魔法。
全身がバラバラになるような音の魔法の衝撃で、動かしにくい身体を動かしてハイ・ポーションを飲み、ふらつきながら立ち上がった私をフィルヴィスとレフィーヤさんが支えた。
灰色髪の女性は、最低でもLv7並みな相手であるのは確かだろう。
地に倒れているオリヴァスの胸部から魔石を引き抜いた灰色髪の女性は、赤髪へと魔石を投げ渡す。
オリヴァスの魔石を喰らった赤髪は強化されようだが、赤髪も灰色髪も戦いを続けるつもりはないらしい。
宝玉を回収し、食料庫の柱を破壊して退くことを選んだ赤髪と灰色髪の怪人。
生き埋めとなる前に退避することになった私達とヘルメス・ファミリアは、食料庫から脱出。
「厄介なことになりました」と言っていたアスフィさんが言うには、最後に現れた灰色髪の怪人は、Lv7であった静寂のアルフィアという相手だったそうだ。
Lv7のアルフィアが怪人となり、更に強化されているとすれば、そう簡単に勝てる相手ではない。
スキルで音に耐性がある私以外が怪人となったアルフィアの魔法を喰らえば、一撃で死んでしまう筈だ。
やはり音に耐性がある私がアルフィアと戦うしかないだろう。
アルフィアと戦えるように、私はもっと強くならなければいけないな。