本日2回目の更新になります
私の新たなスキル【黄金甲虫】の効果の1つで、一定範囲内に存在する同恩恵の眷族のステイタスが強化される効果があるが、それによって強化されるのはロキ・ファミリアの眷族達だけとなるようだ。
それでも随分と効果があったようで、普段よりも強くなっていたロキ・ファミリアの面々により、驚異的な速度でダンジョンを進むことができた。
到着した50階層で野営を行う為、テントの設営が行われる最中、ベルくんとミノタウロスの戦いを見ていたロキ・ファミリアの幹部達は落ち着きがなく動き回っている。
居ても立っても居られないといった様子の幹部達に、戸惑う他の団員達。
ベルくんの冒険を目撃した若い幹部達は、身体を動かしていないと落ち着かないみたいだ。
私は私で、テントの設営を手伝っておき、遠征が開始される前に沢山用意しておいた「チューイングピザ」を携帯食料だと説明して、欲しいと言う相手が居れば配って渡していた。
「うむ、これは美味いな」
受け取った「チューイングピザ」を食べて、笑みを浮かべたヘファイストス・ファミリア団長の椿さんは「もう1粒」と言うと手を差し出してくる。
「チューイングピザ」を椿さんにもう1粒渡していると「ふむ、その剣と刀は良い仕事をしておるな。どれ、少し手前にそれを見せてくれんか」とも言い出した椿さん。
ゴブニュ・ファミリアの職人が作成した「アダマスの剣」と「白木」を椿さんに見せてみると「ほほう、やはり良い仕事をしておる。ゴブニュ・ファミリアにも腕の良い鍜冶師がおるようだな」と剣と刀を見ながら椿さんは満足気に頷いて笑う。
「ついでに手入れもしてやろう」
そう言った椿さんに剣と刀の手入れを任せると、アダマンタイト製の剣とモンスターのドロップアイテムで作成された刀が手慣れた様子で手入れされていった。
「思ったよりも武器の損耗が少ないのう。そういえばロキ・ファミリアの主力の中でも、お主には不壊属性の武器を用意せずともよいとフィンが言っておったな。ふむ」
そんなことを言いながら片目で此方を見てくる椿さんが、好奇心が刺激されたかのような顔をしていたのは間違いない。
とりあえず面倒なことになりそうな気がしたので、手入れされた剣と刀を手早く回収し、立ち去っておく。
流石に椿さんが私を追いかけてくるようなことはなかったが、椿さんのあの興味津々な顔からすると、また接触してくる可能性はありそうだ。
なんてことがあったりもしたが、明日に備えて身体を休めておき、迎えた翌日。
59階層を目指すメンバーの中に含まれていた私は、サポーターを含めたメンバー全員にフィンさんが使っていた【適応灯】の光を一応浴びておいた。
【適応灯】によって低温にも高温にも適応可能な状態となったロキ・ファミリアの面々と椿さん。
突入した51階層を進み、到着した52階層で、此方の位置を捕捉した砲竜による階層無視の砲撃が開始され、駆け抜けた背後の床が大火球により貫かれる。
床を貫き天井すらもぶち抜いていく炎が、連続で遥か下の58階層から上がり、行われていく砲竜の砲撃は止まらない。
立ち止まることなく進んでいったロキ・ファミリアの面々と椿さんだったが、デフォルメス・スパイダーが放つ蜘蛛糸に捕まりそうになったラウルさんを庇ったレフィーヤさんが蜘蛛糸に捕まってしまう。
勢いよく蜘蛛糸に引かれたレフィーヤさんの身体は、下からの砲撃で消滅したデフォルメス・スパイダーが居た場所まで移動し、開いた穴へと落ちそうになっていたレフィーヤさん。
瞬時に発動した無詠唱魔法【ストリングビーム】をレフィーヤさんの胴体に巻き付けて引き上げて、素早くレフィーヤさんを救助。
「あっ、ありがとうございます」
レフィーヤさんからの感謝を受け取り、ひたすら走って続けた移動。
砲撃を避けながら53階層へと到着した面々は、新種の芋虫型モンスター達を率いる敵と遭遇することになる。
ローブを纏って仮面を被り、両腕にメタルグローブを装着した相手が指示を出すと、隊列を組んだ芋虫達が腐食液を一斉に放出して、攻撃を行ってきた。
腐食液を避ける為、横穴に飛び込むように命じたフィンさんに従い、瞬時に横穴に移動した全員。
横穴を進む此方を誘導するかのように動く芋虫型のモンスター達。
その間も続く砲竜の砲撃に、地に穴が開いていく最中、ローブを纏う敵へと反撃に転じたロキ・ファミリアの面々。
サポーター達が用意した盾に、着壁ならぬ着盾したアイズさんが盾を蹴り、加速しながら付与魔法【エアリアル】を用いて、不壊属性の剣「デスペレート」で繰り出す刺突。
アイズさんの強力な一撃を芋虫型のモンスター達を盾にしながら、空中へと逃げた敵。
身動きの出来ない空中に居る敵には、私が【ガンスミス】で作り出したリボルバーの弾丸が連続で撃ち込まれ、更には回り込んだフィンさんによる長槍による攻撃が叩き込まれた。
メタルグローブを槍の穂先で両断され、胸部を切っ先で貫かれた相手は、纏っていたローブと斬られた部位のメタルグローブだけを残してかき消える。
不可解な現象に一瞬だけ何かを考えていたフィンさんだったが、まずは58階層に移動することを優先したようで、モンスターを倒しながら先へと進んだ。
到着した58階層で、まず最初に砲撃を行う砲竜へと突撃した主力の面々は、これ以上砲撃を行わせることはない。
58階層のモンスター達と新種の芋虫型が争う中で、それぞれのモンスターを撃破していったロキ・ファミリアの主力の面々。
ダンジョン58階層に存在したモンスター達を掃討し、サポーター達からポーションを受け取り、体力や精神力の回復を済ませておく。
束の間の休憩で、ほぼ全員が息をつく中、長槍を片手に59階層へと続く道を見るフィンさん。
「親指が疼くなんてもんじゃないね」
そう言っていたフィンさんは、労るように親指を擦っていた。
それから3分後、休憩を終えて59階層へ繋がる道を進むと、氷河の領域である筈の場所は密林と化しており、広大な広間には樹や蔦が生えている。
密林の1本道を通り、辿り着いた先には樹木は無く、広がるのは灰色の大地。
そこに居たのは大牛のようなモンスターの額から生えた上半身だけの女体を持つ怪物3体と、静かに佇む怪人が1人。
「来たか、アリア」
アイズさんを見て、静かに呟くように言葉を発した赤髪の怪人。
「怪人に、見たこともないモンスター3体か、親指の疼きが止まらない訳だ」
長槍を構え、親指を舐めたフィンさんは油断無く相手の出方を疑っていた。
「アリアは最悪死体でも構わんそうだ」
赤髪の怪人の言葉に応じるかの如く、魔石を貪っていた3体の牛の額から生えた女体が花開くように、女の身体が産まれ、歓喜の叫びを上げた怪物達。
「暴れろ、グガランナ」
3体の牛型モンスターに指示を出した赤髪の怪人は、跳躍して後方へと下がる。
「アリア、アリア、アリア」
アイズさんをアリアと呼び、嬉しそうな顔を見せる牛のモンスターから生えた女の身体達。
「遊ビマショウ、アリア!」
その内の1体が突撃してくる最中、不壊属性の武器を叩き込んだ力自慢の3人。
ガレスさん、ティオネさん、ティオナの3人の全力攻撃はグガランナと呼ばれたモンスターを斬り裂くことが出来ていない。
「硬っ!」
大剣を叩き込んだ片手を痛そうに振るっているティオナ。
「何でできてるのこいつ!」
斧槍を打ち込んでも動じていないグガランナに、驚くティオネさん。
「やれやれ、不壊属性でなければ刃が欠けておったわい」
息を吐きながら大斧を担ぎ直したガレスさんは、刃を叩き込んだ感触から、相手の凄まじい強度を感じ取ったらしい。
「フィン、こやつ等の身体はアダマンタイト並みの強度を持っておるぞ」
団長であるフィンさんに情報を提供したガレスさんへと「そうみたいだね」と頷いたフィンさん。
「きみなら斬れるかい、モビタ」
フィンさんのその言葉に応じるように、再び突進してきた怪物へと接近し、牛から生えた女の身体ごと、白銀の剣で真っ二つに両断した私は、ええ、この通り問題なく、と答えておく。
問題は、相手の手がこれだけかというところですかね、と言いながら私は剣を振るい、付着した血液を落とした。
「グガランナを容易く葬るとは、やはり貴様の相手はアルフィアでなければ務まらんか」
此方を見て赤髪の怪人が、そう言った瞬間、地を突き破り生えてきた巨大な食人花。
巨大な花が開くと、花の中央に立つ怪人アルフィアの姿があり、食人花から飛び降りたアルフィアは此方だけを見ている。
私はちょっと忙しくなりそうなので、アルフィア以外の相手は任せましたよ団長、とフィンさんに伝えた。
「ああ、任された。きみはアルフィアの相手を頼むよ」
フィンさんのその言葉を背に、白銀の剣を右手に持ちリボルバーを左手に構えた私は、複数のスキルを同時に発動。
【月光の狼】で狼人となり月光を宿して獣化、次に【黄金甲虫】で自身の生命エネルギーを強化していき、最後に【豪華怪盗】を用いて身に付けているものを怪盗服へと変化。
剣と銃を持ち、怪盗服を着用したことで【白銀の剣】【銃の名手】【豪華怪盗】の3つのステイタス高補正が発動し、全てのステイタスが上昇していく。
兜がシルクハットに変化し、軽鎧ごと衣服が燕尾服のようになり、モノクルを着けた怪盗の姿へと変化した私に、怪人アルフィアは「その姿は何だ?」と不思議そうに問いかけてきた。
ちょっとした勝負服ですので、お気になさらず、と答えた私は紳士のように一礼してから、剣を構える。
「【福音】」
怪人アルフィアから放たれた音の魔法、以前は反応すらも出来なかったそれを見切り、白銀の剣で斬り裂いた私は、地を蹴り駆けると【猟豹加速】を発動。
目にも止まらぬ速さで疾走し、白銀の剣で繰り出した斬撃。
しかしそれすらも回避する怪人アルフィアは、反応速度も並みではないようだ。
立ち止まることなく加速し、今以上に速く、走る速度を上げていく。
強化された疾走の発展アビリティによって、走るごとに速度が速くなり、加速が止まることはない。
極限まで高まった私の速度に、流石に避けきれないと判断したアルフィアは、即座に迎撃を選択。
「【福音】」
魔法を纏わせたアルフィアの拳が私の腹部に叩き込まれると同時に、スキル【大寒波扇】で零下100度の冷気を纏わせた私の剣が、アルフィアの腹部を貫いた。
「以前とは見違えるような動きをするようになった。だが、わたしに勝てぬのなら、やがて黒き終末に滅ぼされるだろう」
アルフィアの腹部の凍結した傷口からは血が出ることもなく、剣で腹部を貫かれた負傷すら気にも止めていない怪人。
Lv7すらも超えた力で殴られた私の腹部には鈍い痛みが残っているが、それでも終わっていない戦いを止めることはない。
再び疾走し、加速した状態で放つ此方の斬撃に合わせるようにアルフィアは拳を繰り出す。
アルフィアに裂傷が刻まれる度に、私の身体に打撃が打ち込まれていった。
怪人と化したLv7の凄まじい力で繰り出される拳は、並みのLv6なら一撃で死亡する威力がある。
様々なスキルによる強化と、本物の「ゴールデンヘラクレス」に生命エネルギーを直接高めてもらっていなければ、私も死んでいた筈だ。
それでも剣を振るう手は止めず、加速した状態で放った斬閃。
乱反射する線のような動きで駆けていき、斬撃を連続で叩き込む。
アルフィアから反撃の拳を喰らい血を吐こうと、足を止めずに走り続け、加速した状態を維持。
斬撃と殴打の激しい応酬が続き、傷ついていった私とアルフィアの身体。
戦いの間、スキル【小雷雲】で出していった雷雲の数々を束ね、アルフィアへと連続で落としていく極大の雷。
雷雲が落とす落雷により身体の動きが少し鈍っていた怪人アルフィアに、今が勝機と判断し、真正面から突撃。
アルフィアに落とし続けている極大の雷が私自身に直撃しようが、立ち止まることなく駆け抜けていった私は、怪人アルフィアの胸部にある魔石を狙い、白銀の剣で突きを放つ。
アルフィアでも避けることは不可能だと確信出来る一撃、しかしアルフィアは両拳を挟み込むように振るい、スキルで不壊属性を宿している筈の剣すらも破壊する。
砕けた白銀の剣、飛び散り舞うアダマンタイトの破片。
凄まじい力技、並外れた腕力、防がれた必殺。
だが、私の攻撃は、まだ終わりではない。
瞬くよりも速く左手に握ったリボルバーの銃口を向け、引き金を弾いて繰り出す弾丸。
0.1秒の早撃ちよりも更に早く、現在出せる最高速で行われた射撃。
【夢幻の剣士】の不可能を可能とする効果により、あらゆるものを貫く魔弾と化した弾丸は、それを防ごうとしたアルフィアの両腕と胸部を確かに貫き、魔石へと穴を開けた。
モンスターと同じく、怪人にとっては弱点となる魔石に穴が開き、死が近付いていてもアルフィアは穏やかに微笑んだ。
「どうやら英雄となる資格は持ち合わせていたようだな」
静かに言葉を発し、笑みを浮かべたまま地に倒れたアルフィアは動かない。
「【出会いと別れ】【様々な大冒険】【これまで僕達が歩んできた道のりを示そう】【時を超えて、世界を超えて】【今ここに僕達は居る】【出会ってきた全てを】【今、創造の力に変えて解き放つ】」
魔石に穴が開いて、いつ魔石が砕けてもおかしくはない状態で、地に倒れているアルフィアの身体が灰化を始める前に、素早く詠唱を終わらせた私は、急いで魔法名を唱える。
「【シネマティッククリエイト】」
創造するのは、様々な劇場版に登場したひみつ道具。
被せたものの時間を巻き戻すことも可能な「タイムふろしき」を倒れたアルフィアに被せて、しばらくしてから外しておくと負傷も消えて、胸部の魔石すらも消え去った人間のアルフィアが、そこに居た。
ついでに砕けた白銀の剣の残骸も手早く集めて「タイムふろしき」をかけてから、少しだけ待って「タイムふろしき」を外すと、元通りとなった白銀の剣。
人間に戻ったことに気付いて「何が起こった?」と不思議そうな顔をしていたアルフィアが咳き込み始めたので、スキル【名医鞄】を用いて用意した薬。
その薬をアルフィアに渡し、アルフィアの病を治す薬を飲んでもらうと「医神の知識でも治せぬ不治の病を、今になって治せるものと出会うとはな」と言ったアルフィア。
「何故、敵であるわたしを助けた」
そんなことを聞いてきたアルフィアに、人である今の貴女なら、あの子に会えるでしょう、と私は答えた。
子を見守る母親のような顔をしていた貴女には、生きてあの子に会ってほしい、そう思ったからですね、と続けてアルフィアに伝えておく。
アルフィアに背を向け、ロキ・ファミリアの面々が待つ場所へと向かうと、2体のグガランナを打ち倒していたロキ・ファミリアの面々は、赤髪の怪人だけは取り逃がしてしまったらしい。
とりあえずアルフィアを人間に戻したことを教えておくと驚いていたロキ・ファミリアの面々と椿さん。
「タイムふろしき」で綺麗な状態に戻っているアルフィア以外は、激しい戦いでボロボロになっている全員。
これ以上の戦いは難しいと判断し、撤退を指示するフィンさんに従って50階層にまで戻ることになったが、アルフィアは大人しく同行していた。
そんなアルフィアに気まずげな顔を見せるロキ・ファミリアの1部の面々は、アルフィアのことを知っているようだ。
まあ、敵対していた相手と、いきなり仲良くするのは難しいだろうな。