才能が野比のび太な転生者   作:色々残念

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本日2回目の更新になります
今回は穢れた精霊の本体視点の話となりますが、かなり短めな話になりますね


精霊

複数の精霊に愛されて、加護を与えられているモビタ・モビが、ある存在に目を付けられるのは当然だったのかもしれない。

 

穢れた精霊。

 

そう呼ばれる存在の本体が存在する60階層。

 

階層1つを丸々掌握している穢れた精霊は、魔界と化した60階層で、ある1人のヒューマンのことを考えていた。

 

欲していた筈の風の大精霊アリアが、二の次になる程、穢れた精霊が求めているのは、様々な精霊に加護を与えられ深く愛されているヒューマン。

 

モビタと呼ばれていた精霊の愛し子を、今の穢れた精霊は何よりも求めている。

 

通常の精霊とは違い、ダンジョンのモンスターに取り込まれ、在り方が反転した穢れた精霊。

 

奪い、喰らい、壊す、そんな欲求に支配されている穢れた精霊は、まともではない。

 

欲しいものを我慢できない子どものように癇癪を起こした穢れた精霊は、自らが生み出した蜘蛛型モンスターを握り潰す。

 

極彩色の蜘蛛、ヴァラサイトと怪人により名付けられた蜘蛛は、魔力の供給の関係から60階層の魔界でしか活動出来ないモンスターだ。

 

精霊の疑似眷族を生み出す寄生蜘蛛であるヴァラサイトは、怪人と違って宿主を選ばない。

 

その分怪人程の出力を生み出せないヴァラサイトは、実力的には大したことはないが、嫌がらせには適している。

 

そんな趣味が悪い寄生蜘蛛を握り潰しても穢れた精霊の癇癪は治まることはなく、手の届く範囲の創造物を壊し始めた穢れた精霊。

 

生み出した寄生蜘蛛を全て潰して、ようやく穢れた精霊は癇癪を終わらせた。

 

自身の手足同然の精霊の分身を操り、60階層よりも下の階層で捕らえた複数のヴェノムスカイ・センチピード・ドラゴンへと精霊の分身を植え付け、手駒へと変えていた穢れた精霊は、ヴェノムスカイ・センチピード・ドラゴン達の身体を、より強靭となるように内部から作り替えていく。

 

穢れた精霊によって改造されたヴェノムスカイ・センチピード・ドラゴン達は、Lv7に匹敵する潜在能力を限界以上に引き出されていた。

 

そして穢れた精霊が目をつけていたモンスターはヴェノムスカイ・センチピード・ドラゴンだけではなく、協力者のエニュオを脅してダンジョン内で神威を出させて、出現させた漆黒のバロールすらも穢れた精霊の手の内だ。

 

捕らえた漆黒のバロールにも穢れた精霊は、精霊の分身を植え付けており、60階層に待機させている。

 

それも、モビタを確実に手に入れたいと思う穢れた精霊にとっては必要な準備だった。

 

精霊の分身の視界で、一目見た時から、目が離せない存在だったモビタを、穢れた精霊は、必ず手に入れると考えて準備を進めていく。

 

「欲シイ、欲シイ、欲シイ」

 

それは精霊としての愛というよりも欲望に近い感情であり、何よりもモビタに執着していた穢れた精霊。

 

「アノ子ガ欲シイ」

 

感情の制御が出来ていない穢れた精霊は、欲望のままにモビタを欲す。

 

在り方が反転する前の大精霊であれば、モビタには加護を与えていたかもしれない。

 

だが、この精霊は既に穢れており、怪物に近い存在と化している。

 

モンスターを生み出す母体であるダンジョンが、排除を選ぶことがない程に、モンスターに近い穢れた精霊。

 

これまで様々な精霊達を欲するがままに取り込んできた穢れた精霊は、抑えるつもりのない欲望のままに動く。

 

「モビタ」

 

熱っぽく欲している相手の名前を呼ぶ、穢れた精霊の顔は邪悪な笑みを浮かべていた。

 

欲しくて欲しくてたまらない相手を手に入れた時のことを考えて笑う穢れた精霊は、モビタのことしか考えていない。

 

あれほどまでに執着していた風の大精霊アリアを忘れる程に、穢れた精霊はモビタを求めている。

 

精霊の愛し子を手中に納めた時のことを考えながら穢れた精霊は笑い、いずれ60階層に現れるであろう神の眷族達に備えて、戦力をかき集めていた。

 

精霊の分身を生み出し、モンスターへと植え付け、限界以上に強化を行い、戦力を補充。

 

大量の宝玉の胎児を生み出し、他者へと寄生させて怪物へと変えていく。

 

怪物を集め、人すらも怪物へと変えて、用意していった手駒達。

 

怪物の軍勢がひしめくダンジョンの60階層は、魔界の名に相応しい場所へと変貌していた。

 

穢れた精霊が用意した軍勢達が地上に出れば、対抗できる者達は限られており、地上が地獄に変わることは間違いない。

 

危険な怪物達ばかりが用意された60階層で、今日もまた穢れた精霊は、新たに怪物達を集める。

 

オラリオに存在する神の眷族達を甘くは見ていない穢れた精霊は、戦力の補充を続けていた。

 

精霊の愛し子を手に入れるという重要な目的を得た穢れた精霊は、止まることなく怪物達を集めて強化していく。

 

より強く、より凶悪に、より悪辣に、怪物の改造を行う穢れた精霊。

 

神により地上に送られ、英雄達と共に戦った大精霊の姿は、既にそこにはない。

 

己の欲望の為だけに動く邪悪な存在でしかないその姿は、まさしく怪物と言えるものだろう。

 

打ち倒さなくてはならない邪悪な怪物は、ダンジョンの60階層で、待っている。

 

誰よりも何よりも、欲しくてたまらない精霊の愛し子を奪い、自分だけのものにする為。

 

穢れた精霊と呼ばれる怪物は待っている。

 

いずれ自分が居る60階層へとやって来る精霊の愛し子を、永遠に自分のものとする為。

 

「早ク来テ、モビタ」

 

待ち焦がれて、そう呟いた穢れた精霊は邪悪に笑う。

 

亀裂が走るような歪な笑みを浮かべた穢れた精霊は「早ク、アナタヲ、食ベサセテェ」と言いながら「アハッアハハハッ」と狂ったように笑い続けた。

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