起床した朝、ベッドから出ると肌寒さを感じたので、いつもより厚着をして部屋から出る。
朝食を食べる為に食堂へと向かう途中、窓から外を見ると雪が降っているようだった。
オラリオにも雪は降るのかと思いながら歩いて移動していくと到着した食堂。
どうやら雪が降るのは珍しいことのようで、殆どの団員が雪について話していたな。
「雪は初めて見た」と言っている団員や「寒いから苦手」と嫌そうな団員もいる中で「雪遊びがしたい」とテンション高めな団員もいて、雪に対する反応は様々だ。
朝から賑やかな食堂で朝食を食べ終えた私は、ロキ・ファミリアのホームである黄昏の館を出て、ゴブニュ・ファミリアに頼んでいた防具を受け取りにいく。
以前回収したドロップアイテムで、灰色のバグベアーが残した毛皮が幾つかあったが、先輩団員達から「防具が壊れたモビタに渡しとくぞ」と私に全て渡された毛皮。
灰色のバグベアーとの戦いで防具が壊れていたことは確かなので、新たな防具が必要だと判断した私は、灰色の毛皮の加工をゴブニュ・ファミリアに頼んでいた。
「数日で完成する」と言っていたゴブニュ・ファミリアの職人の言葉が正しければ、防具は既に完成している筈だ。
雪の降るオラリオの道を進んで、目的地のゴブニュ・ファミリアへと向かう道中。
降っている雪に、はしゃいでいる子ども達を沢山見かけた。
とても楽しそうな子ども達を見ていると、私にもあんな頃があったな、と懐かしい気持ちになる。
降る雪に、はしゃぐ子どもがいるのはこの世界でも変わらないらしい。
辿り着いたゴブニュ・ファミリアで、持ってきていたヴァリスと引き換えに、灰色の毛皮を素材に作られた防具を受け取った。
ゴブニュ・ファミリアの職人に「レザーグレイ」と名付けられたレザーアーマーは、灰色の毛皮を加工した革が使われている革鎧である。
「レザーグレイ」の名前通りに灰色の革鎧は軽く丈夫であり、身体の動きを邪魔することもない。
革鎧の「レザーグレイ」は「シルバープレート」よりも値段は高かったが、貯金していたヴァリスには余裕があったので、借金をしなくても一括で支払うことができた。
新しい防具を手に入れた私は、さっそくダンジョンに向かうと、ひたすら上層で身体を動かしてモンスターを倒していく。
Lv3の私の相手になる上層のモンスターはおらず、魔法を使わずとも容易く蹴散らすことが可能だったが、油断はしない。
上層の魔石でも数があれば小遣いにはなるので、残らず回収してダンジョンを出ると、ギルドで魔石を換金。
時間としては、ちょうど昼時になっており、雪が降って寒い中でも屋台は開いているようだ。
温かいスープを売り出している屋台を発見した私は、スープを1杯購入して飲んでみる。
木皿に入ったコンソメスープのような味わいのスープは、雪に冷えた身体を確かに暖めてくれた。
スープ自体も美味しかったので、お代わりとしてもう1杯頼み、ヴァリスを支払う。
空になっていた木皿に再び注がれたスープを飲んでいると、スープを売っている屋台に殺到するオラリオの人々。
寒い日に温かいものが欲しくなるのは、オラリオでも変わらないらしい。
他の屋台も回り、屋台で食事を済ませてからロキ・ファミリアのホームに戻ると、中庭で団員達による雪合戦が始まっていた。
雪の中でも元気に遊べるのは悪いことではないが、雪合戦をしている面々は子ども以上にはしゃいでいるような気がするな。
遊ぶなら風邪をひかない程度にした方が良いんだろうが、雪遊びを楽しんでいる団員達は止まりそうにない。
何を言っても無駄だろうなと思った私は、雪で遊んでいる面々には何も言うことなく、その場を立ち去った。
定期的なステイタスの更新を行う日が今日だったので、ロキ様の自室に向かうと、寒いからかホットワインを飲んでいたロキ様。
軽く酔いが回っているロキ様にステイタスの更新を頼んでみると「よっしゃ、まかしとき!」と、やる気に満ち溢れた言葉が返ってくる。
酔いが回っている状態で大丈夫なのか不安ではあるが、ロキ様はステイタスの更新をしてくれるようだ。
寒いが上半身の服を脱ぎ、背中をロキ様に向けると、ステイタスの更新が行われていく。
「更新できたで」
Lv3
力:I77
耐久:I53
器用:H145
敏捷:I68
魔力:H151
射撃:G
耐異常:I
《魔法》
【ガンスミス】
【ストリングビーム】
《スキル》
【風に愛されし者】
【樹木の友】
【竜の温泉】
【雪解けの癒し】
・雪の精霊の加護
・雪の精霊の献身
・傷病回復、呪詛の解呪
・耐寒
・氷雪による攻撃無効
私に発現していた新たなスキルは「雪解けの癒し」と書いて「テークシス・セラピス」と読むスキルであるらしい。
オラリオに雪が降ったことがきっかけとなって発現したスキルなのは間違いないだろう。
のび太で雪となると雪の精霊が思い浮かぶな。
ひみつ道具である精霊呼び出し腕輪によって呼び出された雪の精は、雪が好きだというのび太と一緒に雪で楽しく遊んでいた。
雪の精は自在に雪を降らせて、吹雪すらも操ることができていたが、精霊呼び出し腕輪で呼び出された精霊は、近くにもとになるものがなければ存在できない。
のび太がもういいと言ってもどんどん雪を降らせていく雪の精は、雪が無くなれば自分が消えてしまうことを知っていて、消えたくないと思っていたのだろう。
雪の精によって凄まじい大雪が降り積もり、車の交通も難しい状態となったのび太の住む町。
大雪のせいか高熱を出したのび太は、布団に寝込んでしまった。
医者を呼ぶにも大雪で交通が難しく、直ぐに呼べる状況ではない。
1人布団に寝込んでいたのび太の元に雪の精が現れて、高熱を出しているのび太の額に手を当てた。
のび太の高熱を吸収しようとする雪の精に「そんなことをしたらきみが」と、高熱を出していようが雪の精を気にしていたのび太へ「消えちゃうわ、でも良いの。雪は解けるものよ」と言った雪の精。
のび太に熱を出させるつもりは無かったことと、本当にのび太のことが好きだったことを伝えた雪の精は、その後ものび太の高熱を吸収していく。
翌朝、完全に熱が下がり高熱ではなくなっていたのび太の近くには、雪の精の姿はない。
降り積もっていた大雪も消えていて、春が来ることを喜ぶドラえもんの隣で、何も喋らないのび太の顔は、何処か寂しそうな顔をしていた。
のび太と雪の精の話は、そんな話だった筈だ。
傷病の回復や、呪詛の解呪が可能な「雪解けの癒し」は、間違いなくレアスキルだろう。
酔いが完全に覚めたロキ様が「モビタは精霊に好かれ過ぎやろ」と言って遠い目をしていたな。
迷惑をかけているようで申し訳ありませんと私が言うと「モビタは何も悪くないんやから、気にせんでええよ」と笑ったロキ様。
「折角の雪やし、ちょっと遊ぶのもええやろ」と言い出したロキ様に手を引かれて連れていかれたホームの中庭には、すっかり雪が降り積もっている。
とりあえず雪だるまを作ってみた私に「おっ、可愛いの作っとるやないか」と言ってきたロキ様は、馬のような何かの雪像を作っていた。
その雪像は馬にしては足が多いが、スレイプニルなら間違いではないのかもしれない。
ロキ様と私が一緒に雪で遊んだ日の翌日、雪で身体が冷えたロキ様は風邪をひいてしまったようだ。
ロキ・ファミリアの団長にロキ様の治療をする許可を取り、高熱を出して自室で寝込んでいるロキ様の元に向かった私は、ベッドに横になっているロキ様の額に手を当てて「雪解けの癒し」を発動する。
傷病の回復効果もある「雪解けの癒し」で癒されていったロキ様の高熱は下がっていき、風邪もすっかり治ったロキ様が目を覚ました。
ロキ様がベッドから身を起こして周囲を見回し、私を発見した瞬間、ロキ様の口元は笑みを浮かべていたな。
「ありがとう。モビタが治してくれたんやな」
風邪が治っていることで「雪解けの癒し」が使われたことを理解したのか、私に感謝をして嬉しそうに笑っていたロキ様。
病み上がりのロキ様には、新しいスキルが役立って良かったですよ、とだけ伝えてロキ様の自室を後にした私は団長の部屋に行き、ロキ様の治療が完了したことを報告しておいた。
団長には「癒しの力を得たきみには、治療師としての活躍も期待している」と言われたが、治療師になるには経験を積む必要がありそうだ。
まあ、地道に頑張っていくとしよう。