ソードアート・オンライン~赤腕の槍使い~   作:G.S

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夏休みが終わるまでにはALO編に行きたいと思っているこの頃です。ちょっと難しいとは思いますが…
それではどうぞ。


第十一話:聖騎士と決闘観戦

 キリトがグリーム・アイズを倒したことによって上空にCongratulationsという文字が浮かび上がる。

しかしキリトはその場で倒れこんでしまった。おそらく疲労がピークに達していたのであろう。アスナは倒れこんだキリトの元へ走っていった。

 

「キリト君!キリト君!」

 

アスナは目尻に涙を溜めたままキリトに呼びかける。しばらくするとキリトは起き上がった。

 

「馬鹿!無茶して!」

 

そう言ってキリトに抱き付くアスナ…えっと…俺帰った方が良いのかな?なんか二人だけの甘~い空間を生み出しているんだけど…

しかしコーバッツが俺たちの前に来たことで空気が変わる。

 

「我々は傲慢だったのかもしれない。君たちが来てくれなかったら我々は全滅していただろう…感謝する。そして勝手な行動を取ってしまったことを許してほしい…申し訳なかった!」

 

そう言ってコーバッツは頭を下げた。それに倣って軍の全員が頭を下げる。年上に頭を下げられるってなんか変な気分だからやめて欲しいんだけど…

 

「あ、頭を上げてくれよ…!確かに勝手な行動かもしれねえがそこまでする必要は無いって!」

 

「だが…」

 

「本当にやめてくれって!俺らそういうのに慣れてないんだよ!」

 

クラインがコーバッツ達にそう言うと渋々顔を上げてくれた。ナイス!クライン!俺は心の中でクラインに親指を立てた

 

「そういえば…お前らあれなんだよ?あんなスキル見たことねえぞ!」

 

話題を変えるためにクラインは俺とキリトのさっきのスキルについて聞いてきた。まあ別に俺は答えても困らないが…

 

「エクストラスキル《槍投げ》だ。出現条件はおそらく《槍スキル》と《投剣スキル》のスキル値をある程度まで上げること。少なくとも800以上はいるな」

 

そう言うとクラインは厳しい顔をしてしまった。

 

「そうなると習得するのは難しいな。今さら《槍スキル》を上げるなんて出来ねえし。…つかお前《投剣スキル》なんて上げてたのかよ…」

 

「Mobの憎悪値を上げるためにな…それ以外では役に立たねえよあんなスキル」

 

《投剣スキル》は誰でも習得出来るスキルである。このスキルは遠距離からでも攻撃出来るという利点があるが使う奴はほとんどいない。それは威力が小さくてせいぜい相手の注意を引くことしか出来ないからだ。壁プレイヤーでも使う奴はほとんどいないだろう。

 

「タツヤは分かったとしても…キリト!お前のスキルは何なんだよ?」

 

するとキリトは渋々と口を開いた。

 

「エクストラスキル《二刀流》だよ…出現条件は分からない…」

 

その言葉に全員が驚く。エクストラスキルにはそれぞれ出現条件がある。クラインが使用する《刀スキル》は《曲刀スキル》のスキル値を上げることが条件であるように。つまり出現条件が分からないということは…

 

『ユニークスキルか…』

 

「情報屋の情報にも載っていねえし…お前だけしか持ってねえってことはユニークスキルじゃねえか?!」

 

これまで判明しているユニークスキルは1つだけ…《血盟騎士団》団長ヒースクリフの持つ《神聖剣》である。このスキルの詳細は不明だが壁プレイヤーの防御を越える防御力があることだけは分かっている。かつて奴はこのスキルを使って一人でボスの攻撃を防ぎきったこともある。今でもあいつの人外ぶりを思い出す

 

「まあネットゲーマーは執念深いからな…俺は人間出来ているから大丈夫だが。それに…」

 

そう言って未だに抱き合っているキリトとアスナをニヤついた顔で見るクライン。

 

「苦労も修行の内だと思って…頑張りたまえ若者よ」

 

「…勝手なことを」

 

妙に年寄り臭い台詞を吐いた後クラインは俺の方に歩いてきた。

 

「俺らは上の階層のアクティベートしてくるけどお前はどうする?」

 

「俺は遠慮しておくよ。ちょっと気になることもあるし…」

 

「そうか。じゃあ行ってくるからな…おい!その…キリトよ」

 

「?」

 

「お前が軍の連中を助けに行ったときよ…」

 

「何だよ?」

 

キリトを呼んだクラインはキリトに背中を向けて目を擦りながら言った。おそらく泣いているのだろう。

 

「俺はなんつうか嬉しかったよ…そんだけだ。またな!」

 

そう言ってクライン達は上の階層に上っていった。自分のためではなく他人のために涙を流せる…それはこの男の美点だと俺は思う。まあそれは置いておいて…俺はコーバッツの元に向かった。

 

「コーバッツさん。あんたらこれからどうするんだ?」

 

「…我々はこれから本部に戻りサブマスターに今回の結果を報告する。残念ながら我々にはボス戦は厳しいようだ…」

 

今回は運が良かったようなものだからな…正直ボス戦に慣れていない奴らに来られても困る。…ん?サブマスター?

 

「ギルドマスターじゃなくてサブマスターなのか?」

 

「ああ。我々はサブマスターのキバオウの指示でここに来たのだ」

 

サブマスターってそんなに権力大きいのか?まあそんなことよりも俺にはこいつらには聞きたいことがあるのだ。

 

「話は変わるんだけどさ…始まりの町でのあの横柄な態度って何なの?あれもギルドの方針なのか?」

もしギルドが許可してあんなことをやっているのなら正直そんなギルド無い方がいい。

 

「ギルドの方から始まりの町に住んでいるプレイヤーから徴税をするように指示を受けたがあのやり方は我々の勝手な行動だ。ギルドに非は無い」

 

表情から嘘か本当かどうかは分からない。まあ自分のギルドを悪く言うような人間では無いだろうし…

 

「…そうか。なら命を助けて貰った礼として一つ頼まれてくれるか?」

 

「可能な範囲であればいいが…何だ?」

 

「あの徴税ってのを止めてくれるように進言してくれねえか?あんた中佐ってことはそれなりに高い地位にいるんだろ?」

 

俺は言えるような立場じゃねえからな。こういうのは身内のそれなりの立場の奴が進言した方がまだ聞き入られる可能性がある。

 

「!そ、それは…!」

 

「それにあんたらも徴税なんて意味無いって思ってんだろ?あそこにいる奴らがそんなにコル持っている訳ねえしな。」

 

「だが…!」

 

「一回進言してくれるだけでいいんだ。頼まれてくれるか?」

 

正直期待は出来ないが、もしかしたらその進言に感化される奴が出てくるかもしれない…全くもって他力本願であるがギルド内の問題に他人が口を挟むのは筋違いであろう。可能性は少ないがこうする以外に俺にはいい考えは思い付かなかった。

 

「…分かった。だが結果は期待しないで欲しい」

 

「ああ、了解した。じゃあ俺は帰るからあんたらも気を付けて帰れよ。せっかく犠牲者ゼロでボス戦を終えたんだからな」

 

「ああ。君も気を付けて帰りたまえ。お前ら!本部に帰投するぞ!」

 

そう言ってコーバッツは部下を連れて帰っていった。

俺も用事は終わったし帰るか…勿体無いけど転移結晶使おう。

俺は転移結晶で迷宮区から帰った。ちなみにキリトとアスナは未だに抱き合ったままであった。…正直俺以外の男性陣が見たら嫉妬に狂って斬りかかるんじゃないか?まあ俺には関係ないことだが…

こうして74層ボス戦は無事に終わり、これで明日からは75層の攻略が始まるだけだと俺は思っていた。

少なくとも次の朝の新聞のことを知るまでは…

 

 

『タツヤ!新聞見たか?』

 

 昨日の戦闘での疲れで遅くまでぐっすり宿のベットで眠っていた俺はキリトからのメッセージで起こされた。まだ頭がボーッとする…

 

『見てねえよ。新聞がどうかしたか?』

 

『マズイって!とにかく新聞見てみろ!』

 

新聞なんか取ってないからな…仕方無い下に買いに行くか?

階段を降りてくとカウンターにいた4人ぐらいの集団にガン見された…寝惚けてて変な顔してんのか?彼らの手には新聞が握られていた。ちょうど良い。こいつらに新聞借りよう…

 

「あのさ…悪いんだけどその新聞読み終わったら貸してくれないか?」

 

「あ、あんた《赤壁》のタツヤか?」

 

《赤壁》…《黒の剣士》キリトや《閃光》アスナのように有名なプレイヤーには二つ名がつくことがある。なんで俺にもそんな名前がついてしまったのか…大体《赤壁》って何だよ。俺は別に連環の計をやったり風の向きを変えたりは出来ねえぞ。前のやつの方がまだいい。なんだっけ…《紅の風》?…やっぱりどっちもどっちだな。

そもそも俺の二つ名はキリトやアスナと比べて大分マイナーなはずだ。どうしてそんなのを知っているのか…

 

「そうだけど…」

 

すると集団の一人が周りに聞こえるぐらい大きな声で叫んだ。

 

「み、みんな!こいつ《赤壁》のタツヤだぞ!」

 

「「「「「何ーーー!!!」」」」」

 

そいつの言葉で一階にいた奴らの目が俺に向く。え?俺なんかしたっけ?なんか奴らの目が怖いんだけど…よし!逃げよう!

俺は全力で階段を上り部屋へ入ろうとする。部屋の中はシステム的な保護がされているので他人が勝手に入ることは出来ない。

 

「「「「「待ちやがれ!!!」」」」」

 

後ろから怖い声が聞こえるが無視する。ここに攻略組の連中がいなくてよかった…もしいたらすぐに捕まっていただろう。

なんとか部屋に戻ってドアを閉める。これで誰も入って来れなくなった。怖くてドアを開けることは出来ないが…おそらく俺が追いかけられたのはキリトの言った新聞が原因であろう。

新聞に何が書かれていたのか気になった俺は誰かに聞こうと思ったが…

 

「キリトは無理だな…」

 

あのメッセージを見る感じキリトは切羽詰まって説明出来ないだろう。俺のフレンドの中で普通に教えてくれそうな奴は…

 

「あいつしかいないな…」

 

俺はある人物にメッセージを送ることにした。

 

『悪いなサチ。今大丈夫か?』

 

しばらくするとサチからの返事が返ってきた。

 

『昨日は大変だったみたいだね。新聞読んだよ。それでどうしたの?』

 

『その新聞の内容教えてくれないか?追いかけられて見れなかったんだ』

 

『それは大変だったね。えっとね…軍の大部隊を壊滅させた青い悪魔。それを撃破した《黒の剣士》の50連撃、それとボスに風穴を空けた《赤壁》の一撃だって…』

 

「あの鼠野郎…なんて誇張してくれたんだ…」

 

サチからのメッセージを見て溜め息が出てしまった。この新聞を作った鼠は今頃大笑いしていることだろう。こっちの苦労も知らずに…

 

『ありがとうサチ。助かった』

 

『どういたしまして。でも、もうこんな無理しちゃダメだよ。キリトにも伝えといてね』

 

『分かった。あの鈍感野郎にも伝えておくよ』

 

『うん。お願いね』

 

サチとのやり取りを終えた俺はベットに上で横になる。さて…これからどうするかな?ここに長居は出来ないので奴らにバレずにここから出るためには転移結晶を使ってどっか別の階層に行くしかない。…まさか町の中で転移結晶を使うなんてな…

俺がそう考えているとメッセージが来た。送り主はキリトだった。

 

『《血盟騎士団》本部まで来てくれ。ヒースクリフが呼んでる』

 

…マジかよ。絶対行きたくないんだけどあんな息詰まる場所。

 

『やだ。なんで俺が行かなきゃならないんだ?』

 

そうメッセージを送るとすぐに返事が返ってきた。

 

『頼む。とにかく早く来てくれ』

 

…仕方ねえ。行かなかったら《血盟騎士団》の団員の俺に対する風当たりが強くなるしな…出来ればこれ以上は嫌われたくはない。

 

「転移!《グランザム》!」

 

俺は転移結晶を使って血盟騎士団の本部がある《グランザム》に向かった。

 

 

 55層《グランザム》にある《血盟騎士団》本部…今さらながらデカイな…建物というよりも要塞のようだ。

入り口前にいた団員に話すと団長室に案内された。しかしここの連中が俺を見るなり睨み付けてきたのはあまりいいものではなかった。だから来たくなかったんだよ…

 

「団長はこの部屋に居られる」

 

「ああ。案内ご苦労さん」

 

俺がそう言うと案内してくれた団員は何も言わずに戻っていった。さすがにここまで嫌われているとはな…まあいい。とっとと団長の用事を終わらせてこんな場所からおさらばしよう。

俺はドアをノックした。

 

「タツヤだけど入っていいか?」

 

「ああ。入ってくれたまえ」

 

部屋の中には《血盟騎士団》団長ヒースクリフと副団長アスナ、さらに《血盟騎士団》の幹部連中とキリトがいた。

 

「それで急に呼び出して何なんだよ?こう見えて今日は用事があってさ。早く要件言ってくれねえか?」

 

俺がそう言うと幹部連中の眉間に皺がよる。そんなに怒らなくてもいいじゃねえか。口が悪いのは仕方無いんだよ。

 

「ああ…では単刀直入に言う。キリト君、タツヤ君私のギルドに入りたまえ」

 

…一体このおっさんは何を言っているのだろうか?人を見る目は確かなのだろうか?

 

「俺は断る」

 

「ほう?理由を聞かせてもらってもいいかな?」

 

「あんたら知ってんだろ?俺集団行動とか苦手なんだよ。ここの連中と仲良く出来そうに無いしな」

 

実際今も幹部連中から凄い睨まれている。まあアスナほど怖くは無いがな…眼力鍛えた方がいいんじゃないか?

 

「つまり君は自分自身の個人的な理由で入りたくないと…そんな勝ってな理由が通じると思っているのかね?」

 

「いいや。そんなわけ無いだろ」

 

さすがにそんな子供みたいな理由で入らないわけではない。俺が入りたくない一番の理由は…

 

「一番の理由は別のギルドに入りたいからだよ。随分前からそこから勧誘されてんだ。それなのにこんな所に呼ばれて…いい迷惑だ」

 

それに…

 

「大体あんたのギルドにどんだけ戦力集中させるつもりだよ。そんなに集中させたら周りから不満が出るのは考えるまでも無いだろ。あんた他のギルドと上手くやっていこうって気はねえのか?」

 

今でさえ戦力が他より大きいのにこれにユニークスキル持ちを1人と習得した奴が1人しかいないエクストラスキル持ちを1人加入させたらさすがに他のギルドも文句言いたくなるだろう。

 

「そんなことは関係無い。《血盟騎士団》は攻略組最高戦力なのだ。我々が直々に勧誘しているのだから貴様が入るのは当然のことだ」

 

そう言ったのは幹部連中の1人だ 。名前は…え~と……忘れた。

それにあんたらみたいな連中が嫌いなんだよ。従って当然みたいな考えの連中が…!

 

「とにかく俺は入るギルドを変えるつもりはないよ。悪いが諦めてくれ」

 

それに…

 

「どうせ俺なんかついでだろ?本命はキリトの方じゃねえのか?」

 

スキルの使い勝手でいえば明らかに《二刀流》の方に軍配が上がる。俺のスキルなんか槍が切れたら使えなくなるしな…

 

「そうでもないよ。私は君の能力を高く評価している。そこのキリト君と同じくらいにはね。どうかね?1つ提案があるのだが」

 

「…聞くだけは聞いてやる」

 

「そこのキリト君と同じくデュエルで決着をつけるのはどうかね?私が負ければ諦めよう。だが君が負ければ《血盟騎士団》に入るというのは」

 

デュエルで決めるっていつの時代の話だよ。つかキリトよくそんな提案受け入れたな。こっちには何のメリットもねえじゃねえか。

 

「ちなみにキリト君には勝ったらうちの副団長を連れて行くことを約束している」

 

アスナあんた景品扱い受けてるけどいいのかよ…

 

「それで俺が勝ったら何をくれるんだ?」

 

受けるつもりはないが一応聞いてみよう。

 

「そうだね…こちらが持っているレアアイテムの一部とコルそれに…」

 

そこで一旦話を止めたヒースクリフは澄ました笑顔で口を開いた

 

「アインクラッド最強プレイヤーの称号…というのはどうかね?」

 

…なるほどなかなか良い報酬だな。しかし…

 

「遠慮する。コルもアイテムも今はそれほど必要じゃねえからな。もちろんタダでくれるってことならありがたく貰うぜ」

 

「最強プレイヤーの称号はいらないと?」

 

「それこそ一番どうでもいい。誰が最強とか決めても意味無いだろ?だってこの世界では相手はプレイヤーじゃなくてボスなんだ。誰が最強でも全員で協力してボス戦に挑むことには変わり無い」

 

誰が最強か…それは話の種にはなるが正直それだけだ。最強になったからといってボス戦が有利になるわけでもあるまいし…

それにデュエルでの強さは対人戦での強さでありボス戦での強さとはイコールにならないのだ。

 

「そうか…そこまで言うのなら仕方あるまい。君のことは諦めよう」

 

「どうも」

 

よし!もうこれで帰っていいだろう!ようやくこんな所から出れるぜ…

 

「じゃあ俺への要件は終わったということでいいな?」

 

「ああ。時間を取らせてしまって悪かったね」

 

俺は部屋から出ていきこんな息苦しい建物から速歩きで出たのであった。

 

 

 次の日75層にある決闘会場には人が溢れかえっていた。ここにいる人の目的は《黒の剣士》ことキリトとアインクラッド最強と言われる《聖騎士》ことヒースクリフのデュエルを観戦することである。まあどっちが勝つかを賭けている連中もいたが…

 

「おい!タツヤこっちこっち!」

 

そう言って俺を呼んだのはクラインであった。その隣にはエギルもいる。

 

「エギルは今日は店休みなのか?」

 

「ああ!だがさっきここでガッポリ稼がせて貰ったからな!デュエル様様だぜ!」

 

エギルは先程まで飲み物や食べ物を売っていたようだ。相変わらず商売根性頼もしいことで…

 

「隣座らせて貰うわよ」

 

そう言って俺の隣の席に座ったのはリズベットであった。

 

「久しぶりだなリズベット。これ終わったら武器のメンテやってもらっていいか?」

 

「ええ!任せなさい!まあキリトが先だけどね」

 

そう言って真剣な表情で決闘場を見るリズベット。

 

「あの、もしかしてタツヤさんですか?」

 

急に後ろから声をかけられたので振りかえると俺の真上の段に小柄でツインテールの少女が青色のふわふわしている小さな竜のようなモンスターと一緒にいた。

 

「シリカちゃん…だよな。」

 

「はい!お久しぶりです」

声をかけた人物はシリカであった。ということは…

 

「その隣にいるのが使い魔の…」

 

「はい!ピナです!ピナ挨拶して」

 

シリカがそう言うとピナはシリカの元を離れてなぜか俺の膝に降りてきた。え?俺どうすればいいの?

 

「良かったですね。ピナはタツヤさんのこと気に入ったみたいです。撫でてあげてください」

 

「ああ…こんな感じでいいか?」

 

そう言って俺は恐る恐るピナを触る…あれ?スゲー気持ちいい。この柔らかな感触は癖になりそうだ。それから俺はピナの背中や腹などを撫で続けたが残念ながらしばらくするとピナはシリカの元に戻ってしまった。

 

「そ、そんな落ち込まないでください!またいつでも触れますから!」

 

そしてシリカに慰められる俺…つか俺ってそんなに顔に出やすいか?

 

「そんなに表情に出ているか?」

 

「普段は分かりづらいけどね。今はすごく残念そうな顔しているよ」

 

そう言ったのはなぜか俺の前の段に座っていた《月夜の黒猫団》のサチであった。

 

「驚いたぜ…何でここにキリトの関係者がこんなに集中しているんだ?つか他のギルドメンバーはどうしたんだよサチ?」

 

「ケイタ達は向こうにいるよ。やっぱりタツヤのことはまだ苦手みたい」

 

確かに少し離れた所にギルドメンバーはいた。しかし俺と目が遭うなり目を逸らされるのは正直心に来るものがある…やっぱあの時はやり過ぎたかな?今更ながら少し反省をする。

 

「みんな!デュエル始まるみたいだぜ!」

 

そう大声を上げたのはクラインだった。

決闘場にはキリトとヒースクリフが出てきてデュエル申請を行い受諾する。すると上空にタイマーが現れる。そして会場はざわついた。

 

「キリトー!頼んだぜ!俺はお前に賭けたからな!」

 

キリトに向かって喝を入れるクライン。おそらくはキリトにかなりのコルを賭けたのだろう。

 

「キリトさん頑張ってください!」

 

「キリト!頑張って!」

 

「キリト!負けたら承知しないわよ!」

 

そして女性陣からの応援の声が上がる。隣のクラインは羨ましそうな顔をしていたが。

 

「やっぱ勝つのはどっちかしらね?」

 

急に質問してきたのはリズベットであった。

 

「やっぱりキリトさんですよね」

 

「キリの字のあのスキルはスゲーからな!ヒースクリフにも勝てるんじゃねえか?」

 

みんなの中ではキリトが優勢のようだ。まあここにいる連中はキリトの知り合いばっかりだからな。キリトに勝って欲しいのだろう。

 

「…試合の展開にもよるが七三ぐらいでヒースクリフが勝つだろうな」

 

俺がそう言うと周りの連中が一斉に俺の方に向く。

 

「?どうしてだよ?お前だってキリトのあのスキルを直接見ただろ?」

 

「あのスキルの利点は連続攻撃により大ダメージを与えることだ。でもあんな速度でソードスキルなんて発動してたら途中でガス欠になるだろ?キリトに勝機があるとすれば一気に勝負を決めてあいつの防御を突破するしかないだろうな。長期戦なんかになったら確実に負けるよ」

 

実際あいつはあの技を使い終わった後倒れたしな。馬鹿みたいに集中力がいるのだろう。

 

「ふ~ん。ちなみにあんたとヒースクリフがデュエルしたら勝率はどれくらいよ?あんたも珍しいスキル持ってんでしょ?」

 

質問してきたのはリズベットであった。

…まあ癪だが正直に答えよう。

 

「十中八九で俺が負けるよ。大体俺のスキルは対人戦に向いて無いんだよ。相手はこっちが武器を変える時間をくれると思うか?」

 

「まあ。そんな奴はいないでしょうね」

 

これがデュエルを受けなかったもう一つの理由である。奴に勝てる未来が想像出来ないのだ。こちらがどんな手を使っても奴はその澄ました表情を変えずに俺に勝利するだろう。全く…とんだ化け物だ。

 

 

 そんなことを考えているとタイマーが0になりデュエルが始まった。

まずはキリトの挨拶代わりの攻撃。しかしヒースクリフはそれを盾で防御する。そこから先はキリトの猛攻をヒースクリフが盾と剣で防ぐ試合となった。しかしキリトの攻撃の隙を突いてヒースクリフは盾でキリトを吹き飛ばしたのだ。しかも…

 

『?キリトのHPが減ってる!?あの盾には攻撃判定があるのか!』

 

通常盾で叩こうが殴ろうが相手にダメージを与えることは出来ない。盾は武器ではなく防具だとシステムによって定められているからだ。つまりこれがユニークスキル《神聖剣》の能力の一部であろう。盾にも付く攻撃判定に圧倒的防御力…なんてスキルだよ。これがエクストラスキルならな…そんな今さら考えても仕方無いことを考えてしまった。

しかしこの盾での一撃でキリトの闘志にさらに火が付く。そこからは再びキリトの怒濤のラッシュをヒースクリフが盾と剣防ぎ続ける試合になった。

 

「やっぱりキリトは凄いわね。もう攻撃が目で見えないんだけど」

 

リズベットの言葉に同意する。もうレベルが違い過ぎるんだが…そしてキリトが勝負を決めようとする。その技は74層のボスを倒した技と同じであった。

ヒースクリフはそれを盾で防ぎ続けるがついに耐えきれなくなり盾を弾かれる。これで後はキリトの攻撃が奴に刺さりデュエルはキリトの勝利で終わると誰もが思ったのだが…

 

「な…!」

 

俺が見たのはさっき弾かれたであろう盾をあり得ない速さで構え直したヒースクリフがキリトの攻撃を防ぎきった瞬間であった。キリトは大技を出した後の長い硬直で動きが止まったところを剣で斬られる。するとデュエルが終わりヒースクリフの頭上にWinnerという文字が現れた。

キリトが負けたことはこの際どうでもいい!それよりもさっきのヒースクリフは何なんだ?あの構え直した速さは明らかに異常だった。もしかしてあれは…

 

『神聖剣の能力か!』

 

全くなんてスキルだよ。常に鉄壁の盾で防御出来るってことか…まあ真実は違ったのだがその時の俺はその考えに少しも疑問を感じていなかったのだ。

 

 

「クソー!!キリトの奴に賭けたコルがパーだぜ!コンチクショウ!」

 

 デュエルが終わるなり叫んだのはクラインだった。そういえばキリトに賭けてたんだよな。

 

「まあまあ。やけ酒には付き合ってやるから」

 

そう言ってクラインを宥めるエギル。さて…そろそろ俺も帰るか。今回は収穫もあったことだし…

 

「じゃあ俺はもう帰る「ピナどうしたの?その紙?」あ!!」

 

ピナが口にくわえていた紙に驚く俺。それは俺が買った賭けの券であった。いつの間に取ったんだあいつ!

 

「おい!それ賭けの奴じゃねえか!お前のなのかタツヤ?」

 

「そ、そうだよ。早く返せって…」

 

そう言って手を伸ばしてピナからクラインが取った賭けの券を取ろうとしたら後ろから羽交い締めにされた。

 

「クライン!今のうちに中身見ちゃいなさい!」

 

「あ!てめえ離せよ!」

 

俺を羽交い締めしたリズベットの言葉でクラインが券の中身を見ようとする。さすがマスターメイサー!攻略組でもないのに大した筋力値だ…なんて言っている場合じゃねえ!誰かあいつを止めてくれ!サチも微笑ましいものを見ているような表情でこっちを見ずにクライン止めてくれよ!

 

「何々…ヒースクリフに50万コル!?お前そんなに賭けたのかよ!」

 

あーあ。見られちまった。ここから先は大体予想がつくな…

 

「よし!今日はみんなで飲みに行こうぜ!キリト残念会ってことでな!ちなみにお前の奢りなタツヤ」

 

そう言ってテンションが上がるクライン。

 

「それもそうね…キリトのこと信用せずにヒースクリフに賭けるからこんなことになるのよ。自業自得だわ」

 

「えっと…ご馳走になりますタツヤさん」

 

「ありがとうねタツヤ。なら私は黒猫団のみんなも呼んでくるから…」

 

全員行く気満々だし…するとエギルが俺に近づいて来た。

 

「おいタツヤ…」

 

「何だよ?」

 

するとエギルはニカっと効果音が付きそうなほど笑顔で言った

 

「ゴチになるぜ!!」

 

「…は~あ」

 

ちなみにこの一夜の飲み会で俺の賭けで儲けたコルはスッカラカンになってしまったのは言うまでも無い…

もう二度とギャンブルなんてやらねえ…!俺は心にそう誓ったのだった。

 

 

 

 

 

 




始まりの町の教会にてタツヤはキリトとアスナそして謎の少女に会う。
次回「結婚と謎の少女」にレディーゴーーー!!!

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