ソードアート・オンライン~赤腕の槍使い~   作:G.S

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ついにSAO編完結です!
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第十五話:最後の決戦と世界の終わり

 ついに75層ボススカルリーパーは倒された。だが、この結果は手放しで喜べるようなものでは無かった。攻略組のトッププレイヤーから余りにも多くの死者を出してしまった。幸いな事に知り合いから死者が出てないが彼らの分の戦力を埋めるためには一体どれ程の時間がかかるのだろうか。…結局ボスに挑もうがいまいが多くの時間が余計にかかることは変わらなかったのかもしれない…それでもあいつらが命を散らして戦ったことには意味があったのだと思いたい…

 

「何人殺られた?」

 

「12人死んだ…」

 

クラインの問いにキリトが答える。途中から余裕が無くて数えていなかったがそんなにも殺られていたとは…こんなに犠牲を出して俺たちはあと25層も進めるのだろうか?益々嫌気がする。周りの奴も俺と同じように思ったのか顔を俯かせて暗い表情をしている。

…唯一人をヒースクリフを除いて…奴の方を見ると周りが疲れで座り込んでいる中いつも通り堂々と立っている。あそこまでくると嫌味に感じる…HPもギリギリ安全域の緑のまんまだし…あの一度もHPが黄色になったことが無いって噂は本当なんじゃないか?そんな事を思ってしまった。ふとキリトの方を見ると…

 

「?何やってんだあいつ?」

 

キリトは剣を構えて立ち上がりヒースクリフの方を睨み付けた。すると片方剣突進技ヴォパールストライクを発動しながらヒースクリフの方に走って行ったのだ。

 

「馬鹿!何やって…」

 

そんなことを口に出す前にそれに気付いたヒースクリフが盾で防ごうとしたがキリトの剣はその軌道を巧みに変えてヒースクリフに直撃するはずだった…

 

「!何…!」

 

しかし、キリトの剣がヒースクリフに当たることは無かった。それはヒースクリフの前に出た紫色の障壁が剣を防いだからである。

それは以前会った少女ユイと同じシステム的不死であった。これがプレイヤーに付与されることなどあり得ない。

 

「やっぱりそうか…コイツのHPはどんなことがあっても黄色にならないようシステム的に保護されているんだ」

 

つまりそれは……どういうことだ?あいつがユイと同じプログラムって事なのか?駄目だ…全然分からねえ。あいつの正体に見当がついているのはキリトだけであろう。

 

「この世界に来てからずっと疑問に思っていたことがあった…あの男はどこで俺たちを観察し世界を調整しているのだろうってな…」

 

まさかヒースクリフの正体は…

 

「でも俺は単純な心理を忘れていたよ。どんな子供でも知っている事さ…他人のRPGを傍らで見ている事ほどつまらないことは無い…」

 

この世界を作った元凶…

 

「そうだろ、茅場晶彦」

 

その言葉に周りがざわつく。自分たちのリーダーがラスボスだとキリトは言っているのだ。しかしキリトの言葉にも奴は全く動じず平然と答えた。

 

「なぜ気付いたのか…参考までに教えて貰えるかな?」

 

その言葉は否定では無く肯定であった。つまり奴は本当にあの茅場だという事…

 

「最初におかしいと思ったのはデュエルの時だ。最後の一瞬だけあんた速過ぎたぜ」

 

そんな時からキリトは奴を疑っていたのか…しかしそれだけであんな行動を取るとは…いくらなんでも短絡的ではないだろうか?今回は結果オーライであったわけだがもし違っていたらどうするつもりだったのだろうか?

…まさか何も考えて無かったわけではないよな…

 

「…やはりそうか。君の動きに圧倒されてついシステムのオーバーアシストを使ってしまったよ」

 

それから奴は辺りを見回してキリトの方に向いた。

 

「確かに私は茅場晶彦だ」

 

その言葉にここにいる全プレイヤーが驚嘆する。

 

「付け加えれば100層で君たちを待ち受ける最後のボスだ」

 

「…趣味が良いとは言えないぜ」

 

最強の味方が最後のボスになる…RPGではよくある展開らしいがどうやら俺はそういう展開が嫌いのようだ。

今の俺は腸が煮え返るような怒りを感じている。

それから奴は自分の思い描いていたシナリオをすらすらと話始めた。《二刀流スキル》は全プレイヤー中で最高の反応速度を持つプレイヤーに与えられること、そのスキルを持ったプレイヤーが魔王に対する勇者の役割を持つこと…ムカついてほとんど聞いていなかったが大体がこんな内容であった。つまり俺たちはこれまであいつの掌の中で踊ってただけだということだ。それが無性に腹が立つ…!今すぐあいつに一発ブチ込みたい気分だが生憎ここからは遠い、それに槍も全部切れてしまった。しかし…

 

『あれは…』

 

俺は前方にあるものに気づきそれを手にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトside

 

 ヒースクリフの正体が茅場晶彦だという事とそいつの言葉はここにいる人間全員にとって大きなショックを与えた。特に奴を尊敬して入った血盟騎士団のプレイヤーにとっては受け入れがたいことであろう。

 

「よくも…よくも俺たちの忠誠を…希望を…よくも、よくも!よくもーー!!」

 

片手剣を持ったプレイヤーが叫びながら飛び上がり奴を斬ろうとする。しかしヒースクリフはそいつを見向きもせず左手で何かを操作しようとして…

 

カーーーーーーーン!!!

 

横から聞こえた轟音にさすがのヒースクリフも手を止めた。そこには紫色の障壁に止められた槍が突き刺さっていた。

 

「もう槍は切れていると思ったのだがね」

 

「そうかよ…俺はあんたが串刺しになってくれなくて残念だよ…」

 

ヒースクリフの視線の先には槍を投げた張本人タツヤがいた。タツヤはヒースクリフを睨み付けていた。

 

「それで何かな?まさか全プレイヤーの怒りを代表して私を殺そうとしたのかね?」

 

「あんた自分が何したのか自覚無いの?あんたへの怒りがこんなので帳消しになるわけねえだろ」

 

「確かにそうだ…」

 

この世界に囚われた人にそれを現実で待ち続ける人、それにこの世界で亡くなった人にそれを悲しむ人…茅場晶彦に恨みを持つ人は数えきれない程多いであろう。…俺もその一人だしな…

 

「こいつは俺の分と…あんたを信じて戦い散った部下の分だよ」

 

その言葉を聞くと奴は自分を突き刺そうとした槍を見て、どこか納得した表情をした。

 

「成る程…この槍は《ジーン》君の物であったか…君は彼が死んだことでドロップしたこの槍を使用した訳だね?」

 

「ああ、そうだよ。それで…自分を信じて戦って散った部下に何か言う事は無いの?」

 

すると奴は少し考える素振りをしてその質問に答えた。

 

「彼の死は誠に残念であった…」

 

「そういう言葉はそれらしい表情で言うものだぜ。あんたの表情バグってんじゃねえのか?」

 

その言葉に奴の顔が険しくなる。どうやら先ほどの言葉の中に奴の気に触れる様な言葉があったようだ。

…どこかはさっぱり分からないが…

 

「…そんなに私を挑発して…君は私と戦いたいのかね?」

 

「まさか。あんたと戦うならここにいる連中であんたをタコ殴りだよ。ラスボスなんだからそれぐらいいいだろ?」

 

すると奴は微笑んで答えた。

 

「それは出来ないなタツヤ君。私は最上階で君たちを待たなくてはいけない。ここで私と戦う権利があるのは…」

 

そう言って奴は左手でメニューを操作する。すると俺以外の人が床に崩れ落ちた。俺は咄嗟に倒れ込もうするアスナを抱き締めた。アスナの頭上には麻痺状態のアイコンが…

 

「勇者の役目を持ったキリト君…君だよ」

 

奴との一対一の勝負…これに勝てばアスナをこの世界から解放してあげられる。それなら俺がやることは決まっている。俺は…

 

『奴を殺す…!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タツヤside

 

 

 

 俺たちを麻痺状態にして動きを封じた奴はキリトに一対一の決闘を申し込んだ。ここでキリトが奴を倒せば俺たちはこの世界から解放される。しかし…

 

「駄目だ!あいつには勝てない!」

 

あいつはこの世界を作った張本人だ。この世界の事を奴は全て知っている。お前の切り札の二刀流だって奴が作ったんだ…そんな奴に一人で勝てるわけがない!そんな勝負受けるな!

しかし…

 

「分かった…」

 

「キリト君!」

 

俺の思いはキリトの野郎には届かなかった。アスナの悲痛言葉にもあいつの決意は変わらなかった。

クラインやエギルも呼びかけるがそれでもあいつは止まらなかった。

 

「エギル、クライン…今までサンキュー」

 

その言葉は今まで世話になった奴への遺言のように俺は感じて…あいつは自分の命を犠牲にしてでも奴を倒すつもりなのか!…馬鹿野郎!お前が死んで俺たちが助かったって誰もそんなの喜ぶ訳ねえだろう!お前が死んだらこの世界でも現実でもお前の帰りを待っている奴らはどうすればいいんだよ!

 

「一つ頼みがある…簡単に負けるつもりは無いがもし俺が死んだら…しばらくでいい…アスナが自殺出来ない様計らって欲しい」

 

「よかろう」

 

 

 

 そしてキリトとヒースクリフの殺し合いが始まった。

キリトはソードスキルを使わずに剣を振るう。システムによるアシスト無しであそこまで二つの剣を使いこなしているのはこれまでの戦いの恩恵であろう。しかし…

 

「駄目だ…!全部盾で防がれてる…!」

 

そのキリトの猛攻を奴は容易く盾で防ぎ反撃まで行う…それによりキリトのHPは少しずつ減っていく、ヒースクリフにはまだ一撃も当たってない…そのまま戦闘は続くが依然として状況はキリトが不利のままだ…それに焦ったのであろうキリトは二つの剣にライトエフェクトを纏わせて奴に攻撃をしたのだ。

 

「馬鹿!そんなことをしたら…!」

 

以前の決闘の時は奴の盾を突破出来たが今回もそうなるとは限らない、その上ソードスキル後の長い硬直は相手に隙を見せることになる。リスクが高すぎる…!

しかし一度発動したソードスキルは最後まで止まらない。そのまま奴に猛攻をかけるキリトであったが…

 

パリーン

 

何かが砕ける音がした。砕けたのはヒースクリフの盾ではなくキリトの片方の白い剣であった。キリトの攻撃は奴の防御を超えることは出来なかったのであった。そして硬直で動けないキリトに…

 

「さらばだ。キリト君」

 

そう言ってライトエフェクトを纏った剣による一撃を放つ。それを動けないキリトが避けられるはずがなくそのまま剣はあいつの体を…

 

「な…!なんで!」

 

しかし奴の剣はキリトに当たらなかった。それはキリトの前に麻痺状態で動けないはずのアスナが飛び出しその一撃を代わりに受けたからである。

奴の攻撃を受けたアスナをキリトは抱き締める。そしてアスナの体はこの世界で死んだ奴と同じようにポリゴン片になって消えた。なんでこんな事に…!ちくしょう!ちくしょう!俺は怒りで拳を床に叩き付けようとしたが俺の体は一ミリも動かなかった。なんで…なんで…なんでこんな時に動けないんだよ!

 

 

 

 そこからの戦いは痛々しくて見てられ無かった…アスナの細剣を持ちキリトはふらふろとしながらで剣を振るう…そんな剣が奴に当たるわけなく奴は剣を弾くとその剣は宙に舞った。そんなやる気を全く感じさせないキリトに興が削がれたヒースクリフはキリトに剣を突き刺し…そしてHPは減少していきあいつの体はポリゴン片になって消滅すると思われた。しかし…そうはならなかった。驚くべきことにキリトはHPが0なのに体を保っていたのだ。

 

「はああああああああ!!!」

 

キリトは叫びながら奴にアスナの細剣を突き刺した。そして…

 

パリーン

 

二人の体はガラスのように砕け散った。それはキリトが自分を犠牲にしてあいつを葬ったということだ…

 

『全プレイヤーのみなさんにお伝えします。ゲームはクリアされました。現在ゲームは強制管理モードで…』

 

そんな無機質な声が上から聞こえる。これで俺たちは帰れる…そのことを手放しで喜んでいただろう…こんな結果に終わらなければ…

 

「ちくしょう!なんで死んじまったんだよ!キリト!」

 

クラインの涙声だけが静かなボス部屋に虚しく響く。周りの奴も黙り込んでしまっている。…本当に…本当に…

 

『馬鹿野郎が…!』

 

そして俺は転移時と同じような光に包まれたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付くと俺の視界は真っ暗で頭に何か重いものが載っているような感じがした。筋力が低下しているのだろう…上手く動かせない腕を使ってそれをどける…すると目の前には真っ白な天井に真っ白な壁…ここは病院であろう。

俺の左腕には点滴が刺さっており、右腕は…無機質な黒色の義手であった…

現実に帰って来て真っ先に俺が感じたのはようやく帰って来れたという喜びなどでは無く…あいつらを犠牲にして自分が助かったことへの罪悪感であった。

こうしてアインクラッドでの俺の物語は終わりを迎えたのであった…

 

 

 

 

 

 




勝ったッ!アインクラッド編完!
ついに終わりました。飽き性の私がよくここまで続けられたと本気で驚いています。
次回からはゆっくりまったり更新となるかもしれません。
それでは次回予告です。
現実へと戻ったタツヤは思いもしない人物に再会する…
次回『再会』にレディーゴーーー!!!
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