ついにALO編に突入!意外に早く書けました。
それではどうぞ。
第十六話:再会
俺が現実に帰って来たあの日…病院は一気に騒がしくなった。
無理も無い…今まで長い間昏睡状態であった6000人もの人が一斉に目覚めたのだ、家族に連絡をしたり先生を呼んだり…やることが沢山あるのだろう。
そんな事を考えているとナースの人から俺の家族が既に来ていることを教えて貰った。
そしてついに家族との対面の時が来た…
「おかえり。兄さん」
そう言ったのは黒髪を肩甲骨まで伸ばして車椅子に座っている俺の妹の三ケ島紗夜であった。俺が今まで距離を置いてきたたった一人の妹…
こいつには謝っても許されないような事をしてしまった…そんな妹と会わせる顔が無くて俺は祖父の家を出て一人暮らしを始めたのだ…
でも俺はあの世界で決めたんだ…こいつに許して貰えるまで謝り続けると…
「紗、夜…」
「?何?兄さん」
俺の言葉に彼女は首を傾げる。ここまで言えたんだ…今なら謝れるだろう…!しかし…
「…悪いけどもう疲れたから寝るよ」
結局俺はあの世界で自分で決めた事をやり遂げることは出来なかった…彼女の顔を直視した瞬間に俺にはそんな事をする度胸が無くなってしまったのだ。
彼女が悪いわけでは無い…悪いのは結局臆病で自分勝手で…そんな情けない俺自身なのだ。
あの世界で出会った奴らのおかげで少しは変われたと俺は思っていた…でも実際は何も変わっていなかったのだ…
「…そう…じゃあまた今度来るわ。お休み」
そう言って彼女は病室から出てしまった。
「…悪かったな、わざわざ来て貰ったのに…」
俺の言葉に彼女を連れて来た俺の祖父…橘菊次郎は無言で頷いて同じように病院から出て行った…
それから病室には他の被害者の家族が来ていてお互いに抱き合ったり再会に涙したりしていた。俺がこんな人間で無ければ…こんな事が出来たのかもしれない…そんな考えが頭をよぎった。まあ俺には叶うはずの無い事だったのだと諦めよう…俺は病室のベットに横になり眠りについた。
次の日に俺は検査を受けることになった。どうやらあの世界から帰って来た奴は全員その検査を受けているらしい…表面に現れていないだけでどこかしろ異常が出ている可能性を考慮しているのだろう…
その検査が終わるとリハビリが毎日のように始まった…正直2年間も動かしていない衰えている筋肉を急に動かすのは中々にしんどかった…最初の頃は支えが無いと立てないし、ペンの一本すら持てなかったほどだ。
ちなみに…幸いな事に俺の右腕の義手には衰える筋肉という物が存在しないので不自由無く動かせている。あの世界に行った当初の目的はどうやら果たせたようだ…
俺の家族は毎日のようにお見舞いに来てくれたが未だに俺から話しかけたことは無い…それどころか最近は寝たふりをして彼らが何もせずに帰るのを待っているという最低な行動をしている…我ながら情けない人間だ…
しかし、そんな何も変わらない毎日はある日唐突に終わりを告げた。
「お前もしかしてタツヤか?」
リハビリの休憩中に待合室でぼんやりしていると突然声をかけられた。
振り返るとそこには黒髪のどこかで見たことがあるような青年がいた。もしかしてこいつは…
「お前…キリトか?」
「そうだよ!髪が黒いから別人かと思ったぜ」
あの世界で茅場晶彦を道連れにして共に死んだはずのキリトであった。
キリト…本名は桐ケ谷和人というらしい…からの話では何で自分が生きているのかは本人も分からないらしい…それは最早奇跡という言葉でしか表せないのではないだろうか…そしてキリトの口からは驚くべき事実が聞かされた…
「アスナが目覚めない?」
「ああ、彼女は生きているんだけど意識が戻らないんだ…総務省の菊岡って人から聞いたんだけど他にも300人近いプレイヤーが目覚めてないらしい…」
アスナが生きているという事実にも驚いたが、まだ目覚めて無い奴がいるだと…?一体何があったんだ?
考えられるとすれば茅場の企みがまだ続いているという事だがそれなら他の奴を解放した意味が分からない。
色々と考えてみるがいい考えは思い浮かばなかった…まあ俺如きが考えた程度のものならすぐに原因は分かるはずだしな…
「お兄ちゃーん!…いたいた!勝手にいなくなったら困るよ!」
「悪い悪いスグ。知り合いに会ってさ…」
その声にキリトは反応して申し訳なさそうに手を合わせる。そこには黒髪のボブカットに勝ち気な瞳をした小柄な少女がいた。おそらく彼女が以前キリトがシリカに話していた妹さんだろう…兄妹仲がよろしいようで…お前はしっかり仲直り出来たんだな…それに比べて俺は…
「あの…大丈夫ですか?」
「ああ、何でもないよ」
どうやら俺の表情の変化に彼女は気付いたようだ。心配そうな声で聞いてきた…
「タツヤ紹介するよ。こいつは妹の直葉だ」
「初めまして。桐ケ谷直葉です」
そう言ってご丁寧にお辞儀をするキリトの妹さん…俺も自己紹介をしなくちゃいけないよね…
「三ケ島竜也だ…初めまして」
そう言うと彼女は驚いた顔をして俺に質問をした。
「もしかして…紗夜ちゃんのお兄さんですか?」
!俺はその言葉に驚いた。なんであいつの事を知っているんだ…!あいつと知り合いなのか?
「あ、ああ…」
「やっぱりそうですか。私が行くといつも寝ているって愚痴ってましたよ。今度は起きてて下さいね」
俺は動揺で口がどもってしまった。どうやら彼女はあいつの友達のようだ…
あいつの話をこれ以上聞きたくなくて俺はこの場から逃げ出そうとした…
「あ!そうだ…」
だが途中で俺はある事に気付いて立ち止まる、そして病衣からボールペンとメモを取り出して、そのメモに自分の電話番号とメールアドレスを書いてそれをキリトに渡した。
「?これは?」
「俺の連絡先だ。あの世界では世話になったからな…何か俺に出来ることがあったら遠慮無く連絡してくれ」
世話になったどころの話では無い…あいつがいなければ俺は未だにあの世界に囚われていて下手をしたら死んでいたかもしれない…あいつには返せ切れない程の恩がある…ならば少しぐらいは奴の手助けをしたいと思ったのだ。
「分かった。その時は頼りにしてるぜ」
「あまり期待はしないで欲しいけどな…」
そう言って俺はキリトと別れたのであった。
俺が目覚めてから二か月後、ようやくリハビリも終わり無事退院した俺はついにあのアパートに帰って来た。しかしさらなる問題が俺の前に立ちはだかったのだ…
「あ、あと一ヶ月でここから出てってくれって…」
「仕方無いだろ?契約書に書いてあるんだから」
俺は以前このアパートの一室を借りていたのだが、あの世界に囚われていたためその契約期限があと一ヶ月の所まで迫っていたのだ。
「そんな事言われても…」
「…何?おたく契約を蔑ろにする気なの?それならすぐ出てって貰うよ」
さらに俺の必死の弁明を行うが、結局大家さんには聞き入られなかった。…はぁ。新しいアパートは探さなきゃならないし、バイト先は解雇されるし…踏んだり蹴ったりというのはこういう事を言うのだろう…今日はろくでも無い日だ…
そんな時に携帯電話にメールが来る…宛先はキリトからであった…
「?どうしたんだ?」
あの時キリトにいつでも手伝うと言ったが奴からの連絡は一度も無かった…それなのにどうして…とにかく内容を見よう。俺はメールを開いた。
『タツヤ!急で悪いけど明日の朝10時に東京都台東区御徒町にあるダイシーカフェって店に来てくれ!』
東京都台東区というとここからは少し遠いな…電車と徒歩で20分というところか…それにしても…何故喫茶店なんだ?話をするならどこでもいいだろうに…まあ断る理由は無いが…
『分かった』
俺はそう一言書いてあいつに返信したのだ。
そして現在俺は東京都台東区御徒町にあるキリトの言っていたダイシーカフェに来ていた。木造の喫茶店で看板には流暢な文字で《Dicey Cafe》と店の名前が書かれていてどこか大人な雰囲気が漂う店であった。周囲の所狭しと建物が並んだ感じはどこか《アルゲード》を思い出させる。現在の時間は9時40分…少し早く着いしまった俺は先に店に入ることにした。
「いらっしゃい!久しぶりだな!」
そんな迫力のある低温ボイスが聞こえた。そこにはバーテン服を着てグラスを磨いている、はち切れんばかりの筋肉を持つ黒人店主…阿漕な商売人エギルがいた。
「まさかカフェの店主だとは…てっきりあんたの仕事はプロレスラーだと思ってたよ」
「ハハハハハ!お前も相変わらずだな!ほい、水だ」
「…サンキュー」
口を開けて豪快に笑うエギル…つかそこまで笑うことはねえだろ…何がそんなに面白かったんだ?
俺はエギルから渡された水を一口飲む…うん、美味い…やはりこういう店は水なんかにも気を使うのだろうか…
そんな疑問が浮かんだ。それから久しぶりの談笑をしているとキリトが扉を開けて入って来た。
「悪い…少し遅れたか?」
「いや十分早いぜ。キリト」
キリトの問いにエギルが答える…実際俺が少し早く来すぎただけだしな…キリトが言った時間にはまだ全然時間に余裕がある。キリトはカウンターの椅子に座ると真剣な表情になってエギルに対して口を開いた。
「それでエギル…あの写真は一体何なんだ?」
「?写真?」
「何だ?お前何にも聞いて無いのか?」
「ああ…」
マジかよ…という顔で俺を見るエギル。こいつには恩があるんだ、それだけでこいつを手伝う理由は十分だよ…
すると俺たちの前に一枚の写真を出したのだが…
「?どこの写真だよ」
そこには見たことの無い景色が写っていた。青空に巨大な鳥籠のような物の中に人間の女性のような人がいた。少なくとも現実で取った写真とは思えない。
「それを拡大した写真がこれだ」
そう言って出された写真には鳥籠の中の女性を拡大したものが写っていた。…栗色の髪にあの特徴的な髪型は…
「…アスナにそっくりだな…」
かつてキリトを庇い命を散らしたアスナにそっくりだったのであった。
「それでエギル…これは一体どこの写真なんだ?」
するとエギルはこちらにゲームのパッケージのような物を滑らせてキリトの質問に答えた。
「アルブヘイム・オンライン…妖精の国だ」
それは新しい戦いの始まりであり、同時に俺と彼女が出会うきっかけとなるのであった…
今回はいつもより文字数が少なくてスミマセンm(__)m
次回はついにヒロインが登場します!
妖精の国に行くことを決めたタツヤは再び仮想世界に足を踏み入れる。
そしてシルフ領《スイルベーン》でキリトと合流するのであった。
次回「火妖精と風妖精の五傑」にレディーゴーーー!!!