いよいよヒロインが登場か?
それではどうぞ
アルブヘイム・オンライン…エギルの話ではこのゲームにはレベルという物が無く、スキルの熟練度だけが上がっていくが戦闘はプレイヤーの運動能力に依存するらしい…それにしても…
「あんな事件があったのによくVRMMOなんてまた作れたな」
あんな事件…SAO事件のせいでVRMMOという画期的なゲームは安全性に疑問が生まれて衰退する物だと思っていたが、そうはならなかったのは正直意外であった。エギルの話では《ナーブギア》の後継機には《アミュスフィア》というセキュリティーの強化版が開発されたらしい。なんというか…お前らそれでいいのかよ…そんな事を思ってしまった…
「まあ俺もそう思ったがこいつが今大人気らしい。理由は…翔べるからだそうだ」
へぇ~翔べる…ね…
「妖精だから羽がある…フライトエンジンっていうのを搭載していて慣れると自由に翔ぶことが出来るらしい。まあ高度制限があるらしいがな」
キリトは翔べるという言葉に食い付いて他にも色々聞いていたが、その言葉は途中から俺の頭の中を通り過ぎた。
空を自由に翔ぶ…それは多くの人が一度は持った夢であろう…俺もそんな夢を持ったことが一度や二度はある。
おそらく誰もが一度は抱く夢ではないだろうか…しかし…それは叶うことが無い夢である。人間には自由に空を翔ぶ機能なんて存在しないからだ。…成る程、人気がある理由が分かった気がする。
絶対に現実では体験することが出来ない自分の手で翔ぶということが味わえるのだ…人気が出ない方がおかしいのではないだろうか?
「それでここはどこなんだよ?」
キリトの声で俺の思考は中断された。このゲームのどこの写真なのか…確かにそれが一番重要な点であろう。
「このゲームの中の世界樹という所だ。ここにある城に九種族のうちどの種族が先に着けるかを競っているんだと…高度制限のせいで翔んで行くことは出来ないし、そこに辿り着くためのクエストが馬鹿みたいな難易度らしい」
するとキリトは少し考えて口を開く、何を言うつもりなのかは表情から容易に想像できた。
「エギル、このソフト貰っていくぞ」
「行くつもりなのか?」
そう言うと思っていた…キリトの奴はアスナの事を助けたいと思っている。もし手がかりがあるとすれば、奴は例えそれがどれ程小さい物でも迷わずに行くだろう…キリトとはそういう人間なのだ…どこまでも真っすぐで諦めるってことを知らなくて…本当に眩しい奴だよ…
さて…なら俺がやることはもう決まっているな…
「つまり俺はお前と協力してアスナの所まで行く、もしくはお前だけでもアスナの所に行かせればいいんだな?」
「ああ。頼む」
どっちにしろ俺には拒否するって選択肢は無いがな…こいつには恩があるし、これぐらいの事ならいつでもやってやるよ…!
後々考えると…本当は恩があるからという理由で俺はこんな事を引き受けた訳では無かったのであろう…俺はこんな惨めな現実を見たくなくて…それで仮想世界に逃げようなんて考えたのだ。あの世界なら俺は少しは真面な人間でいれると思って…
なんてことは無い…俺はただ逃避したかっただけなのだ…
「じゃあなエギル。俺は今からソフトと《アミュスフィア》を買いに行くよ」
「待て。タツヤ」
正直金額的にはかなり厳しいが…奨学金を使えばなんとかなるだろう…本当はそんなことはやってはいけないが…俺はそう考えながら店から出ようとしたがエギルに止められる。
「《ナーブギア》で動くぞ。《アミュスフィア》はあれのセキュリティー強化版でしかないからな」
そうか…それならなんとかなるかな…正直奨学金を使うのはさすがに気が引けるからな…
「教えてくれてサンキュー。まあ…精神衛生上は絶対に使いたくねえけどな!」
俺の言葉にエギルは苦笑で返した。俺は近場のゲーム屋でソフトを買うために帰宅したのであった。
俺が疲労の状態でアパートに帰って来たのは夜の8時を越えた頃であった。
つか…いくらなんでも人気過ぎだろ…!なんでどこの店も置いてねえんだよ!俺は近場のゲーム屋に探しに行ったのだが見つからず、他の店に行っても見つからずを繰り返した。…結局見つかったのは11件目の店に行った時であった。
「さて…やるか…」
俺は最初にソフトを入れる。そして鞄の中に入れっぱであった《ナーブギア》を取り出した。気分がいいものでは無いが今はしょうがない…始める前に携帯電話を見るとメールの受信が一件…宛先は思った通りキリトからであった…
『協力者を見つけた。シルフ領の《スイルベーン》にある中央の高い塔の前で待っててくれ』
了解…!不謹慎な話だが…今の方が俺は活き活きしている…なにかしろやることがあればそれ以外の事からは目を背ける事が出来るからな…
「リンクスタート!」
かつてのSAOの時と同じように俺は仮想世界へと入って行ったのであった。
『アルブヘイム・オンラインにようこそ。最初に性別とキャラクターのネームを入力して下さい』
俺の前にはキーボードのような物が出た。性別は…勿論男で、名前は…あの世界にいた時と同じ名前にしよう…少しでもあの時の俺になれるように…名前にはTatuyaと記入した。
『それでは九の種族から一つ選んで下さい』
九種族から一種族を選ぶことになるが俺はどの種族にするかをあらかじめ決めていた。候補は三つ…シルフにノーム、そしてサラマンダーである。どちらも接近戦に向いている種族という特徴がある。いきなり魔法なんて使いこなせるとは思っていないからな…そしてその中から俺が選んだのは…
「やっぱサラマンダーだよな…」
結局俺はサラマンダーを選んだのであった。やはり俺は赤色というものが好きなようだ。
「それでは火妖精領のホームタウンに転送します。幸運をお祈りします」
その言葉と共に俺の体は光りだしたのであった。
光が消えると俺はどこかの町の上空を落下していた…って大丈夫なのかよ!このままだと地面に衝突するんだけど!しかし俺の体は地面まで数メートルという所で速度がゆっくりとなり無事足から着地することに成功した。
サラマンダー領はいかにも砂漠の町という感じであった。辺りを砂に囲まれ、建物もそれと同じような色合いの物が多い。あることが気になった俺は自分の姿を確認してみた…
「まあ、余計な心配だったよな…」
俺の心配事とは自分のアバターのことに関してであった。…別に容姿が気になったわけではない。ただ右腕がどうなっているのかを確認しようと思ったのだが俺の心配は杞憂であったようだ。…まあ、あの時が異常だっただけだしな。次は装備を整えよう…そう思って俺は所持金を確認したのだが…
「なんだよこの数字は!」
俺の有り金…この世界ではユルドと言うらしいが…が余りにも多すぎたのだ。えっと…一、十、百、千、万、十万…とにかく多い。初めてやったゲームとは思えない…
もしかして…!俺は自分のスキルの熟練度を確認してみるとそこには予想通りの結果が出ていた。
「あの世界と同じだ…」
俺がいたSAOの世界と全く同じであったのだ…投剣スキルと槍スキルの熟練度が最も高く、次にランスのスキルが高い…意外な事実であったが都合がいい。正直最初から育ててたらどれ程の時間をかければ世界樹に辿り着くか分からなかったからな…時間短縮出来て万々歳だ。
しかし、アイテムの方はバグっているようなので全部捨てた…使えない物は持たない主義だからな…
そうして俺はこの豊富な資金で装備を購入だけだったのだが…
「…金が切れた」
ランスに盾…そこまでは買えたのだがここで余計な物を買ってしまったのがダメだった。投剣を50本も衝動買いした俺は当初買う予定であったフルプレートアーマーを買うことが出来なかったのだ。
「…無いものは仕方ないよな…」
結局俺はそれを諦めて赤色の軽鎧とその上に羽織る同色のコートを買うことにしたのであった。お金は考えて使おう…俺はこの言葉を心に刻んだのであった…
そうして俺はこの町から出てシルフ領スイルベーンに向かおうとしたのだが生憎どの方向に行けばいいのか分からないので近くにいる人に聞いてみることにした。
「すみません」
「ん?俺?」
その人は赤色の兜に鎧、それと盾とランスを持った男性であった。他にも同じような格好の人をチラチラ見たのでおそらくはサラマンダーの中ではメジャーな装備なのだろう…
「シルフ領のスイルベーンって所に行きたいんですけど…」
「ああ。この先の森を東に行くと着くよ。でも気を付けた方がいいよ、あの森に冗談みたいに強いスプリガンがいて仲間やられちゃってさ~。俺逃げて来たんだよね」
そう言って彼は笑った。正直な話余り笑えるような内容ではないがそういうのが日常茶飯事なのだろう…中々にスリリングなゲームだな…
「そうですか。気を付けます」
「あ!ちょっと待って君!」
そのまま歩こうとすると声をかけられた。
「君ここからは翔んで行かないと結構時間かかるよ?」
「でも翔ぶの練習する時間も無いので…」
キリトは既にこのゲームを始めて協力者まで手に入れたのだ、俺のせいでこれ以上時間を無駄にしたくはない。
「それでも補助コントローラーぐらいは使えないと」
「?補助コントローラー?」
「そうそう。左手を立てて握ってみると出てくるから」
言われた通りにやってみると俺の左手にはコントローラーのような物が現れた。
「前に倒すと上昇、後ろに倒すと下降、左右で旋回だから」
前で上昇、後ろで下降、左右で旋回…よし!覚えた!
「ありがとうございます」
「どういたしまして。初心者に教えるのも先輩としての役目だからね~。まあ気を付けて行きなよ」
俺はその人の言葉に気を付けますと返してスイルベーンのある方向へと翔び立ったのであった。
そして俺は現在現在コントローラーを使って森の上を翔んでいた。やはり気持ちいいな…次はこれを使わずに翔んでみたい…そんな事を考えていると前に三人組の集団が…あの色はシルフか?丁度いい。こいつらに道が合っているか聞いてみよう。
「おーい!あんたら!」
「?サラマンダー?モーティマの使者か?」
俺の声を聞いて立ち止まった三人組。その中でリーダーらしき人物が口を開いた。?使者って何の事だ?
「いや、違うけど…」
「…ではサラマンダー風情が何の用だ?」
俺の返答にリーダーらしき人物は一気に不機嫌になる。…俺なんか気に触るような事言ったかな?さすがに分からないが…
「道聞きたいんだけど…」
俺の言葉に三人は小声で相談し始めた。しばらくすると話は終わったようで俺の方に顔を向けた。その目は獲物を見つけた獣のようにギラギラしていて…なんか嫌な予感がするんだけど…
「丁度鬱憤が溜まっていてな…悪いが貴様にはここで死んでもらう…!」
そう言ってリーダーらしき人物が何かを唱え残りの二人が突っ込んで来た。俺はギリギリその突撃を避ける。
「っチ!速いな…!」
さすがは九種族最速のシルフ…まだ翔ぶことに慣れていない俺にはかわすのが精一杯であった。さらに…
「うおっと!危ねえな!」
リーダーらしき人物からの魔法攻撃…数発の風の刃が俺を襲う。完璧に避けきることは出来ず俺はダメージを食らってしまった。HPは残り8割ぐらいか…
「ほう。なかなか素早いな…獲物が手こずらせてくれないと狩りはつまらないからな。精々俺たちを楽しませてくれよ」
そいつは楽しそうに笑った。
さっきから狩りとか獲物とか…俺は狐じゃねえよ!本当に腹が立つな…寄って集って初心者狩りなんて…
…もうキレた!
『返り討ちにしてやる…!』
まずはこの状況を変えるために俺は森の中へと入って行った。
「あいつ…!逃げるつもりか!」
そう言って二人は俺を追いかけて森の中へ入る。…これで奴らの高速飛行は封じた…こんな木が生い茂っている中でそんな飛行をする奴はいないだろう…馬鹿め!お前らは誘い込まれているんだよ!
「クソ!あいつどこにいやがる!」
そう言って辺りを見回す二人組…まあこっちからはお前らが丸見えだけどな。ちなみに俺は今樹の葉っぱの中に隠れている。さすがにそんな所にいるとは奴らは考えていないようだ。
「二手に分かれて探すぞ!俺はあっちに行くからお前はそっちに行け」
「分かった」
そう言って二手に分かれるシルフのプレイヤー…予想通りの展開過ぎて怖いぜ…そう思いながら俺は狙いを定める…まずは一人め!
「なっ!?」
俺に気付いたようだがもう遅い…!高所からの急降下で勢いの乗ったランスで頭から串刺しにする。…我ながら中々恐ろしい図になってしまったが奴らの自業自得であろう…
しばらく刺し続けているとそのプレイヤーは緑色の炎になってしまった…成る程死んだらこうなるのか…残りは二人…合流される前に一人やらないと…俺は先ほど向こう側に行ったプレイヤーを探すことにした。
『いたいた…!』
もう一人は地面に降りて辺りを見回しながらウロウロしていた。こちらには気付いていないようだ…こういう場合は奇襲をして一撃で仕留めるのが一番ベストだな…反対側を向いた瞬間に突撃しよう。
「な!馬鹿な!」
奴は俺を見て驚く…それは俺が全速力で翔びながら突っ込んでいる…所謂低空飛行をしているからだ。こんな森でそんな速度で翔ぶ奴なんていないと思ったのだろう。しかし…残念ながらこの場所はそんなに入り組んで無いから変な所に衝突することは無い。こんな場所でウロウロしてるなんて…少し危機管理能力に異常があるんじゃないか?俺は奴にランスを突き刺したまま翔び続ける…しばらくするとHPが無くなった奴はさっきの奴と同じように緑色の炎になった。これで後はあのリーダーの野郎だけだな…俺は森の上へと翔んでいった。
「私の部下はどうした?」
「知らねえな。今頃は緑色の炎になってプカプカしてるんじゃないのか?」
俺の言葉に奴は驚いたようだ。自分たちが狩る側から急に狩られる側になったのだ…それは確かに驚くのも仕方ない事であろう…まあ、ざまあみやがれ!
「ありえん!貴様のような初心者に…」
「今度から喧嘩吹っ掛ける相手は選ぶんだな。それでどうすんの?俺と戦うのか?」
こんな挑発をした俺であるが正直こいつには勝てないであろう…装備がさっきの奴らと随分違うし何より空は奴のフィールドだ。先ほどの森に誘い込む作戦も使えないとなると俺に勝ち目は無い…しかしここで強気な態度でいかないと相手はこっちに勝ち目が無いと考えて攻撃してくるだろう…こっちはまだ戦えるという姿勢を見せる事が大事なのだ…さて、奴は思った通りに動いてくれるかな…
「…次は必ず殺す…!覚えていろ!」
そう言って奴はもの凄い速さで逃げて行った。…助かった…俺の思った通りになってよかったぜ…
あんな襲撃があった後、俺はようやくスイルベーンに着いた…この町は今は日中ということもあって全体的に明るい街だ。サラマンダー領のあの町もあれはあれで個人的には結構気に入っているのだが、多くの人はこちらの町を選ぶだろう…そう良い町だ…町はね…
「なんか周りの視線が痛いんだけど…」
現在俺は町にいるシルフからもの凄い敵意を向けられている。…俺こいつらに何もしてないよな?流石にこんな大人数にあんな視線を向けられたらちょっと怖いんだけど…
そんな事で肩身の狭いままキリトに言われた塔に向かうと前には誰かを待っている様子のスプリガンとシルフの二人組がいた…どうやらあいつらを待たせてしまったようだ…
「悪いキリト…で合ってるよな」
「遅いぞタツヤ。何してたんだよ?」
「…まあ色々と…」
主にソフトを探し回ったり、どっかのシルフの集団リンチに遭ったり…本当に散々な目に遭ったな…
「そ、そうか…」
どうやら俺の表情からこれまでの苦労を察してくれたようだ…引きつった笑みで俺に言葉を返してくれた。
さて…これからの計画について話合わないとな…気持ちを切り替えよう…あ!その前に…
「あんたが協力者か?悪いな付き合って貰って…」
俺たちに協力なんてしてくれる物好きな奴に挨拶しないとな。キリトの隣には協力者であろう緑色のいかにも妖精のような服を着た金髪をポニーテールにした女の子がいた。その少女は俺の姿を見るなり腰の長刀に手をかけたのであった。…ってオイ、オイ、オイ、オイ!!!
「サ、サラマンダー!」
「待て待て待て待てーーー!!リーファ落ち着けって!こいつは大丈夫だから!」
キリトの説得と俺が両手を上げて降参の意を示したことによって彼女はその手を戻した…助かった…さすがにここまで来てサラマンダー領からやり直したくは無いからな…それにしても…
「な、なんだよ…?」
「…いや、お前はいつも通りだな~って思って」
「…なんか俺馬鹿にされてるような…」
協力者が女の子って…お前またやっちまったのかよ…まさかこの世界でもキリトの被害者が出るとは…。少しはその女運をクラインにやったらどうだ?…これはアスナも苦労するな…
「ご、ごめんなさい。サラマンダーとはちょっとあって…いきなり攻撃するような事を…」
「…ああ、大丈夫。気にしてねえよ…」
この世界に来てからいつでもプレイヤーに襲われる覚悟は出来ていた。…主にどっかのシルフやシルフやシルフのおかげで…意外に根に持っているんだな俺…
「でも…」
「気にしてねえって言っただろ?あんたは結果的には攻撃しなかったんだから謝る必要は無いよ」
「…ありがとう」
感謝の言葉と共に彼女は明るく微笑む、その眩しい笑顔に俺は目を逸らして無言で頷く事しか出来なかった…やはり俺はこういうタイプの笑顔は少し苦手なようだ…
「そういえばまだ自己紹介してなかったよね?私はリーファ。よろしくね」
「タツヤだ。よろしく」
自己紹介の後、俺たちはこの塔のてっぺんまで昇ることになった。なんでも高い所から翔ぶことで飛行距離を伸ばせるらしく多くのシルフがここを利用するということだ。楽しそうに俺たちの手を引っぱって行くリーファ…なんというか元気な奴だな…そんなことを考えてしまった。
「リーファ!」
もうすぐでそこまで辿り着くというところでリーファを呼ぶ声がした。俺たちが声を発した方向に振り返ると…
そこにはあの森で俺を襲った三人組のシルフがいたのであった…
このALO編では多くの所でオリジナル展開となる可能性があります。あらかじめご了承下さい。
世界樹を目指すためにタツヤ達はルグルー回廊に入るのだが…
次回「挑発と落とし穴」にレディーゴーーー!!!