これからも宜しくお願いします。
そして遂に作者が出したくてしょうがなかった彼らの出番が…
それではどうぞ
俺たちはルグルー回廊からまっ逆さまに落ちて行った。暗い場所を抜けるとそこには全面真っ白な雪景色が広がっていた。
「がふっ!」
そして俺はそんな普段出さないような奇声を出して地面に衝突したのであった。
「っ!痛ててて…」
この世界では痛みは感じないのだか反射的にそんな言葉が出てしまった。辺りを見回すとどこまであるのか分からない程の雪景色が眼前に広がっていた、全面真っ白というのもここの距離感を狂わせている要因であろう。ここでキリトとリーファを探すのは一苦労しそうだな。雪の中に埋まっていたら流石に見つけられないな…まずは近くにいるか確認しよう。
「キリトーー!リーファーー!…いないか…」
どうやら近くにはいないようだ…さて先ずはあいつらを探すか…俺は手を地面から外そうとしたのだが…
「な、な、な、な…」
手を外そうと地面を見るとそこには顔を真っ赤にして口を金魚のようにパクパクさせた仰向け状態のリーファがいた。どうやら彼女の上に俺が落ちたみたいだ。…ってそんな事はどうでもいい!問題は端から見たら俺は彼女を押し倒しているように見えるわけで…段々俺の顔も赤くなってきて…と、とにかく!今俺がやらなきゃいけない事は…
「わ、わわわわわわわわ悪いリーファ!マジごめん!」
全速力で彼女から離れる事であり、必死に彼女に赦しを乞う事である。…男のプライド?そんな役に立たない物は捨ててやる!
「べ、別に気にして無いから大丈夫…」
リーファはどうやら許してくれたようだ。…良かった。最悪斬られる覚悟は出来ていたからな。
さて…後はキリトを探すだけだな。その前に…
「はい」
「あ、ありがとう」
リーファに手を貸して起こさせる。それにしても…時間が経って冷静に考えるとここは一体どこなのだろう?俺たちは上から落ちたので地下だということは分かるが…
このゲームを長いことやっているリーファなら分かるかもしれないな。聞いてみるか…
「なあ、ここって『ヨツンヘイム…』え?」
俺がこの場所をリーファに聞こうとしたら、リーファが呟いた。リーファはひどく驚いた表情で再び口を開いた。
「ヨツンヘイム…最近アップデートされた最難関ダンジョンで強力な邪神がウヨウヨ出てくるの!私も初めて来たけど何でこんな所に…」
そう言って頭を抱えるリーファ…遠回りどころの話ではない。最難関ダンジョンをたった三人で脱出しろなんて…元々順調に行けるなんて思っていなかったが、流石にこれはな…まあ、今回の件は…
「悪い…俺のせいだな…」
完全に俺が原因であろう…俺が余計な所に触ったせいで…何が足を引っ張らないだ…十分足を引っ張っているじゃないか…我ながら自分が嫌になる…
「そんなことはないよ!誰もあんな所にトラップがあるなんて思わないし、そんな噂も聞いた事無かったし」
「でも…」
「ああもう!もうこの話はお仕舞い!早くキリト君探そ!」
そう言ってずんずん前を歩いて行くリーファ。どうやら気を使わせてしまったらしい。彼女がいてくれて助かったな…一人だったらきっと俺はずっとネガティブな思考を続けていただろう。…感謝しないとな。俺はリーファの後に付いて行った。
『それにしてもヨツンヘイムか…』
このゲームは中々にファンタジー色が強いよな。ヨツンヘイム…北欧神話において神々の国に敵対する巨人族が住む国である。…流石にロキとかは出ないよな?出たらどうしよう…勝てる気がしないんだけど…
「あ、いたいた!キリトくーん!」
考え事をしていたらリーファがキリトを見つけたようだ。一面真っ白の中にポツンと真っ黒な奴が立っている。
「リーファにタツヤ!無事だったんだな!」
「ああ、まあな」
どうやらキリトは特には何も無かったらしい。三人揃って悪運がいいと言うか何と言うか…ともかく…
「問題はここからどうやって出るかだよな…」
自分から入った訳では無いので出口が分からない…こんな場所に長いするのは時間の無駄だし、先ほどリーファが言ってた邪神に遭遇したら正直勝ち目は無い。だからといってこんな右も左も同じような景色の場所で出口を探すのは困難だし…八方塞がりだな。
「ユイ、ここ周辺のマップ情報が分かるか?」
「少し待って下さい。…ここから北の方角に出口らしき物があります!」
ユイは現在ナビゲーションピクシーという存在で周囲のマップ情報を得ることが出来るらしい。こんな誰も知らない場所では大いに助かる能力だ。俺たちは北へ向けて歩き出したのであった。
「!Mobの反応です!数は…50体です!」
しばらく歩き続けるとユイが大声で叫んだ。その内容に俺は驚嘆した。確かにリーファはウヨウヨいると言ってたがいくらなんでも多すぎだ!たった三人じゃ出口まで辿り着けないぞ!しかし、その後のユイの言葉はさらに俺たちを驚かせた。
「これは…Mob同士で戦っています!」
どういうわけだ?何で互いに戦っているんだ?こんな訳の分からない所には正直近づかない方がいいのだが…
「タツヤ!行くぞ!どうせそこを通らないと出口には行けないんだ!」
そう、その場所は出口に辿り着くための一本道にあったのだ。他の道を迂回しても行くことが出来ないのでは仕方無い…俺たちはその訳の分からない場所に行くことになった。
ウオオオオオオオオ!!!
ヒーホーーーー!!
俺たちがその場所に近づいていくとMob同士の雄叫びのような声が段々大きく明瞭になった…?あれ?ヒーホー?
「なあキリトさっき『ヒーホー』って聞こえたよな」
「ああ、そうだけど…」
キリトにも聞こえていたようだ…その声に俺は心当たりがあった。もしかしたらあいつかもしれない…!確証は無いが…
「悪い!先行くわ!」
「あ!待てよタツヤ!」
キリトの制止を無視して走り出す。段々と声は大きくなり、遂に奴らの姿が視界に映った。
見間違える訳が無い…そこには青色の頭巾を被った雪だるまのような愛くるしい姿のMob達が…それは俺が昔嵌まった某ゲームのマスコット的存在…妖精ジャックフロストであった。
ジャックフロスト…冬に現れ春になると溶けてしまう霜の妖精だ。怒らせると相手を凍死させてしまうような気性の荒い面もある。そいつが今俺の前にいる…見た目だけで全然違うかもしれないという考えが浮かんだが奴らの頭上に《ジャックフロスト》と出ているのを見て本物だと確信した。
そしてそいつらが戦っている相手は…
「な、何こいつ?」
「で、でかいぞ!」
俺に追いついたキリトとリーファが第一声に発したのがそんな言葉であった。そいつは10メートル程の大きさで背中に槍を担ぎ、左の腰に剣を差した人型のMobであった。リーファ達は驚いているがおそらく驚いている理由が俺とは違うだろう。俺が驚いている理由はそいつに既視感があるからだ。金色の甲冑に緑と赤のマント、そして五つに穂先が分かれた槍に異様な右腕…そいつは…
「…ルーグ」
先ほどのジャックフロストと同じゲームに出てくる魔神ルーグにそっくりだったのであった。
ルーグ…アイルランド語で《輝ける者》という意味の名を持つケルト神話の神である。医術、魔術、音楽などありとあらゆる技能に優れており魔剣フラガラッハと魔槍ブリューナクを持ちその魔槍を振るう姿から長腕のルーグとも呼ばれた…ちなみにかの有名なクーフーリンの父親だ。
頭上には《魔神ルーグ》と出ており、先ほどから魔法で作り出した巨大な火の玉をジャックフロスト達に投げつけている。一方的な虐殺…そういう言葉がしっくり来る光景であった。正直見ていて気持ちの良い物では無い…しかし、彼らには悪いがこのまま俺たちの囮になって貰おう…そう思ってこのままここを通り過ぎようとした時であった…
「ねえ…」
「?どうしたんだリーファ?」
声を上げたのはリーファであった。彼女は辛そうな表情をしていた一体どうしたのだろうか?
「あの子たち助けようよ」
それは意外な言葉であった。彼女自身たった三人でなんとか出来る相手では無いと知っているはずだ、それなのに彼女はあいつを倒そうと言っているのだ。いくらなんでも無謀だ…
「リーファ…君の気持ちは分かるけどあいつはこんな人数で戦えるような相手じゃない。ここは彼らに注意が向いている間に通った方がいい」
キリトも俺と同じ考えであった。しかし、キリトの説得にも彼女は聞く耳を持たなかった。
「確かにそうだけど…あんなのかわいそうじゃない!キリト君もタツヤ君も何も思わないの?」
その言葉に俺とキリトは顔を逸らした。勿論思う所はある…あんな一方的に虐殺されているというのもあるが俺にとっては子供の頃から愛着を持った奴だ、今すぐにでも助けに行きたいという感情はある。…しかし、それではダメなのだ…! 俺たちの目的は世界樹まで辿り着く事である。そのためならどんな事でもやれるが、あいつと戦う事は無駄な事だ。感情にままに動く事は正しい事だ…誰かがそんな事を言っていたが、目的のためには自分の感情を押し殺さないといけない事も多々あるのだ。しかし彼女はそんな考えを否定した…
「私は嫌だ!自分の心に嘘をついてまでやる事なんて意味無いもん!」
…彼女の事を我が儘な人間だと非難する人間もいるだろう。しかし、俺はその真っ直ぐさを羨ましく思った。それはいつまでも逃げ続けている俺にはあまりにも眩しくて…
「もういい。私一人で行くから」
そう言って彼女はあの燃え盛る戦場へと走って行ってしまった。
「なあタツヤ『俺たちも行くぞ』え?」
俺の言葉にキリトは心底驚いた顔をした。
「この先リーファの案内無しで俺たちが世界樹まで行けると思うか?非常に不本意だが彼女と一緒にあいつを倒さないとな」
「…お前ってやっぱり素直じゃないよな」
キリトの言葉に俺はうるせえっと返事をしてあの戦場へと走り出したのであった。
思った通りリーファは苦戦中であった。直撃は一発も受けていないが攻撃の余波で所々ダメージを受けているようだ。しかし、たった一人でここまで持ち堪えているのは素直に感心してしまった。まあかなり疲労しているようだったが…
「はあああああ!」
キリトの剣が魔神の足に突き刺さる…しかし、大したダメージを与えることは出来なかった。やはり固いな…大規模パーティーで挑んでようやく倒せるかどうかという強さであろう。
そして奴はキリトには目も向けずその右手に炎の塊を作り出し、目の前のリーファに目掛けて投げつけた。
「うらあああ!」
俺はリーファを横に突き飛ばしてその火の塊を盾で防ぐ、しかしその余波で生じた爆炎が俺を襲った。
「タ、タツヤ君!」
リーファの叫びが聞こえる、おそらくリーファの場合は全力で避けていたのだろう。盾で防いだとしてもあの爆炎に巻き込まれたらひと溜まりもないと思ったのだろう。しかし…
「こんなの楽勝だし…」
爆炎の中から無事に出てきた俺を見てリーファは驚いたが、すぐに答えは分かったようだ…
「そっか…サラマンダーの特性…」
このゲームでは種族ごとに得意な属性がある。サラマンダーは火属性、シルフは風属性のように…そして得意な属性には耐性がついているのだ。よって火属性の魔法でサラマンダーを攻撃してもダメージは半減する。
それに今俺が着ているこの真っ赤なコート《コート・オブ・レッドサン》には火属性のダメージを三割減らすスキルがついている。中々いい値段であったが買ったかいがあったようだ。
無論、無傷では無いが十分に耐える事は出来る後は…
「リーファにキリト!こいつは俺が押さえるから二人で攻撃しろ!」
あの二人に任せるしか無い…俺は次に来る攻撃に備えて盾を構え直した。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「く、くそ…」
戦闘が始まって数十分…俺たちは大苦戦の真っ最中であった。…迂闊だった。そう言わざるを得ない状況だ。相手の事を侮っていた。
「…チ!キリトまた来るぞ!」
相手の剣による正面からの攻撃をキリトは剣で防いだが衝撃で吹き飛ばされた。
「何だよあのチート武器は…!」
キリトの怒りの籠った言葉に同意したいが生憎そんな余裕は俺には無い。キリトを襲った剣はそのまま鞘の中に戻っていった。魔剣フラガラッハ…伝承では斬れぬ物は無く、ルーグの意思で自在に動くといわれている。しかし、まさか本当にそんな能力があるとは…開発者の奴らは何を考えているんだ?馬鹿なのか?
そんな事を考えていると目の前のルーグは背中の槍に手を掛けた…マズイ!
「全員俺の後ろに行け!」
瞬間、雷が落ちたような音と共に衝撃が俺にやって来て後ろまで吹き飛ばされる。そして俺に衝撃を与えた原因である槍は奴の手に戻って行った。魔槍ブリューナク…投げれば稲妻となり投げた後は自ずと戻る相手を死に至らしめる灼熱の槍…ルーグはこの槍で自分の祖父であり見たものを殺す魔眼を持つバロールを倒したのだ。フラガラッハといいこいつといい…こんなチート武器を二つも持たせて運営は何がしたいんだよ!絶体絶命…そんな言葉がしっくり来る状況だ…
しかも…そんな状況なのは俺たちだけじゃない…
ヒーホーーーーー!!パリーーン
この戦いが始まってからずっと逃げ回っているジャックフロスト…こいつらからも犠牲者は続々出ている。
全く…数分前の自分を責めたい気分だ。こんな戦いをする事自体が愚かだったのだ。正直俺は限界であった。しかし…
「はぁ…はぁ…絶対に諦めないもん…!」
「はぁ…はぁ…ここまで来たら勝とうぜ…!」
未だに闘志を失っていないのが二人…リーファとキリトであった。…流石にあいつらがまだ諦めて無いのに俺だけ音をあげるのはカッコつかないよな…なら…!
「そう言ってるわりには疲れてるんじゃねえのか?」
虚勢でもいい…精一杯の強がりを見せてやろう。
結局はどれだけ俺たちが強がっても状況が良くなることは無かった。奴の攻撃は益々苛烈になりその矛先は再びジャックフロスト達に向けられた。奴が火の玉を投げようとしている場所にはまるで兄弟のように抱き合っている二体のジャックフロストが…
「ダメーーーー!」
叫びながらそいつらの前に立ち攻撃を受けようとするリーファ…あの攻撃を受けたらリーファはひとたまりもないだろう。そんな事…!
『そんな事させるかよ!』
リーファの前に躍り出て盾を構えて火の塊を受け止める。先ほどからの攻撃で耐久値が削られている俺の盾に罅が入っていき、そして…
パリーーン
俺の盾は粉々に砕け散りポリゴン片となった。これでまともに相手の攻撃を防ぐ事は出来ない…しかし、これでよかったのだ。リーファを守れないのならこんなのはゴミ屑と一緒だ…盾とは誰かを守るためにあるのだから…まあ状況はさらに悪くなったがな…俺は心の中で自嘲した。
盾も無くなりさらに敗色濃厚となると思われた、しかしこのリーファの突然の行動によって勝機が生まれたのであった。
ヒーホーーーー!!
リーファが助けた二体のジャックフロストが声を上げる。すると先ほどまで逃げ回っていたジャックフロスト達の動きが止まった。そして…
ヒーーーーホーーーーーー!!!!!
なんとルーグの方に向かい攻撃を開始し始めたのだ。
「え?どういう事?」
さすがのリーファも困惑を隠し切れないようだ。だが正直俺に聞かれても困る、俺だって混乱しているのだ。さっきまで逃げ回っていたジャックフロスト達が何故今になってルーグに攻撃し始めたのか…さっぱり分からん。しかし、俺たちの疑問に答えてくれる奴がいた。
「もしかして、イベントなんじゃないか?」
イベントか…あの世界でも様々なイベントがあったらしいが生憎俺はそういうのに遭遇しなかった。おそらくイベントが起きた理由は…
「ジャックフロストを庇ったからか…」
俺たちはジャックフロスト達を守ることよりもどうやってルーグを倒すのかばかり考えていた。成る程…そういう事ならあの馬鹿みたいな強さも納得出来る。きっとイベントが起きないと倒せないように調整されているのだろう。
ヒーーホーーーーーー!!!!!
ジャックフロスト達がルーグを囲み巨大な氷柱を出してぶつける。無数の氷柱がルーグに直撃して徐々に凍りついていく…そして遂に全身が凍りつき動きが完全に止まった。
「今だ!」
キリトの叫びで俺たちは奴に総攻撃を開始した。
「やああああああ!」
「はああああああ!」
「たああああああ!」
ヒーーホーーーーーー! !!!!
リーファとキリトの剣、俺のランス、フロスト達の氷柱が奴に突き刺さる。奴のHPは徐々に減っていき遂に残り数ドットのところまで来た。
ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
しかし、奴はギリギリでその氷結状態から回復する。…未だ下半身は凍りついたままだが奴は背中の槍に手を掛けて俺たちに降り下ろした。
俺はランスを横に構えてなんとか防ぐ。しかし奴はそのまま俺を押し潰そうとする…だが…
「はああああああああああああ!!」
「やああああああああああああ!!」
残念ながらこいつで終いだ…!キリトの斬り降ろし、そしてリーファの長刀が奴の体に突き刺さった。そして…
ウオオオオォォォォォォ…
魔神は断末魔を上げながらその巨体を真っ白な雪に沈めたのであった…
はい!ジャックフロスト君とルーグ君に出て貰いました!
作者は妖精といわれると一番最初に彼が浮かびます。あの可愛らしい姿…家に一体欲しいです(笑)
ちなみに元々この小説を作ったのもジャックフロストをALOに出したかったのが一番の理由だったりします(笑)
そしてルーグ…こいつは作者のお気に入り悪魔の一つです!私の文章力ではどんな見た目か分からなかった方々はぜひ女神転生やデビルサバイバー2でどんな見た目なのか調べて見て下さい!
これからもちょくちょく女神転生シリーズの悪魔を出すかもしれません…タグにクロスオーバーとか加えた方がいいのでしょうか?
ちなみにルーグは倒れました…そう倒れはしました…
それでは次回予告です!
無事《ヨツンヘイム》を脱出したタツヤ達、しかしリーファに届いたメッセージでサラマンダーがシルフとケットシーの同盟会議を襲撃しようとしている事を知って…
次回「魔槍と裏切り」にレディーゴーーー!!!