ソードアート・オンライン~赤腕の槍使い~   作:G.S

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大変遅くなりました。
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ちなみに少しタグを追加しました。
それではどうぞ


第二十話:魔槍と裏切り

 魔神ルーグはその巨体を雪の上に沈めた…今さらよくもあんな奴を相手にしていたものだと思ってしまう。緊張が解けた俺はそのまま背中から雪にダイブする。はぁ~久しぶりに疲れた…。周りを見るとキリトとリーファも疲れた様子で座り込んでいた。まあ…でも…

 

「俺たち守れたんだよな…」

 

「ああ、そうだな…」

 

「本当に良かった…」

 

キリトとリーファの顔は満足気であった。

…勿論全員助けれた訳ではない。数体のジャックフロストはその体を消滅させてしまった…それでも今ここにいるこいつらは助けれたのだ、それを誇らしく思う。

…?消滅?俺の中で何かが引っ掛かった。何かがおかしい…

 

「?どうしたのタツヤ君?」

 

リーファの言葉に返事も返さず俺は周りを見る…すると俺の目はある一点で止まった。そこには未だ体を雪に沈めたままの魔神ルーグが…

 

『な?!まさか…!』

 

そうだ!この世界では亡骸なんて残らない!Mobは倒されると同時にその体を消滅させるのだから…!つまり…

 

「気をつけろ!まだ終わってねえ!」

 

こいつはまだ死んでいない…!俺の叫びと同時に魔神はその巨体をゆっくりと起こし始めた…

 

「う、嘘…!」

 

「こ、こいつは不死身なのか!?」

 

二人の顔は絶望に染まる…あの時、リーファの一撃があいつのHPを全て削ったのを俺たちは確かに見た。もしHPが0になっても倒せないのなら…それは不死身…絶対に倒せないという事だ。一難去ってまた一難…いや、まだ一難など去っていなかったのだ…!

奴はどんどん俺たちとの距離を詰めてくる。キリトとリーファも立ち上がって武器を構え直した。

そしてルーグは俺たちの目の前で止まり、静かにこちらを見下ろした。俺たちの間に緊張が走る。しかし…

 

『勇敢な妖精たちよ…見事であった』

 

「「「しゃ、喋った!!!」」」

 

え?なにこれ?これもなんかのイベントなのか?戦闘が始まるのかと思いきや急に喋りだしたルーグに俺は混乱してしまった。

 

『我は光なる者…光明神ルーグ…』

 

そう言うとルーグの頭上に出ていた名前が魔神ルーグから光明神ルーグに変わった。名前が変わるとは…中々に面白い仕様だ。

 

『…よくぞ我を悪しき呪縛から解放からしてくれた…そなたらには感謝している』

 

そう言うと視線を俺たちから後ろにいるジャックフロスト達に向ける。

 

『そして雪の妖精たちよ…そなたらの同胞を殺めた罪を赦して欲しい』

 

そう言い終わると再び視線をこちらに向けた。

 

『それでは勇敢なる妖精よ…そなたらに我が力の片鱗を与えよう』

 

そう言って俺たちの前に右手をかざす。すると…

 

「あれ?私?」

 

どうやらリーファの方に報酬はいったようだ…なんだかフロアボスのラストアタックを思い出すな…

 

『その力をどう使うのかはそなた次第だ…それでは再び会える時を楽しみにしよう…去らばだ!勇敢なる妖精たちよ…』

 

そう言ってルーグは踵を返して何処かに行ってしまった。何て言うか… 強烈な奴だったな…

 

 

 

「そういえばリーファは一体何を貰ったんだ?」

 

「えっとね…」

 

奴の姿が見えなくなるとキリトがリーファに近づいて尋ねるとリーファはメニューを開いて確認した。俺も気になって近づいて行く。まあある程度は予想出来るがな…我が力の片鱗って言ってたからおそらくは奴が使用していた武器であろう。つまり《魔剣フラガラッハ》か《魔槍ブリューナク》のどっちらかだろう。それらがどの程度のステータスかは知らないがかなり期待してもいいだろう。…フラガラッハなら片手剣使いのリーファにとっては良いと思うのだが…

 

「《魔槍ブリューナク》だって…」

 

…どうやら違ったようだ 。なんていうか…残念だったな…あんなに苦労して手に入れたのが自分は使えないレア武器だったなんて正直笑えない。まあ彼女はレア武器欲しさに戦った訳では無いから気にしないと思うが、それでもな…

まあ、でも…

 

「良かったな。そいつを売って装備を新調出来るんじゃないか?」

 

このレア武器を高く売れば良いと俺は考えた。誰も持っていない武器だ、かなりの高値で売れるだろう。…こんな武器を売るなんて罰当たりだと言う奴もいるかもしれないが…

 

『これをどう使うかはお前次第って言ってたしな…』

 

ルーグは最後に…その力をどう使うのかはそなた次第だ…と言っていた。つまり…これを売ったお金で新しい装備を買っても良いってことだろ?どうせそんな使えないのを持っていたってストレージの無駄だ。しかし、俺の言葉を聞いてリーファは考え込んでしまった…あれ?駄目だった?だとしたら俺が言える事は一つだけだな…

 

「まあ、リーファの好きなようにすればいいんじゃないんか?」

 

結局はそうなのだ。アイテムは取った人の物だからな…どう使うのかはその人の勝手だ…そう思うとさっきの俺の言葉は要らぬお節介だったな。その後もリーファはしばらく考え込んでしまった。

 

「そうだ!」

 

そう言って手を叩くリーファ…どうやら何か良い案を思い付いたようだ。彼女はこちらを向いてメニュー画面を操作し始めた。すると…

 

『リーファからトレード申請が来ています』

 

俺のところにトレード申請が来たのであった。

 

「…リーファ」

 

「どう?結構良い案だと思うけど?」

 

リーファの自信満々の顔を俺はジト目で見る。確かに好きなようにしろとは言ったがこれはな…

 

「お前な…せめてもう少しマシな使い方しろよ …」

 

「?どうして?タツヤ君槍スキル高いでしょ?」

 

確かに俺の槍スキルはかなり高い…おそらくはその槍も使えるだろう。しかしそういう問題ではない…

 

「俺なんかに渡してもお前にはなんの得にもならないだろ?どうせなら自分にとって有益な使い方にしろよ」

 

「これは私が手に入れた物だからどう使うのかは私の勝手でしょ?それに…」

 

そこで一旦言葉を止めて、リーファはその真っすぐな眼差しをこちらにしっかりと向けて再び口を開いた。

 

「あの時タツヤ君が助けてくれなかったらこれは手に入らなかったし、あの子達も助けられなかった…だからこれはそのお礼!」

 

そう言って微笑むリーファ…前々から感じていたが彼女は中々頑固な性質であるようだ。

 

「…ならありがたく使わせて貰うよ…」

 

リーファの笑顔から顔を逸らしてそう言った俺はトレード申請を受理する。すると《魔槍ブリューナク》は俺のアイテムストレージの中に入っていった。そして俺はストレージの中からそいつを取り出して見てみた。

 

『やっぱり良い槍だな…』

 

魔槍ブリューナクは全体が黒色で穂と柄の間に赤色の宝石のような物が埋め込まれている槍であった。豪華な装飾が付いている訳でもないが、一目でこの槍が只者では無いと俺は感じてしまった。正直俺にこんな大層な武器を持つ資格があるとは思えないのだが…出来るだけ期待に応えてやろう。

次に俺はこの槍のステータスを確認する…今まで使ってきた槍とは雲泥の差だな…?エクストラ効果?

 

「どうしたんだ?難しい顔をして」

 

「ああ、エクストラ効果ってのがついてたんだけどさ…俺には扱い切れないなって思って…」

 

キリトは俺の顔を見て尋ねてきた。この槍に付いていたエクストラ効果は使う人が使えばかなりの戦力増加になるとは思うのだが、俺には使えなさそうな物であったのだ…まあ当分はエクストラ効果無しでやるしかないな…

 

「ともかく先を急ごう」

 

キリトの言葉で俺たちは出口に向けて歩き出した。っとその前に…

 

「じゃあな。もう襲われるんじゃねえぞ」

 

俺は後ろにいるジャックフロスト達に別れを告げる。するとジャックフロストの頭上に『?』マークが…つまり何かのクエストが発生したという事だ。俺はクエストを受理してメニュー画面を開いてどんなクエストか確認した。

 

「『雪の妖精王への謁見』か…一体どんな奴なんだろうな?」

 

「そうだね…この子達の王様ってどんなのかな?」

 

「……」

 

俺のクエスト名を見たキリトとリーファは疑問の声を上げるが俺はその妖精王がどんなのなのか知っているため口を閉じる。…おそらくあの金髪王冠杖持ち巨大ジャックフロストだろう。…あれは別に神話や伝承に出てくる奴ではないのだが…出して大丈夫なのか?…俺は少しばかり心配になった。

 

「じゃあ行くぞ」

 

「え?クエストは?」

 

俺の言葉にリーファが尋ねてくる。まあ普通ならこのままクエストをクリアしたいところだが…

 

「俺たちの目的は世界樹まで行く事なんだ。残念だけどそのクエストに挑んでる時間は無い…ここで大分時間もかかってしまったしな…」

 

「そ、そんな…」

 

俺たちの目的はあくまで世界樹攻略なのだ…これ以上の無駄な時間を使うのは惜しい。しかし、俺の言葉にリーファは顔を俯かせてしまった。まあ、彼女は彼らの事を気に入ってたみたいだからな…別れるのが寂しいのだろう…

 

「…別に一生会えなくなるわけじゃねえんだ。クエストは受理したままだからいつでも受けれるし…リーファの都合が良ければこれが終わってからでも一緒に行ってやるよ」

 

「本当!」

 

「?!ほ、本当、本当だから…頼むから少し離れてくれ」

 

俺の言葉にリーファは喜んで俺に詰め寄って来る…あと数㎝で顔と顔がくっつきそうな距離とこちらを見つめる大きな瞳に俺は赤面しながらそう返す事しか出来なかった。俺の言葉にリーファも自分がどれほど密着していたのか気付いて赤面しながら俺からすごい勢いで離れていった。ビックリした…キリトとは違い女性経験が皆無な俺はあれほど女の子に密着されたことはないのだ。正直心臓に悪い…多分今も顔は真っ赤であろう。

 

「と、とにかく早く出口に向かおうぜ!」

 

「そ、そうね!そうしましょう!」

 

「?どうしたんだ二人とも?」

 

俺は明らかに動揺しながらも先を急ぐ事を提案する。キリトはこちらを不思議そうな目で見ていたがお前には一生分からないだろうさ…そうして俺たちは出口に向けて歩き出したのだが…

 

 

 

「なあ?付いて来てるよな?」

 

「ああ、付いて来てるな…」

 

 キリトの言葉に俺はそう返した。俺たちの後に先ほどからジャックフロスト達が付いて来ているのだ。俺たちの後ろをテトテトと歩いて来る姿はとても可愛らしいく、一昔のゲームを思い出してしまった。

向こうは攻撃してくる気配も無いようなので俺たちは特に気に掛けることなくそのまま歩き続けた。

 

 

 

 

 そして俺たちはその出口らしき場所に着いたのだが…

 

「そんな…」

 

そんな落ち込んだ声をリーファが発したがそれには同意する…俺たちの目の前には高くそびえている螺旋階段があり、おそらくあれを昇ればこのダンジョンから脱けれるのだろう。しかし、その階段は最初の数十メートルがすっぽりと抜けているのであった…これじゃ上まで昇れないな…仕方無いが他の出口を探すしかないとおそらく誰もが思ったのだが…

 

ヒーーホーーーー!!!

 

「すげえ…」

 

俺たちの後ろに付いて来たジャックフロスト達が口から氷結系のブレスを吐く…すると俺たちの前に氷の階段が出来たのだ。これで階段を昇ることが出来る…全く…ジャックフロスト様々だな…

 

「じゃあな。また来るから待っててくれ」

 

俺がそう言うと奴らはヒーホーー!と言って手を振ってきた。…全く可愛い奴らだ…

そして俺たちは階段を昇り、この《ヨツンヘイム》から脱け出せたのであった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんとか《ヨツンヘイム》を脱出した俺たちはリーファが言っていた《ルグルー》という中立地帯にいた。洞窟内という事で周囲は夜のように暗いが建物の明かりが眩しい町だ…

だいぶ予定より時間がかかってしまったが収穫はあったので別にいいかな?俺がそんな事を考えていると…

 

「あれ?レコンからメッセージが来てる…」

 

リーファが立ち止まり呟いた。レコンとは彼女の友達のあの気弱そうな少年だったよな…そう言えば何か調べたい事があるって言ってたけど一体何を調べていたのだろうか?少しばかり気になった…

 

「やっぱり、思った通りだった、気をつけて、s…?sってどういう意味?」

 

リーファは俺たちに聞いてみるがさっぱり分からない。ただ…

 

「何か慌ててて途中のまま送ったんじゃないか?他にはメッセージ来てないのか?」

 

メッセージを書いている最中に何かトラブルがあって途中のまま送信してしまったのか、間違えて途中のメッセージを送ったのか…おそらくはどちらかだろう。後者なら別にいいが前者の場合は彼がトラブルに巻き込まれてしまった可能性が高いな…もしかしたら彼が調べていた物と関係しているかもしれない…

 

「もう一件来てる…!ゴメン!キリト君、タツヤ君私行かないと!」

 

リーファはメッセージを見ると目を見開きひどく驚いた表情になった。そして突然大声で俺たちにそんな事を言ったのだ。こんなに切羽詰まった彼女は初めて見た。つまり彼女がそれほどまで驚くような内容だったって事だろう…

 

「メッセージには何が書いてあったんだ?」

 

「『ゴメン、途中でサラマンダーに襲われた、気をつけて、サラマンダーがシルフとケットシーの会談を襲おうとしてる』…だから…道案内はここまでしか出来なくなっちゃたから…ごめんなさい」

 

そう言って俺たちに頭を下げるリーファ…思ったよりも緊急を要する事態のようだ…領主二人を奇襲するつもりだとは…なら…

 

「それなら早く行って伝えた方がいいな…」

 

「そうなの。だから『行くぞキリト』え?」

 

俺の言葉にリーファは目を丸くして驚いた。全く…何で一人で行こうとするのかな?彼女は…

 

「ここから先、世界樹までどう行けばいいか分からないからな…リーファがいないと困るんだよ」

 

すると彼女は…

 

「でもこれはシルフの問題なの。キリト君ならともかく君はサラマンダーでしょ?私に協力したら二度と自分の領地に帰れなくなるかもしれないんだよ!」

 

それはこちらを思っての言葉であった。俺たちには迷惑を掛けたくないと思ったのだろう。しかし…

 

「悪いけど領地とか種族とかはどうでもいいんだよ…俺たちの目的はあくまで世界樹に行く事なんだ。そのためにはこのままリーファと一緒にパーティー組むことが一番の近道なんだよ」

 

それに…

 

「こっちの厄介事に付き合って貰ったんだ、リーファの厄介事に少しぐらいは付き合ってやるよ」

 

「でも…」

 

リーファは俺たちを巻き込んでしまう事に罪悪感を感じているのだろう。俺の言葉に迷っているようだ。

そして、ここでキリトが俺の前に出て口を開いた…

 

「俺たちはリーファの事が好きなんだ。だからリーファの手助けをしたいと思っている。…だから厄介事なんて思ってないし自分たちの意志でやるんだ」

 

さすがキリト…女の子の説得にこいつほど適した奴はいないな。まあ、好きって言葉を女の子にそう易々使うものではないと思ってしまったが…だからアスナが苦労するんだよ。キリトの言葉にリーファは少し迷ったがすぐにその表情を真剣なものに変えた。

 

「分かった。付いて来て」

 

 

 

 そして現在、俺たちはルグルー回廊を全速力で走りながら話している。こういう時アバターは疲れないから便利だよな…

 

「場所はここから少し離れた蝶の谷、襲撃は四十分後…サラマンダーは大部隊で一網打尽にするつもりだわ…」

 

「領主を討ち取ってサラマンダーにはどんな得があるんだ?」

 

キリトの問いにリーファが答えた。

 

「領主館に蓄積されてる資金の三割入手出来る事と十日間、町を占領して税金を自由にかけれるの…」

 

成る程…それで得た多大な資金を用いてサラマンダーは万全の体制でグランドクエストに挑む算段なのだろう…

 

「間に合いそうなのか?」

 

俺の言葉にリーファは微妙な表情をした。

 

「ギリギリ…かな?正直分からないけど間に合わなかった場合はシルフとケットシーの領主だけでも逃がさないと…最悪私を犠牲にしてもね…」

 

その言葉を聞いて俺は少しばかり不機嫌になる。簡単に犠牲になるとか言いやがって…お前がいなきゃ俺たちは駄目なんだよ…

 

「リーファ…次、俺の前で犠牲とか言ったら怒るからな」

 

「ご、ごめん」

 

俺の言葉にリーファは素直に謝った。リーファも反省しているようだし…まあ許してやろう。

 

「!みんな出口だ!」

 

前を見ると俺たちの前には光が射し込んでいる場所が。もうすぐで出口に辿り着くだろう。

 

「よし!翔ぶぞ!」

 

キリトの言葉と同時に俺たちは翔び出したのであった。

 

 

 

 会談が行われる蝶の谷までは翔んでも少し時間がかかるらしい。このままだと最悪の事態になりそうだな…そんな事を考えているとある疑問が沸いた。

 

「なあ、リーファ。サラマンダーの戦力ってどのくらいなんだ?」

 

俺の言葉にリーファは翔びながら答えた。

 

「そうね…少なくとも五十、六十ぐらいはいるかも。それに…」

 

そこで一旦言葉を止めて再び口を開いた。

 

「サラマンダー…いやALO最強のプレイヤーのユージーン将軍もいるはずよ…」

 

「…マジかよ」

 

この世界最強のプレイヤーかよ…俺の中ではリーファの強さはかなり上位に位置している。…勿論キリトやアスナと比べれば見劣りするかもしれないがあいつらは人外だからな…。そんなリーファよりも強い奴とは一体どれだけヤバイ奴なのだろうか?…正直会いたくないな…

 

「ちなみにユージーン将軍にはモーティマって兄がいて領主をやってるの。タツヤ君サラマンダーだから知ってるでしょ?」

 

「ああ…悪い。領主の名前なんて知らなかったよ。けど…」

 

「けど?」

 

先程のリーファの話の中である言葉が気になった…

それは…

 

「その名前を最近どこかで聞いた気がするんだよな…」

 

モーティマという言葉が何故か初耳ではない気がしたのだ。残念ながらどこで誰から聞いたのかまでは定かではないが必ず俺はその名前を聞いたのだ。なんかモヤモヤする…

 

「自分の領主だし、領内で誰かが話しているのを聞いたんじゃないか?」

 

「…そうかもな。悪い何でもなかったよ」

 

キリトのもっともらしい意見に俺は結局そうだったのだと結論付けてしまった。

…あと十分程後に俺はあの時の自分の浅はかさを後悔することになるのだが俺はそんな事とは露も知らないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐで合流するよ」

 

「「?合流?」」

 

 蝶の谷に向けて翔んでいる最中にリーファが言った一言に俺たちは首を傾げる。一体誰と合流するんだ?俺たちの言葉にリーファは申し訳なさそうに口を開いた。

 

「ごめん言い忘れてた。レコンからこの近くにある塔で一回合流することになっているの」

 

「まあ数は少しでも多い方がいいからな…その塔って目の前にある白いのだよな?」

 

「うん。そう」

 

俺たちの前には白色の高い塔があり、そこで合流することになっているらしい。よく見ると塔の近くに緑色の装備をしたプレイヤーがこっちに手を振っていた。しかし…

 

「あれ?レコンじゃない?」

 

そう、明らかにレコンとは違うプレイヤーだったのだ。羽の色からシルフなのは間違いないが…レコンの協力者だろうか?

 

「あれは…《タルカス》かな?ほらシグルドのパーティーにいた…」

 

言われてみればいたかもしれないな…あまり思い出したくない事だから忘れてた。それにしてもあいつらと協力するのか…正直ギクシャクしそうだな。俺のそんな考えを読んだのかリーファは苦笑しながら俺に言った。

 

「大丈夫だって。シルフの命運がかかっているんだから君を攻撃したりはしないって」

 

「まあ、そうだよな…」

 

前はともかく今は協力関係にあるのだ、こっちとしても昔の事をいつまでも引きずっているのはあまりにも子供ではないだろうか?そう…いくらあいつらに一方的に襲われたとしても…あれ?

 

「どうしたんだタツヤ?」

 

俺の顔を見てキリトが呟いた…だが俺はそれに答える余裕が無かった。俺の頭の中にはある疑問が生まれた。なんで俺はあいつらに襲われたんだ?確か…あいつらに道聞こうとしたんだよな?そしたらあいつらがなにか言って…そうだ!あいつら俺が使者か?って聞いたんだ!

使者、サラマンダー、シルフ、モーティマ、そしてシグルド…それらのキーワードから俺はある結論に達した。あの塔に近づいたら駄目だ!しかし俺たちの前にいるリーファは手を振りながらさらにあの塔に近づいて行く…マズイ!

 

「リーファーー!そのまま突っ走れーー!」

 

「え?どうしたの?」

 

俺はそう叫んでみたがリーファはこちらを向いて止まってしまった。もう間に合わない!そう思った俺は全速力で翔んでリーファを抱きかかえた。

 

「え?何?何?何なの?!」

 

リーファは突然の事に赤面しながら騒ぎ出すが生憎それに答える余裕は今の俺には無かった。

リーファを抱きかかえたまま空中で回転して俺は背中を地面の方に向ける。すると…

 

バーーーーン!!!

 

 

瞬間背中に大きな爆発が直撃した。攻撃は下からでサラマンダーの火属性魔法…だけじゃない!

 

『シルフの風属性魔法もかよ…!』

 

それは俺の背中に深々と突き刺さっている風の刃であった。成る程…火属性魔法の中に風属性魔法を忍ばせてくるとは…やってくれるな!

そのまま俺はリーファから手を離して地面に落下していくのだが…

 

「タツヤ君!」

 

地面と接触する前にリーファが手を掴んでくれたおかげで俺はなんとか不時着に成功して二人揃って地面を転がった。

 

「大丈夫だった?」

 

「まあなんとかな…キリトは?」

 

「キリト君には先に蝶の谷に行くように伝えておいたよ」

 

ナイス判断だ!…俺は心の中でリーファに指を立てた。こいつらの目的はおそらく俺たちの足止めだろう。つまりサラマンダーは会談場所にまだ着いていない。それなら急げばギリギリ間に合うかもしれないからな…キリトだけでも先に行かせたのは正しい判断だ。…欲を言えば領主と面識があるリーファに行って欲しかったが…もう過ぎた話だ。

俺たちは倒れた体を起こして正面を向く。すると俺たちの目の前には十人近くのサラマンダーがいたのだ。

 

「な、なんでここにサラマンダーが!?」

 

リーファは驚きに満ちた声を上げるが、残念な事に俺はどうしてこうなったのか知っている…本当に残念ながら…な…

 

「俺たちは嵌められたって事だよリーファ。あのメッセージで俺たちがここに来るように仕向けて待ち伏せしてたんだ…そうだろ?三人もいたのに一人に負けて無様に帰ってったシルフのリーダーさんよ!」

 

そう言うと樹の陰に隠れていたプレイヤーが姿を現す。その姿を見てリーファは有り得ない物を見たかのような表情になった。

 

「相変わらずの減らず口だな…貴様は…!」

 

それはシルフの五傑の一人でリーファが元いたパーティーのリーダーのシグルドであった。

 

 

 

 




ルーグ「…おれはしょうきにもどった!」
こういう事ですね、別に裏切ったりはしません。
そしてピクミ〇のように後ろを付いて来るジャックフロスト達が可愛いと思ったのは私だけでは無いはずです!(笑)これからもジャックフロストの活躍に期待して下さい!(笑)
ちなみに《魔槍ブリューナク》のデザインはデビルサバイバー2の魔神ルーグが背中に担いでいる槍と同じです。そしてそのエクストラ効果とは?!別に龍脈の力を解放したり、ルーグを憑依してルーグタツヤになったりはしませんよ(笑)
そしてまさかの登場シグルド!これには作者の「あれ?あいつ出番少なすぎじゃね?」という考えの元、彼にも見せ場を作ってあげようと思ったのでちょっと強引ですが出て貰いました。
それでは次回予告です。
シグルドに嵌められて交戦するリーファとタツヤ、しかし敵は万全の態勢で来ており…
次回「エンジェルフォール」にレディーゴーーー!!!
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