ソードアート・オンライン~赤腕の槍使い~   作:G.S

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第二十一話:エンジェルフォール

「相変わらずの減らず口だな…貴様は…!」

 

 俺とリーファの前には十人近くのサラマンダーにかつてのリーファのパーティーリーダー…シグルドがいる。リーファはシグルドの姿を見て何が起きたのか分からないような表情になっている。

 

「タツヤ君嵌められたってどういうこと?それにメッセージはレコンからだったって事は…まさか…」

 

リーファは信じられないような表情になる。あのメッセージはレコンから来たものだ…おそらくレコンが裏切ったのが信じられないのだろう。まあ…

 

「それは無いな」

 

それは有り得ない。これと言った理由は無いがそんな大それた事を出来るような奴じゃ無さそうだし、何よりも彼はリーファを騙すなんて事は出来ないだろう。

 

「レコンはおそらくシグルドが内通してることに薄々気付いてたんだよ。あいつの言ってた調べ物ってのがこの事だろうよ」

 

「え?でもあれは確実にレコンからのメッセージだったよ」

 

リーファの疑問は当然の事であろう。しかし俺はその手口に心当たりがあった。

 

「おそらく麻痺させてから動かないレコンのアバターを動かしてメッセージを送ったんだろう」

 

それはあの世界でオレンジプレイヤーが使う常套手段であった。その手口でストレージのアイテムを奪ったり、倫理コードを解除したりしていたらしい。…今思い出しても吐き気がするがな…!

 

「レコンは内通している現場を見てリーファにメッセージを送ろうとしたが途中で気付かれてしまった。内容が途中のままだったから気になったリーファに現実で連絡を取られたら終わりだと思ったんだろう…だからわざわざレコンの真似してメッセージを送ったんだろ?」

 

俺の言葉に奴は拍手で応じた。どうやら正解だったようだ。…まあ当たっても全然嬉しくは無いが…

 

「中々頭の回転が速いようだな」

 

「あんたなんかに褒められても全然嬉しくないけどな」

 

「あなた…!本当にシルフを裏切ったのね!」

 

シグルドのこの言葉でようやく状況を呑み込めたリーファはシグルドに睨み付けた。…俺も同じように睨み付ける。こいつが裏切った事は確実だが一つ分からない事がある。それは…

 

「シグルド!何でシルフを裏切ったの?!」

 

奴には裏切る理由が無かったからだ…正確に言えばシルフとケットシーのどちらもサラマンダーに手を貸す事にメリットが無いのだ。

このゲームの最終目標は《妖精王オベイロン》の下に辿り着き自分の種族を飛行高度制限の無い《アルフ》に転生させて貰うことだ。勿論そんな事はどうでもいいと考えている奴もいるかもしれないが…ここで重要な点は自分達の種族しか《アルフ》になれないという所である。

九つの種族がたった一つの椅子を巡って争うのだ…ここがこのグランドクエスト攻略において最大の難点であろう。つまり他の種族同士が協力してクリアするという事が出来ないのだ。お互いが《アルフ》の座を巡って敵対関係にあるため一種族だけのパーティーしか組めないのだ…そう考えると今回の会談は異例の事態であろう。元々友好関係にあったのか、それともこのままでは埒が明かないと思っての苦渋の選択だったのか…話が逸れてしまったがつまり簡単に言うとこういう事だ。…もしサラマンダーがこの作戦を成功させて世界樹を攻略したとする…サラマンダー達は念願の《アルフ》になれるがサラマンダーと組んでいるだけのシルフのシグルドは《アルフ》になれないのだ。

もし奴の目的が別の事…例えば領主の座を奪うことだとする。だとしても自分の領地の資金を奪われる上に税金までかけられる…明らかにデメリットの方が大きい。

他にも色々考えてみたがやはり奴が裏切る理由が俺には分からなかった。一体何故…?

 

「フフフフフフ…良いだろう…冥土の土産に教えてやろう!」

 

…今時冥土の土産なんて言葉はB級映画でも使わないぞ。…少しばかり古臭過ぎではないだろうか?まあともかく理由を教えてくれるのだ…黙って聞いてやろう。俺は奴の話を黙って聞き続けたのであった…

 

 

 

 シグルドは自分の勝利を確信しているのだろう…聞いてもいないのにべらべら喋ってくれた。

現在のシルフがサラマンダーに後れを取っていることに苛立ちを感じていた事、近々導入されるという転生システムを使ってサラマンダーに転生し、重要な役職を得るためにモーティマの誘いに乗った事…他にも色々これからの展望のようなものを話していたが聞く必要も無いし、興味も無いのであまり覚えていない。

 

「あなた…そんな事のためにサクヤを売ったの?!」

 

リーファの怒りの声にもどこ吹く風の様子のシグルド…サクヤとはシルフの領主であろう。するとシグルドはこちらに向かって口を開いた。

 

「貴様…タツヤと言ったか…貴様に良い話があるのだが聞きたいか?」

 

「…聞きたくない。あんたの話はもう飽きたよ」

 

すると奴は嫌な笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「まあ、そう言うな。貴様らの目的は分かっている…グランドクエストに挑みたいのだろ?」

 

!何でこいつそれを知っているんだ!俺の表情が予想通りだったのだろう…シグルドはさらに笑みを深くして口を開いた。

 

「貴様らの動きはトレース魔法で監視していた。ルグルー回廊に入っていったからな、世界樹を目指している事は簡単に分かった」

 

…成る程、トレース魔法か…トレース魔法とは使い魔を使って相手を追跡する魔法だ。熟練度が高ければ高いほど相手との距離が遠くなり気付く事はほとんど出来ないらしい。…まあ、全てリーファの受けおりなのだが…

 

「そこで貴様に提案だ。我々の仲間になれ。そうすれば近い内に行われるグランドクエスト攻略に貴様を加えてやろう。あのスプリガンもどうだ?腕は立つらしいからな」

 

それは勧誘であった、奴の表情から本気なのかは分からないが…以前キリトにはパーティーに入れて貰えるならどんな手でも使えと言ったことがある。そのチャンスが巡って来たのだ。確かにあまり信用出来ないかもしれない。…だが、たった三人で行くよりはクリアする可能性は高い。

 

「…それで俺は何をすればいいんだ?」

 

「簡単な事だ。俺たちの奇襲を邪魔する者たちを排除してくれればいい。例えば…そこにいるシルフとかな」

 

そう言ってリーファを見るシグルド…つまりリーファをここで殺せと言っているのだ。その言葉にリーファは一瞬驚いて、すぐに顔を俯かせてしまった。

 

「あんたが裏切らないなんて保証はどこにあるんだ?」

 

「ここにいるサラマンダー達が証人だ。それにモーティマ殿の許可も得ている。さあ!たった三人でクエストに挑むか我々の傘下に入るかどちらかを選べ!もっとも…どちらが最善の選択なのかは火を見るより明らかだがな」

 

確かに普通ならどちらを選ぶかは迷いようが無い…

目的の為なら何でもする…それが現在の俺の考えだ。それにこれは所詮ゲームだ、リーファを殺したからといって現実のリーファが死ぬわけでは無い…

 

『悪い…リーファ』

 

俺は武器を構えたままリーファに近づいて行った…

 

 

 

「…悪いリーファ…恨んでくれ」

 

 俺の言葉にリーファは首を横に振った。

 

「ううん。あなた達は世界樹に行くのが目的だったんだからこうなるのは仕方無いよ…」

 

そう言いつつも悲しそうな表情なのは、ほんの少しでも俺に期待していたからだろうか。…だけどこうする事が一番の近道なのだ…俺はゆっくりとランスを振りかざして…

 

『本当にそれでいいのか?』

 

そんな声が聞こえた気がした。ここでそんな事をいう奴はいないからきっと心の声のような物であろう。おそらく俺の心の中で葛藤が起きているのだろう…

 

『ハッ!情けねえなお前は』

 

…仕方無いだろ。これがキリトの目的に辿り着くのに一番近い道なんだ。

 

『キリトの目的だ?ならお前がここに来た目的は何なんだよ?』

 

俺の目的?…そんな物は無い。ただのキリトの手伝いだ。

 

『違うだろ?お前は現実が嫌になったんだ、自分の感情から屁理屈並べて逃げ続ける現実の自分が…だからこの世界に逃げて来たんだ』

 

…そうかもしれない。キリトの誘いなんてただの口実だ、俺は自分の感情のままにいられた仮想世界に逃げたかったのだ。

 

『逃げ込んだ先でも自分の感情を誤魔化してるんじゃ意味ねえな。…お前は自分の心に嘘を付きたくなかったんだろ?ならやる事ははっきりしてるじゃねえか』

 

そうだな…俺は思い切り頭上に揚げたランスを振り下ろした…

 

 

 

「?どういうつもりだ?」

 

 シグルドは先ほどの笑みを完全に消して俺に尋ねてきた。奴がそんな風に尋ねた事…それはリーファがいる場所とは見当違いの場所に降り下ろされた俺のランスの事であろう。

 

「え?どういうこと?」

 

リーファも何が起きたのか分からないようで混乱しながら尋ねてきた。しかし、俺はそれに答えず…

 

「ははははは…悪いキリト…俺はどうやら自分勝手な人間みたいだ…」

 

呟いて…笑った。何時だって俺はそうだった…他人のためにやった事なんて一つも無い。俺がそうしたいから…俺の行動理由はそれしかなかった。それならやることは単純であろう…俺は武器を奴…シグルドに向けた。

 

「?!貴様!せっかくのチャンスを棒にふるつもりか!」

 

「チャンス?…ああそうだったな…すげーチャンスだった…」

 

シグルドは俺に叫びながら聞いてくる。…確かに良い話だったな…後でキリトに謝らないと…せっかくのチャンスをドブに捨てちまったって…まあ、あいつは笑って許してくれそうだが…

 

「だけどお前を信じろってのは無理な話だぜ。どこに平気な顔で裏切る奴を信じる奴がいるんだ?あんた馬鹿か?」

 

俺の言葉に奴は顔を怒りの表情で歪ませた。…相変わらず考えている事が顔に出やすい奴だな…

 

「それに…感情のままに動く事は正しい人間の生き方だってのが俺の持論でな。誰でもお前みたいなへっぽこ裏切り野郎よりはリーファみたいな奴に付いて行こうとするだろ?」

 

まあ、その持論は現在思い付いたのだが…わざわざ言う必要は無いだろう。俺の言葉にシグルドは堪忍袋の緒が切れたらしく大声で叫んだ。

 

「…貴様…!必ず後悔させてやる!サラマンダー!奴らを必ず殺すぞ!」

 

額に青筋を立てて怒り心頭のシグルドの号令でさっきまで傍観していたサラマンダー達が一斉に武器を構える。それなりに訓練を受けた部隊のようだな…だが…

 

「ハッ!返り討ちにしてやるぜ」

 

「うん!さあ!デスペナルティが怖くない人からかかって来なさい!」

 

こうして…俺たち二人の戦いが始まったのであった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「A隊突撃!C隊は回復魔法、B隊は魔法攻撃用意!」

 

 シグルドの号令で三人のランスを持ったサラマンダーが真っすぐ突っ込んで来た…一人目を躱すと、二人目のランスが俺の目の前に現れるがギリギリ受け止める事に成功しいわゆる鍔迫り合いの状態になる。しかし、相手はもう一人いる…もう一人が俺を後ろから突き刺そうとして…

 

「はああああああ!!」

 

リーファの長刀によって防がれる…そのままリーファは怒涛の勢いで攻めていき相手は防戦一方になる。リーファばっかりにいい格好はさせられないよな…!俺は鍔迫り合いの状態から体をずらして力を一気に緩める…すると相手は体勢を崩した。そのがら空きの体にランスを突き刺す…俺の攻撃を受けて後ろに下がった相手に追い打ちをかけようとして…

 

「ッチ!」

 

相手の魔法攻撃が俺の前を通った事でそれは中断された…俺がランスで突き刺した相手も回復魔法によってHPが戻ってしまった。

 

『このままじゃジリ貧だな…』

 

前衛に後衛、さらには回復役…誰でも思いつくような戦い方だが中々に厄介だ。このままでは俺とリーファでも消耗して殺られてしまうだろう。何とかしないと…

 

「タツヤ君!私に作戦があるんだけど…」

 

現状勝ち目の無い状況で、俺はリーファのその言葉を聞くことにした…

 

 

 

 リーファの作戦とは至極単純であった。この部隊を指揮しているシグルドをまず叩き、その後にリーダーがいなくなって浮足立っているサラマンダー達を撃破する…確かに俺たちがとれる作戦はこれしかないだろう。しかし…

 

『問題はシグルドを一対一の状況に引っ張り出すことだよな…』

 

この作戦が成功するかどうかはどれだけ早くシグルドを倒せるかにかかっている。そのためには仲間の援護が無い状態にあいつを引きずり込むのが一番だ。…しかし、あの男はああ見えて戦いにおいてはかなり慎重で必ず自分が勝てると思った時にしか自ら手を出さないタイプの人間だ。奴を一対一の状況に引きずり込むには…

 

「俺が他の連中を引き付ける…その間にリーファが倒してくれ」

 

これしか無いだろう…俺はサラマンダーだからあいつらの魔法を食らっても一撃で死ぬことなんてないだろう…しかし、リーファは俺の意見に異議を唱えた…

 

「タツヤ君…あなた自分が一番危険な役目を引き受けようとしてるでしょ?」

 

「そ、そんな事は無い…よ…」

 

リーファはジト目でこちらを見てくる…なんとか否定の言葉は出せたが我ながら嘘がひどく下手だな…そんな事を思ってしまった。ただ…

 

「でもリーファ…この作戦ではお前が一番重要だ。おそらく気を引けたとしても遅くて数分…早ければ数十秒かもしれない…お前の腕を見込んで言っているんだ…やってくれるか?」

 

これは俺の本心だ…空中戦において俺はリーファの足下にも及ばないだろう。なるべく早く倒すためには強い方が行くのがベストであろう。俺の言葉にリーファは少し驚いた顔をした後、溜息をつきながら答えた。

 

「はぁ~。なんか上手い具合に言い包められたような気がしないことも無いけど…分かったわ!あいつなんてパパッと倒してあげる!」

 

彼女は笑顔で自信満々に言う…なら俺もやらないとな…

 

「期待してるよ…それまでの時間稼ぎは出来るだけやってやる。三秒後に俺があいつらに突っ込むから同時にシグルドの所に行ってくれ…一、二、三!」

 

俺は全力であいつらに突っ込んで行ったのであった…

 

 

 

リーファside

 

 タツヤ君がサラマンダー達に突っ込んで行くのと同時に私は少し離れた所にいるシグルドの目の前まで翔んで行った。

 

「久しぶりだなリーファ」

 

「ええ。もう二度と見たくない顔だけどね」

 

私の前でシグルドは笑みを浮かべていた。それは自分の勝利を確信しているような笑みで…少し私の気に障った。

 

「一応聞いてあげる…サクヤに何か言いたい事は無いの?」

 

「無いな。あの女がもっとしっかりとシルフを率いていればあんなサラマンダーに遅れは取らなかったのだからな…自業自得だ」

 

自業自得ですって!サクヤは何時でも領主としての仕事をこなしていた。あなたみたいな立場の人がしっかりとサポートしてあげないといけないのに全部サクヤのせいにして…!私は切っ先をシグルドに向けて口を開いた。

 

「ならあなたがここで倒されるのも自業自得ね?」

 

「お前が?私を倒す?…フハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

武器を向けられているにもかかわらず急に高笑いをするシグルド…その不気味さに私は少し恐怖を感じてしまった。

 

「な、何がおかしいの!」

 

「ハハハハハハ…俺を倒すとは笑わせてくれる。お前らは圧倒的な戦力に為す術もなく殺されるのだ。あのサラマンダーもどれだけ持ち堪えられるか…」

 

確かにこいつの言うとおりだ…私たちが勝てる見込みなんて本当は無いのかもしれない。でも…

 

「大丈夫よ。あなたなんて瞬殺してあげるから」

 

タツヤ君は私を信用してあんな役目を引き受けてくれたのだ…その信用には応えたい。それに…

 

『私を助けてくれたもんね…』

 

あの《ヨツンヘイム》での《魔神ルーグ》との戦いの時、そして今も私を守るために戦ってくれている…少しぐらいは恩返しがしたい…私はそのままシグルドに斬りかかった。

 

「やああああああ!」

 

「ック…!」

 

私の渾身の上段からの斬り下ろしを奴は右手の片手剣で受け止める。これなら勝てる…!私はそう感じた。

シルフの五傑なんて呼ばれていた彼だがここ最近は碌に戦った事が無かったのだろう…明らかに剣が鈍い…!

そのまま私は怒涛の攻撃を繰り返し、シグルドは防戦一方になる。しかしそんな私の背後から火の玉が飛来して来た。

 

『マズイ…!もう気付かれている…!』

 

彼が注意を引いていたサラマンダーのメイジ隊の数人がこちらに気付いて攻撃して来たのだ。むしろよくこれまで気付かれなかったものだと思う…タツヤ君はしっかりやってくれたようだ。私は後ろから来た火の玉を上昇することで避けた。それからは防戦一方だった…次から次へと来る火の玉を躱し続け、シグルドの攻撃を剣で受け止める事しか出来なかった。さらに…

 

「リーファー!覚悟ー!」

 

「しまった!」

 

突如現れたシルフの《タルカス》がこちらに剣を構えたまま突進して来たのだ。完全に忘れてた!今まで出て来なかったからてっきりキリト君を追いかけたものだと…しかしそんな私の心中を相手が察してくれるわけが無くそのまま剣が私の肩に突き刺さる…

 

「…っく!」

 

ダメージを受けた事で肩に不快感を感じて顔をしかめる…でも、タダでは終わらせない…!私は目の前にいるタルカスに向けて思いっ切り剣を振り下ろした。

 

「ぎゃあーー!!」

 

そんな声を出しながらタルカスはリメンライトになった。しかし、私は先程まで戦っていたシグルドから目を離してしまったのだ。

 

「ふん!」

 

「きゃあ!」

 

私はいつの間にか背後にいたシグルドの攻撃を背中に受けてしまった。しかし、そのまま彼は追撃せずに距離を取った。

 

『…?どういうこと?』

 

あの場合はそのまま追撃するのがセオリーの筈…勘が鈍っているシグルドでもそれぐらいは分かるだろう。それなのに何故?

その後のシグルド行動はおかしかった…こちらが攻撃してきても積極的に反撃せず防御するだけ…そんなシグルドを私はとにかく攻撃し続けた、そしてついに私の斬り上げがあいつの剣を弾いた。

 

『…今だ!』

 

このチャンスを逃さない…!私は渾身の突きを奴の喉元目掛けて放ち…その時私が一瞬見たシグルドの表情は…なんと笑っていたのだ。そして…

 

「え!なんで?」

 

私の剣は奴に届かず、そのまま私の体は地面に急降下していった…なんで!?まだ時間は大丈夫の筈なのに!私の頭の中は疑問で一杯になる。しかし…

 

「死ね!リーファ!」

 

シグルドのその言葉で私の意識は元に戻った。しかし、この自由落下を続ける体ではあいつの剣を躱す事も受け止める事も出来ない…私は目を閉じてこんな所で死んでしまう事を悟り…

 

「リーファーーーー!!!」

 

後ろから聞こえた大きな叫び声で後ろを振り返るのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リーファがシグルドの元に行ってから俺はひたすら翔び廻っていた。次々と襲いかかるランスや火の玉を躱しつつ、相手の注意がこちらに向くようにちょっかいをかける…こんな事を数分続けているが未だにリーファとシグルドの決着はついていないようだ…

 

『やはり腐ってもシルフの五傑か…』

 

あの男…シグルドはシルフの五傑の一人らしい。シルフの五傑とは…つまりは四天王のようなものだろう。…ちなみにリーファもその一人だ。このまま戦闘が長引けばリーファが不利になる…そしてそんな俺の不安は的中した。

 

「あ!待ちやがれ!」

 

シグルドの方に二人のメイジが行ってしまった…。慌てて追いかけようとするが、ランスを持ったサラマンダー達が俺の前に立ち塞がる。なんとか突破を試みようとするが三人による波状攻撃を防ぐだけで精一杯になり出来ない…

 

『悪いリーファ…!なんとか一人でやってくれ…!』

 

俺は心の中でリーファに謝った。

 

 

 

 それから数分後…俺は未だにサラマンダー達の攻撃に晒されていた。今リーファは大丈夫か?そんな疑問が頭をよぎりリーファの方向に目を向けると…

 

『な?!』

 

なんとリーファは落下している最中だったのだ。馬鹿な!あのリーファが飛行限界時間を間違える訳が無い…!しかし、現実として彼女の羽は消えており、そんな状態のリーファにシグルドは止めを刺そうとする…

 

『やらせるか…!』

 

俺は全力でサラマンダー達の中を突っ切る…。少しダメージを食らってしまったがそんなの後回しだ!とにかく今はリーファを助けないと…!

 

「リーファーーーー!!!」

 

俺は叫びながらリーファの所に全力で翔んでいくが間に合わない…。考えろ!この状況でどうすれば彼女を助けられるか考えないと…俺はふと右手のランスに目を向けた…

 

『これしか無い!』

 

俺は右手のランスを躊躇う事無くシグルド目掛けて思いっ切り投げた…

 

「何?!」

 

シグルドは俺の予想外の行動に驚いて動きを止めてしまった…。そして俺のランスは途中で失速して地面に落ちていく。それにシグルドはしまった!という顔をする。…これこそが俺の狙い…シグルドの動きを封じてその隙にリーファを助ける…。そもそもランスとは槍とは違って投げれるように作られた物では無い、あんな重い物を投げれば途中で落下するのはよく考えれば分かる事だが奴はまんまと引っ掛かってくれた。

成功するかどうかは正直賭けであったがその賭けには勝ったようだ。そしてそのままリーファを連れて地面に降りた…

 

 

 

 

「それにしてもリーファ…なんで途中で翔べなくなったんだ?さすがに飛行時間を間違えた訳じゃねえだろ?」

 

「…分からない。時間は大丈夫の筈だったのに急に羽が消えちゃったの…」

 

 俺たちは現在森の中にいた。シグルドやサラマンダー達はここにはいなく少しばかり休憩しているところだ。それにしてもいきなり翔べなくなるとは…一体どういう事なんだ?俺の中で疑問が浮かんだがそれに答えてくれる奴が目の前に降りてきた。

 

「どうだリーファ?急に翔べなくなった感想は?」

 

「あなた…!一体何をしたの?」

 

リーファの問いにシグルドはよくぞ聞いてくれた!といわんばかりの笑顔で答えた。その左手には豪華な装飾がされた片手剣が握られていた…

 

「これはな…モーティマ殿から頂いた《魔剣エンジェルフォール》だ。この剣にはエクストラ効果があってな…斬った相手を翔べないように出来るのだ!」

 

な、なんだよそれは…!そんなのチートじゃねえか!…この世界で翔べないということは大きなデメリットだ。

翔べない奴は翔んでる奴に攻撃を与える術も、攻撃を防ぐ術も無いのだ。マズイな…俺はどうしようかと考えていると急にリーファに声をかけられる。

 

「ねえタツヤ君…」

 

「なんだリーファ?」

 

俺の言葉にリーファは悲しそうな表情で無理に笑いながら答えた。

 

「私の事はいいから会談に行って」

 

それは自分を見捨ててくれというお願いであった。…俺は突然、彼女の口からそんな言葉が出た事に驚いて言葉が出なかった。

 

「大丈夫…時間稼ぎくらいは出来るから」

 

「いや…そういう問題じゃなくて…」

 

もしリーファが一人で残ったとしよう…必ずリーファは負けてしまうだろう。翔べない相手を倒すなんて奴らにとっては朝飯前だ。

 

「俺も残るよ。流石に今のリーファを一人に出来ない『嫌なの!!』…」

 

俺の声をリーファの大声が遮った。そのまま彼女は俺の方に顔を向けて口を開いた。

 

「今の私…足を引っ張っている。そんな足手まといのせいでタツヤ君が死ぬのは嫌なの!」

 

リーファの心の叫び…俺に死んで欲しく無いというものだった。正直な事を言えば…リーファの気持ちは嬉しかった。だが…

 

「ふざけんなよ馬鹿!」

 

そんな言葉を俺が聞き入れる筈がない。俺はリーファに対して怒鳴ってしまった。

 

「足でまといがなんだってんだ!俺はここに残る…反論は聞かない!」

 

「な、なんでそこまで頑なに…」

 

リーファの問いに無言で返す。先程も言ったがこの世界で死んだからといって現実の自分が死ぬわけではない。それでも…

 

『リーファが死ぬのは嫌なんだ…!』

 

これまでも死んで欲しく無いと思った奴はいるがほとんどは世話になった奴や知り合いだ。死んだら目覚めが悪いから…だから死んで欲しく無いと思ったのだ。しかし、今回は違う…。一体どうしてそんな事を思ったのかは全く見当もつかないが、その気持ちだけは本当なんだ。

俺は先ほど捨てたランスの替わりに投剣とリーファから貰った《魔槍ブリューナク》を装備した。

 

「リーファはここで待ってろ」

 

あいつらは俺が倒す…!俺は槍を構えて奴らの方に翔び出した。

 

 その行為がただの無謀だと知りながらも…

 

 

 

 




はい!シグルドにチート武器を持たせてみました。
この武器の効果はシグルドが言った通りです。『そんなんチートや!チーターや!』ってキバオウ君に言われてしまいそうですね(笑)
それでは次回予告です。
無謀にもたった一人で戦いに挑むタツヤ、しかしシグルド達の攻撃に為す術も無く危機に陥る。その時リーファは…
次回『無謀な戦と提案』にレディーゴーーー!!!
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