ちなみにタイトルを変えました。みなさんご指摘の通りあのランサー兄貴と被るというのが一番の理由です。誠に残念ながら今作品はランサー兄貴とは全く関係ございません。ランサー兄貴の登場にご期待して下さった方々…申し訳ございませんでした。m(__)m
それではどうぞ。
感想募集しています。
俺の提案とは簡単な話個々で当たるのではなく二人同時に奴らに当たろうということであった。
「でも、出来るかな?」
リーファの至極当然な疑問…二人同時に戦うということはお互いの呼吸が合うことが必要となる。もしそうでなければお互いがお互いを邪魔することになるからだ。だが…
「大丈夫だ。問題無い」
先程のリーファの戦いを見て分かった…彼女の動きになら俺は合わせることが出来る筈だ。こんな所で長年の経験が活きるなんて全く思わなかったが…
「そうなの?」
「ああ、俺がリーファの動きに合わせるから頼んだぞ」
「うん!分かった!」
その言葉と共に彼女は剣を構えて駆け出した。
「せいやああああ!」
リーファの上段からの斬り下ろし。…しかしこれは相手の盾で防がれ、そいつの後ろから二人のサラマンダーが翔び上がり彼女にランスを突き立てようとする。だから…
「おらよ!」
翔び上がって薙ぎ払い二人を横に飛ばす…さらに
「らあっ!」
「お、俺を踏み台にした!」
盾を構えているサラマンダーの頭を踏みつけて後ろを取る。そして依然としてリーファの剣を受け止めているそいつをそのまま後ろから槍で突き刺した。
「ッぐ…!」
後ろから突き刺されたことによる不快感で声を上げるサラマンダー…しかしまだHPは残っている。見た目通りかなり丈夫なようだ、さらに先ほど飛ばした二人のサラマンダーが俺に向かってくる。左右からの同時攻撃…どうやっても躱すことも防ぐことも出来ないこの攻撃…俺は右からの攻撃だけを防ぐ…
「はあああああ!」
そして左からの攻撃は俺に当たらず、俺と奴との間に入ったリーファによって防がれる。
やっぱり思った通りだ…彼女の動きが読める…!俺は内心自分の考えが当たった事に喜んでいた。
かつて俺は祖父の道場に通っていた。俺の祖父はかなり変わった人で剣道に柔道、合気道など様々な武術を究めた人であった。…今更ながらとんでもない人だな…。それはさておき、ともかく俺はそんな祖父の道場に通っていた訳だ。…別に武術に興味があった訳では無い、ただ当時家族となるべく距離を取りたかった俺にとって一番手っ取り早い手段が祖父の道場であっただけの話だ。と、まあそんな動機で俺は比較的やっている人が少なかった槍術をすることにしたのだが、やってみると中々楽しいものですっかり嵌まってしまったのであった。もっと強くなりたい…いつしかそんな事を考えるようになった。今ではこんなチンピラを絵に描いたような俺であるが当時は真面目に稽古に励み、同年代の中では一番強かったのだ。…まあ、十数人の中で一番と言っても凄みに欠けるのだが。
だが俺は全国大会などの試合ではいつも決勝戦まで辿り着けなかった。簡単な話…俺には素質が無かったのだ。体力も反応速度も並み程度の俺には全国の猛者に匹敵するだけの素質が無かったのだ。今の俺ならそこで諦めていたかもしれないが、当時の俺は負けず嫌いだったのだろう…彼らに対する対抗策を考え続けた結果がこれだ。
つまりは先読み…相手を観察することで次の動きを予想する。キリトやアスナのような特別な才能ではない…観察と経験による唯の予測だ。こと剣道に関しては祖父の道場のおかげで経験値が多いのだ、ある程度の予測は可能だ。
「やああああ!」
「だああああ!」
リーファの剣、俺の槍を奴らは代わる代わる盾で防ぐ。やはり中々に手強い奴らだ…個々の強さもだが三人による絶妙なコンビネーションに後一歩の所で攻めあぐねている。なら…
「おらああああ!」
穂先を上段に構えたまま突っ込む…相手は正面から受けようと盾を構えた。後一歩で槍が届く距離の所で俺は右足を軸にして半時計回りをする…
「な?!」
回転した勢いで相手の足元を掬い、転倒したそいつを踏みつける。俺の目の前には何が起きたか分からず驚いた表情のサラマンダーが二人…
「だああああ!」
頭、首、胴体に三連続の突きと体重を乗せた一突き…それはあの世界で俺がよく使っていた槍三連続攻撃《トライ・スパロー》と槍単重攻撃《デス・スティンガー》であった。勿論この世界にソードスキルなんてものは存在せず、システムアシストによる威力も速さも無い…だが槍術の動きと同様、俺の体に染み付いた動きである。さらにソードスキル特有の硬直時間も無いので連続で放つ事が出来るのだ。しかしそれでもまだHPは残っているようで倒しきる事は出来なかった。だが…
「はあああああ!」
仰け反ったそいつの喉元にリーファの剣が突き刺さる…するとそいつは赤色のリメンライトに姿を変えた。そのまま追撃せずに後ろに下がる。
「ナイスサポート、リーファ」
「どういたしまして」
そう言って微笑むリーファ…さすがに今のをフォローしてくれると予想できなかった。俺の先読みは見える範囲しか正確には分からない、見えないところは勘で予想するしかないのだ。
「それにしても…あなたって結構乱暴な戦い方するのね?」
「はははは…」
まあ、確かに倒れた相手を踏みつけて動きを封じるなんて武術をやっていた奴の戦い方じゃねえよな…先ほどの戦い方を思い出して苦笑いが出てしまう。爺ちゃんが知ったら怒鳴られるかもな…そんな事より…俺は残る二人目掛けて突っ込んだ。
俺は上段の突きを奴は盾を上げることで防ぐ。すると空いた胴に向かって体を沈めて駆けるリーファ。そして…
「せいやあああ!」
斬り抜けの要領で相手を胴体から真っ二つにした。真っ二つにされたそれはすぐさまリメントライトになる。そして彼女は素早く残るもう一人のサラマンダーに斬りかかった…サラマンダーは盾でそれを防ぐが…
『右ががら空きなんだよ!』
盾を持っている左側ばかりに気を取られて右側がお留守だ…俺は奴の空いた右側に槍を叩き込もうとする。こちらに気付いたそいつはランスで俺を突き刺そうと構えたが…
「やあーー!」
リーファの剣がそのランスを上に弾く…そのまま俺の槍は奴の空いた胴体目掛けて放たれて後ろに飛ぶ。そして…
「「はあああああああ!」」
お互いに武器を構えたまま同時に突っ込んだ。俺の槍とリーファの剣に胴体を貫かれた残る最後のサラマンダーはすぐさまリメンライトになった。
それにしても…恐るべきは彼女の能力だ。当初の予定では俺が彼女の動きに合わせる筈だったのだが、今は彼女の方も俺の動きに合わせている。才能…それだけではない、長年の血の滲むような努力が彼女にこれほどの能力を与えているのだ。自分の唯一の特技を易々と奪われたことに悔しく感じる一方でそんな彼女と共に戦えることを嬉しく思った。
それにリーファが隣にいて一緒に戦ってくれる…背中を預けれる奴がいることがこれほど頼もしいとは…。キリトとアスナがいつもコンビを組んでいた気持ちが分かる気がする。戦闘中にこれほどの安心感を俺は未だかつて味わったことが無いのだから…。不謹慎な話かもしれないがこの時間が永遠に続けば良いのにと俺は今思っていた。
まあ…
『残念ながらもう終わりだが…』
残るはシグルドのみ…俺とリーファは奴目掛けて駆け出した。
「はああああ!」
「おらあああ!」
奴はリーファの剣を左に差してあった片手剣で防ぐが、俺の槍が左肩を貫く。しかし奴は走る不快感に耐えながらすごい勢いで上空へと翔んでいった。どうやら羽が再生したらしい…
「…ッチ!あいつ…!上に逃げやがった!」
まあ、それが正しい判断なのだが思わず舌打ちをしてしまった。それにしても…なんであいつは左の剣を防御に使わずにわざわざ別の剣に持ち変えたんだ?あんな無駄なことをしなければ俺の槍だって防げただろうに…。!もしかして…
「リーファ、もしかしたら翔べるかもしれないぜ」
「?どういうこと?」
俺の言葉にリーファは聞き返してきた。
「あいつ咄嗟にあの剣を庇ったんだ。もしかしたらあの剣を壊したら効果が切れるんじゃないか?」
それに…
「あの剣を庇ったって事は耐久値は高く無いはずだ。そもそもああいう無駄に装飾が多い武器は耐久値が高くないって相場が決まっているんだ」
つまりあの馬鹿みたいな剣を叩き折ればリーファは翔べれる可能性があるという事だ。もしリーファが戻らなかったとしてもあの効果はかなり厄介だからな…十分に壊す意味はある。しかし、リーファは考え込んでしまった。
「そうか…でも壊すのは難しいかな」
「?何でだよ?戦闘中は無理かもしれないがあいつを倒した後にドロップしたあれを叩き割ればいいんじゃねえのか?」
俺の考えにリーファは呆れたように頭に手を置いてしまった。
「…タツヤ君。倒してアイテムがドロップしなかったらどうするの?」
「?…あ!忘れてた…」
この世界ではアイテムドロップというのは一定の確率でしか起きずさらにドロップするアイテムもランダムなのだ。思い返せばさっきの奴らからアイテムは落ちなかった…倒せばアイテムが落ちるものだとつい勘違いをしてしまった。リーファの方を見ればあなたって偶に抜けているよねと言われる始末…面目無い…
だがそれなら確かに奴の武器を壊すのは困難だ…残念ながら俺の武器である槍は武器を破壊するのには適していない、武器を破壊するにはそれなりの重さがいるのだ。
リーファの剣ならあいつを叩き割るのに十分な重さがあると思うのだが空に逃げた奴には届かない。奴もわざわざ二対一という不利な状況になる地上に降りてくる筈がない…
『どうするか…』
周りを観察しながら考える…周りにはそれなりに高い樹木が生い茂っているがシグルドの場所までは高度が足りない。なら俺がリーファの剣を借りて叩き割る…駄目だ慣れない武器で勝てるような相手ではない。再び周りを見回すと少し離れた所に高い白い塔が…
「なあリーファ、今いい考えが浮かんだんだけど…」
俺の考えを聞いた後のリーファのあり得ない物を見たかのような表情はおそらく当分は忘れないであろう。
「よう。たった二人倒すのに大分時間かかってるんじゃねえか?」
今俺はリーファに回復魔法をかけて貰って、上空に翔んでシグルドと対峙している。シグルドは自信満々に答えた。
「だが結局勝つのはこの俺だ」
…あんた自信満々に言ってるけどたった二人にあんなに被害を出して果たして勝ちと言えるのか?…こちらの領主が聞いたら卒倒しそうな負け戦だと思うがな。
ともかく…
「こっちはこれでも結構忙しくてさ…悪いけどとっととケリを付けるぞ」
「フン!減らず口を…!」
その言葉と共にお互い武器を構えて空を走る…
「だああああ!」
「ふん!」
槍を突き出すがシグルドはそれを体を捻って躱す…そのまま奴は俺の後ろに回り込み斬りかかろうとする…なら…
「おらあ!」
「ッチ…!」
突き出した槍を体を回転させて百八十度回す…遠心力の乗ったそれを奴は右の剣で防いだ。そのまま奴に三連続の突きを放つ…
「ッぐ…!」
頭と首は剣で防いだが胴体に槍が突き刺さった。向こうは接近して左の魔剣を振り落ろす…俺はそれを槍の柄で防いだ。そして…
「おらよ!」
奴の腹目掛けて蹴りを放つ…奴が怯んで後ろに下がった所に槍を一突きする。しかし…
「ふん!」
奴はすぐさま上昇して槍を躱し、下降する勢いで俺を斬りつけた。
「ッチ…!」
奴の剣は俺の腕を掠めた…一瞬あの剣の効果が現れることを懸念したが、あいつの様子から察するにあの剣の効果は掠った程度では効果が無いようだ。ただ…
『思ったよりやるな…!』
あの時だって部下がやられたらすぐ逃げたからてっきり部下がいないと何も出来ない奴かと思ったがそうではないようだ。やはりシルフの五傑の名は伊達では無いようだな…
「なんだお前…結構やるな。指揮するよりかはこっちの方がお似合いなんじゃねえのか?」
「…強がりを言えるのも今のうちだ…貴様疲れているのではないか?」
「はあ?疲れてるのはてめえの方だろ?」
と強がっては見るが正直なところは大分疲れている。こっちはさっきまでずっと戦っていたのだ、流石に集中力なんかは切れかかっている。それでもここでくたばる訳にはいかないのだ…俺は再び奴目掛けて突っ込んだ。
「はああああああああ!」
「む!」
俺の連続突きを奴は剣で防いだり、躱したりする。やはり戦い辛いか…槍自体は問題無い、問題は槍を使っての空中戦に俺が慣れていないことである。槍の突きには踏み込みが必要不可欠なのだ、足場が無い空中では思ったようなスピードが出ない。さらに…
『ッチ!またかよ…!』
俺の視界から一瞬奴の姿が消える…奴はただ上昇しただけなのだが、それでも死角に入られるのはかなり厄介だ。なんとなくでしか相手が攻撃してくる場所が分からない。地上戦ならこうはならないのだが…未だに三次元的な動きには慣れないな…
ともかく今後の課題が見つかった所で俺は横にずれる。すると俺のすぐ側を奴の剣が通り過ぎた…
「おらあ!」
俺が振り落とした槍を奴は横にかわした。奴はそのまま突っ込んで来る。こちらは槍を短く持ち直し薙ぎ払いを行うが奴は少し体勢を変える事でそれを躱した。マズイ!
「ふん!ふん!ふん!」
「ッく…!」
奴の連続斬りを柄を盾にすることで防ぐ。槍はリーチの長さ故に近距離戦は苦手なのだ。まさかここまで接近されるとは…少し油断したか。
「どうした!さっきまでの!勢いは!」
「…ッチ!調子に乗りやがって…!」
とはいえここまで距離を詰められたら槍では対応し辛い。先程の蹴りも考えたがこの状態でそれは相手に隙を与えるだけだ。せめて相手の剣より速い一撃を出せれば……速い剣?
『そうか!』
あったじゃねえか最速の一撃!正直使う機会なんて無いと思っていたが…。チャンスは一瞬…奴の剣が大振りになった時…
「ふん!」
奴が剣を頭上に上げたこの時しかない!俺は手を柄から外して穂の近くを持つ。そして一直線にその穂先を突き出した。
「ぬあ!?」
細剣の初級ソードスキル《リニアー》…かの閃光アスナの十八番だ。何度もボス戦で見てきたからこそ真似が出来た。…アスナの技を使ったって言ったら後でキリトに何か言われるかもしれない…そんな考えがふと浮かんだ。
勿論彼女程の威力もスピードも出すことは出来ないが、それでも奴を怯ませて俺が体勢を戻すには十分だ。そのまま後ろに下がって距離を取りつつなぎ払いを行い、奴は再び上昇することでそれをかわそうとする。だがそいつは読めていたぜ…!
俺は素早く槍を手元に戻して上昇した奴の元に槍を突き出した。
「ッぐ…!貴様…!」
顔を狙ったその突きを奴は慌てて躱そうとして胴体に突き刺さる…その不快感に奴は顔を歪めて大きく距離を取った。
…さてもうそろそろいい頃合いの筈だ。俺は奴を睨み付けたまま口を開いた。
「ここいらで決着を着けようか」
槍を構えたままシグルドに対して提案する。奴は剣を構えてその提案に応えた。
「…いいだろう」
互いに走る緊張感…まるで試合のような雰囲気にどこか懐かしさを感じる。そして…
「せやああああああああああああ!!!」
「死ねーーーーーーーーーーーー!!!」
真っ直ぐ相手に突っ込みながら槍を前に突き出す俺、シグルドも同じように剣を前に突き出して突っ込む…互いに距離が近づいていき、遂に互いの距離がゼロになった。
「ッく…!」
結果は相討ち…俺の槍は奴の右肩に貫き、奴の剣は俺の右脇腹に深々と突き刺さり不快感が走る。
奴は肩を貫かれた不快感で顔を歪めたが、その不快感でさえ勝利への確信によって上書きされる…シグルドは高笑いをした。
「フハハハハハハハハ!どうだ!貴様も終わりだ!たかが蜥蜴風情が俺に勝とうなど百万年早いわ!このまま地べたを走り回る事しか出来ない貴様らを嬲り殺しにしてやる!」
シグルドの勝利を確信したような宣言…だが…
「フフフ…」
「な、何がおかしい?」
急に笑い出した俺に戸惑うシグルド。ああ、本当に笑えてくるぜ…
「いや…おめでたい頭だと思ってな」
「…こんな時でもさすがの減らず口だな。このまま貴様が翔べなくなるのを待つだけで俺の勝ちは決まるのだ」
「いいや、俺の勝ちだよ。お前はそんな弱っちい剣じゃなくてもう一つの剣を使うべきだったんだよ」
さっさと俺を殺せば勝てたかもしれないのにな…わざわざそんな武器を使うから負けるんだよ。
「?何を言ってるんだ貴様は?」
シグルドは訳が分からない顔をして尋ねてくる。…どうせ間に合わねえし教えてやろう。
「お前だって知ってる簡単な話だ…」
そう言って俺は奴に不敵な笑みを見せる。
「二人が一人に負ける訳が無えんだよ…!」
その言葉と共に俺は視線だけを上に向ける。するとそこには陽の光を背負って上から急降下するリーファの姿が…その眩しさに思わず目を細める。
「お前の敗因はこの場にいる最高戦力を見誤った事だ。お前でも、ましてや俺でも無い…」
彼女を戦力外と見た時点でお前の敗北は決まっていたのだ。
「はああああああああああ!」
「な、何?!」
上からの声でようやくシグルドは気づいたようだ。なんとかしてこの場から離れようとするが…
「は、離せ! 」
右手を槍から外し奴の手首をしっかりと両手で掴むことで剣を引き抜こうとする奴の動きを封じる。奴は空いている右手でこちらを殴り顔や腹に不快感が走るが俺は意地でもその手を離さない。
そして…
「せいやあああああああああああああ!」
リーファの渾身の一撃がシグルドの剣に当たり甲高い音が起きる。剣が当たった場所に少し罅が入り次第に大きくなる。そして…
パリーン
奴の剣は木っ端微塵になった。しかし…
「マジかよ!」
剣を叩き割ったリーファはそのまま重力に従い落ちて行ったのだ。このままではすごい勢いで地面に衝突する…!
「リーファーーーー!」
俺はとにかくなんとかしようと思い、下に向かって翔んだ。落ちる速度よりも速く…!そんな事をしたら俺が凄い勢いで地面に衝突することは分かっている。それでも…!
「間に合えーーーー!」
俺は叫びながらリーファの左手を掴んだ。
「どうした?翔べないのか?」
「うん。羽は出てるんだけど…」
確かに羽は出ていることからあの効果が切れているのは間違いないだろう…問題はおそらく心理的なものだ。初めて落下したという事実が彼女に恐怖心を植え付けていつものように翔べなくしているのだ。
なら…俺は羽を動かして落下するスピードを落とす。これで地面に落下するまでの時間は稼げた。
「時間は稼ぐ…!ゆっくり焦らずにいつも通りにやるんだ!」
「でも!もし失敗したら…」
「失敗したっていいんだよ!…最悪の場合は俺がリーファの下敷きになるから安心しろ」
その言葉に彼女は目を閉じて集中する…地面に近づいていくにつれて羽を擦るような音が次第に大きくなる。そして…
「や、やったー!」
ついに俺たちの体は上昇した。これはつまりリーファが再び翔べるようになったということであり…彼女の顔を見ると眩い程の笑顔であった。あぁ、やはり…
『この方が彼女らしい…』
さっきのような暗い表情は彼女には似合わない…そんな事を考えてしまった。…我ながらなんてことを考えているんだ俺は!笑顔が似合うだなんてまるで告白の台詞じゃねえかよ!なんだか急に恥ずかしくなってきた…
「?どうしたの?」
「!な、何でも無い!それより早くあいつを倒すぞ!」
リーファに急に声をかけられた俺は慌てて誤魔化して奴がいる場所へと上昇した。
「さて…これで晴れて二対一になった訳だが…」
「降参するなら今のうちよ?」
俺たちの言葉に無言のまま顔を俯けるシグルド。さて…奴はどう動くか…。しばらくすると…
「よくも…」
「ん?」
小さな声で言ってきたので聞き返す。顔を上げた奴の表情は怒りに満ちていた。
「よくも俺の邪魔をしてくれたな貴様ら!ここでぶっ殺してやる!」
そう言って突進してくるシグルド…だが怒りに任せて振り回す剣など動きを読むのは容易い。奴の剣をかわして槍の一撃をお見舞いする。しかし奴は俺たちの攻撃を気にもかけずひたすら剣を振り回した。
なんという執着心だ…ある意味感心するな…。そんな事を考えていると俺の目の前に剣を構えたシグルドが…
「墜ちろ!蚊トンボ!」
奴の怒り狂った剣を上昇することでかわす。俺の目の前には奴の無防備な背中が…
「てめえが…」
「ッぐ…!」
俺は奴の背中に槍を突き刺したまま下に向かって翔ぶ。そして…
「墜ちろ!」
至近距離で火属性魔法を放ち、俺と奴は巨大な爆炎に包み込まれた。しかし、こちらはサラマンダー…無傷とはいかないがなんとか無事だ。対するシグルドは羽を燃やしながら墜ちていった。これですぐには翔べない…
「よし!行くぞリーファ!」
「え?シグルドは?」
「あんなんほっとけば良いんだよ。それより早く会談に向かうぞ」
「え?ちょ、ちょっと待って!引っ張らないでよ!」
あれから大分時間が経ってしまった…一刻も早く会談に向かわなければいけないのだ。これ以上あいつの相手をするのは時間が勿体無いのでこの辺で勘弁してやろう…俺は戸惑っているリーファの手を引いて翔んで行った。
そして現在俺たちは会談に向かうべく翔んでいる最中だ。さすがにあのシグルドも追いかけて来て無いようだ。そんな事で会談に向かっている途中でリーファが急に口を開いた。
「ありがとうね」
「ん?何がだよ?」
「私を助けてくれて…本当にありがとう」
こちらの目を見てそう言うリーファ。そう面を向かって言われるとかなり恥ずかしい…俺は彼女から目を逸らして照れ隠しで口を開いた。
「…別に…俺一人だったら殺られていたからお互い様だ。リーファが考え無しで俺を助けに来てくれたお陰だよ」
そう言うと彼女はあからさまに不機嫌そうな顔をしてジト目でこちらを睨み付ける。
「ちょっと…私が考え無しってどういうことよ」
どうやら少し口が過ぎたらしい…余計な一言が多いのが俺の短所だ。…まあ、俺の短所など両手の指の数では全然足りないが…。とにかく謝らなければ…
「わ、悪い。つい口が…」
あ…ミスった…失言本日二回目…彼女の表情は先程の表情から一変、明らかに怒っていますという風に顔を真っ赤にして俺に対して怒鳴った。
「私の事ずっとそんな風に思ってたの!タツヤ君ひどい!サイテー!もう口聞いてあげない!」
そう言って顔をぷいと逸らすリーファ…急にそんな態度になってしまった彼女に俺は焦ってとにかく謝った。
「わ、悪かったって!本当にすまないって思ってるから!本当だって!」
「…ぷ…あはははははは!」
俺の尋常じゃない焦り方が可笑しかったのだろう…リーファはお腹を抱えて声を上げて笑い出した。そんな彼女を見て俺も声を上げて笑った。
それは久しぶりに出した大きな笑い声であった。
まさかの主人公の特技が発覚!さすがに特技の一つや二つ無いとパッとしませんからね(笑)
ちなみにこの能力…きちんと弱点はあります。自分の見た範囲でしか分からないことと彼の身体能力がそんなに高くないので分かっていても対処できない攻撃なんかがある訳です!
それでは次回予告です…
次回「シグルド、暁に死す」にレディーゴーーーー!!!!
スミマセン冗談です(笑)
次回「同盟会談の結末」にレディーゴーーーー!!!!