ソードアート・オンライン~赤腕の槍使い~   作:G.S

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ちなみに主人公のアパートを東京から埼玉県に変更しました。
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ちなみに感想募集しています。


第二十五話:謎の村と再び…

 無事にシルフとケットシーの同盟会談が終わり、現在俺たちはアルン高原を翔んでいる。これといった敵もいなく途中休憩を挟みながら順調に世界樹までの道を進んでいる。

キリトは今日中に世界樹付近の都市アルンまで着きたいようだがこの感じなら可能であろう…ほぼ徹夜ではあるが。

 

「次は…あの村で休憩しないか?」

 

キリトの言葉で下を向くと前方に小さな村があった。…初めて建物らしきものを見たな…

これまで休憩と言ってもフィールドのど真ん中で休んでいただけだったのだ。村ならNPCの店でアイテムを買えるだろうし…悪くは無いな

俺たちはキリトの言葉に従い降りて行った。

 

 

 

 近づかなければ分からなかったが村には霧が深く掛かっていた。最初に見た感想は不気味の一言であった。

 

「なんだか不気味だね」

 

リーファのその言葉に頷く事で肯定する。しかし、俺はそんな事よりもある事が気になった…

 

「誰もいない…」

 

プレイヤーが一人もいないのはまだ分かる…問題はNPCの姿すら見られないことだ。あの世界でも様々な村があったが無人の村なんてものは無かった。クエスト関連のNPCなり少なくとも何かしろのNPCはいたのだ。

流石にみんな揃って家の中に引き込もっている訳じゃねえだろうし…怪し過ぎる。

 

「なあ怪し過ぎないか?」

 

「ああ」

 

「いくらなんでもそうだよね…」

 

俺の言葉にリーファとキリトも同意してくれた。どことなくホラー映画に出てくるゴーストタウンのような…人が一人もいないところとか、霧が深いところとか…結構共通点が多いな。まあホラー映画の展開でいうなら俺たちは一人ずつ消されてしまうのだが…

 

「散らばらずに固まって行動した方が良さそうだな…特にキリト、勝手に動くなよ」

 

「俺だけかよ!」

 

キリトの予想通りの反応に少し笑いながら俺たちは固まってこの村を散策することにした。

 

 

 

 

 結局三人揃って村の中を見て回っているが何も起こらなかった。残るは建物の中か…俺は手近な民家らしきもののドアに手をかけた。

 

「…開けるぞ」

 

二人が頷いて了承した事を確認して俺はゆっくりとドアを開ける。ギギギという音を出しながら中を確認すると…

 

「何も無いな…」

 

「そうだね…」

 

中はもぬけの殻であった。その事に二人は安心しているようだが俺は内心冷や汗が止まらなかった。これは…非常にマズイ事になった。

 

「?どうしたのタツヤ君?」

 

リーファは俺の様子がおかしい事に気付いていたようで尋ねてきた、俺は焦ってそれに答える。

 

「どうしたもこうしたもねえよ!お前ら気付かないのか?」

 

「気付くって?」

 

「何に?」

 

二人揃って頭に疑問符を浮かべている。マジで気付かないのか?おかし過ぎるだろ!

 

「なんで部屋の中に何も置いてないんだよ!」

 

「「……あ!!」」

 

部屋の中には何も無かったのだ…テーブルや机などNPCの家なら置いてあるであろう当然の物が一つも無い。つまりこの民家らしきものには最初から誰も住んでいなかったのだ。ここは形だけのハリボテの村…その事実に気付いてキリトとリーファの顔は一瞬で青褪めた。とにかく…

 

「全力でこの村から出るぞ!」

 

その言葉を合図に三人揃ってドアを開けて村の出口目掛けて走り出した。

 

 

 

 そして現在俺たちは全速力で出口目掛けて走っている。

なんでこんな場所にトラップがあるんだよ!マジこんなところで死ぬとか冗談じゃねえぞ!ここまで来たのが無駄足になっちまうじゃねえか!そんな事を考えながら走っているとキリトが声を掛けてきた。

 

「なあタツヤ、やっぱりトラップだよな?」

 

「ああ、おそらくな」

 

走りながらキリトの言葉に返事をする。俺の考えではキリトの予想通りこの村はトラップだ。どういう類いのなのかは分からないが…

 

「ちなみにキリト、どんなトラップだと思う?こういうゲームはお前の方が知ってるだろ?」

 

俺の疑問にキリトは少し考えた後、口を開いた。

 

「Mobが大量に出てくるとか、高難易度ボスが出てくる…後は村ごと消滅で全滅バットエンドとかかな…」

 

「最後の奴だけは勘弁だな…」

 

なんだよその開始早々メギドラオンで終了オチみたいなのは!訳も分からず領地からやり直しなんてふざけんなよ!

ともかく今は走るしか無い!俺たちはさらに足を速く進めた。

 

 

 

 

 そして俺たちの目の前に出口が見えるところまで来たのだが…

 

「な、何?今の音」

 

「遅かったか…」

 

底震えするような大きな音が周りから聞こえたのだ…音がどこから出たのかは分からないがかなり近くから聞こえている。こんなところで厄介なのに捕まっちまうなんてな!

 

「キリト、リーファ注意しろ!どうやら出ましのようだ」

 

その言葉と共に俺は槍を構える…キリトとリーファも互いに武器を構えて背中合わせになるように集まった。

さて…どこから来る?右か?左か?まさか…!

 

『上か!』

 

あのスカルリーパーを思い出して、上を見るとそこには霧に覆われた空が…!

……あれ?いないな…そんな事を考えていると…

 

「きゃあ!」

 

「うおおお!?」

 

俺たちの足下の地面が割れてそこから大きな口を開けた巨大なミミズのような化け物が…成る程…ホラー映画じゃなくてモンスターパニック映画だったのか…って何落ち着いてんだよ俺!

しかしそのまま逃げる事も出来ず俺たちはそいつに飲み込まれてしまった…

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

「ああ…なんとかな…」

 

「うん。でも体がベトベト…」

 

 あのまま飲み込まれてバッドエンドという展開に俺たちはならずなんとか生きている。まあ、奴の体内にいたせいで粘液らしきものがベトベトしていてかなり気持ち悪いが…特に女の子のリーファにとってはかなり耐え難いものであろう。残念ながらどうしようも無いがな…

それにしても…

 

「また《ヨツンヘイム》に来ちまうなんてな…」

 

そう…俺たちは再び邪神が蔓延る最難関ダンジョン《ヨツンヘイム》に来てしまったのだ。おそらくあのミミズはこのダンジョンにプレイヤーを送る役目だったのだろう…全くいい迷惑だよ。

 

「ともかく歩かないか?」

 

確かにともかく移動しないとな…キリトのその言葉に従い俺たちは歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 そして現在俺たちはこの広いダンジョンを歩き回っているのだが…

 

「出口見えないね…」

 

リーファの呟きに俺たちは無言で頷いた。どこを捜しても出口らしきものが見当たらないのだ。ユイのおかげで未だに邪神には遭遇していないが、ユイの力を持ってしても出口は分からないらしい…こんなところで時間を無駄にしたくはないのだが…

それに…

 

「リーファ大丈夫か?」

 

「ううん…すごい気持ち悪い…」

 

俺の問いにリーファは力無く答えた。先ほどからずっとこんな感じだ…リーファは体中にべっとりと粘りつく粘液のせいで気分が優れないようだ。…正直な話俺だって今すぐシャワーを浴びたい気分だ。まあこの世界にシャワーなんて無いがな…

タオルがあれば彼女に貸す事も出来るのだが、生憎そんなものはないので我慢して貰うしかあるまい。俺たちは最悪な気分のまま再び歩こうとしたのだが…

 

「!前方にMobの反応…かなり近いです!」

 

な!その言葉に俺たちは驚いた。こんな状態であんな化け物と殺り合わなきゃいけねえのかよ!間違い無く俺たちの方が殺られるぞ!以前戦った魔神ルーグを思い出す…あの化け物染みた強さ…あの時勝てたのはただ運が良かっただけだ。…もう二度と戦いたくない相手だ。

しかしここまで近付かれたら戦うしか道は無い…俺たちは武器を構えて敵に備えたのだが…

 

「あいつは…」

 

「あの子だよね…」

 

俺たちの目の前に現れたのは青色の頭巾に雪だるまのような小さな体…あの時共に戦った《妖精ジャックフロスト》だったのだ。

 

 

 

 

「まさかまた会えるなんてね」

 

 そう言ってジャックフロストを抱っこするリーファ…その顔はすごく嬉しそうだ。ジャックフロストも満更では無さそうな顔をしているように見える…

彼女はあいつの事を気に入っているみたいだし、思ったより早く再開出来たようで良かったな。

それにしても一体だけなんだな他の奴らとはぐれたのかそれとも…

そこで思考を止めた。俺が考えても仕方ねえしな…ふとジャックフロストの方を向くと…

 

「うん?どうしたの?」

 

ジャックフロストはリーファと向き合っていた。頭に疑問符を浮かべるリーファ、もしかして…

 

「リーファ!今すぐそいつから手を離せ!」

 

「え?うわああああ!!」

 

俺の忠告は遅かったようで彼女…リーファはまるで雪だるまのようになってしまった。

ジャックフロスト…怒らせると人間を凍死させる妖精…しかし怒らなくても気紛れで人を氷付けにする事があるらしい…

 

「オイ!何とかしないと!」

 

「ああ、ちょっと待ってろよ!」

 

そう言って氷を溶かすために焦って火属性の初級魔法を唱える…そして唱え終わると同時に俺はある事に気付いた…

 

『そういえば《魔槍ブリューナク》のエクストラ効果が…』

 

しかしもう唱え終わった魔法は放たれるしかない。そして…

 

「なんじゃこりゃーーーーーーー!!!」

 

威力がブーストされた事によって生じた爆炎に巻き込まれたキリトによる絶叫…マジでスマン…弁明のしようが無い。どうやら俺は焦ると色々とやらかすらしい…

そして…

 

「アァツッーーーー!!!」

 

そう言って地面を転がるリーファ…彼女には本当に謝らないとな…一頻り転がり終わると彼女は顔を真っ赤にしてこちらにドスドスと詰め寄って来た。…ああ、やっぱり怒ってる…

 

「ちょっとタツヤ君!あなた加減ってものを…」

 

「わ、悪いリーファ…ついやっちまった…」

 

怒っているリーファに俺は苦笑いをして赦しを乞う。しかし俺はある事に気付いた…

 

「なあリーファ、気持ち悪いのはもう大丈夫なのか?」

 

「はぁ?…あれ?ベトベトが取れてる…」

 

どうやら先程のあれで彼女に不快な思いをさせていた粘液が取れたようだ。正直予想外な事であったが、まあ結果オーライという事かな?リーファは清々しい笑顔で俺に告げた。

 

「まあ、今の私は機嫌が良いからさっきの事は許してあげるね」

 

「サンキュー、リーファ」

 

リーファが笑って許してくれた事に感謝しつつ、俺は先程爆炎に巻き込まれたキリトを探した。すると…

 

「なんだ…大丈夫そうだな」

 

「オイ!これのどこが大丈夫なんだよ!」

 

キリトは髪をアフロのように爆発させながらも生きていた。所々焦げているが大丈夫であろう…キリトだし。

 

「なんかお前…俺の扱い酷くないか?」

 

「そんなことは無い。妥当な判断だ」

 

そんなふざけたやり取りをしているとリーファがやって来た。そしてキリトを見るなり大爆笑したのだ。

 

「あははははははは!何その髪?面白過ぎだよ!」

 

リーファの言葉を聞いてよく見てみる…確かに中々面白い格好だ。ただでさえ真っ黒なのに所々焦げているせいで全身が真っ黒に見える。かの有名なススワタリのようで…

 

「確かに笑えるな…」

 

「でしょ!」

 

リーファの言葉に同意する、なんだか無性に笑えてきたな…俺は必死で笑いを堪えてみるがどうやら限界のようだ。

 

「…ぷ…あはははは!悪いけど我慢出来ねえわ!あはははは!」

 

腹を抱えて笑う俺…リーファの方を見ると彼女は目に涙を溜めながら笑っていた。

一頻り笑って冷静になった俺たちはいじけているキリトに謝る事にした。

 

「ごめんねキリト君、あまりにも可笑しくて…」

 

「悪かったな…少し笑い過ぎた」

 

「いや、それはいいんだけどさ…」

 

そう言って俺とリーファの顔を見るキリト…

 

「随分と仲が良いいよな」

 

キリトの言葉を頭の中で反復させる。…仲が良いか…彼女と会ったのはほんの数時間前だ。たった数時間で俺がそこまで親密な仲になれる訳は無いと思うのだが…。まあ、言われて悪い気はしないが…今の俺とリーファの関係は気の合う相棒というのが一番しっくりくる。例えるならキリトとアスナのような……あ…あいつら夫婦だわ、じゃあ違うか…そんな事を考えながらリーファの方を見ると顔を真っ赤にさせて口をアワアワさせていた。…一体どうしたのだろうか?

 

「なあリーファ、どうし『な、なななな何でもないから!』そ、そうか…」

 

様子がおかしいと思ったので聞いてみようとしたらすごい勢いで否定された。なんかよく分からないがおそらくは大した事が無い話なのだろう。俺たちは再び歩き始めた。

 

 

 

 

リーファside

 

 キリト君に言われた言葉がまだ頭の中に残っている。仲が良い…きっとキリト君は友達としてという意味で言ってタツヤ君もそう解釈したんだと思う。でも私は違った…仲が良いっていうのをその…男女の仲と勘違いしてしまってだからあんなにあたふたしてしまったのだ。

タツヤ君と一緒にいるとドキドキする…いつも私の味方でいてくれて、頼りになって…あのシグルドと一緒に戦っている時も私は内心すごく楽しくてワクワクしていたのだ。ずっと一緒にいたい…今もそう感じている…

 

「聞いてるかリーファ?」

 

「!う、うん。どうしたのキリト君?」

 

どうやら考え事をしていてキリト君の声に気付かなかったようだ。キリト君は呆れた表情でこちらを見ている。

 

「あのな…さっきから何度も話し掛けてたんだけど」

 

「ご、ごめん。ちょっと考え事を…」

 

えへへへ…と笑いながらそう言うとキリト君は近付いて小声で話した。

 

「なあ…リーファ一つ聞きたいんだけどいいか?」

 

「?うん。別に良いよ」

 

聞きたい事って何なのかな?私が少し気になっていると…

 

「リーファってタツヤの事が好きなのか?」

 

…そんな爆弾発言をしてくれました。私の顔は段々と真っ赤になって自分でも驚く程の大声を出してしまった。

 

「キ、キキキキキリト君!何言ってんの!」

 

「?違うのか?」

 

私たちより前にいたタツヤ君が振り返って尋ねてきたのを何でも無いよと言って返す。

キリト君は腕を組んでおっかしいな…と言っている。

 

「てっきりそうだと思ったんだけどな…」

 

「ち、違うよ…あはは…」

 

言葉ではなんとか否定して見せたものの私は今まで味わった事が無いほど動揺していた。あ、危なかった…鈍感なキリト君じゃ無かったらバレてたかもしれない…

でも本当の気持ちはどうなのかな?私が好きな人はお兄ちゃんだった。あの世界に囚われていたお兄ちゃんのお見舞いにずっと行って、お母さんからお兄ちゃんが本当は従兄だという事を教えて貰ってから私の中で恋心が生まれた。お兄ちゃんが帰って来たときはすごく嬉しかった。でも…お兄ちゃんにはすでに好きな人がいたのだ。

…もしかしたらタツヤ君を好きになる事でその事を早く忘れようとしているのかもしれない。それなら…

 

『なんて最低なんだ私…』

 

自分の行動に嫌気がさす…彼を使ってお兄ちゃんへの気持ちを忘れようとするなんて彼にとってはいい迷惑だ。

 

「まあ確かにあいつ愛想無いもんな。それに、ここだけの話…あいつ毎日カップ麺で料理出来ないらしいからな」

 

「しっかり聞こえてるぞキリト」

 

自己嫌悪に陥っている私にキリト君は小声で話してきたが振り返らずにそう返すタツヤ君…今までの会話を彼が黙って聞いている筈が無いので偶々さっきのカップ麺云々の話が聞こえたようだ。…良かった…私はホッとする。

彼はさらに言葉を続けた。

 

「大体俺は料理が出来ないんじゃなくてやらないだけだ。そこを勘違いするなよキリト」

 

大体愛想云々をてめえには言われたく無えよと付け加えて会話を終わらせたタツヤ君。

しばらく歩いているとユイちゃんが大声を上げた。

 

「前方にMobの反応です!こちらに近づいています!」

 

その言葉に三人の間に緊張が走る…マズイ!早く隠れないと!しかしそんな考えもユイちゃんが次に発した言葉によって掻き消されてしまった。

 

「これは…!Mobはお互いを攻撃し合っています!」

 

 

 

 

 

 ユイの言った事を確認するため俺たちはそのMobがいる場所が見える所に移動した。目の前には剣を持った四本腕三面の巨大人型邪神とクラゲと象を足したような巨大な邪神が戦っていたのだ。Mob同士の戦いって言ってたからてっきりあの時みたいに小さい奴を大きい奴が一方的に…みたいのかと思っていたがそうではなかったようだ。

しかし…状況はどっからどう見ても象モドキの劣勢であった。人型邪神に剣で斬られる度に悲痛な鳴き声を出している姿は正直見るに堪えない…リーファの方を見ると明らかに辛そうな表情をしていた。

 

「ねえあの『あいつを助けるか?』え?」

 

俺の言葉を聞いてリーファは驚いた顔をした。そんなに驚く事か?

 

「あのな…これでもパ-ティー組んでんだ、リーファが考えている事は大抵予想がつく。一方的にやられているのを見てるだけってのもあれだしな…キリトもそれでいいだろ?」

 

「ああ」

 

さて…キリトの了承を得た事でどうすればいいかを考えてみる…攻撃すれば相手の注意はこちらに向くけどそこからはどうしようもない。なんかフラグらしきものも無いし…、一番良いのはあの象モドキが怒りのスーパーモードになってあの人型を倒してくれる事なのだがあの感じだと難しそうだな…そんな風に色々考えていると…

 

「あれ?どこ行くの?」

 

ジャックフロストがリーファの腕から離れて走り出したのだ。そのままテトテト走って行き、未だに攻撃している人型邪神の目の前で止まった。そして…

 

『ヒーホーーー!!』

 

氷柱の塊をそいつの顔目掛けて撃ち出した…攻撃を食らった事により人型のヘイト値はジャックフロストに向く。そしてジャックフロストはそのままこちらに戻って来た。

…?戻って来た?

 

「何してくれるんだよーーー!!!」

 

『ヒーホ~~~♪』

 

ジャックフロストがこっちに走って来た事により人型邪神がこっちに走って来たのだ…マジ何してくれるんだよ!俺たちを殺したいのか?怒りの籠もった視線でフロストを見ると楽しそうに走っていた…こいつ鬼ごっこか何かと勘違いしてないか?

しかし奴との距離は段々近付いて行く…そもそも歩幅が違い過ぎるのでこうなるのは当然の結果であろう。とにかく逃げなくては!

 

「のあぁぁぁ!」

しかし後ろばかりに気を取られていたのは良くなかった、俺は目の前にある断崖絶壁に気付かずそのまま斜面を転がって行く…目の前には巨大な湖が…このままだと池ポチャする羽目になるだろう。しかし…

 

『ヒーホーーーー!!』

 

フロストが吐く息によって湖が凍っていく…勿論全部ではないがそれでも俺が湖に落ちる事は無くなった…ナイス!俺は心の中で奴に親指を立てた。そのまま氷の床を転がって着地する。

 

「うおおおおおおおおお!」

 

「きゃああああああああ!」

 

キリトとリーファも何とか着地出来たようだ。奴の姿は見当たらない、ここまでは流石に追って来ないか…

 

『おおおおおおおおおおお!!』

 

「ま、まじかよ…」

 

しかし俺の期待は悪い意味で裏切られてしまった…上を見上げるとそこには…奇声を出しながらこちらに落ちようとしている邪神が…奴が落下しようとしている場所には未だに倒れたままのキリトとリーファの姿があった…殺らせるかよ!

 

「~~~~!」

 

火属性魔法を放ち奴の落下地点をずらす…一つ目の火の玉が奴の顔に当たり体勢を大きく崩し、残りの火の玉が奴の体を少し後ろ飛ばした。そして…

 

ガッシャーーーーン!

 

奴はキリトとリーファがいる位置から少し離れた所に背中から落っこちた。氷の床は奴の重量に耐えきれず大きな音を立てて割れてしまい、奴の体は湖に沈んでいく。

 

「おい!今のうちに逃げ……」

 

奴が浮かんでくる前に逃げる事を伝えようとした俺であったが目の前の現象に驚いて途中で言葉を止めてしまった。

そこには先程俺たちが助けようとした象型の邪神が湖に飛び込もうとしていたのであった。

 

 

 

 

 結論から言うと奴に止めを刺したのは飛び込んだ象型邪神であった。どうやら水中戦が得意だったようで先程の苦戦が嘘のように一瞬で奴を葬ってしまった。

それにしても、よく見ると…

 

「「こいつ(この子)可愛いな(ね)」」

 

「え?!」

 

キリトの驚きに満ちた声が聞こえた。え?普通に可愛いじゃん。しかしキリトには良さが分からなかったようで…

 

「絶対キモいって!」

 

「キモく無いよ!」

 

「何でこいつの良さが分からねえかな?」

 

俺は未だにこいつの良さが分からないキリトを諭す事にした。

 

「よく見てみろキリト、こいつアノマロカリスに似てないか?」

 

「…アノマロカリスって可愛いのか?」

 

アノマロカリス…カンブリア期最大最強の捕食者である。だがキリトは未だにこいつの良さを納得していないようだ。…何でマジでこいつの良さが分からねえかな?俺的にはお前の全身真っ黒装備の方が意味分からねえのだが…。すると…

 

「そうだ!この子に名前つけようよ!」

 

リーファがそう提案した。確かに名前が無いと不便だしな…何が良いかな…そんな事を考えているとキリトが口を開いた。

 

「そうだな…ゾウクラ『『却下!!』』そ、そうですか…」

 

キリトが付けようとした名前を二人して却下した。こいつ…もう少し良い名前付けようぜ。だと言っても俺も良い名前が浮かばないが…そもそもアバター名を本名にしている奴にネーミングセンスなんてものは一欠片も無いのだ。なら…

 

「助けるのを決めたのはリーファなんだから自分で決めればいいんじゃないか?」

 

「え?!私?」

 

リーファは最初は驚いたもの、すぐに真剣な表情で考え始めた。…下手をしたら戦闘中よりも集中しているかもしれない。しばらくするとパッと表情が明るくなった、どうやら名前が思い付いたようだ。

 

「そうだ!トンキー!トンキーってどう?」

 

トンキーね…

 

「いいんじゃね?キリトのゾウクラゲよりかはマシだろ?」

 

「まあ確かにな…」

 

「よろしくねトンキー!!」

 

そう言ってトンキーの鼻に抱きつくリーファ…トンキーも嬉しそうに鳴いている。するとトンキーはその頭をこちらに向けて下げた。

 

「乗れってことかな?」

 

そう言ってトンキーの頭をよじ登るリーファ、背中まで登りきるとこちらに向けて手を振りながら大声を出した。

 

「キリト君とタツヤ君も乗ろうよ!早く早く!」

 

その言葉に従って最初にキリトが登り終えて、次に俺が登る。

 

「うわああ!」

 

しかし後一歩で背中に着く所で動き出したトンキーによって俺はバランスを崩し背中から地面に落ちそうになり…

 

「タツヤ君!」

 

リーファが俺の右手を掴んだ事でなんとか踏みとどまった。あ、危なかった…

 

「サ、サンキュー」

 

「どういたしまして」

 

そう言ってリーファは俺の腕を引っ張り、俺は無事背中に辿り着いた。いつの間にかジャックフロストが乗っていたのは驚いたが…お前いつからそこにいたんだよ…

 

「みんな乗ったね!行くよトンキー!」

 

「おいおい…」

 

「マジかよ…」

 

そして現在目の前で起きている状況に俺とキリトは驚愕した。リーファが指をビシッと前に突き立てながら発した言葉でトンキーは鳴き声を出しながら移動し始めたのだ。え?こいつ乗り物だったのか?

こうして謎の動物…トンキーとの旅が始まったのであった。

 

 

 

 

 




アニメの方はキャリバー編が始まりましたね。早く書きたい!と思っています!…当分先の話ですが…
トンキーに乗って世界樹の真下付近まで辿り着いたタツヤ達、しかしそこでウンディーネの邪神狩りパーティーに遭遇してしまい…
次回「トンキーとアルン」にレディーゴーーー!!!
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