ソードアート・オンライン~赤腕の槍使い~   作:G.S

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あ…ありのままに起こった事を話すぜ!前回の投稿からいきなりお気に入り登録とか評価数とかUA数が増えやがった…何を言ってるのか分からねえと思うが俺も何が起きたのか分からねえ……と前置きはここまでにして…
みなさんありがとうございます!感謝感激雨嵐です!
そして更新が遅くなり申し訳ありませんでしたーーー!!m(__)m
それではどうぞ!


第二十六話:トンキーとアルン

 現在俺たちはリーファによってトンキーと名付けられたMobの背中の上にいる。正直歩かなくていいのは楽だが一体こいつはどこに向かっているのだろうか?疑問に思たがこいつが答えてくれる訳は無いのでここは大人しくしているしかないか…そう思っていたのだが…

 

「のわあ!」

 

「きゃあ!」

 

「うおっ!」

 

突然三人纏めて背中から落とされた、着地を取れずそのまま変な声を出しながら地面に落下する。

そして俺たちを背中から落としたトンキーはその場で体を下ろして…

 

「ね、眠ってるのかな?」

 

「多分な…」

 

眼を閉じて眠ってしまったのだ。一向に起きる気配は無く爆睡している。…疲れて寝てしまったのか?ちなみにあのジャックフロストは落とされた後眠っているトンキーの周りを走り回っている。それはともかく…

 

「どうする?早くこの場から離れるか?」

 

俺の問いに二人は考え込んでしまった。あの時は勢いでトンキーに乗ってしまったが正直こいつが出口まで運んでくれるなんて保障は無い。現に今こいつは寝ている訳だし…。だが…

 

「トンキーが起きるまで待とうよ」

 

リーファのその言葉にキリトも頷く。…まあ、こうなる事は予想していたがな…個人的な事を言えば一刻も早くこんな意味の分からない場所からおさらばしたいところだが、この頑固者二人は言うことを聞かないだろうし…。まあ、ここから宛も無くさまよっても、ここで時間潰しても同じか…俺は仕方無くそう考えここで休もうとして…

 

 

「!前方にプレイヤー反応です!」

 

ユイのその言葉で中断された。前を向くと…そこには二十人近くの青色の髪をした集団…ウンディーネのパーティーがこちらを見ていたのだ。

 

 

 

 

 ウンディーネのパーティーは邪神狩りに来たらしく彼らは攻撃する気が無いならトンキーを寄越してくれとこちらに言ってきたのだ。彼らにとってはただじっとしているだけのこいつは格好の獲物なのであろう。

 

「マナー違反を承知でお願いするわ。この邪神は私たちに譲って」

 

「おいおい…そんな理屈通る訳ねえかだろ?俺たちだってここでだらだら遊んでいる訳じゃないんだ」

 

「頼む…こいつは俺たちの友達なんだ。見逃してくれないか?」

 

「狩れる獲物は狩るのが普通だろ?あんたらとそいつに何があったのかは知らねえけどそんな獲物を見逃したらここまで来た労力が無駄になっちまうんだよ」

 

リーファとキリトの言葉に反論するウンディーネ達…確かにこんな理屈が通る筈が無い。俺たちにとってトンキーがどんな存在であろうと彼らには関係無いことだ。

仕方無い…俺は駄目元で交渉することにした。

 

「ならこうしないか?あんたらの内の誰かと一対一のデュエルをする。あんたらが勝ったらこいつは譲る、負けたら大人しく引くってのは?」

 

俺の言葉にそのパーティーのリーダーらしき男はこちらを睨み付けて答えた。

 

「…断る。俺たちがそこまでする理由が無い」

 

「まあそうだよな…」

 

当然ながら却下されてしまった。向こうがデュエルで決着を付けていいってのならこっちには最強の切り札キリトがいたのだが…。向こうも馬鹿じゃねえよな…結局話は平行線になってしまった。

 

「…十秒数える間にそこから離れてくれ」

 

痺れを切らして詠唱を開始するウンディーネ達…やはり交渉決裂か…そもそも交渉なんてものではなく、ただの懇願であったわけだが…

ここは大人しくこいつから離れた方がいいな。だが…

 

『あの顔を見ると言い辛いよな…』

 

リーファの悲痛な表情…あれを見るとトンキーを見捨てようなんて言い辛くなる。

全く…いつから俺はそんな女の子に甘いような人間になってしまったのだろうか?そんなものはキリトにくれてやればいいのに…まあ、なっちまったものは仕方無いか…

まずは最初が肝心だ。敵を騙すならまず味方から…俺はなるべく平静を装って口を開いた。

 

「…分かった。キリト、リーファ離れるぞ」

 

「…うん」

 

リーファは辛そうな表情をしながらキリトは無言トンキーから離れて俺に付いてきた。俺は歩きながら前方のウンディーネ達に口を開いた。

 

「悪いけどそこ通して貰えないか?」

 

そう言うと向こうのパーティーはわざわざ真ん中を開けてくれた。サンキューと言いながらそこを通り過ぎる…後ろを振り返ると奴らは全員トンキーの方を向いてこちらに背中を見せていた。…計画通り…!内心ほくそ笑みながら手近にいたメイジ目掛けて槍を突き刺した。

 

「なっ?!」

 

攻撃を受けた事により驚くウンディーネ…だがまだ終わりじゃねえよ!素早く槍を引き抜き今度は横一文字に斬り裂く、そして止めにそいつの頭目掛けて槍を突き出した。するとそいつは青色のリメンライトになる…その光景を見てウンディーネ達は素早く俺から距離を取りこちらを睨み付けた。

 

「…どういうつもりだ?」

 

リーダーらしき男が威圧感たっぷりで聞いてくる。周りの奴らもかなり警戒しているようだ。

 

「どういうつもりってこういう事だよ。あんたらが大人しく退いてくれたらこんな事をするつもりは無かったんだけどな」

 

「お前!俺たちを騙したのか!」

 

向こうは怒りをあらわにしながら大声を出す。それにしても騙したね…

 

「騙したなんて人聞きの悪い…俺は別にあんたらにあいつを譲るなんて一言も言ってねえぞ。勝手にあんたらがそう解釈しただけだろ?」

 

そう…俺らは彼らに対して何も言ってない。俺たちがトンキーから離れた事によって勝手に向こうが勘違いしただけ…まあただの屁理屈だが…

 

「…っチ!メイジ隊後退!奴の動きに注意しろ!」

 

そう言って俺の一挙一動を見逃さないように凝視しながら後退していくメイジ達…だが俺だけに注意していて大丈夫か?他の奴らの事を忘れてねえか?

 

「うわあああ!」

 

案の定他の場所から悲鳴が上がる。そこには後ろから斬り裂かれてリメンライトになったウンディーネと剣を構え直したキリトとリーファがいた。ほら、思った通り…こんなチャンスをそいつらが逃すわけがねえだろ?これで後は二十二人位か…今のうちに倒せる奴は倒した方が良いと思い目の前の敵に槍を振り下ろすが後ろに下がって躱される。追撃をしようとするがその間に入った青色の装備をした盾持ちに防がれた…やっぱ立て直すのが速いな…!

キリトとリーファもさらに攻撃することは不可能だったようで素早くこっちに戻って来た。

 

「よう、これでいいだろ?」

 

こいつらに聞かずに勝手にやってしまったが、どうせこいつらもほかっとけば同じような事をしただろうし特に何も言わないだろ。しかし…

 

「「お前(あなた)卑怯過ぎだろ(だよ)!!」」

 

「え?なんで俺責められてるの?」

 

返ってきた言葉はまさかの非難であった。え?本当になんで俺が悪者みたいに言われなきゃいけないんだ?それにほら、兵は詭道なりっていうじゃん。相手を騙すのだって立派な作戦だよ?こんな数に正攻法で勝てるなんて思わねえしな。だがこのままだと更に何か言われそうだな…話題を変えなくては…

 

「ともかくだ。こっちは剣士を相手するからお前らでメイジの連中を叩け」

 

一番厄介な状況はサポート役のメイジ隊と攻撃兼防御役のアタッカー連中が合流することだ。こうなってしまったら俺たちに勝ち目は無い。まだ隊列が整りきっていない今しかチャンスは無い。しかし…

 

「ダメ!危険過ぎるよ!」

 

俺の提案に異議を唱えたのはリーファであった。おそらくまた俺が一番キツイ役目をするつもりだと思っているのだろう。否定はしないが、この役目に一番適しているのはこの中では俺なのだ…彼女を説得するために俺は不敵な笑みを浮かべ口を開く。

 

「大丈夫だ。これでもぼちぼち強いんだよ俺は」

 

それに…

 

「『剣の三倍の優位性』って言ってな、剣で槍に勝つには三倍の強さがいるんだぜ?そこのキリトならともかく他の奴にはそうそう負けねえよ」

 

俺がそう言うと彼女は好戦的な笑みを浮かべながら俺に答えた。

 

「ほぉ~。つまりタツヤ君は私に勝てるって言ってるのね?」

 

…どうやら彼女の闘争心に火を点してしまったらしい。彼女負けず嫌いだからな…少し言い過ぎたかな?

 

「いいわ。いつか勝負しましょ?ALO古参プレイヤーの実力見せてあげるわ!」

 

それはデュエルのお誘いであった。好戦的な彼女らしい提案だ。まあ…

 

「…別にいいぜ」

 

断る理由は無いけどな。あの世界では戦いを楽しむ余裕なんて無かったし…リーファとなら気分良く戦える気がするしな。

 

「そんじゃ…六十秒ぐらいは持たせるからその間に倒しきってくれよ?」

「「いや、無理だから!!」」

 

…二人にツッコまれてしまった。そんぐらいの気持ちでやってくれという意味だったのだが…

ともかく俺は敵陣のど真ん中目掛けて走り出した。

 

 

 

 

 俺がやることは実は簡単だ。剣士連中とメイジ達が合流しないように部隊を掻き乱す…つまりは撹乱だ。走っては攻撃し走っては攻撃しを繰り返すことでアタッカーの連中をこっちに集中させる。勿論…

 

「おらおらおら!そんなもんか?そのレア装備はただの飾りかよ!」

 

「っチ…!調子に乗りやがってーー!」

 

槍を振り回しながら相手を挑発することも忘れずに、人間ってのは怒ると冷静な判断が出来なくなり極端に視野が狭くなる…怒りで我を忘れるとはこういう事だ。お陰でこっちは十人近くに囲まれているにも関わらずなんとか無傷で済んでいる。…今はだが…

正直これ以上の戦いは難しいかもしれない。時間が経てば経つほど状況は俺たちの不利になっていく…このままでは向こうが合流するのも遅くはないであろう。

だが…

 

『俺が諦めちゃカッコつかないよな…!』

 

リーファにキリトはまだ頑張っているのだ。年長者の俺が諦めたら流石にカッコつかない。そんな少しばかりのプライドを守るために俺は再び眼前の敵目掛けて槍を叩き込むのであった。

 

 

 

 

 戦闘から二分経過…結果として合流されるという最悪な状況になってしまった。元々こうなることは予想していた…例え俺たちがどれほど強くてもたった三人では二十人近くの人数に勝てる筈が無いのだ。大軍こそ最高の策…どんな策すらも数の前では無意味なのだから。

つまりこんな戦いはやる前から結果は決まっていたのだ。

…だがこいつらとならそんな負け戦に挑んでもいいと思えるのは何故だろうか?

 

「はあ…はあ…やっぱり駄目か…!」

 

「諦めたらダメだよ!私たちが諦めたらトンキーを誰が守るの?」

 

キリトの言葉にリーファが答える。だが状況が最悪なのは変わらない…キリトやリーファも長時間の戦闘で疲れきっているし、俺の方もメイジの援護ありのアタッカーと一人で戦い続けるのは限界だ。このままでは俺たちは全滅し、奴らは動けないトンキーを一方的に攻撃するであろう。

…たった一つ…たった一つだけこの状況を覆せる方法がある。まだ一度も使って無い《魔槍ブリューナク》のエクストラ効果…こいつを使えばここにいる奴ら全員を一瞬で倒せるだろう…しかし、こいつを使えば俺は戦えなくなってしまう、ここにいるキリトやリーファも……。やはり八方塞がりだな…

 

「きゃあ!」

 

俺がそんな事を考えていると少し離れた所から小さな悲鳴が上がった。あの声はリーファか?そこには攻撃魔法の余波で飛ばされたのであろう地面に横たわるリーファと彼女に止めを刺そうとしているウンディーネの剣士が…

 

「やらせるかよ!」

 

すぐさま倒れたリーファの元に走って行く…目の前には俺の進行を邪魔しようと待ち構える盾持ち剣士が二人、だが…

 

「そんなもんでーー!」

 

俺は勢いを全く緩めずに走り続ける…そしてそのまま盾に向かって体当たりをした。

 

「なっ?!」

 

まさか槍ではなくタックルが来るとは予想出来なかった盾持ち達はバランスを崩す…それによって生まれた隙間に俺は体をねじ込ませて盾を突破した。

通り過ぎる瞬間に脇腹を斬られたがそんな事はどうでもいい!俺の目の前には今にもリーファに振り落とされようとする剣が……この距離は槍の射程外だ、普通なら間に合わない。だから…

 

「届きやがれーーー!!」

 

走りながら槍を持った右腕を弓のように絞りそいつ目掛けて放つ…俺が投げた槍は真っ直ぐ飛んで行き、そして…

 

「っぐ!な、何?!」

 

奴の背中に突き刺さった。自分の身に起きたことが理解出来ず後ろを振り向くウンディーネ…俺はそいつの背中に刺さったままの槍を掴みそのまま捩じ込んだ。

 

「沈めーーーー!」

 

「ぐあああ!」

 

そしてHPが無くなったそいつはリメンライトになった。俺は未だに地面に倒れているリーファに声を掛ける。

 

「リーファ、大丈夫…っぐは!」

 

「タ、タツヤ君!」

 

しかし俺の声は後ろからの衝撃で止められた。俺の背中には氷の槍がいくつも刺さっていたのだ。おそらくメイジ隊の魔法攻撃であろう。HPを確認すると残り数ドット位しか残っていない。ドジっちまったな…最初の脱落者は俺か…。リーファの方を見るとまるで有り得ないものを見たかのような驚愕の表情を浮かべていた。

 

「ダメだよ!逃げて!」

 

急に大声を出したリーファに驚きながらも後ろを振り向く…すると俺の目には有り得ないものが映っていたのだ。

 

「なっ?!なんでお前が!」

 

俺の後ろには両手を広げて俺たちに背中を向けている雪だるま…妖精ジャックフロストがいたのだ。その姿は俺たちを守ろうとしているようで…ダメだ…そんな事をしたらお前が死んじまう。それにお前が盾になっても奴らの魔法は防げない…無駄死にする必要なんてない…!

しかしすでにメイジ連中の詠唱が終わっている。もう間に合わない…せめてリーファだけでも生き残らせなくてはと思い俺は彼女の上に覆い被さった。そして…

 

「メイジ隊!魔法攻撃発射!!」

 

その号令とともに無数の氷の槍が俺たち目掛けて振りかかり、辺りは爆音に包まれたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトside

 

 結局メイジ隊とアタッカーの合流を防げなかった俺は苦境に立たされていた。次から次へと攻めてくる敵に俺の疲労はピークに達していた。それに…

 

「はああああ!」

 

「…っぐ!」

 

「下がって回復しろ!」

 

さっきからこれのループだ…俺がどれだけ攻撃してもその度に回復して戻ってくる。…まるでフロアボスの気分になったみたいだ…

そんな不毛な戦いを続けていると突然爆音が響いた。この音は魔法攻撃か!

 

「…!しまった!」

 

あの音はタツヤとリーファが攻撃された事を示していた。あんな威力の魔法攻撃をまともに食らったらひとたまりも無い!俺は二人の無事を祈りながらその方向を見ると…

 

「な、何なんだあれは…!」

 

そこには俺たちが会った邪神を越える大きさの赤い目をした真っ黒な何かがいたのだった。

 

 

 

 

「…あれ?俺生きてる?」

 

 あの爆音が止んだ後、目を開けると広がっていたのはサラマンダー領の砂漠の町ではなく一面真っ白な雪景色ヨツンヘイムであった。

あまりにも予想外な出来事に我ながらすっとんきょんな声を出してしまった。

 

「タツヤ君…重い…」

 

「?…ああ!悪いリーファ!」

 

そういえば彼女の上に覆い被さったままであったのを思い出して慌てて離れる。彼女の方を見れば少し顔を赤くしていた。…やっぱり流石にあの距離は恥ずかしかったよな…俺だってあんなにリーファと密着していたのだと考えると……っとそこで思考を止めた。このまま考え続けたらきっと恥ずかしくて戦闘どころでは無くなる。そんな葛藤をすること数秒…少しばかり冷静になった頭で今の状況を考えてみる。…リーファはともかく俺も助かった…あいつらの魔法が外れた可能性は…まず無い、あんな全体攻撃なら動かない俺たちを外す方が難しいだろう。となると俺たちの盾になってくれたジャックフロストのお陰か?そ、そうだ!

 

「リーファ!あいつはどうなったんだ?」

 

おそらく俺たちを庇ってくれたのであろう勇敢な妖精がどうなってしまったのかをリーファに尋ねる。もしかしたら…と最悪な場合が浮かんでしまった。

 

「えっと…あそこ?」

 

そう言って何やらあまり状況が飲み込めていないようなリーファが指を指した方向を見るとそこには確かにジャックフロストらしきものがいた。…ただ違うのところは青かった頭巾は紫色になり、その白い体は真っ黒になっていること…そして数十メートルを優に越す大きさになっていることだ。あのリーファが抱っこ出来たサイズからは想像も出来ない大きさだ。

それでもその姿には見覚えがあった。忘れる訳が無い…あいつは…

 

「《じゃあくフロスト》…」

 

 

 

 

 《じゃあくフロスト》…ジャックフロストの人気があまりにも高かったため作られた派生系の一つだ。悪魔としての鍛練を怠らなかったジャックフロストのみがこれになれるらしい…悪魔としての鍛練とは何なのかは少しばかり気になるが、それはさておき…どうやら攻撃が当たる前にジャックフロストが《じゃあくフロスト》になり防いでくれたようだ。

そして《じゃあくフロスト》は先ほどからウンディーネのパーティーと交戦しているのだが…

 

『ヒ~ホ~~~』

 

「な、何なんだこいつは?全員距離を取れ!」

 

ウンディーネのパーティーは突然現れたこいつに動揺しているようだ。確かにあんなデカイのがいきなり出てきたら誰でも驚くよな、あの小さい雪だるまとこいつが同じ奴だとは思わないだろうし…

するとかなり後ろまで下がったウンディーネ達は隊列を組み直し叫んだ。

 

「メイジ隊!魔法攻撃開始!」

 

その言葉と共に詠唱を開始するメイジ達、そいつらを守るように前には盾持ちの連中が固まっている。

そしてメイジの魔法攻撃が放たれた。

 

『ヒ~ホ~~~~~~』

 

《じゃあくフロスト》はそれを腕を交差させることで防いだ。なんて滅茶苦茶な奴だよ…と思ってしまった。

そのまま前に進んでいく《じゃあくフロスト》…ウンディーネ達は二回目の攻撃を開始するために再び詠唱を開始する。

すると《じゃあくフロスト》は拳を高く上に掲げて…

 

「ヒ~~ホ~~~~~~~!!!」

 

思いっきり地面に叩きつけた。すると地面から無数の氷柱が隆起してウンディーネ目掛けて走っていく。

 

「っち!退避!退避!」

 

リーダーらしき男の号令で何人かは回避に成功したようだが、残りの連中は巨大な氷柱の餌食になり貫かれた。その場所には十数個のリメンライトだけが浮かんでいた。

 

「クソ!何でこうなるんだよ!全員撤退!撤退だ!」

 

その言葉を聞いて他のウンディーネ達もすぐさま撤退を開始する。鮮やかな撤退だ…戦いにおいて一番難しいのは撤退することだと昔の人は言ったらしいがそれなら彼らの戦いは見事としか言いようが無い。よくあんな連中を相手に生き残れたよな…そんな感慨に浸っているとリーファがこちらに向けて走って来た。

 

「タツヤ君助けてくれてありがとう」

 

「どういたしまして。まあパーティーだから助けるのは普通だけどな」

 

どうやらわざわざお礼を言いに来たらしい。律儀な彼女らしいな…すると今度は俺を諭すような表情で見てきた。

 

「でも…もう少し自分の事も考えようね。あのままだったらタツヤ君死んじゃってたんだよ?」

 

「…悪い、もう少し周りを見て行動するよ」

 

年下であろうリーファに諭されるというのも変な感じではあるが…素直にその忠告を受け取っておいた。

次に彼女はウンディーネを撃退してくれた《じゃあくフロスト》の前に走って行った。

 

「君もありがとうね!」

 

そう言ってじゃあくフロストに抱きつくリーファ…しかし大きさが違いすぎるためにまるで巨大な樹にしがみついているようにしか見えない。だが…

 

「ヒ~~ホ~~~~~♪」

 

抱きつかれているじゃあくフロストは満更でも無いようだ…よく見るとどこか照れているようにも見える。

それからキリトとも合流し、…キリトはこいつがあの雪だるまだと知るとかなり驚いていたが…トンキーが起きるのを近くで待ち続けた。

 

 

 

 

「まだかなトンキー…」

 

「もうそろそろじゃね?」

 

 そんなこんなで十分経過…未だにトンキーは身動き一つもせずに眠り続けている。もう少しで起きるとは思うのだが…。ちなみに《じゃあくフロスト》はあれからしばらくするとどこかに行ってしまった。おそらく自分の居場所に戻ったのであろう…そんな事を考えているとトンキーに動きが表れた、突然大きな鳴き声を上げたのだ。

そして…

 

「な、何だこれは?!」

 

「眩しい…!」

 

トンキーが甲高い声で鳴き声を上げるとその体がライトエフェクトに包まれた。するとトンキーはその姿を変化させた。丸っこい体はスポーツカーのように滑らかなフォルムになり左右にいくつもの羽を広げている姿は先ほどの姿からはかなりかけ離れているがどことなくトンキーの面影がある。するとトンキーは俺たちの前まで移動して…

 

「うわああ!」

 

「のわああ!」

 

「またかよ!」

 

俺たちをその長い鼻で掴み再び背中に下ろし、そしてその羽を広げて翔び立ったのであった。

 

 

 

 

 そのままトンキーに乗り空の旅をすること数分…俺たちの目の前には上から突き出ている巨大な樹の根っこのようなものが見えた、しかもその根っこの先端には黄金に輝く何かが突き刺さっていたのだ。

 

「あの光ってるのって何だ?」

 

「聖剣エクスカリバーだよ。ALO最強の武器」

 

俺の疑問にリーファが答えてくれた。…正直あまり欲しいとは思わないな、手に入れるためのクエストの難易度が半端じゃ無さそうだし何より俺には使い道が無い。労力と報酬が俺にとって合わないのならわざわざ手に入れるつもりはない。だが…

 

「何!最強の武器!」

 

…そういえばいたよこういう武器を欲しがりそうな奴が…キリトは叫びながらその聖剣を穴が空きそうなほど凝視している。こいつたった一つのレア武器とかには目が無いからな…主にフロアボスのLAボーナスとか…

 

「キリト…残念ながらそいつは次回に持ち越しだ。もっと数揃えて行かないとクリア出来るわけねえだろ?」

 

「わ、分かってるって!」

 

…そういえば言いながらもすごく残念そうな表情をしているのは一体どういうことなのかを尋ねようと思ったが止めておいた。…全く…未練たらたらじゃねえかよ。

そのまま進んでいくとトンキーはその根っこ付近で上昇し俺たちを地上へと続く道に運んでくれた。俺たちはそこに着くとトンキーの背中からゆっくりと下りる。

本当に助かった…こいつがいなければ永遠にあの氷の世界をさまよっていたかもしれないな…

 

「サンキュー、トンキー」

 

俺は心からの感謝の言葉を送る…今度はリーファが笑顔でトンキーに近付いて口を開いた。

 

「また会おうねトンキー!」

 

そう言ってその大きな鼻を撫でるリーファ…トンキーも嬉しそうな鳴き声を上げる。そのままトンキーは何処かへ翔んで行った。…またこいつの世話になるかもなという俺の予感が現実になるのはこれから約十ヶ月後の大晦日であったのをこの時の俺が知るよしも無かったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが《アルン》…」

 

 そのまま地上に繋がる階段を昇ること数分…俺たちは世界樹の下に広がる町《アルン》に辿り着いた。周囲の無数の建物の灯りが夜の町を幻想的に照らしている綺麗な町である。

そして俺たちの目の前には天までそびえ立つ巨大な樹《世界樹》が見えた。俺たちの目標地点…ようやくここまで来れた…長い、長い旅だった…とても一日の出来事だとは信じられない。それはともかく…

 

「ふああ~~………眠いな…」

 

「もう夜中だもんね」

 

もうすぐで午前四時か…いつの間にか次の日に突入していたらしい。夜更かしなんて久しぶりだな…そんな事を考えていると急にアナウンスの声が流れた。

 

『本日午前四時から午後三時まで、定期メンテナンスのためサーバーがクローズされます。プレイヤーの皆さまは十分前までにログアウトをお願いします。繰り返します、本日ーーー』

 

…定期メンテナンスね…まあ、ここいらで一休憩しなきゃいけなかったから丁度いいか…

 

「とっとと宿で落ちようぜ。早くしねえとメンテの時間になりそうだ」

 

「そうだね…キリト君は宿代大丈夫?」

 

そういえばこいつは領主たちに大盤振る舞いしたんだよな、流石に宿代ぐらいは残っていると思うが…するとキリトは難しいのは顔をして口を開いた。

 

「…ユイ、ここで一番安い宿ってどこにある?」

 

「パパ、すぐそこに激安のところがあります!」

 

「よし!みんな行くぞ!」

 

「…そんなに金無かったのかよ…」

 

そうして俺たちはユイのマップ情報を駆使して探し当てた激安の宿に行くことにしたのであった。

 

 

 

 

「まさかあそこまで安いとはな…」

 

「本当だね」

 

 俺が呟いた言葉に苦笑して返してくれるリーファ。部屋はベットが置いてあるだけの質素な作りなのだがとにかく安かったのだ。

安すぎて逆に不安になる…現実だったらいわくつき物件とか不良物件とか思われても仕方無いレベルの値段だぞ…

 

「それじゃあメンテナンスが終了したらまたここに来てくれるか?」

 

「ああ」

 

「うん。いいよ」

 

キリトの言葉に二人して答える。メンテナンス終了が明日の十五時だから…まあそんぐらいにログインすればいいか…。おそらくキリトの事だ、グランドクエストを確認するために世界樹の真下まで行くつもりなのだろう。流石に三人で攻略なんて馬鹿な事は言わねえだろうしな…

 

「それじゃあ明日もよろしくな」

 

そう言ってキリトはメニューを操作してログアウトした。さて…もうかなり遅いしとっとと上がることにしよう。

 

「それじゃあ俺も落ちるから…リーファもあまり夜更かし『ちょっといいかな?…』?どうしたんだ?」

 

さっさとログアウトしようとメニューを操作すると突然リーファに声を掛けられる。その表情は少しばかり曇っていた。

 

「タツヤ君たちはグランドクエスト攻略のために冒険してたんだよね?」

 

「ああ、そうだよ」

 

彼女には俺たちの目的は話していた筈なのだが…一体どうしたのだろうか?

その言葉を聞いて彼女はさっきよりも表情を曇らして言い難そうに口を開いた。

 

「…このグランドクエストが終わってもまた一緒に冒険出来るのかな?」

 

…そういう事か…グランドクエスト攻略ってのは俺たちのいわばゴールみたいなものだ。そのゴールが近付いて来た事で俺たちともう一緒にいることが出来ないかもしれないという不安が浮かんだのだろう。

…正直な事を言えば分からない。キリトはともかく俺は一人暮らしで時間的余裕だってそんなに無い。実質的に高校を中退している俺は就職だって難しいだろうしこの先どうするべきかを今すぐにも考えなければいけないのだ。…まあ俺の将来なんてろくなものではないだろうが…

ともかく俺がこの世界に戻って来れる見込みは分からないのだ。それでも…

 

「…リーファが望むならな」

 

そんな言葉が出てしまった。彼女がそんな悲しそうな表情をするぐらいなら例え嘘だとしても構わない…俺はそんな事を思ったのだ。全く…俺はいつからこんな他人に甘い人間になっちまったんだろうな?現実世界の俺が見たらきっと笑っちまう…

すると彼女の表情はパッと明るくなった。

 

「本当に本当?約束してくれる?」

 

「…ああ、約束する」

 

リーファの言葉にそう返す。約束なんてどの口がほざくんだ?などと内心自嘲している俺がいるがそれを表には出さない、そんな事は彼女が知らなくてもいい事だ。

しかし…

 

『約束よ!兄さん』

 

『…ああ、約束する』

 

…一瞬即視感に襲われた。俺は目を擦ってもう一度彼女を見る…しかしそこにいたのは当然ながら黒髪黒眼の少女ではなく金髪緑眼の少女リーファであった。

 

「?どうしたのタツヤ君?」

 

俺の様子が少しおかしい事に気付いたリーファが尋ねてくる。俺はなんとか平静を装いながらそれに答えた。

 

「…何でもねえよ。じゃあな、また明日」

 

そう言って俺はそそくさとメニュー画面のログアウトボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現実世界に戻った俺はナーヴギアを頭から外してベットから上半身だけを起こし、先ほどの事を思い出した。

…分かっている…何であんな昔の事を思い出してしまったのか。あの眩しい笑顔がそっくりだったのだ…俺の妹の紗夜に…。

なんとも情けない人間だな…向き合うこともせず、逃げることも出来ずにあんな思い出に浸ることしか出来ない…本当にどうしようもない人間だ。

そんな自己嫌悪に陥りながら俺はその体をベットに沈めたのであった。




意外!それは《じゃあくフロスト》ッ!
これで主なフロスト系は残り一体…全員出すつもりで頑張ります!
ちなみに出て来た理由はあれです…ジャックフロストはワープ進化したんですよ!(笑)
成長期から究極体になった感じで(笑)
それでは次回予告です!
定期メンテナンス終了の時間までを潰すために食材を買いにいくタツヤ、その帰り道に偶然ある人物を見かけて…
次回「決戦前の出会い」にレディーゴーーー!!!
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