ソードアート・オンライン~赤腕の槍使い~   作:G.S

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ちなみにタグをまた追加しました。これでいつか来るであろうバイトの話を執筆本能の赴くままにやれます!!(笑)
そして約一週間振りの投稿お待たせいたしました。これからも遅れるとは思いますが何卒ご了承下さい。
それではどうぞ


第三十一話:兄と妹

 キリトを見送った後特にやる事が無い俺はただひたすらボーっとしていた。何気なく上を見上げるとそこには俺たちの目的である世界樹が…絶対無敵の堅牢な城塞の如き障害…もしかしたら一生掛かっても突破する事なんて無理なのかもしれない。

 

だがそんなものよりも…キリトには立ち向かうべきものがあるのだ。そいつの困難さと比べたらあそこで待ち構えている有象無象のガーディアン共なんぞ取るに足らない雑魚…少なくとも俺はそう信じて疑わない。

 

それでもキリトはその困難な道を選んだのだ…拒絶されるかもしれない、二度と兄と思われなくなるかもしれない…そんな恐怖にあいつは耐えて、たった一人の妹と向き合うという険しい茨の道を…

 

「やっぱあいつは強いな…」

 

自然とそんな言葉を呟いてしまった。きっとあいつの強さは剣の腕だとか反応速度なんてものでは無い、迷いながらでも傷付きながらでも歩こうとする、どんな困難にも逃げずに立ち向かって行く…そういう真っ直ぐな心こそがあいつの一番の武器なのだ。

 

だからこそ彼は多くの人を惹き付けたのだろう…女性は強い人に惹かれるなんて話を聞いた事があるが、彼女たちはキリトのそういう心の強さに惹かれていたのだろう…俺は改めてキリトの強さを再認識したのだ。いつも逃げてばかりの半端者の俺では決して手に入れる事が出来ない強さを…

 

いつか俺もその強さを………

 

「………って、無理だよな」

 

絶対に届かないものに思いを馳せる…きっとこれほど無駄な事は無いだろう。俺らしくないそんな考えに自嘲的な笑みを浮かべてしまった。

 

 

 

 

「タツヤ君もいたんだ…」

 

 そんなどうしようもない事を考えていると誰かに声を掛けられた。綺麗な金髪をポニーテールにしたシルフの少女ーーリーファだ。しかし普段の明るい声も快活な雰囲気も見る影も無いほどにどんよりとした空気を纏っている。

 

「ああ、ログアウトするのも面倒だったしな」

 

「そっか、あのさ…」

 

彼女は言おうか言うまいか悩み、戸惑いながらも俺に尋ねてきた。

 

「タツヤ君ってもしかして紗夜ちゃんのお兄さんの…」

 

「…そうだ。あんたの友達の三ヶ島紗夜の……一応兄の三ヶ島竜也だ」

 

今更兄貴なんて語る資格は無いが…と付け加えておく。

その言葉に彼女はそうですか…と言い一層表情を暗くしてさらに話を続けた。

 

「私…お兄ちゃんに酷い事言っちゃったんです。お兄ちゃんが好きだって、本当の兄妹じゃないって知ってたって、それにお兄ちゃんの事を………兄妹じゃなければ良かったのにって…」

その言葉はキリトにとってどれほど悲しい言葉だったのだろうか…謂わばそれは兄妹にとっては死刑宣告にも等しい言葉だ。生憎俺はそんな言葉さえ言われた事は無い…正確には言われないように逃げ続けている訳であるのだが……。

 

そんな彼女の告白を俺は黙って聞き続けた。

 

「だから、もう私キリト君…お兄ちゃんの前には現れない。ごめんなさい」

 

そう言って階段をゆっくりと降りて行くリーファ、しかしその半ば程で彼女はこちらを振り向きながら意外そうな顔をして俺に聞いてきた。

 

「…止めないんだね」

 

「俺なんかが止めたって意味が無いだろ?それに……逃げる事に関しては俺が言えた義理じゃない」

 

「うん。タツヤ君の気持ち、少しだけ分かった気がする…」

 

そう言って力無く笑うリーファ、おそらくその笑みは情けない自分に対する自虐的なものであろう。

 

一度止めた足を再び動かし階段を降りて行くリーファ…このまま行けば彼女の姿は見えなくなるだろう。それでも俺に彼女を止めるすべは無いし止めるつもりも無かった。

 

しかしーー最後の段を降りきると彼女は再びこちらを向き悲しそうに口を開いたのだ。

 

「こんな私の話を聞いてくれてありがとう。じゃあね」

 

目に涙を溜めながら無理矢理笑おうとする彼女のその姿を見てーーーこれでいいのか?と思ってしまった。彼女が一生後悔するような選択を黙って見ているだけーー彼女にそんな辛いだけの重荷を背負わせてしまっていいのかと………

 

「待て!リーファ!」

気づいたら俺はリーファ目掛けて翔び出していた。

 

 

 

 リーファの前に降り立つ、すると彼女はその瞳を見開かせて驚いた表情で俺を見てきた。彼女は何が起きているのか分からない様子だったが俺のしようとする事に気付いたのだろう。心底嫌そうな顔をして俺を睨みつける。

 

「……止めないって言ったよね。今更何?」

 

「……気が変わった。それだけだ」

 

そんなリーファの非難染みた問いかけに素直にそれでいて言葉少なく俺は答えた。俺のその身勝手な言葉に彼女は嫌悪感を全く隠さずに告げる。

 

「……勝手だね」

 

「ああ、俺は勝手な人間だよ」

 

よく考えれば本当に勝手過ぎる野郎だ…キリトに頼まれた訳でも無い。俺がやりたいからやっているだけ…自分本意で他人の都合なんて全く気にしないなんて反吐が出る。自分の独り善がりな考えに他人を巻き込むなんてーーあのクソGM(茅場)とやってる事が同じだ、と自己嫌悪に陥るのをなんとか奮い立たして彼女を見詰める。

 

「勝手で承知で言わして貰うけど、本当にそれでいいのかよ?」

 

「いいも悪いも…そうするしか私には思いつかなかったの…」

 

そう乱雑に答えた彼女はどこか悲しく辛そうで…そんな彼女に俺はただ感じた事を告げる。

 

「違うな。本当は何をするのか分かっているんだ、ただ逃げる方が楽だからそうしてるだけだろ?」

 

俺と同じように…逃げるっていう選択肢は一見一番楽に見える。実際そうなのだが、一度こいつを選んでしまうとずっとそれを選び続ける事になるのだ。そして逃げた先にはーーはっきり言って良い事なんて何も無い。残るものは後悔と自己嫌悪……それは日に日に大きくなり自分を押し潰そうとする。そしてーー

 

『何も感じなくなる…』

 

いつしかその思いさえを背負う事、見る事からすら逃げる事になる。そうすればもうお終いだ…人らしいものを持ち合わせていない空っぽの人間の出来上がりだ、俺のように……

 

「逃げるなんて選択肢はいつでも出来る。だからさ……」

 

「うるさい!」

 

その言葉を聞いて彼女の心に火がつく、彼女は叫ぶように怒り出す。

 

「うるさい!!あなたなんかに言われる筋合いなんて無い!いつまでも紗夜ちゃんと向き合わず逃げ続けているあなたなんかに!」

 

「……そうだな」

 

「あっ!……ご、ごめんなさい。あなたにも酷い事を…やっぱり私…」

 

怒りのままに叫ぶリーファ……その実に的を得た言葉に当然ながら俺は苦い顔をする。そんな俺の反応を見て彼女は自分が言ってしまった事を理解したのだろう…つまりはキリトと同じ相手を傷つける言葉を言ってしまった、と。彼女は口元を手で隠し肩を震わし、そしてここから一目散に逃げ出そうと翅を広げ翔び立とうとする。

 

もういいんじゃないか?今にも翔び出そうとする彼女を見てふとそんな思いが沸き上がった。もう十分やった…その結果、彼女が選んだ道なら俺が介入する余地なんて無いのではないか?それを選んで彼女が後悔する事になっても俺には全く関係無いのだから……

 

俺だって彼女と同じ選択をするのだろうから……

 

「逃げんな!」

 

それでもーー俺はそんな内から沸き上がる声を無視して彼女の手を掴み下に引きずり落とした。

 

「離して!もう私は…!」

 

こちらを向かずに涙ぐみながら叫ぶリーファ、逃げたくて、逃げたくて仕方が無いその姿にーー俺の怒りは頂点に達した。

 

「ーーふざけんな!」

 

俺のそんな怒声に彼女は一瞬肩をビクッとさせた、そんな彼女に俺はさらに怒りのままに叫ぶ。

 

「酷い事を言ったって後悔しているなら…!しっかりと謝れよ!今ならまだ間に合うだろ!」

 

そうーー今ならまだ間に合うのだ。キリトが彼女を待ち続けている今ならーー

しかし俺の言葉を聞いて涙を流しながら叫ぶ、まるで自分の罪を告発するように…

 

「でも私は…!お兄ちゃんに酷い事をしてしまったの!だからもう二度と兄妹には戻れない!何より…!あんな酷い事をしてお兄ちゃんに会わせる顔が無いの!」

 

彼女の心の叫び…その言葉を聞いてーー変な話だが俺は安心した。やはり彼女は自分を責めているのだ。キリトに酷い事を言ってしまった自分を…

 

本当に…

 

「馬鹿だなリーファは…」

 

自分でも驚くほど穏やかな声で囁き彼女を抱き締めた。リーファはあまりの出来事に思考が追いついていないようでされるがままになっている。

 

「妹がそんな事を気にするなよ。妹の我儘聞くのが兄貴の役目なんだからさ…」

 

きっと…俺が兄妹について人に語るのはこいつで最後だ。だから今だけはーーー俺の思いを言ってもいいだろう、と自分を納得させる。

 

「兄貴なんて…どいつもこいつも不器用で自分勝手で人の話なんて聞きやしないんだ」

 

でもな…と彼女の目を見て続ける。

 

「いつだって…兄貴は妹の味方なんだよ。だから……きっと大丈夫だ」

 

何の根拠も無い、俺が言っても説得力に欠ける陳腐な言葉だ。現にここにいる俺はそんな人間ではないのだから。

 

それでも俺はーー兄貴とはそういうものだと信じている。

 

「キリトは…お前の兄貴はお前と向き合うために行ったんだ。そいつに応えてやってくれねえか?」

 

そんな俺の言葉に彼女は一瞬だけ明るい表情になった後すぐに表情を暗くして泣きながら、吐き出すように呟いた。

 

「でも…!私また…!お兄ちゃんに酷い事を言ってしまうかもしれない…!」

 

「別にいいじゃねえか…」

 

「えっ?」

 

彼女の最も懸念している悩みに俺はあっけらかんと答える。あまりに意外だったのだろう、彼女は涙を止めて口をあんぐりと開けながら俺の顔を見ている。

 

「言っただろ妹のならどんな我儘でも聞くのが兄貴の務め、てさ。それにリーファは今までずっと我慢してきたんだ、あいつに文句を言う資格は無いよ」

 

そう言って彼女の頭を撫でる、サラサラとした触り心地をどこか懐かしく感じている俺がいて…そういえば昔はあいつによくやってあげたな、と少し感慨にふけてしまった。

 

「だから……行ってやってくれ。お前の兄貴が待ってる」

 

そう言って彼女の体から手を離す、すると彼女は袖で目をゴシゴシと拭いて笑う。その笑顔は先ほどまでの無理をした作り笑いなどではなく華のように眩しい笑顔であった。

 

「うん!行って来るね!」

 

元気に翅を広げ翔び立つリーファ。彼女はそのままキリトが待っている場所に行こうーーとはせず急に翅を止めてこちらを振り向いた。

 

「やっぱりタツヤ君って…」

 

「?何だ?」

 

「ううん。後で話すね」

彼女はどこか嬉しそうな表情で俺に何かを言おうとするが結局話してくれなかった。少しばかり不満ではあったが頑固な彼女は梃子でも動かないだろう、と早々に諦める。

 

そんな俺を尻目に彼女は凄い勢いで翔んで行ってしまった。リーファ()を待つキリト()の元へと…

 

それにしても…

 

「何が逃げるな、だよ…」

 

彼女が言った通りいつも逃げているのは俺なのに…そんな俺が人様に逃げるな、だなんて…可笑しい過ぎて必死に笑いを噛み殺そうとする。

 

「ククククク…あーあ、マジで傑作だぜ」

 

だが結局堪えきれず笑いが溢れてしまった。言ってる事とやってる事が矛盾してるってのはこういう事を言うのだろう…今更ながら自分に嫌気がさしてくる。

 

……いつから俺はこんな人に説教を垂れるような奴になってしまったのだろうか。少なくともあの頃はこんな人間ではなかった、他人には不干渉…関心など全く無く、少なくとも感情を動かされる事なんて無かった。それが幸か不幸かは分からないが…

 

「本当に、どうかしてる…」

 

そんな弱々しい声は眩いばかりの青空へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

リーファside

 

 私が北側のテラスに辿り着くとそこにはお兄ちゃんが待っていた。その目に覚悟を秘めさせて…

 

「来てくれてありがとう、スグ」

 

「ううん、遅れてごめん」

 

私の言葉にお兄ちゃんは勇気を振り絞って声を出そうとする。

 

「あのさスグ『お兄ちゃん』」

 

だけど私はお兄ちゃんの言葉を遮り剣を抜いた、そしてその切っ先をお兄ちゃんに向ける。

 

「剣を抜いて。兄妹喧嘩しよう」

 

これが私が考え抜いて出した答えだ。どんな言葉を言えば良いのか分からない…それでも剣でならお兄ちゃんと真正面から語り合う事が……ううん、全力でぶつかる事がきっと出来る。

 

「スグ…お前…」

 

少し驚いた表情を見せるお兄ちゃんに私は微笑みかける。

 

「想いは全部、この剣に乗せるから」

 

その言葉を聞いてお兄ちゃんは一瞬呆気に取られた後真剣な眼差しで私を見詰め背中から身の丈を越えるような大きさの大剣を抜いた。

 

「いいぜ、来いスグ!」

 

そうしてお互い武器を構える。私は剣を上段に構え切っ先を向け、お兄ちゃんは姿勢を低くして半身になり剣を後ろの手に構えた。まるであの時二人でやった剣道の試合のように…

 

そしてーー私たちの初めての兄妹喧嘩が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「せやああぁぁぁ!!」

 

「おおおおぉぉぉ!!」

 

 私の首もと目掛けた一閃…それをお兄ちゃんは体を捻ってかわす、そのままお兄ちゃんは剣の重さを生かして半回転しながらの斬り払いを行う。それを私は後ろに跳んでかわし、もう一度仕掛ける。

 

「ーーーック!」

 

私の全力の突きをお兄ちゃんは顔をそらして躱そうとする、が躱し切れずに頬に一本の線が入る。しかしお兄ちゃんも負けてはいなかった。

 

「はああぁぁぁ!!」

 

「ーーーック!」

 

お兄ちゃんはその不釣り合いな程の大きな剣をまるで自分の身体の一部のように扱う……どこからそんな力が出てくるのか、鋭く重い連撃を次から次へと私にぶつける。なんとか躱したり剣で受け流したりするがそれでもHPは少しずつそれでも確実に減っていく。

 

『それなら…』

 

このままだと駄目だ…!全力でお兄ちゃんとぶつかるためには私の十八番の空中戦しかない!!そう思った私は翅を広げて翔び立つ。お兄ちゃんも私の我が儘に付き合ってくれるように翔んでくれた。

 

再び交差する剣撃、走る火花……喧嘩はより一層激しくなる。そして私の高高度からの剣をお兄ちゃんが剣で迎え撃ちいわゆる鍔迫り合いの状態になった所で高まった私の感情は啖をきったように溢れ出てきた。

 

「勝手だよ……」

 

「?スグ…」

 

「お兄ちゃんはいつも勝手だよ!従兄妹同士だって知った時だって!SAOに囚われた時だって!」

 

感情と共に言葉が次から次へと流れ出てくる。まるで子供が癇癪を起こしたように……

 

「勝手に恋人まで作ってくるし、その上その人を助けるためにまたあんな事があった仮想世界に入ってくるし!何で一言言ってくれなかったの!勝手過ぎるよ!」

 

「スグ……」

 

違う!私が本当に言いたいのはそんな言葉じゃない!そうは思っても溢れ出てくるのはお兄ちゃんに対する怒りの言葉ばかり……そんな子供染みた言葉と共に目から涙も流れてくる。

 

「やああああぁぁぁぁぁ!!」

 

そんな絶叫を上げながら大振りの斬り下ろし…対するお兄ちゃんは反射的に横に凪ぎ払いを行おうとする。私の見立てではきっとお兄ちゃんの剣の方が先に私の体に入るだろう……そして私のHPはゼロになる。

 

結局私はお兄ちゃんに言いたい事を言えなかった…酷い事を言ってごめんなさいっていう簡単な言葉さえ言えなかったのだ。せっかく背中まで押して貰ったというのに……

 

『ごめんねお兄ちゃん、タツヤ君』

 

心の中で彼らに謝罪してこれから起こるであろう事を想像して目を閉じる。

 

しかし…

 

『………あれ?』

 

いつまで経っても来るはずの衝撃は来なかった。恐る恐る目を開けるとそこにはーーー私の剣が深々と肩に刺さっているお兄ちゃんがいたのだ。

 

「な、なんで斬らなかったの?」

 

あのまま剣を振るえば私を斬れた筈なのに…そんな私の戸惑い染みた問いかけにお兄ちゃんは不快感に顔をしかめながらそれでも笑いながら語りかける。

 

「途中までは本気で斬るつもりだったんだけどさ…やっぱリーファを…妹を斬るなんて出来なかったんだ、お兄ちゃんとしてな」

 

それに……そう微笑みながら私の瞳から溢れ出てくる涙を払う。

 

「泣いてる妹を慰めるのはお兄ちゃんの務めだからな……」

 

ーーその言葉に私はまた泣きそうになる。悲しくてじゃない、あんな酷い事を言った私をまだ妹だと思ってくれている事実が嬉しくて、嬉しくてーーだから泣きそうになってしまったのだ。

 

「馬鹿だよ…お兄ちゃんは…」

 

「妹を斬るのが利口ってのなら、俺は馬鹿のままでいいよ」

 

そうやって笑うお兄ちゃんはどこか誇らしげだった。

 

ーー今なら私は言えるかもしれない。そう確信した私は、しっかりとお兄ちゃんの目を見て口を開く。言いたくて言いたくて仕方が無かった事を……

 

「お兄ちゃん…いっぱい酷い事言って…ごめんなさい…」

 

途切れ途切れの言葉…それでもお兄ちゃんは私を優しく抱き締めてくれた。

 

「俺だってスグに酷い事してきたんだ。謝るなら俺の方だよ、スグ」

 

そう諭すように言うお兄ちゃん、すると真っ直ぐ私の目を見る。まるで何かを決意するように……

 

「なあスグ」

 

「何?お兄ちゃん」

 

「あの告白の返事してもいいか?」

 

そう言うと私の肩を掴みながら真剣な眼差しで申し訳なさそうにゆっくりと口を開いた。

 

「俺はやっぱりスグの事は妹としか思えないんだ。妹としてのスグが好きだから…ごめん」

 

それは私の事を恋愛対象としては見てくれないという事で…つまり私は振られてしまったのだ。

 

それでも…

 

「分かった。正直に言ってくれてありがとう」

 

自然と微笑んでしまった。

 

奇妙な話…振られてしまった筈なのだが、不思議と悲しい気持ちにはならなかった。むしろ今は憑き物が取れたような清々しい気分だ。

 

それはきっとお兄ちゃんが真正面からはっきりと言ってくれたお陰だと思う。それに…

 

「あの人のお陰…かな?」

 

「?何か言ったか?スグ」

 

「ううん。何でもない」

 

きっとあの赤い人のお陰だ。ぶっきらぼうで口が悪くて…それでもしっかりと私を見てくれて背中を押してくれたお節介な人。きっと私はあの人の事が……

 

そこまで考えて思考を止めた。ともかく今はーーこの幸せに浸ろう。逃げていたら味わえなかったであろうこの温もりに……。そして私はお兄ちゃんの腰に手を回して胸に顔を埋める…お兄ちゃんはそれに答えて優しくそれでいて強く抱き締める。

 

きっとこの時初めてーー私とお兄ちゃんは本当の兄妹に戻れたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界樹の前で待ち続ける事、数十分…向こう側から黒と緑の人影が仲良く手を繋ぎながら歩いて来た。まあキリトとリーファであるのだが…

 

「おう、早かったな」

 

「待たせたな、タツヤ」

 

「遅れてごめんね、タツヤ君」

 

そんな二人に俺は向き合い口を開くと二人していい笑顔で答える。

 

「仲直り…出来たんだな」

 

俺の問いに二人は顔を見合わせて同時に答えた。

 

「ああ(うん!)」

 

二人の満面の笑み…眩しいほどのそれを見てーー俺はまた彼女(紗夜)の顔を思い出してしまった。

 

『そっか…』

 

そこで俺はようやく気づいたのだ。今まで思い出さないようにしてきた彼女の事を何でここ最近は思い出してばかりいるのか…俺はてっきりあいつらの抱えている問題が少しばかり俺のと似てたからーーだから思い出してしまったのだと思っていた。

 

でも…本当は違ったのだ。

 

俺はーー明るいものを見すぎたのだ、こいつらと関わっていくうちに……。だからもしかしたら俺も出来るんじゃないか?こいつらみたいになれるんじゃないか?なんていう甘い夢を抱いてしまったのだ。馬鹿みたいな話だ……どんなに眩しくて綺麗なものを見たからって俺自身に変化が起きた訳ではないというのに…

 

叶う筈の無い願いを抱いてーーでも結局叶う事なく自分の惨めさを思い知る…そんなのはもう御免だ。そんな希望は持ちたくない。

 

だから…もう明るいものは何も見ない事にしよう、こいつらと関わるのはーーこれで最後だ。

 

そんな覚悟を内に秘めながら俺の最後の戦いへと赴くのであった。

 

 




はい!お待たせしました。残念ながらこれからも忙しいのでノロノロ更新になってしまうかもしれません。スミマセンm(__)m

それでは次回予告です。
最後の戦いに挑むタツヤ……果たしてタツヤ達は迫り来るガーディアンの群れを突破できるのか?
次回『再戦!グランドクエスト!』にレディーゴーーーーーー!!!

ちなみにどうでもいい話ですが作者の懸念事項が一つだけ………

みなさん、前回登場したガンプラの正体は分かりましたか?

以上後書きでした。
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