ソードアート・オンライン~赤腕の槍使い~   作:G.S

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感想を書いて下さったり、お気に入り登録をして下さった方々ありがとうございます。
前回の投稿でリーファちゃんを応援して下さる声が多数あり嬉しい限りです。これからも彼女の応援を宜しくお願いします。

お待たせいたしました。それではどうぞ


第三十二話:再戦!グランドクエスト

 俺が勝手にそんな事を考えているとは露知らず、話はこのグランドクエストをどうするかとなった。ユイの話では出現数は異常だがキリトのスキル熟練度なら瞬間的な突破は可能では?という事だ。

 

選択肢は二つ…シルフ・ケットシー連合が合流するまで待つか、このまま三人で挑むか、である。

 

普通に考えれば答えは前者だ。あのクエストの異常さは身を知った今…少なくとも十倍の戦力は欲しい。

 

だが…

 

「何だか時間が無い気がするんだ。だからみんな頼む、力を貸してくれ」

 

そう言って頭を下げるキリト、どうやらキリトは嫌な予感がするらしく今すぐにも行きたいらしい。シルフ・ケットシー連合の到着すら待てないようだ。

「うん。お兄ちゃんの頼みだし、私もアスナさんに会いたいしね」

 

そんなキリトの懇願に元気に答えたのはリーファだ。少し前の暗い表情がまるで嘘のように迷いが吹っ切れた表情で答える。こういう明るい表情の方が実に彼女らしいと思う。俺には眩し過ぎて毒々しいが……。

 

そんな彼女の眩しさに内心目を瞑りながら、俺もキリトの案に答えた。

 

「いいぜ、それならとっとこ行くか?」

 

俺が出したのは肯定の言葉…しかしキリトとリーファの二人は驚いた表情で俺を見てきた。正確には驚いた、というよりも有り得ないものを見たかのような表情であったのだが……

 

「な、なんだよ…」

 

「いや…」

 

「意外だな~、て…」

 

居心地の悪い視線に堪えかねて尋ねる。どうやら二人して俺がそんな馬鹿げた提案を受け入れる訳が無いと思ったらしい。

 

そりゃー…

 

「俺だって止めれるなら止めるさ。でも仕方無いだろ?何言っても突っ込む馬鹿と突貫娘がいるんだ、そんな奴らと組んだ時点でもう諦める事にしたんだよ」

 

「と、突貫娘って……」

 

「ば、馬鹿とはなんだ馬鹿とは!!」

 

俺の言葉に苦笑いするリーファに心外そうな顔をするキリト、まあリーファも怒ってこないって事は自分でも心当たりがあるという事だろう。ちなみにキリト、お前は紛うことなき馬鹿だよ、羨ましいぐらいにな……

 

「でも……ありがとな、タツヤ」

 

「はっ!てめえが人に感謝するとか止めてくれよ。何かの前触れか?」

 

「ちょ、ちょっと!お前は俺をどんな奴だと思ってんだよ!?」

 

「……聞かない方がいい」

 

「お、おい!ふざけんのもいい加減にーー」

 

俺の軽口にムキになって返すキリト、こうやってこいつとふざけあうのも最後だと思うと中々感慨深いものがある。最後くらい弄り倒してもいいかな、とやられるキリトにとっては傍迷惑な考えが浮かんだ。

 

そんなこんなでキリトを弄り続ける事数分…げっそりとした彼は仕切り直しとばかりにゴホン、と一度咳払いをし真剣な表情で俺とリーファに向き合う。

 

「それじゃあ俺とタツヤが前衛で斬り込む、リーファは後方でヒールをしてくれ」

 

「ちょっと待てキリト」

 

キリトが提案したのは前衛と後衛を分けて攻めるというセオリー通りの作戦であった。一見すれば一番ベストに見えるセオリー通りの……だが俺はその作戦に異議を唱えた。

 

「お前は脳筋馬鹿二人の回復をリーファ一人に全部任せるつもりなのか?」

 

「えっ?あっ!」

 

ようやく気付いたかこの馬鹿は…そう、もしキリトの言う通りにした場合たった一人で二人分の回復をしなければならないリーファにかかる負担は計り知れない。MP的な意味でも、二人分のHPを把握し続けなくてはいけない点でもだ。せめてもう一人回復役がいればキリトの言う通りの作戦でもよかったのだが……

 

これが一つ目の理由である。

 

そしてもう一つは…

 

「それにリーファは空中戦のプロだ、そんな戦力を後方待機なんてさせる余裕は俺たちには無い」

 

つまり彼女の戦力的な意味合いである、残念ながら彼女のような貴重な戦力を後方で遊ばせておくほど無駄な事は無いと考えている。実際彼女の剣の腕と機動力は頼りになるしな。

 

「という事で期待してるぜ。悪いが馬車馬の如く働いてくれ」

 

「うん!それだけタツヤ君が私の事を信頼してくれてるって事だもんね?」

「あ、ああ……」

 

俺的には彼女に大変な役目を押し付けてしまったつもりだったのだが、そう良い笑顔で嬉しそうに言われると少しばかり気恥ずかしいような変な気分になる。こういう純粋な笑顔は…やはり苦手だ。

 

「……仲が良さそうだな」

 

そんな俺たちを見てどうしてか不機嫌そうに俺を睨み付けるキリト…訳が分からない、お前は一体何が気に入らないのだ?という疑問が湧く。まあどうせ大した理由ではないだろうが……

 

「それで、作戦はどうするの?」

 

そう俺に聞いてきたのはリーファだ、たった三人でこの無理難題クエストに挑むための策を彼女は期待しているようだ。残念ながら彼女の期待には答えられない訳だが…

 

「なるべく離れず、臨機応変に戦え…そんだけだ」

 

「タツヤ君…いくらなんでもそれは…」

 

「…アバウト過ぎだろ」

 

俺の単純な答えに頭を抱えて呆れる二人…言っちゃ悪いが俺にこの状況を一転させる作戦なんかを考えろってのが無理な話だ。俺は策士になった覚えはねえ、そういうのはお前の愛しの副団長様にでも聞いてくれ。

 

「大体作戦ってのは、事前の準備とこちらにある程度の数が揃っている事が最低条件なんだ。なに一つ満たしてねえのに突っ込むってなったら作戦なんかあって無いようなもんなんだよ」

 

どこかの馬鹿のせいでな、とその馬鹿の方を見るとあからさまに目をそらした。リーファはそんな馬鹿を見て渇いた笑声を上げる。

 

「さて…目的は頂上に辿り着く事だ、三人とも行けるのがベストだが最悪キリト一人だけでも届ける。いわば俺とリーファの役割は露払いだ。キリトに寄って集る蝿を叩き落とせ」

 

「は、蝿って…」

 

「そんぐらい気楽に行こうって話だよ、リーファ」

 

まあ実際に蝿みたいな連中だとは思うが…数の多さとかウザさとかまさにそっくりではないだろうか。そんなどうでもいい思考に陥っている俺を尻目にリーファは元気良くよし!、と言って俺たちを見渡す。

 

「それじゃあ、みんないくよ!」

 

その言葉と共にリーファは手を前に出す。キリトがその手の上に自分の手を重ね、ユイがその上にちょこんと両手をおいた。

 

「…ったく、いつからここは体育会系のノリになったんだよ」

 

そんな俺の皮肉めいた言葉にも耳を傾けずこちらを見詰める三人、その無言の視線に屈して渋々俺はユイの小さな手の上に掌を重ねる。

 

「よし!いくぞ!!」

 

「「「「おおーーー!!!!」」」」

 

「なんだかんだでしっかりやってくれるんだね」

 

「……うるせえ」

 

 

 

 

 

 

 

 そして現在俺たちは世界樹の目の前にいた。

 

あの後三人で一応の作戦を考え方針が決まり、そのための準備も終わった所でここまで翔んで来た。

 

準備は万端だ。出来る範囲で、という最後に頼り無い言葉が付け加えられるが……

 

まあそんなどうしようもない事はさておき、クエストを受理するとすぐさま扉がゆっくりと開く。あの時は扉が開けっぱだったのでそのまま入れたが、実際は俺らに威圧感たっぷりで尋ねてくるデカイ石像の大層な話を聞かなければいけないらしく……正直面倒だった。

 

大体小難しい話は苦手なんだよ俺は、シンプルに頂上まで頑張って行ってらっしゃーいぐらい言えねえのかよ、気が利かねえ奴らだ。まあ気が利く連中ならこんな馬鹿クエストなんて作らないだろうが……

 

「タツヤ君どうしたの?」

 

「ーーいや、なんでもない」

 

どうやら思考に没頭し過ぎたようだ、不思議そうな顔をしているリーファを尻目に俺も一緒に世界樹の中に入ろうとする。

 

一歩一歩ゆっくりと歩いて行き三人揃って中に入る。入ると同時に張り詰めた空気と緊張感が漂い、その瞬間に先ほどと同じようにガーディアンが次から次へと湧き出て来た。まるで巣から出て来た蟻だ、という感想はさておき…

 

「いいか!無理に倒す必要はねえ!大事なのはとにかく速く上に行くことだ、雑魚は捨て置け!」

 

「うん、分かってる」

 

「よし、行くぞ!!」

 

二人の頼もしい言葉が聞こえた傍から俺の目の前に三体のガーディアンが突っ込んで来る。真正面から来た一体目の頭を貫きそのまま横に一閃して二体目を斬りつける。そして横から来た奴を左手で殴り飛ばした。

 

普通ならこんな事は起きない……体術スキルを取っているならともかく何も無い状態で相手を殴ってもあそこまで相手を飛ばすことは不可能だ。

 

もちろん種はある……俺の左手を覆っているこいつーー真ん中に黒曜石のような丸い石が埋め込まれている赤銅色の籠手のような装備…こいつが俺の新兵器ーー《フィールド・バンカー》…名前と見た目から勘違いするかもしれないがれっきとした小盾(スモールシールド)だ。これは槍を振り回すのに邪魔にならないような盾を探していた所偶然見つけたものだ。迷わず買ってしまったが買った後にある欠陥に気づいたのは…まああれだ、運が悪かったって事で。実際大した欠陥じゃなかったからよしとしよう。

 

ちなみに盾でどんだけ相手を思いっきり殴ろうが相手はノックダウンするだけでHPは一ドットも減らない。所詮盾は盾なのだ、まあ今回はその方が都合がいいのだが……

 

それはこのクエストの特異的な点にある。

 

このクエストのミソはガーディアン共は減ることが無く永久にPOPし続けるという点だ。つまりどれだけ必死になって減らしても向こうの頭数は一向に減ってくれない…それならわざわざ倒す必要は無い。このクエストの成功はどれだけ速く上に辿り着けるかにかかっているのだ。

 

だからこそーー最小限の時間のロスで相手を捌き続ける事が出来る盾はこの場においては武器よりも役に立つのだ。

 

それでも……

 

「状況は最悪だがな…」

 

そもそもこの勝負は部が悪過ぎるのだ。数の問題は仕方ないとしても、このフィールドは……

 

この世界樹の内部は高いドーム状になっている。俺たち挑戦者は当然の事ながら一番低い位置からスタートをして上を目指す。さてここで問題を一つ。上から攻撃する方と下で迎え撃つ方……果たしてどちらの方が有利だろうか?考えるまでも無く前者だ、迎え撃つ方は必ずと言ってもいいほど後手に回る。昔から城攻めする側の方が守る側よりも被害が出るのはそういう事だ。

 

それでも着々と上に進んで行く。時には片方の身を守りながら時には共に相手に向かって剣を振るい、HPが危険になれば詠唱中のリーファを二人で守り、そうして三人でお互いをカバーし合っていく。それにしても、リーファの時も感じたが連携プレイとは中々に奥が深い……まあ、もう経験する事は無いと思うが……

 

そんな思考に陥っているとこっちに向かって来る蝿が一匹…ちょっとばかし悪戯心的なものが働いた俺はそいつを突き刺すーーー事はせず四肢を斬り落とすだけに留める。そしてーー

 

「悪いがーー盾になって貰うぜ」

 

そいつの首元を掴んで敵に見せつけるように晒した。こっちに突っ込んで来ようとするガーディアンの前にそのジタバタも出来ない憐れなお仲間さんの体を人質のように向ける。

 

その瞬間ーー俺に真っ直ぐ突っ込んで来る筈だったガーディアンは一瞬動きを止め、胴体に大穴を開けられて消滅した。

 

内心予想通りの結果にほくそ笑む。あの世界で学んだMobの行動パターンの一つーーどんな状況になっても同士討ちをしない事だ。どんな混戦状態になろうが奴らは味方だけは攻撃しないように設定されている。そんな奴らの目の前に急にお仲間を置けば…一瞬ではあるが動きが止まるのだ。

 

まあ絶対なるという確信があったわけではないし、勿論の事ながら味方ごと俺を斬る可能性もあった。それでも賭けには勝った。最後の舞台でここまで運が味方してくれるとは……なんともまあ、滑稽で皮肉なものだろうか?あまりの可笑しさに俺は戦闘中にもかかわらず堪らず爆笑する。

 

「アハハハ、なんと他愛無い!鎧袖一触(がいしゅういっしょく)とはこの事か!!ハハハハハハハハ!!!」

 

「お兄ちゃん、タツヤ君が壊れた…」

 

「あ、あいつ…こんな性格だったっけ?」

 

まるで悪役のように高笑いしながら敵を薙ぎ払う俺を見て顔をひきつらせるキリトとリーファ。確かに彼らの言う通り全く俺らしくない言動と行動だ。それでも、今だかつて味わった事が無いほどの興奮と高揚感に俺の心は満たされていた。

 

まさか槍を振るうのがここまで愉しいとは!きっとこの時の俺はもう最後だからと開き直っていたのだろう。キリトには悪いが俺にとってこいつは所詮遊びなのだ、最後の遊び……だからこそこの瞬間だけは、醜い自分の事なんざ全て忘れて全力で楽しむのだ。この世界に心残りなんて一つも残さないように……

 

そうして俺は立ち塞がるガーディアン共を嬉々と串刺しにしていくのであった。

 

 

 

 

そこから先はーー地獄のような光景だった、相手にとって、ではあるが。ガーディアン達は無残に斬り、突かれ、次々消滅していく。俺たちの上昇速度は留まる事を知らず、というよりはむしろ最初よりも速度を上げていく。どんどん奴らの群れを突破して行き……

 

そしてーーようやく頂上が見えてきた。

 

勿論だからといって安心は出来ない、そこにいるガーディアンの数は先ほどの比では無くそれが狭い所に固まっている様はまるで巨大な壁のようだ。それでも……

 

「「「おおおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

 

俺たちは雄たけびを上げながら得物の先を奴らに向けて突撃する。ここまで来れた…あと一歩だ、そう自分に言い聞かせて全力で。しかし…

 

「こいつら……!!」

 

「これは…!」

 

「かってえな、オイ!!」

 

思いっきり弾かれた。こいつらの数に物を言わせた防御に俺たちの攻撃は届かず、俺たちは後ろに飛ばされた。硬いとかじゃねえ、こいつは最早無理難題レベル…まあ最初から向こうさんにクリアさせる気が無い事は分かっていたが……

 

それでも諦めるつもりは微塵も無い、物理が駄目なら……

 

「キリト!リーファ!少しの間援護してくれ!」

 

そう言うやいなやすぐさまスペルを綴る……現在撃てる中で最高の魔法をこの槍のエクストラ効果で放つ。唱え終わると同時に数多の火矢が奴らを射ぬかんと飛んでいく。

 

「ーーッチ!駄目かよ!!」

 

それでも奴らを突破するには足りない。確かに眼前に佇むガーディアンの何十体かは倒せた、しかし倒した先から増えていくのではいくらやったってこの壁に穴なんて空きやしない。まるで焼け石に水ーー与えているのは水ではなく火なのだが……なんていうどうでもいい考えすら浮かんできた。

 

ともかくこの状況は…

 

「マズイよな……」

 

上から次々とこちらに突っ込んでくるガーディアン共を捌きながら苦々しく呟いた。

 

これじゃあいくら時間が掛かっても突破なんて不可能だ。そして突破が不可能という事は俺たちは嬲り殺しにされる…という意味だ。誰がどう見たって勝利は絶望的…と思われる。

 

だが現状を打破する一手はーー実はある。《魔槍ブリューナク》のエクストラ効果……完全に一か八かの賭けになるしこれを使ってしまえば俺は完全に戦力外通告を受ける事になるから最後まで取って置きたかったのだが……まあここがその最後って事だな。

 

そう結論付けた俺はその最後の一手を発動しようとしてーー

 

「「「「「オオオオオォォォォォォォ!!!!」」」」」

突如下から沸き起こった鬨の声に驚き手を止めるのであった。

 

 

 

 

下を覗くとそこには銀色の鎧を身に纏い緑色の翅をはためかせた数十人ものプレイヤーがいた。あれはーーシルフの連中か?!

 

「すまない、遅れてしまった」

 

「サクヤ!来てくれたんだ!!」

 

大声を上げたのはシルフ領主サクヤさん、おそらくは急ピッチで準備をしてこの部隊を連れて来たのだろう。見るからに熟練だと分かるプレイヤー達だ、まあ全員同じ兜を被っていて顔は分からないのだが……

 

しかし、そんな屈強な戦士達の中に失礼ながら場違いな知り合いが一人いた。緑色のおかっぱ頭に気弱そうな雰囲気を纏っている少年、確か名前はーー

 

「コレン、だったっけ?」

 

「違います、レコンですよ!誰なんですか、コレンって!!」

 

俺の言葉に捲し立てる勢いで答えるコレン軍曹ーーではなくレコン。そんなレコンに気づいたリーファは驚いた表情で尋ねる。

 

「レコン!あんたどうしてここに?」

 

「サラマンダーとシグルドの仲間から全力で逃げて来たんだよ。それとここに来たのは勿論、僕の剣はリーファちゃんに捧げているからだよ」

 

「あんた、こんな時でもよくそんな事を……天才的に馬鹿ね」

 

「ちょっと!酷いよ、リーファちゃ~ん」

 

そんな二人のコントのようなやり取りに思わず笑みが溢れる。なんというか…見ているこっちが微笑ましくなるような不思議な光景だ。きっと本来の俺はそんな光景を外からーーそれこそ向こう岸から他人事のように眺めているだけで十分だったのだろう。全く…不相応な望みなんて持つものでは無いな。まあ俺の事はどうでもいいので置いておいて……

 

「それにしてもこんなに早くシルフの部隊が来てくれるとは…」

 

「シルフだけじゃないヨー」

 

「うおっ?!ビックリした…。いつからいたんですか、って何ですかソイツは……」

 

一人言の筈であった俺の呟きにこの場に似合わないそんな暢気な声で答えたのはケットシー領主のアリシャ・ルーさん、驚いて思わず振り返ると、彼女は爛々とした赤い目に漆黒の鱗…巨大な翼を持ったドラゴンに跨がっていたのだ。えっ?何このそこらのボスより威圧感たっぷりな奴らは?!

 

「ケットシーの飛竜(ドラグーン)部隊…本当にあったんだ……」

 

「そう!虎の子の飛竜部隊だヨー!」

 

リーファの呟きにまるで大事に隠してきた宝物を見せるかのようにニンマリと笑うアリシャさん。そのまま彼女はケットシーの戦士たちに号令を掛ける。

 

「飛竜隊、ブレス攻撃用ーー意!!」

 

その言葉と共に横一列に並んだ飛竜の口から今にも解き放たれんとする炎が…その様子を見て、負けじとサクヤさんも扇子を振り上げ凛とした声を張り上げる。

 

「シルフ隊、エクストラアタック用ーー意!! 」

 

その号令と共にシルフの剣士たちはその剣を頭上に掲げる。

 

「ファイヤブレス、撃てーーー!!!」

 

「フェンリルストーム、放てーーー!!!」

 

その言葉と共に必殺の攻撃が放たれる。飛竜の口から出される灼熱の息吹きは容易くガーディアンの群れを焼き払い、剣から放出された何十もの鮮やかな雷は一体、一体を確実に射ぬいていく。

 

一気に体勢を崩すガーディアン達…その様子を見てサクヤさんは声高らかに宣言する。

 

「全軍、突撃!!!」

 

「オオオオオオォォォォォォ!!!」

 

突然の援軍、戦場は混沌となりガーディアン共の注意は一気に分散される。流れは来た……後はただ駆け抜けるのみ!

 

「行くぞ、キリト!今しかねえ!!」

 

「ああ!二人とも、援護は任せた!!」

 

言葉少なく駆け出す。上へ上へ、ひたすら上を目指す……立ち塞がる蝿共を力づくで捩じ伏せて。

 

「ーーーーくっ!!」

 

「スグ!!」

 

「行って!お兄ちゃん!!」

 

だが途中のガーディアン達の突撃でリーファは墜ちていく。助けようと引き返そうとするキリト、だが彼女は傷つきながらも先に行け、と声を張り上げる。

 

そんな彼女の思いを背負って俺たちは更に上を目指す。しかし、眼前には未だ増え続けるガーディアン共が…

 

「オオオオォォォォーーーって何すんだよ、タツヤ?!」

 

「バーカ、攻撃役(アタッカー)壁役(タンク)より前に出るんじゃねえよ」

 

先行しようとするキリト…だがそいつを押し退けて俺は前に出た。全く……ここでお前が特攻してどうするんだよ、そういうのは俺みたいな脇役の仕事だ。

 

そして俺は奴らの群れのど真ん中目掛けて突貫した。槍を振り回し、貫き、ダメージなど考えずにひたすら前にーー邪魔する蝿共を蹴散らして突き進む。

 

しかし限界は訪れる…十体ものガーディアンが一気に俺の身体に剣を突き刺した事によって俺の体は地面に墜ちて行く。道は切り開けなかった……しかし俺の中にあったのは突破出来なかった悔しさではなく満足感だった。

 

「行って来い!キリト!!」

 

ここから先は俺みたいな端役の出番ではないのだ。後は繋いだ、最後は主人公らしく決めてくれよ、キリト。

 

「オオオオォォォォォォォォォ!!!!」

 

そしてキリトは剣を天に掲げて立ち塞がるガーディアン共を蹂躙しながら真っ直ぐ突き進んでいく。

 

高く、高く……キリトは登り詰める。ここにいる全員の想いを乗せて…。何者もそれを阻む事は叶わずあいつは誰も未だ達した事が無い頂上へ辿り着くーーー筈であった。

 

だが次の瞬間。俺が見たのはーーー突如現れた真っ黒な穴から出現した巨大な刃にキリトが袈裟斬りされる姿であった。




無事クリアだと思いましたか?ところがぎっちょん!!!!

それとテンション高い時の主人公は書いていて楽しいです(笑)ちなみにうちの主人公、テンションが上がり過ぎるとガンダムのライバルキャラやら悪役の台詞を叫ぶという悪癖があったりなかったり(笑)

そしてここまで引っ張りまくっている《魔槍ブリューナク》のエクストラ効果。それが明らかになる日は果たして来るのでしょうか?最悪このまま御蔵入りという可能性も(笑)

それでは次回予告です。
タツヤ達の前に立ちはだかるのはこれまでのガーディアンとは明らかに一線を越す相手、最強の相手を前に彼らはどう立ち向かうのか!!
次回『ラストバトル』にレディーゴーーーーー!!!
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