ソードアート・オンライン~赤腕の槍使い~   作:G.S

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感想やお気に入り登録をして下さった方々ありがとうございます。
申し訳ありませんが次回の投稿はテスト明けの一か月後になりそうです。

それではどうぞ


第三十三話:ラストバトル

 あの時…あのまま迫り来る無数のガーディアンを突破したキリトが世界樹の上に辿り着くーーー筈だった。

 

しかし、突如虚空から現れた巨大な腕がキリトを斬り裂きそれを妨げた。訳も分からず唖然とする俺たち…そんな俺たちの気も知らず、その刃は後ろに吹き飛んだキリトに再び迫ろうとする。

 

「お兄ちゃん!」

 

最初に動いたのはリーファであった。斬られたキリトの元に駆けてその腕を防ごうとする。だがーー

 

「きゃああああ!」

 

そいつは剣諸ともリーファの体を吹き飛ばした。再び巨大な剣がまるで死神のような鎌のように二人に襲い掛かる…

 

「させるかよ!」

 

俺は一旦槍を背中に仕舞い二人の手を掴んでその凶刃をかわした。しかし、さらに襲い掛かる凶刃…ともかく距離を取らないと、俺は二人の手を引っ張り下がる。すると虚空が広がり中から何かが出て来た。

 

それは奇妙な存在であった。大きさは十五メートル程、異常に長い手足に突起物のように飛び出た肩、装飾華美かつ豪華絢爛な剣と黄金の兜、それに鎧を身に着けた中世の鎧の騎士とエイリアンを合わせたような外見のモンスター。神々しさ、というよりは痛々しいほどの成金趣味な印象を見ている者に与えるであろう。

 

一目見てヤバイ相手だと分かる敵。だがーー

 

『わざわざ馬鹿正直に相手する必要は無えよな!』

 

俺たちの目的は上に辿り着くことだ。こんな図体がデカイ奴なんて無視して進めばいい。俺は上空目掛けて翔んでいくが奴は標的を俺に変えてその長い腕を振るう…

 

だがーー

 

『動きがバレバレだぜ…!』

 

動きは速いが躱せない事は無い!俺は翔びながらその腕を躱し続けた。そして上に辿り着く一歩手前でーーー

 

『ーーーッチ!マジかよ…!』

 

思いっきり弾かれた、おそらくはあいつを倒さないと上に行けない仕組みなのだろう。全く…!誰だよ出て来るのが雑魚ガーディアンだけって言った奴は!とキレるのを我慢してこいつと向き合う。

 

正直かなり厳しい相手だ。下を見るとシルフケットシー連合はまだ雑魚ガーディアン達と戦っている。援護は望めないか…つまりキリト、リーファと俺の三人でこいつを倒さないといけないという事だ。

 

正直分が悪いが、やらなきゃここまで来た意味が無くなる。おそらく俺たちが世界樹に挑めるのは今回が最初で最後だろう。それに…

 

『きっとこれがーーー俺が出来る最後の戦い…』

 

最後くらいは全力を出さないとカッコつかないだろう。

 

「キリト、リーファ、とっととこのデカ物を倒すぞ」

 

「ああ!こんな所で時間なんて潰せるか!」

 

「うん!行くよ!」

 

そして俺の最後の戦いが始まった。

 

 

 

 

 先ずはリーファとキリトが突っ込む、すると奴はそいつを迎え討とうと両腕の剣を降り下ろした。

 

「ーークッ!」

 

「ーーこんのっ!」

 

そんな重たい双戟を二人は受け止める。得物同士が火花を散らす音が鳴り出す。しかし段々と圧され始める、それもその筈あの巨体から出る力は半端ではないのだから。それでもーー

 

『サンキュー』

 

こいつらのお陰で隙は出来た。俺は死角である背中から奴を突き刺さそうとする、狙いはあいつの頭…一番ダメージを与えれるであろう場所だ。そこ目掛けて翔び出そうとしてーー

 

「ーーーチッ!嘘だろ!?」

 

俺は驚愕の声を上げた。それは俺の体が突然打ち上げられたからだ、腹に走る不快感…それを味わって俺は自分がこいつに蹴り上げられたのだと理解した。ふざけた野郎だ、ムカつく程にな…!

 

「うお?!」

 

「きゃあーー!」

 

流石の二人もこれ以上あの剣を受け止め続けるのは不可能だったようで吹き飛ばされる。よく耐えてくれたと称賛したい所なのだが生憎そんな余裕はここにいる誰にも無かった。強過ぎだろ……!!

 

それに先制攻撃は失敗してしまった、状況は最悪だ。それでもーー

 

「まだだ!」

 

当たらないなら当てるまで攻めるまで…俺たち三人は再びこいつに飛び込んでいく。奴の周りを飛び回る事で翻弄してなんとか隙を作ろうとする。

 

するとーー

 

「畜生!なんだよ、その動きは!!」

 

奴はその体を独楽のように高速回転させた。まるで鎌鼬のように近づく相手を斬り刻もうとするそれを防ぎきる術などはなく慌てて距離を取る。動きが普通の敵と違い過ぎる、トリッキーというよりは最早あれは滅茶苦茶だ。さらに俺たちを追いかけるように回転し続ける巨体が俺たちに迫り来る。

 

だがーー

 

「キリト、リーファ、悪いけどそのまま逃げ回ってくれ。出来るだけ相手を動かないようにな」

 

二人は無言で頷き翔んで行く。そんな二人を尻目に俺は上昇して独楽野郎よりがいる位置より高度が高くなる。

 

こいつの死角…それは、回転する事で防御も攻撃も出来なくなる場所…すなわち中央だ。まさに台風の目のようなそこ目掛けて俺は急降下する。二人に注意がいっている奴はそんな俺の攻撃に気づかず俺の槍が深々と脳天に突き刺さるーーと思っていた。

 

「なっ?!馬鹿な!!」

 

しかし現実はそうはならず俺のスピードが乗った渾身の一突きは奴の兜に弾かれた。そこにあるのは掠り傷程度のダメージエフェクトのみ…攻撃を受けたそいつは俺の攻撃なんぞに蚊に刺された程度も感じていない顔をしていたのだ。

 

『こいつは長丁場になりそうだ……』

 

これから起こるであろう戦いの困難さを感じて、俺は内心溜息をつくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦い続ける事数十分、俺たちは未だにこいつに決定打を与える事が出来なかった。攻撃を与える事自体難しいし、何よりこいつの硬さがそれを邪魔をする。

 

少しずつ、本当に少しずつだが相手のHPを削っていく。まるで岩盤を紙ヤスリで削っていくようなそれに内心うんざりする。気が遠くなるような作業だ、まあそんな馬鹿げた作業なんてある筈が無いとは思うが……

 

「ほら、もう一度行くよ!」

 

「分かってるって。あんまり飛ばすなよ?」

 

そんな気を吹き飛ばすように渇を入れるリーファに俺はおちょくるように返し、二人であいつに突っ込む。すると奴は回し蹴りをするような動作に入った。

 

「?どういう事?」

 

リーファも当然のながら奴の行動に違和感を感じる。それもその筈どう考えてもこの距離からでは奴の蹴りは当たらないのだ。それこそ脚が伸びでもしない限り、ではあるが……

 

二人して注意深く奴の動きを一挙一動凝視するが変化は見られない。つまり奴はただ当たらない回し蹴りをするだけだという事……そんなあり得ない行動に俺の直感は凄まじく警鈴を鳴らした。

 

「伏せろ、リーファ!」

 

「えっ?!ちょ、ちょっとタツヤ君!!」

 

彼女の襟首を掴んで奴の蹴りの軌道の延長から体をずらす。俺も同じように体を反らしてギリギリ軌道上に立たないようにした。

 

瞬間ーーー俺の眼前を高熱の粒子の束が通り過ぎた。

 

有り得ない……最初に感じたのはそんな感想だった。だって俺はこいつを知っていたのだ。実際に目にした事は無いがテレビの中では幾度となく見てきたのだ、間違える筈が無い。あれはーーー

 

「ーーービームサーベルかよ」

 

奴の両脚の先端からは眩い閃光が刀身のように形作っていた。間違いない、あれは昔見てたアニメに幾度となく出て来たビームサーベルだ。いつからここは妖精と魔法の世界から宇宙世紀に突入したんだ?という当然の疑問が湧いたが、まるで何かを放出するような構えを取るそいつの姿にそんな疑問も一瞬で消えた。

 

「避けーーー防御しろ!!」

 

慌てて二人に危険を伝えようとしたが遅すぎた、まるで全身に砲身が付いているかのように奴の体から飛び出したビームが俺たちを蜂の巣にしようとする。

 

嵐のように吹き荒れるビームの弾幕をかわしきる術などはなく俺は盾で叩き落とし、キリトはその大剣を自身の前に出して防ぐ。

 

「ーーーック!!」

 

「クソ、が!!」

 

それでも全てを防ぎきる事は叶わず防御の合間を縫ってビームが俺たちを貫いていく。奴の体からは依然として火が噴いており、俺たちは防戦一方になる。

 

だから俺たちは一つ忘れている事に気がつかなかった、自分たちの事で一杯一杯になっていて彼女の事を忘れていたのだ。

 

「きゃあーーー!!」

 

「マズ、リーファ!!」

 

リーファの叫び声に俺はようやく気づいた。俺には盾がキリトには大剣があってあの弾幕から身を守る事が出来る、だがリーファには防ぐ術が一つも無いのだ。だからといってこんな網のように張り巡らされた弾幕ではいくら空中戦の得意な彼女でも防ぐ事は出来ない。

 

案の定俺が見たのはビームで貫かれた箇所からダメージエフェクトが出ておりその華奢な身体を地面に向かって真っ逆さまに墜ちているリーファの姿であった。

 

「キリト、時間を稼いでくれ!」

 

「分かった、頼んだぞ!!」

 

あの厄介なデカ物の相手をキリトに任せて俺は一目散に現在落下中のリーファの元に駆けつける。

 

間に合え、間に合え、間に合え……!!

 

「大丈夫か?」

 

よし、間に合った!俺は所々ダメージエフェクトが上がっている彼女の右手を掴みながら尋ねる。

 

「うん。翅が少しやられちゃったけど、なんとか」

 

「タツヤ、リーファ、気をつけろ!!」

 

リーファが一応無事だった事にホッと一安心するも束の間、キリトの切羽詰まった声に反応すると、そこには胴体からこちらに向けてビームを放つ奴の姿があった。

 

放たれたのは先ほどのような糸のように細いビームではなく濁流のような極太のビーム……そいつが俺たちを飲み込もうとしていた。

 

「間に合わない!タツヤ君逃げて!!」

 

悲痛なリーファの声、現在翔べない彼女ではあの攻撃はかわせないし、俺もリーファを抱えたまま避ける事は不可能だ。彼女の言う通り俺だけでも逃げる方がベストなのかもしれない……

 

でもなーー

 

「悪いけど、逃げるって俺が一番嫌いな言葉なんだよな」

 

せめてこの世界では逃げずに戦う。そう俺は決めたのだ…俺は彼女の前に立ち左腕の小盾を構えて押し寄せる光の濁流を受け止めようとする。

 

「おおおおォォォォ!!!」

 

二人して光に飲まれていく……雄叫びを上げて必死に耐えてみても体中からダメージエフェクトが上がりHPは凄い勢いで減少していく。体から悲鳴が上がる、それでも俺はそんな声を無視してひたすら耐え続けた。

 

ようやく眩しいばかりの閃光が止む、HPは半分ほど無くなっているがなんとか無事だ。振り返ると後ろのリーファも無事のようでホッとする。良かった……

 

ちなみになんとか俺たちは無事生きている訳ではあるが、このビームの威力が見た目の割りに低いとかではない、実際まともに受けていたら俺たちのHPは一瞬で消えていただろう。やっぱ……

 

「流石にミノフスキー粒子じゃなかったか……」

 

どうやらこんなビームでも一応魔法扱いらしい、というのは俺が無事なのは明らかに左腕に装着されているこの小盾の特徴にある、と簡単に予想出来るからだ。

 

この盾の特徴……それは魔法に対する高い防御力だ。魔法威力を半分以上カット出来るという正に魔法に対する最高の盾だ。だからこそ俺はこの盾には欠陥があると思っていた、ガーディアンには魔法を使ってくる奴なんて一体もいなかったからだ。

 

なんというか……この盾といいこの槍といい、ここに来てからの自分の悪運の強さには正直驚いている。少し引くぐらいだが…

 

「もう翔べるか、リーファ?」

 

「うん、大丈夫。ごめん守って貰っちゃって…」

 

「気にすんな。俺が勝手に防いだだけの話だ」

 

申し訳なさそうな彼女に俺はそう返す。実際彼女は俺に逃げろ、と言ってくれたのだ。そんな彼女の言葉を無視して自分勝手に彼女を守っただけの話だ、責められる事はあっても謝られる事は無い。そんな事よりも……

 

「……見えたか、リーファ?」

 

「うん。見えたよ」

 

どうやらリーファにも見えたらしい、ビームを射ち終わった後の奴の胴体の中が……

 

「黒い球体が入ってたよね?」

 

「ああ、間違いない」

 

そう……奴の開いた胴体から一瞬だけではあるが確かに黒い丸い物が見えた。おそらくは、あれこそが奴のただ一つの弱点……

 

「でもあんな所狙えないよ、どうするの?」

 

リーファの当然ながらの疑問…彼女の言う通りあそこを狙って攻撃するのはほぼ不可能だ。あんなビームを掻い潜って懐に入るなんて至難の技だし胴体が開いているのはあのビームを射った後の一瞬だけ。親切なのか不親切なのか……このゲームを作った奴の性格の悪さが痛いほど分かる敵さんだ、と少しばかり憂鬱な気分になる自分に鞭を打ち取り敢えずの打開案を考えてみる。

 

「……ともかく時間を稼ぐ、かな」

 

確かに時間は惜しいし、早く進まないとこっちが不利になる事は分かっている。それでもこの未知数な化け物と戦うには圧倒的に情報が足りない、攻撃パターンやらを把握して対策を建てないと返り討ちに遭うだけだ。

 

なるべく早くこいつの突破口を探さないと……

 

「つう事で頼んだぞ、リーファ。一番速いお前が頼りだ」

 

「え?!で、でも、さっきのたくさん出るビームが来たら私でも避けれないよ」

 

「そんなん言われなくても分かるさ」

 

リーファの意見の通りだ…奴の体から出るあの散弾のようなビームは絶対に避けれない、こんな狭いフィールドであんな馬鹿みたいな数の弾なんてかわせる訳がないのだ。だからーー

 

「俺がリーファの盾になる。そうすれば出来るだろ?」

 

すると彼女は申し訳なさそうに顔を沈めてか細く鳴いた。

 

「でもそれじゃ私はただの足手まといじゃ……」

 

「はあ?何言ってんだ?」

 

「だってそうでしょ!私をカバーするよりタツヤ君一人の方がずっと動きやすいじゃん!!」

 

そんな自分の無力さを噛み締めるような彼女の表情を見てーーー俺はようやく気づいた。つまり彼女は勘違いをしているのだ、と。まあ今回の非は間違いなく俺にあるのだが……

 

「あー、わりい。言葉足らずだったわ」

 

「……えっ?どういう事?」

 

「生憎俺ってお前らみたいな反射神経ないんだわ、だから盾で防ぐしか出来ない。でも盾だって耐久値があるからこのまま受け続けたら最悪壊れちまうだろ?だからーー」

 

そして俺は彼女の目を見て告げる。

 

「つまりは俺の翅になって欲しい」

 

「は、翅?」

 

「例え話だよ。簡単に言うと俺をなるべくあれに当てないように誘導して欲しいって話だ。やってくれるな?」

 

その言葉を聞いて彼女は堂々と胸を張って俺に宣言した。

 

「うん、分かったわ!大丈夫、タツヤ君には指一本触れさせないから!!」

 

「ほぉ~~、そいつは頼もしいな」

 

彼女らしい自信に満ちた言葉に思わず口元が綻んでしまう、自分で言うのもあれだが正直かなりの無茶ぶりだ。俺みたいな足手まといを連れて彼女がいつも通りの動きが出来るかなんて分からないし、俺の方もその動きに完璧に合わせて彼女を守りきる事が出来るのかなんて不確かだ。

 

それでも彼女の表情から不安は微塵も感じられない。それだけ自信があるという事だ。その自信が彼女の実力から来るものなのか、それとも俺と一緒だからなのか……後者を思いつくのは少し自惚れが過ぎるだろう、きっと前者に違いない。

 

「そんじゃ、エスコートよろしく」

 

普通ならエスコートするのは男の方の役目ではあるとは思うのだが……適材適所という奴だ。そして俺は彼女の前に右手を差し出す。その手を彼女は嬉しそうな笑顔をこちらに向けて握る。

 

「うん!行くよーー!!」

 

そしてトップスピードで翔び出した彼女に連れられる、というよりは引き摺られるような形で俺も続いた。風のように速い彼女に引っ張られる事で彼女のスピードを体験するわけではあるが…まるでジェットコースターに乗っている気分だ、リーファの全力の飛行にまるで脳内を揺さぶられるような感触を味わう。

 

これを一言で表すなら……

 

『殺人的な加速だ!!』

 

うん、一番これがしっくり来るであろう。まさにこの状況に見事にマッチしている、ここが仮想世界でなければどこかの上級大尉のように吐血でもしていたか体がGに耐えきれずに粉々になっていたに違いない。とまあ俺の下らない考えはさて置き……

 

『よくこんなのをかわせるよな』

 

彼女の動きに素直に感心してしまう。出鱈目に飛んでくる無数のビームを避け続けるなんて至難の技だ、少なくとも俺は絶対に無理だと自信を持って言える。胸を張るような言葉ではないのはさておき…つまりは彼女の反射神経はキリトに匹敵するのではないだろうか?という事だ。

 

兄妹揃ってこんな反射神経とは……こいつらの家は一体どんな訓練を積ませたのだ?と率直な疑問を感じた。彼らの反射神経にはどこぞのパイロット育成機関もビックリであろう、と軽口はここまでにして彼女に迫って来る弾を防ごうとする。

 

「あらよ、っと」

 

そんな気の抜けるような声を発しながら俺はこちらに向かって来るビームを叩き落としていく。リーファがほとんど躱してくれるお陰で俺の仕事はかなり楽だ。少しばかり余裕が出来た俺は彼女に話掛ける。

 

「この調子で頼むぜ、リーファ」

 

「任せて!!」

 

そんな彼女の頼もしい言葉を受けて俺たちは再び空を駆け抜けるのであった。

 

 

 

 

 

 時間を掛けてこいつの動きを見極めて分かった事は三つ。一つはこいつの全身からのビームは奴の周囲数十メートルの距離に入るとひっきりなしに射ってくる事、弾切れはなく死角も存在しない。二つ目は腹部からのあの巨大なビーム、あのビームは奴の散弾ビームの範囲外の止まっている対象に向かって射ってくる事。三つ目は極太ビームを射っている時、あの散弾ビームが正面だけは止む事だ。

 

つまり突破口は正面だけ……正面から先ほどの弱点と思わしき場所に攻撃を当てるしかこいつを倒す道はない。勿論何度も攻撃は出来ない、一回やれたらいい方であろう。

 

チャンスは一回だけ……一撃必殺の技をぶち込むしか勝機は無い。だがそのためにはもう少し頭数がいる。俺たちと同レベルかそれ以上のプレイヤーが……

 

「はあああぁぁぁ!!」

 

そんな声に反応してーーというのは些か都合が良過ぎる考えとは思うが人影が一つ現れる。緑色の長髪を靡かせ着物を羽織った女性サクヤさんだ。彼女は素早い動きで奴の懐に入り込むと視認するのも難しいような高速の太刀を浴びさせる。

 

「………思ったより硬いな。ルー、頼んだ」

 

「はいはーい。サクヤちゃん、任せてね」

 

彼女は手応えの無さに少し顔を顰めながら、ここまで来たもう一人の人物アリシャ・ルーさんに呼びかける。彼女はまるで乗っている飛竜を自分の手足のように動かして縦横無尽に飛び回りながら奴目掛けて灼熱のブレスを撃ち放つ。

 

「……あれ?あんまり効いてないみたいだよ?」

 

「サクヤにアリシャさんまで?!下の方は大丈夫なんですか?」

 

気の抜けるような暢気な言葉ではあるが声色が少しばかり焦っているように聞こえる。そんな突如乱入して来た彼女たちにリーファは驚きながらも尋ねる。すると二人は余裕たっぷりな表情で答えた。

 

「大丈夫だ。優秀な副官に任せて来たからな、あのガーディアン達ぐらいならなんとかなるさ」

 

「そうそう。それよりこっちの方が厄介そうだからね。君たちを助けに来たんだよ」

 

そんな二人の心意気と救援に両手を上げて喜びたいところではあるが、残念ながらそんな余裕はここにいる誰にも無い事は分かっている。それでもようやく駒は揃った、こいつを滅ぼすための現状最高の駒だ。

 

「キリト、リーファ、サクヤさんにアリシャさん」

 

「ん?どうしたの、タツヤ君?」

 

俺の呼びかけに全員の視線が俺に集まる。そんな視線を受けながら俺は意を決して彼女たちに現状を打開出来うるであろう可能性がある作戦を提案する。

 

「すまねえ……皆の命をくれ」

 

さあ、引導を渡してやるぜ!金ピカ野郎!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が四人に伝えたのは《魔槍ブリューナク》のエクストラ効果とこいつにわざとビームを射たしてその隙に俺が突っ込んで奴に止めを刺す、という単純な作戦であった。危険な賭けではあるのだが現状それ以外に手が無いということもあり四人共了承してくれた。

 

「さて、始めるか」

 

誰に言うまでもなく独り呟き俺はスペルを唱える。魔法を放つためのものではなくこいつの力を解放するための呪文……

 

しばらく唱え続けていると右手の槍に変化が起きる。ゆらゆらと陽炎のように燃え上がり、少しずつその姿が霞んでいく。しかし唱え終わると同時に変化が起きる、先ほどまでの幽鬼のような静かな炎は荒々しく全てを燃やし尽くそうとする爆炎の槍となる。

 

こいつが《魔槍ブリューナク》の最後のエクストラ効果……あの《魔神ルーグ》の必殺の一撃と同じものをたった一度だけ放つ、という効果だ。そいつの威力はこの身で経験済み、あれを直接食らえばどんな敵でもタダではすまない。倒せるかどうかは半々ではあるが、現状で最も威力のある攻撃には違いない。しかし放った瞬間に武器の耐久値が急激に減少し壊れるという文字通り最後の一撃……

 

制限時間は発動してからの三分間。その間にあいつにこいつを叩き込まなければこいつの効果は切れて槍は消滅する…勝利は俺の手に掛かっているという事だ。責任重大ではあるが……

 

「最後のお仕事だ。頑張ってくれよ、相棒」

 

そんな重たい責任を紛らわすためにここまで一緒に戦ってきた俺の片割れに小さな声で語りかけた。

 

こいつとの付き合いはそれこそ二日程度という短い間ではあったが中身の濃い二日間であった。俺には過ぎた武器ではあったがこいつのお陰で俺みたいな奴でもここまで来れたのだ。もうお別れだが最後まで一緒に戦ってくれ、と労いの言葉と喝を込める。

 

「今だ、タツヤ!! 」

 

「応よ!」

 

キリトの合図に従い盾を前に出しながら全力で翔び出す。つまりは囮役の四人の後ろで俺がスタンバイしてビーム発射と同時に俺が最高速度で前に行くのだ。

 

押し寄せる極太ビームを盾で押し返しながら前に翔んで行く。しかしーー

 

『ーーチッ!パワーが足りない』

 

こいつのビームを押し出して奴の弱点に辿り着くにはこのボロボロな翅の推進力では圧倒的に足りなかった。ビームが止む頃には俺はまだ半分の距離も進めていなかったのだ。もっと速くだ、もっと速く動かさないとこいつは突破出来ない。

 

「おおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

雄叫びを上げながら再び突撃するが結果は変わらず俺は途中までしか行けない。盾の耐久値だってもう限界だ、それこそ後一発受ければ壊れてしまうだろう。だけど次こそは……!

 

具体的な解決方法も浮かばないまま猪のように突っ込む。そのままあのビームと衝突する一歩手前という所でーー

 

「なっ………?!リーファ?どうして?だっておま『どうして、じゃないよ!人には散々考えて動け的な事言っといて自分だって考え無しじゃん!!』」

 

腕をリーファに掴まれてそのビームを避けさせられた。囮役の彼女がここにいる筈が無いのに、と疑問の声を上げるが捲くし立てるような彼女の怒声にそんな声も消される。そんな彼女に俺は言い訳をするように返した。

 

「しゃ、しゃあねえだろ?他に手が無かったんだし……」

 

俺のそんな言葉に彼女は眉間を手で押さえながらはあ~と溜め息を一つ溢す。

 

「あのね…それを無謀っていうの。あなたらしく少しはなんか作戦考えなさいよ」

 

「それじゃあ、リーファには何か作戦あるのかよ?」

 

呆れたような彼女に俺はムスッとしながら返す。どっちにしろ俺に特攻以外の選択肢は残されていないのだ、失礼ながら彼女にそんな知恵が回ると思えない事から編み出した意地の悪い問いかけであったのだが。そんな事はどこ吹く風、彼女はニヤリと笑みを浮かべる

 

「ええ、勿論」

 

「………へぇっ?」

 

あまりの予想外な返答で目を真ん丸にする俺。そんな面白い俺の顔を見て、彼女はしてやったり、と満足げに微笑むのであった。

 

 

 

 

 リーファからの提案は二人分の出力で奴のビームを突破するという力押しの戦法であった。一人で無理ならさらにもう一人増やすという単純ではあるが誰も思いつかないであろう作戦……

 

『二人ならいけるよ!』

 

そんな彼女の自信満々な言葉に思わず『青臭くね?』と言ってしまった俺は悪くないであろう。まあ拗ねた彼女を宥めるのは中々骨の折れるものではあったが……

 

それでも彼女の言葉に何故か俺は安心する。人の精神状態は伝染するらしいが、それなら彼女はこんな不確かな状況でも自分の勝利を微塵も疑ってないという事だろう。本当に頼もしい限りだ。

 

「タツヤ、今だ!!」

 

聞こえたのはキリトの声。こいつが本当のラストチャンス……失敗は許されない。

 

だけど不思議と不安は無かった。俺のすぐ傍には彼女がいるから、彼女の存在が不安なんて吹き飛ばしてくれるのだ。だから絶対に行ける。俺の中には根拠の無い確信が生まれていた。

 

「よし!行くぞ、リーファ!!」

 

「うん!行くよ!!」

 

そして二人一緒に正面から光の渦に翔び込んだ。

 

「「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

二人して喉が裂けそうになるほどの烈声を上げながら翅を全力ではためかせて前へ進む。攻撃の余波で傷つく体を気にもかけず、翅が引き千切れそうになっても更に速く動かし前へ突き進む。盾はついに耐久値を全て削られ消えたが、それでも左腕を盾にして進んで行く。

 

衝撃に耐えられず消滅する左手、近づいていく距離……そして奴まであと十数メートルという所でビームが止んだ。

 

「そんな!?ダメなの?」

 

「いや、まだだ!!」

 

そう叫んで俺は奴に向かって突貫する。この距離だとどんなに速く翔んでも奴に接近するのは不可能だ。

 

だけどーー

 

「ここは…俺の距離だ!」

 

俺は自らの得物を空いている胴体目掛けて投げた。槍は矢のように真っ直ぐ飛んでいき、吸い込まれるように奴の弱点であろう黒い球体に突き刺さる。

 

その瞬間ドーンという爆発が起きた。爆発という一言では済まないような轟音に爆炎…周囲数十メートル近くを覆うようなそれに当然ながら俺も巻き込まれる。全身を焼き尽くそうとする爆発の余波を肌で感じて俺はこいつの威力が予想以上であった事に驚く。

 

そして期待する。こんなヤバイのを食らったら流石に(やっこ)さんも死んだだろう、と……

 

だが眼前を炎で包まれている俺の視界には粉々になったであろう奴の姿は見えなかったのであった。

 

 

 

キリトside

 

 俺がさっき見たのはタツヤが投げた槍が奴の胴体の中に入っていき同時に物凄い爆発が起きる瞬間であった。未だ広がり続ける爆炎からは何も現れない。タツヤの姿も、直撃を食らった奴の姿もだ……

 

「やってくれたか?」

 

「……」

 

サクヤさんの問いかけに無言で答える。分からない、まだ分からないが……妙な胸騒ぎがする。SAOでの二年間の経験で培った第六感めいたものが俺に警笛を鳴らす。まだ終わっていないのではないのだろうか、と……

 

「ーーークソっ!」

 

「そ、そんな……」

 

最悪の予想が的中し、爆炎から現れたのは先ほどの巨大な黄金騎士であった。左腕と右脚は付け根から千切れており全身のあらゆる箇所からダメージエフェクトが上がっており明らかに瀕死の状態だ。

 

それでも奴はまだ生きている。その事実は俺たちに絶望感を与えるには十分過ぎるものであった。もうさっきと同じ手は使えない、こいつを倒す事は出来ない……ここにいる全員がそう感じていたであろう。

 

「おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

その爆炎から出て来た一人の人間以外は………

 

 

 

 

 まさかまだしぶとく生きてやがるとは………全く念には念をって言葉の通りだ、と俺は目の前にいる金ピカ騎士野郎を睨みつけながら心の中で呟きながら突っ込んで行く。

 

だが目の前のこいつは突撃する俺の姿に驚く事なく佇んでいる。確かに普通に考えれば武器が無い奴が突っ込んで来たところで何も怖くない、《体術スキル》を取っていなければどうやっても素手で相手にダメージを与える事なんて不可能だからだ。

 

普通ならばーーであるが………

 

実は四人に伝えていない事が一つだけある。それは一撃で倒せなかった場合の話だ。あの四人には倒せなかったら次回に持ち越しなんておどけてみたが勿論本心ではない、絶対に今日この時にキリトを送り届ける……そのためにはあいつを完璧に葬むる必要があった。

 

つまり俺は保険を用意していたのだ、まあ保険というほど立派なものではないが…………

 

俺の保険とはこの右手だ。まるで紅蓮を纏ったように赤々と燃え盛る右拳…火属性魔法《エクスプロード・マグナム》…魔法とは基本遠距離攻撃をするものであるこの世界において異端である相手に接触する事で発動する爆裂魔法だ。

 

そんな魔法を俺はブリューナクを投げる前に発動していたのだ。《魔槍ブリューナク》のエクストラ効果である魔法威力のブースト…威力を増大させたこの一撃を満身創痍のあいつに叩き込んでーー今度こそぶちのめす……!!そんな意思を拳に込めて俺は駆け出した。

 

体を低くして拳を腰に構えながら弾丸のように翔び続ける。目指すは閉じようとしている胴体内部の黒い球体……

 

しかし俺の意図をようやく理解したのであろう…奴は右腕をこちらに振り回す。ただ弱っているからだろうか、奴の動きに先ほどまでの鋭い洗練されたものはなく軌道も予想しやすいものであったから容易く避けて前に進もうとした。

 

だが…………奴はそれで十分だったのだ。この場を守りきり俺らに絶望感を与えるにはそれだけで十分だったのだ。

 

「なっ!?は、翅が!!」

 

何故ならーーーー俺の体はゆっくりと仮想の重力に従い墜ちて行っているからだ。つまり気づかぬ内に俺の翅の限界が来てしまっていたのだ。これまでの体を省みない戦いで翅はボロボロとなり消耗しついには飛行出来なくなってしまったのであった。心なしかあいつの無機質な能面が『ざまあみろ、お前なんかが俺に勝てる訳ねえだろ』と嘲笑っているように見えた。

 

ああ…なんていう情けない最後か……と俺は自分の無力さに嫌気が差す。手筈まで整えて貰ってこのざまとは…情けないを通り越して笑えてくるぜ。

 

いや、俺は元々無力だった。無力で無価値で無意味…仮想世界(こちら)の俺も結局は同じだったのだ、現実世界(あちら)の俺と…

 

レア装備で身を固めてもどんなに策を労しても中身が空っぽな俺では他人に何かを与えてやれるなんて出来る訳がなかったのだ。悪い……キリト、結局俺じゃあお前の助けにはなれなかった…内心俺に終始明るいものを見せてくれた恩人に謝罪しながら俺はゆっくりと流れに任せて墜ちて行く。

 

いくら足掻こうと今さら…残念ながら当然の結果だったのだと俺は諦めており、ここにいる全員が諦めているものだと思っていた。

 

だが俺は失念していたのだ、俺なんかを信じていつも無茶ぶりに答えてくれる彼女の存在を。

 

「諦めるなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そんな俺を叱りつけるような声が聞こえるまでは……

 

 

 

 

 

「り、リーファ?!」

 

「そうだよ、あなたの翅のご到着ってね」

 

 俺を叱りつけた声の主リーファはこっちに翔んでくるや否や俺の右腕を掴む。すると次の瞬間には先ほどの穏やかな表情から一変、ムスッとした表情で俺を睨みつける。

 

「全く……私たち今までずっとコンビ組んでるんだよ、勝手に一人で突っ走らないで。大丈夫。どんなに困難な状況も私たち二人なら出来るよ、これまでだってそうだったでしょ?」

 

そう笑顔で彼女は俺を諭す。その言葉と笑顔は俺の心をまるで静まりかえった炎が再び再燃するように奮い立たせた。彼女の言う通り諦めるのにはまだ早過ぎる、彼女という最後の手はまだ残されているのだから………

 

まあ年下に諭されるというのも変な気分ではあるが……うん、悪くない。最後に貴重な経験をさせて貰った事に感謝しつつ俺はいつものように軽口を叩く。

 

「そうだな。そんじゃ俺をあいつの所まで届けてくれ、速達でな」

 

「うん!振り落とされないように気をつけてね?」

 

彼女は華のような笑顔のまましっかりと俺の右腕を掴み全力で翔び出す。彼女らしく真っ直ぐ…ただ真っ直ぐに、最短距離の一直線をまるでロケットのように翔んで行く。(やっこ)さんも迎撃しようと手を振りかざすがそんな鈍い動きで全速力の彼女を捉える事など不可能だ、気づいた頃には俺はすでにそいつの急所のあと約十数メートルという位置に届いていた。

 

「!!またあれ?!」

 

だが奴も殺られまいと全身からビームを出そうとする動作に入る、こんな至近距離で受ければたちまち俺たちの体は虫食いだらけになるだろう。どちらが先か………おそらくはあいつの方が先になるだろう。だからーー

 

「俺を飛ばせ!早く!!」

 

「え?!わ、分かった」

 

戸惑いながらも彼女は短いスペルを唱える、風属性魔法《エアーショット》…前方に風の塊を飛ばす初級魔法だ。そいつを背中に受けて俺は奴の弱点目掛けて飛び込む。当然ながらビームの雨に晒されるが、(リーファ)が背中を押してくれるから留まる事無く俺は進み続ける。

 

「お届け物だぜ、鉄仮面」

 

そして全身穴だらけの満身創痍で奴の胴体にしがみつきこいつに話し掛ける。色んな意味でお届け物であろう、死への片道切符ではあるが。それにしてもこいつもこんな半端者に倒されるとは……少しばかり同情してしまう。まあ…………

 

「残念だが、さようならだ」

 

どこぞの双子の悪役の台詞で死刑宣告をしてそのまま拳でその黒い球体を貫く、元々先ほどの攻撃で元々ガタが来ていたのであろう、硝子のように容易く貫通しピキピキと罅が入った。

 

そして次の瞬間。俺は爆発に巻き込まれる、両腕ともすでに無くなっており今度こそ流れに任せて地面に墜ちて行く……俺が最後に見たのは崩れ落ちる金ピカ野郎の姿と全速力で上昇するキリトの姿……

 

「全員、撤退!撤退だ!!」

 

さらにこれ以上ここにいても被害が増えるだけだと判断したサクヤさんによる撤退命令に従いシルフ、ケットシーの両名がこの場を離脱する。ようやく長い長い戦いが全て終わったのだと俺は感じた。

 

それにしてもーーー

 

「随分はしゃいじまったな……」

 

落下しながら満足げに呟いた。こんなにはしゃいだのは何時以来だろうか?もう思い出すのも難しいぐらい昔の事かもしれない。楽しくて、嬉しくて、眩しくて、暖かくて……すごく貴重な経験を味わらせて貰った。もう二度と味わう事が出来ないであろう素晴らしい日々であった。本当に感謝の言葉しか思い浮かばない……

 

だが楽しい時間とは早く終わるもの……もうこんな明るい場所とはおさらばの時間のようだ。ほら、丁度いい具合に俺の目の前に二体の雑魚ガーディアンが来た、どうやらこいつらが俺に引導を渡してくれるらしい。

 

こんな雑魚に殺られるとは………なんともまあ締まらない終わり方ではあるが実に俺らしい。あいつらにお別れの言葉を言えないのが心残りではあるが、まあいいだろう。数日も経てば俺の事なんぞきっと忘れてくれる。

 

目を閉じて自分の終わりを受け入れる…このまま無抵抗な俺の体をこいつらの剣が貫き、俺はこの世界から解放されるのだ。

 

「ごほっ!!」

 

行き成りもの凄い勢いで襟首を掴まれ自然落下のコースから外されなければ………ではあるが。

 

行き成りの事で首が絞まったかのような感覚に陥った俺はくぐもった情けない声を上げながらそんな乱暴な事をした奴を見上げる。するとそこにはーー予想通りリーファがいた。どうやらわざわざ俺を助けに来てくれたようだ。

 

だがーー

 

『これはちょっと……面倒な事になったかな?』

 

彼女のその雰囲気になんというか……どこぞの閃光様のバーサーカーモードに匹敵するものが見えた俺は、これから起こるであろう説教の数々に憂鬱な気分になるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界樹から出ると同時に彼女の説教は始まった。『なんで勝手な事ばかりするの?』とか『最後のあれとか全然私たち聞いてないんだけど』などありがたい小言を貰う事数分、最後は『心配したんだから……』と涙ぐむ彼女に抱きつかれることで説教は終わりを迎えた。どうやら心配を掛け過ぎたらしい、そんな彼女の優しさに少しばかり微笑ましい気分になりながら彼女の髪を撫でる。

 

「心配してくれてありがとな」

 

そう言いながら撫で続けると彼女はくすぐったそうに目を細める。が、しばらくするとどこか物憂げな表情で上を見上げた。その視線の先には世界樹の頂上がある。

 

「お兄ちゃん、大丈夫かな?」

 

彼女は兄を心配する妹の声で呟く、彼女も一人で行かせてしまったのは不安になるようだ。暗い表情の彼女に俺は出来るだけ普段通りあっけらかんと答える。

 

「安心しな。あいつは危なっかしいけどこういう時には誰よりも頼りになる奴だ」

 

「うん。そうだね」

 

俺の言葉に彼女は先ほどとは一変穏やかな表情になり頷いた。これで心配はいらないだろう、後はお邪魔虫が退散してハッピーエンドだ。予定ではサラマンダー領で独り寂しくログアウトするつもりだったのだが……まあどこでやっても同じか、と自分を納得させる。

 

「じゃあなリーファ、俺はもう帰るから」

 

「ちょっと待ってタツヤ君」

 

だがメニューを開いてログアウトボタンを押すだけの所で彼女に呼び止められる。この数秒後、俺は反射的に手を止めてしまった自分を殴りたいような気分に陥る事となるのだ。

 

それは彼女の目にまるで絶対に逃さないという強い意志を感じてしまったからだ。彼女はそんな強い意志をその青い眼に秘めさせて告げる。

 

「お願い、私と戦って」

 

そのあまりに突拍子な言葉に俺の思考はしばらくフリーズするのであった。

 




ラストバトルと言ったな……あれは嘘だ(笑)

今回出て来たオリジナルの敵さんですが流石の傲慢、慢心、変態なゲ・須郷さんでもいざって時の保険ぐらい用意しろよ……と思って出しました。

まあ、戦闘方法はちょっとやり過ぎた感がありましたかね?

でも当初の予定のファンネル、隠し腕装備と分離機能をつきと比べればいくらかマシ(笑)になったのではないでしょうか?

ちなみ他にも実はあの盾はスタービルドストライクのアブソーブシールドでビーム吸収してからのRGシステムでビルドナックルをさせるつもりだったり、敵に突っ込む時に『ユニヴァァァァァァァァァス!!』と叫ばせるつもりだったり、止めの時には『爆熱!ゴッドォォォフィンガー!!』と叫ばせるつもりだったのですが……キャラが違う!!!(笑)という事で諦めてしまいました。

それでは次回予告です。
突然のリーファからの挑戦状、その意味とは?そして彼はその戦いの先に何を見るのか?
次回『決闘!リーファVSタツヤ』にレディーゴーーーーー!!!!
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