ソードアート・オンライン~赤腕の槍使い~   作:G.S

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今回はいつもより長いです。書いた後に分ければよかったかなっと思いました。
感想を書いて下さったり、お気に入り登録をして下さった方々ありがとうございます。
それではどうぞ。


第八話:武器と防具と鼠のお使い

 現在の最前線は74層でボスの部屋はまだ見つかっていない。

なので今日はキリトのオススメの武器屋と馴染みの防具屋に行きその後は宿で休もうと思っていたのだが…

 

『タツ坊仕事だヨ。始まりの町の教会まで来てくレ』

 

なんてメッセージをアルゴから貰ってしまった。厄介事の臭いがプンプンするが無視するわけにもいけない。

 

「武器と防具の用事が終わったら行くか。急ぎの用では無いだろうし」

 

先に武器屋に行こうと思い俺は48層リンダースへと向かった。

 

 

 リンダースは牧歌的な雰囲気が漂う場所である。

水車や川の流れなどテレビで見た一昔前のヨーロッパの田舎町を思い出させる。このアインクラッドには様々な特色のある街があるが俺はここが一番気に入っている。

 

「キリトの話だとここら辺だが…あれか?」

 

俺の目の前には1つ店があった。おそらくこの店がキリトが腕の良い鍛冶屋がいると言っていた店なのだろう。

 

「いらっしゃいませ!リズベット武具店へようこそ!」

 

客を出迎えたのはピンク色の髪にエプロンドレスを着た少女であった。

 

「キリトからの紹介で来たんだけど。ここってオーダーメイドってやってくれるのか?」

 

「キリトからの紹介って…あんたがタツヤね。キリトに言われた通りの見た目ね」

 

キリト俺のことちゃんと紹介していたんだな…少しだけ見直した。

 

「髪が赤くて無愛想で目付きが悪い…言われた通りの風貌ね」

 

「あいつ…!もっとマシな説明無かったのかよ!」

 

キリトの意地の悪い笑みが頭に浮かんでくる…覚えてやがれ!

 

「それでオーダーメイドしてくれてるのか?」

 

「…出来るけど結構高いわよ」

 

「大丈夫だ。それなりに資金の準備は出来ているからな。」

 

そう言うと彼女は胸を叩いて答えた。

 

「ならドーンと任せなさい!武器の種類とステータスはどうするの?」

 

「耐久力重視で頼む。武器はランスで」

 

エクストラスキル…ランス。槍の発生系スキルだ。ランスの強みは高い攻撃力と耐久力、そして盾の中で防御力と耐久力が一番高いタワーシールドを装備出来ることだ 。その分攻撃速度は遅いが現在壁プレイヤーである俺には関係無い。

 

「分かった。インゴットは持ってるの?」

 

「持ってないよ。あと完成するまで時間ってどれくらいかかるんだ?オーダーメイドとか初めてだから気になってな」

 

「そうね…今ちょっと予約があるから明日の昼ぐらいには出来るわ。その時間に取りに来て。コルもその時頂くわ」

 

「分かった。それと…これは武器とは関係無い質問なんだけどいいか?」

 

俺はこの店に入った時に感じた疑問を彼女にぶつけてみることにした。

 

「?いいけど何かしら?」

 

そう言って彼女はカウンターに置いてあった紅茶もどきを飲んだ。

 

「あんたとキリトの関係って何なんだ?」

 

「ぶはぁぁぁぁぁ!?」

 

予想通りの反応に笑ってしまいそうになるのを堪える。つまりはそういうことなのだろう。どうやらキリトには女性を魅了する何かがあるらしい。サチにシリカ、そして最近では血盟騎士団副団長のアスナと彼が落としてきた女性は数知れない。俺が把握していないだけでさらに多くいるだろう。このリズベットもその1人なのだろう。

 

「あ、あ、あ、あんた!急に何を言うのよ!」

 

「悪い、悪い。さっき言ったことは忘れてくれ」

 

それにしてもキリトはなぜ美少女達にこんなにも好意を抱かれるのか…最近俺はキリトが何かしろのフェロモンを出しているのではないのかと本気で考えている。そんなフェロモンがあれば世の男達が欲しがるであろうが…

 

「そう言えばあんたここに店構えて長いのか?」

 

「そうでもないわ。でもこの店を買うのには苦労したわ~」

 

ホームでさえ買うのに何百万コルもするのだ。店なんていくらするのか…それを1人で貯めるなんて並大抵の努力ではない。少なくとも俺には無理だ。

 

「へぇ~。ちなみにいくらしたんだ?」

 

その後リズベットから聞いた金額で俺にはここでの生活は無理だと確信したのだ。

 

 

「へぇ~。あんたもこの町気に入ってんの?」

 

「あぁ、こういうのどかな所が好きなんだよ。っともうこんな時間か…」

 

このリズベットという少女はさばさばとしていて話しやすいのでだいぶ会話が弾んでしまったようだ。

 

「悪いけどもう行くわ。明日の昼には来るから」

 

「分かった。また来るときはお得意様価格でメンテしてあげるわ」

 

「おう。その時はよろしくな」

 

そう言って店から出る。次は防具屋だな。

 

 

 俺の馴染みの防具屋《プトレマイオス》には1人しかいなかった。店主は留守のようだ。

 

「あれ?タツヤじゃん!久しぶり」

 

そう言ったのは茶色の髪を短めのポニーテールにした中学生くらいの少女

 

「久しぶりだなパステル。店主は留守か?」

 

《パステル》は4ヶ月ほど前にここの店主に弟子入りした少女だ。

元々は中層でソロ活動していたらしいが、あることが切っ掛けで戦闘から遠ざかり生産職になったらしい。

 

「うん。素材を取りに下の階層に。急ぎの用ならメッセージ送ろっか?」

 

「いや別に大丈夫だ。ここで帰ってくるまで待ってるよ…っとサンキュー」

 

そう言って渡されたコーヒーもどきを飲む。うん…苦い。

 

「悪いけどミルクとか砂糖みたいなやつあるか?このままだと苦すぎて飲めねえんだけど」

 

「あるけどそんなに苦いかな?これが苦かったらブラックとか絶対飲めないよ」

 

「そんなの飲めなくていいんだよ」

 

俺はコーヒーは微糖派だからな。ブラックなんて飲めなくていい。…あぁ、缶コーヒー飲みたい。

 

「パステル!帰ったぞ!」

店の奥から声が聞こえた。店主が帰ってきたようだ。

 

「お帰り親方!目付きの悪いのが来てるよ」

 

「おい!なんだよその呼び方!」

 

こいつら俺のことをそんなふうに呼んでいたのかよ…!俺ってそんなに目付き悪いか?…まぁ、いつも無愛想だから仕方無いか…

 

「よう!タツヤ!弟子が失礼したようだな。パステル!本人の前では言うなって言っただろ!失礼だ」

 

「ご、ごめん親方。つい口が滑っちゃって…」

 

俺の目の前にいるこの厳つい20代後半から30代前半の黒い短髪の男性《バルトス》がこの店の店主である。それより本人の前で言うなって本人がいない所では言ってるって自白しているようなもんだぞ…

 

「それで今回は何だ?防具のメンテナンスか?それとも新調しに来たのか?」

 

「両方だよ。どちらも急ぎじゃないからゆっくりやってくれ」

 

「分かった。新調する方のステータスはいつも通りか?」

 

「あぁ。いつも通り耐久力重視で。重さは気にしなくていい」

 

「分かった。3日後ぐらいに来てくれ」

 

「了解した。じゃあ「おいタツヤ」…急に何だよ「すまねえな」」

 

店主の顔は曇っていた。本当にどうしたんだ?

 

「本当は俺達みたいな大人が最前線で戦うべきなのにお前らみたいなガキに攻略を任せちまってる。俺が今やってることなんて安全な場所でお前らに防具を売ることだけだ…大人として情けないな…」

 

このおっさんは…そんなこと気にしていたのかよ。全く…そんなこと気にしなくてもいいのにな。

 

「あんたが前線行ったら誰が俺たちの防具作ってくれるんだよ。防具無しで戦えってか?…あんたらがいなけりゃ俺たちはとっくに死んでるよ。あんたらのおかげで俺たちは今日まで生きてこれたんだ」

 

俺がそう言うとは驚いた顔をされた。

 

「なんだお前?もしかして励ましてくれてるのか?」

 

「…事実を言っただけだ。それにボス戦に挑む人数は限られてんだ、あんたに来られても困るんだよ。適材適所ってやつだ。あんたはここで防具作ってる方がずっと合ってるよ」

 

「つまり俺は俺がやれることをやれってことか…よし!パステル!今すぐ素材を取りに行くぞ!」

 

「りょーかい親方。待ててねタツヤ!絶対にあっと驚く最高の物作ってあげるから」

 

そう言って2人共店から出ていってしまった。

 

「さて俺も帰る「タツヤ!」…次は何だよ?」

 

「あまり無茶はするなよ。お前はなんやかんやで人のことばっかり気にかけちまうからな。少しは自分の心配しやがれ」

 

「そうそう。意外にあんたのことを心配する人もいるんだからね。用事無くてもたまには遊びに来なよ。コーヒーぐらいは出してあげる」

 

それは俺を気遣ってくれる言葉であった。

 

「…善処しておくよ。じゃあ行くから」

 

そう言って店を出る。全くあんたら人が良すぎるんだよ。

用事も終わったし次は鼠からのお使いに行くか…まあ十中八九厄介事だろうが仕方無い。俺は1層始まりの町に向かった。

 

 始まりの町…全プレイヤーにとって嫌でも記憶に焼き付いている場所だ。確か2000人ほどのプレイヤーがここにいるはずなのだが…

 

「おかしいな…誰もいない」

 

今目の前にいるのはNPCばかりでプレイヤーは1人もいないのだ。さすがに2000人ものプレイヤーが一斉に部屋に閉じこもるなんてことは異常だ。どうしてこんなことになっているのか理由が気になったが…

 

「まぁ、俺が考えても分かるわけねえか」

 

ともかく教会を探さないと…というか教会なんてこの町にあったか?俺は歩き回って教会を探すことにした。

 

 

「あんたら税金を滞納しているからよ。装備やらアイテム全部ここに置いてきな」

 

 ここにいる連中が外に出ない理由が分かった気がする…俺の目の前にはシスターの様な服を着て眼鏡をかけた女性が同じ装備をした3人のプレイヤーに囲まれていた。あの装備は軍のプレイヤーか?アインクラッド解放軍通称軍…以前はMTDというギルドであり攻略組の指揮を取っていたが25層フロアボス戦で大打撃を受けて以降はオレンジプレイヤーの捕縛・監視などをやっているらしい。それより俺が言えたことではないが取り立て方がチンピラみたいだな…まぁ、ようやく人が見つかったんだ。こいつらに道聞けばいいか…

 

「なあ、ちょっと道聞きたいんだけどいいか?」

 

「アーン?ここらでは見たことねえ奴だな。こっちは今忙しいんだよ。自分で探しな」

 

…イラっとする言い方だがここでキレるのはよくない。落ち着け、落ち着け。よし!女性の方に聞いてみよう。

 

「なあ、そこのあんた。教会までの道を教えてくれないか?」

 

「えぇ、構いませんが…」

 

よし!これで無事に教会まで行けそうだ。シスターみたいな服を着ているからもしかしたら住んでいる人かもしれないな。

 

「おい!そこの保母さんにはたっぷりと払って貰わないと困るんだよ。税金払うのは義務だからよ」

 

そう言ったのは3人の中でもリーダーらしき人物?だった。装備が同じで判別出来ないが…隊長機と量産機の違いぐらいの判別出来る特徴が欲しいな。

 

「いくらなんだよ?」

 

「「…へぇ?」」

 

「だからいくらなんだって聞いてんだよ」

 

そう言うとリーダーらしき人物は渋々といった感じで答えた。

 

「…10万コルだ」

 

「そう。なら…」

 

そう言って10万コルを出してリーダーらしき人物に渡す。

 

「これでもう用は済んだだろ?さっさと他の場所に行きな」

 

そう言って手で人を払うような仕草をする。

 

「…貴様!我ら軍を馬鹿にしているのか!」

 

「違うよ。馬鹿にしてないからしっかり払ったんだろ?こっちは急いでんだよ」

 

どうやら怒らせてしまったらしい。本当に気が短いなこいつ。

 

「いいだろう…!後悔させてやる!」

 

そう言うとメニューを開いて操作し始めた。すると俺の方に何かが送られてきた。

 

『デュエル申請を受諾しますか?』

 

決闘か…全く面倒な事になったものだ。

 

「どうした?まさかあそこまで喧嘩売ってきて今さら怖じ気付いたのか?」

なんだこいつ…えらく自信満々だな …もしかしてこいつは軍の中でもトッププレイヤーなのか?決闘で負け知らずなスペシャルな奴なのか?…用心に越したことは無いな。油断せずにいこう。俺は決闘申請にOKと押す。すると頭上にタイマーが出てきた。このタイマーが0になったら決闘が始まる。現在メインのランスはリズベットの所にメンテに出しているのでサブの槍を出す。とある事情で槍を大量に持っていることが幸いしたな。体術スキルを持ってない俺では素手で戦うなんて出来ないからな。次は相手を観察する…武器は片手剣、重武装だからそこまで速くは無いだろう。おそらくリーチの差を埋めるためにフェイントをかけてくるはず…相手の動きに気を付けないと。

そしてタイマーが0になる。

 

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

向こうはこちらに向けて剣を構えて走って来た。あれは突進系のソードスキルの《レイジスパイク》か?突っ込んだとしてもリーチの差で先制攻撃が出来ないことは向こうも分かるだろう。つまりあれはフェイントだ!俺はそう思って相手の動きをさらに注意深く観察する。向こうの動きに変化は無い…ギリギリまで手を隠すつもりか?さらに待っても向こうの動きに変化は無い。仕方無い揺さぶりをかけるか…俺は槍単発攻撃《スティング》を発動する。これで向こうも何かしらの反応をしてくるはず…!

 

「ぐへぇぇぇぇぇ!!」

 

しかし現実はそうはならなかった。俺のソードスキルが相手に普通に当たり、俺の頭上にはWinnerという表示された。

…あれ?俺勝ったの?

 

「つ、次はこうはいかねえ。覚えてろ!」

 

そう言ってリーダーらしき男は走り去り、残った2人も後を追いかけて行った…なんだこの茶番は…

 

「あの…助けて頂きありがとうございます。お金まで払って貰って…」

 

声をかけてきたのは先ほど囲まれていた女性であった。

 

「それより教会までの道を教えてくれないか?」

 

「はい。私教会に住んでいるのでご案内しますね」

 

「…驚いた。あんた本当にシスターだったんだな」

 

「いいえ。シスターではないですよ。ちなみにどのような用件で?」

 

「ある奴から依頼受けたんだよ。アルゴって知ってるよな?」

 

そう言うと彼女は驚いた顔をした。

 

「!アルゴさんの言っていた方でしたか。アルゴさんに依頼したのは私です。すみません」

 

そう言って彼女は頭を下げた。年上の女性に頭を下げられるなんて事に慣れていない俺は困惑してしまった。

 

「あ、頭を上げてください。全然大丈夫ですから。ちなみに依頼の内容は?」

 

「それは教会に着いてからお話しますね。もう見えてきましたよ」

 

彼女の言う通り目の前には教会があった。…こんなところにあったのか気が付かなかった。

 

 

「みんなただいま」

 

「「「「おかえりなさい。サーシャ先生」」」」

 

中に入ると大勢の元気な子供達の声が聞こえた。

 

「ねえサーシャ先生。そのお兄さん誰?」

 

「その人はねアルゴさんが紹介してくれた人よ」

 

彼女がそう言うと子供達の目が俺に向かう。一斉に向けられるその視線に俺は一歩下がってしまう。

 

「スゲー!兄ちゃん攻略組なの?」

 

「攻略組には爽やかな騎士様がいるって本当なの?」

 

「ねえねえ!血盟騎士団の副団長さんって本当に美人なの?」

 

「お、おい。そんなに質問されても答えられないって…」

 

なんだ?最近の子供はこんなにパワフルなのか?圧倒されて何も出来ないんだが…

 

「こらみんな!…ごめんなさいここを訪れる人があまりいないので興奮しちゃってるみたいで…みんなちょっと待っててね。…それではこちらに来てください」

 

そしてサーシャさんに付いて行くとある部屋に連れていかれた

 

 

「よウ!久しぶりだなタツ坊」

 

部屋の中には案の定アルゴがいた。

 

「あぁ。それで依頼内容を確認したいのだが…」

 

「そうだナ。まあ簡単に言うと用心棒ダ」

 

?用心棒だと?確かに軍の徴税はあるが用心棒がいるほどのことがあるのか?

 

「ここの年長の子供達の中には日々の食費を稼ごうとする子達がいるんですけど…心配で…」

 

「確かにフィールドに出れば危険なんてどこでもありますからね」

 

モンスターなども脅威ではあるが最も気を付けるべきはオレンジプレイヤーであろう。ここが軍のお膝元であろうとあいつらはどこからでも他のプレイヤーを狙っているのだから…

 

「だとしてもなんで俺なんだ?他の中層プレイヤーでもよかったんじゃないか?」

 

「それがそうもいかないんだナ。ラフィン・コフィン討伐戦の結果は知っているだロ?」

 

「あぁ、双方に犠牲を出したがリーダーのPoHを含め数名が逃亡したんだろ。まさか…!」

 

「そいつらの何人かがここら辺にいるって噂が流れているんダ。用心に越したことは無いだロ?」

 

確かにあいつらの相手は中層の奴らにはキツイだろう。攻略組のギルドは最前線のことばかりで下の階層まで手が回らない。軍の連中も滅多にフィールドに出ないみたいだから当てに出来ないか…仕方無い。

 

「…分かった。ただ俺1人でラフコフの相手は難しい。攻略組は無理だとしても準攻略組レベルのギルドの力は欲しいぞ。当てはあるのか?」

 

「まあナ。元々タツ坊の役目はそいつらが来るまでの繋ぎダ」

 

「了解。なるべく早く頼むぜ」

 

それにしても…

 

「それにしてもここってどうしてこんなに子供が多いんだ?」

 

「それは私が子供達を集めたからです」

 

答えたのはサーシャさんだった。

 

「デスゲームが始まってから最初は攻略に行こうとしたんですけどこの町で怯えてる子供達がほっとけなくて…それからはこの町を廻って見かけた子供達を保護していたんです」

 

「たった1人で子供達を!?」

 

素直に感心してしまった。あのデスゲームが始まったばかりの時に子供達を心配して保護しようだなんて…普通はそこまで気を回すことなんて出来ない。

 

「えぇ。でもそんなに大したことではありませんよ。子供達との生活も気に入ってますし」

 

「いいや、スゲー立派ですよ。あんたがいたからここの子供達が生きているんです。俺なんかよりもずっと誇れることをしたんです」

 

俺がやっていることなんてレベルと装備さえあれば誰でも出来る。でもこれはサーシャさんにしか出来ないことなのだから。

 

「…ありがとうございます」

 

そう微笑んでお礼を言われた俺は照れ臭くなった。

 

「ニャハハハ!タツ坊が照れてるヨ」

 

「照れてねえよ!人をからかうのもいい加減にしやがれ!…ではサーシャさん、何かあったらメッセージください。すぐには無理ですがなるべく早く向かいますから。でも子供達には無茶をしないように言い聞かせといてください」

 

「はい、分かりました。お願いしますね」

 

それから部屋を出ると再び子供達からの質問攻めにあったが、サーシャさんのお陰で俺は無事に教会から出ることが出来たのである。さて、もう用事も無いし宿で寝るか…

 

 

次の日

 

『防具が完成したんで取りに来てくれ』

 

俺は《バルトス》からのメッセージを貰って《プトレマイオス》に来ていた。中に入るとカウンターの席に座りながらこくこくと船を漕いでいる《パステル》がいた。

 

「眠そうだな。店主はどこにいるんだ?」

 

「…あぁ、タツヤおはよう。親方は一睡もせずに作ってたからもう寝ちゃったよ」

 

一睡もせずにってあのおっさん無理しやがって…!

 

「でも防具はこっちにあるから安心して。うちの店で最高傑作の物が出来たから」

 

完成した防具を見る。盾の方は以前使ってた物よりも大きく重い赤色の盾名前は《スカーレットアイギス》、防具の方も以前使っていた物より一回り小さいが一目でかなりの防御力があるであろうと分かるフルプレートアーマー名前は《クリムゾンナイツアーマー》か…

 

「スゲーの出来たじゃん。流石だな」

 

そう言ってコルを渡す。

 

「まあね。ふぁ~。じゃあ私もう限界だから…おや…すみ…」

 

そう言ってカウンターに突っ伏せてしまったパステル。まあ一緒になって手伝ってたんだろう。俺は店にある毛布をパステルにかけた。

 

「…ありがとうな。ゆっくり休めよ」

 

誰に聞こえる訳でもなくそう呟いて店を出た。

 

 

「はい!言われてた物出来たわよ」

 

 俺の目の前にはリズベットに頼んだオーダーメイドの物とメンテを受けた物の2つがあった。メンテを受けた物を持ってみる。…うん。耐久値は戻っているがやはり物足りない感じはするな

 

「さあさあ早く早く次、次」

 

リズベットに急かされてオーダーメイドの方を持ってみる。

 

「!なんだこれ!スゲー重い!」

 

持った瞬間にずっしりとくる重さ。これまで使ってた武器は紙だったんじゃないかと本気で疑ってしまいそうな重みがこの武器にはあった。

 

「でしょ!私も作ったとき重すぎて腰が抜けちゃうかと思ったわよ。名前は《ロイヤルエリシオン》よ。満足していただいたかしら?」

 

「おう!攻撃力も耐久力もダンチだ。俺がこれまで使ってたのって武器じゃ無かったんだな!」

 

「ははは…。それは言い過ぎじゃない?」

 

リズベットの呆れたような笑い声も気にならないほどに興奮していた俺だがすぐに自分がガキみたいにはしゃいでいるのだと気付く。…恥ずかしい…穴があったら入りたい。

 

「あんたあんなにはしゃぐのね。意外だったわ」

 

「頼むから忘れてくれ。今日の俺はちょっとおかしかったんだよ」

 

「忘れてあげない。昨日人をからかった罰よ」

 

ちくしょう…こんな事になるならあんなことするんじゃ無かったぜ。こういうのを因果応報って言うんだろうな…肝に銘じて置こう。

 

「そんなことよりいくらするんだ?」

 

「そうね…素材はこっちで用意したし結構時間かかったから…」

 

リズベットに提示されたコルを払うと俺は一文無しになったのだった。お金はよく考えて使わないとな…俺はコルを稼ぐためにフィールドへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回武器や防具の説明が少なかったのでここで補足します。
《スカーレットアイギス》:見た目はシュミットさんが持っていたタワーシールドを赤くして縁を黒色にしたイメージです。

《クリムゾンナイツアーマー》:赤いフルプレートアーマー。デジモンセイバーズに出てきたクレニアムモンの鎧を赤色にしたイメージです。※髑髏はついていません

《ロイヤルエリシオン》:赤と黒のランス。デジモンテイマーズのデュークモンの槍グラムの銀色の部分を赤色に赤い部分を黒色にしたイメージです。

では次回予告です。
74層の森で手に入れた食材を売りに来たタツヤは意外な人物に会う。
次回「煮込まれうさぎと手料理」にレディーゴーー!!
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