寝落ち配信した妹の横でギターの練習してたら伝説になってた件について   作:五河 緑

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今回の話はVtuber小説にあるまじき男臭い回となっております。男二人が居酒屋で話すだけの回です。
本当に申し訳ありません。


次話では、可愛い美少女Vtuberが華やかに活躍しますので何卒御勘弁を。





#10 紙タバコ派のドラマーと加熱式タバコ派の俺

 

 新宿繁華街、日が暮れて人通りが増して日中より一層騒がしくなった道を歩く。

 かつてバンド時代に拠点としていたライブハウスもこの近くにある。

 

 この街は本当に変わらない。

 日の出ている間は寝ぼけているように静かで、星が瞬く頃合に目を覚ましたように活気づく。

 ……尤も、この街は地上が明る過ぎて星なんざ霞んでろくに見えやしないが。

 星の代わりに煌びやかに店を彩る色鮮やかな電飾。夜の乱癡気騒ぎを楽しむ汚れきった大人たちがその電飾に群がっている。

 人生を儚んで荒みきった大人たちと、彼らの落とす金でより一層美しく輝く享楽的な店の看板たち。

 一見正反対に見えて、実際のところさして変わらない程度には両者とも醜い。

 そんな張りぼての美しさと隠しきれない醜さが彩る街。

 この街は本当に変わらない。

 

 

 ……今のフレーズ、歌詞に使えそうだな。

 

 

 ポエミーなモノローグを脳内で垂れ流しながら今日も今日とて楽しそうにワイワイやってる繁華街を進む。

 歌舞伎町は365日元気いっぱいだ。

 作詞やってると、どうにも日常的に頭の中でポエムを考えてしまう。

 ……そんで後になってその痛々しさで精神的ダメージを受けて自爆するところまでセットだ。

 

 手元のスマホの画面でLOINEに送られてきた位置情報を確認する。

 GPSの誘導に従い、目的地に到着。

 なんてことは無い、寂れた居酒屋だった。

 引き戸を開けて中に入り、出迎えてくれる店員に「待ち合わせです」と伝える。

 店内を見渡してると隅っこの方のテーブルに座っている男がこちらに気付き手を振っている。

 

「おーい、ヒビキ!こっちこっち!」

 

 こちらも手を振り返し、テーブルに向かう。

 近づくにつれて近眼の俺にも男の容貌がハッキリと見えてくる。

 その顔をしっかり確認した瞬間、心臓がドクンと大きく脈打った気がした。

 

 幼い頃に埋めたタイムカプセルを掘り返したような不思議な感覚。

 目の前のそいつは記憶の中にいる男と何一つ変わっていなかった。

 

 派手派手しく金色に染めた髪、センスの悪い片耳ピアス、ヨレヨレの黒い革ジャン、右手の人差し指と中指に挟まれたラッキーストライク。

 

 ……本当に記憶の中からそのまま飛び出てきたみたいな。

 懐かしい。

 

「久しぶりー。うへぇ、全然変わっていないじゃん。……いや、目つきはさらに悪くなってね?」

 

「うっせ、近眼が悪化したんだよほっとけ。そっちこそファッションセンスは相変わらず残念なままだな」

 

「あぁ?今も昔も最高にイカしてんだろ?お姉さん、生中2つ!……あっ、タバコ1本いる?」

 

 奇しくも向こうも同じ感想を抱いていたらしい。

 ノスタルジーな感慨を共有しながら席に着くと、アイツは通りの良い声で店員に注文しながらタバコの箱を差し出してくる。

 

「いやいい。自分の持ってきてる。……ラキスト吸うとヤニクラがキツいんだよ」

 

 差し出されたタバコを押し返しながらポケットから加熱式タバコを取り出して、愛用しているメビウスのフレーバーをセットする。

 

「あれ?紙やめたんだ?」

 

「最近、庭で吸ってても妹が臭いってうるさくってさ」

 

 本当に最近ますますお袋に似てきたんだよな、と軽い愚痴を言いながらメントールの効いた加熱式タバコの蒸気を吸い込む。

 

「妹……ね。アートライブでVになったってマ?」

 

「マジ。大マジだ」

 

「うひゃぁ、あの妹ちゃんがねぇ。昔ライブ連れてきてたよな。ほら高校の時のさ……」

 

 俺達のマスクにビビって大号泣して演奏聞くどころじゃなかったけどな、と懐かしき思い出の日々に想いを馳せる。

 店員が2杯のジョッキを持ってくると、無言でそれを打ちつけ合う。

 久しぶりの再会、蟠りの解消、一体何に対して乾杯したのか分からない。

 だが、分からないままでもいいと思った。

 言葉がなくとも意味を成せるものに、無理に言葉を当て嵌めようとは思わなかった。

 チンッとガラスのぶつかる音が心地いい。

 

「そんでさ……どうしてたよ?あれから」

 

 あれから、というのはコイツがバンドを抜けてからの事を言っているのだろう。

 正直、そんなに楽しい思い出ではなかったが隠してもしょうがないのでありのまま話す。

 

 代わりのドラムを探したこと。

 

 試しに入ってくれるドラマーは何人かいたものの、うちのバンドで共有していた音楽の方向性とか価値観みたいなものを理解してくれる奴は見つからなくて、皆すぐに辞めてしまったこと。

 

 結局、頻繁に入れ替わるメンバーがいては息が合うはずもなくパフォーマンスは低下。

 

 中々人気が出ず、元々モチベーションが低下気味だったメンバー達にトドメを刺す形となってしまったこと。

 

 最後は空中分解みたいな形で解散したこと。

 

 その後はしばらく落ち込んで腐っていた時期が続いていたこと。

 

 新しくバンドを組む気力も度胸もないくせに、未練がましく昔拠点にしていたライブハウスでバイトしたり、家で1人ギター弾いたりしていて音楽への執着を捨てきれなかったこと。

 

 何気なくギターの練習していたら隣でいつの間にかVtuberになっていた妹が寝落ち配信をしていて、図らずも大勢の人が見ている前でギター演奏を披露してしまったこと。

 

 運命の悪戯なのか、バンドを解散して何もかも手遅れになってから知名度が上がり、人気を博しつつあること。

 

 何の因果かバンドガールを目指すVtuber達に楽器や歌を教えることになった矢先、お前を見つけたこと。←今ココ。

 

 ……そんな具合である。

 

「……そっか。そんなんなってたか。いや、そうだよな。ちょっと想像力働かせれば分かってたことか」

 

 悔いるように手で目を覆っている。

 ……しまった。こんな顔をして欲しくて話した訳じゃないんだ。

 

 こいつに自分のせいで、バンドがあの結末を辿ったとは思って欲しくなかった。

 

 あの時、元々メンバー全員のモチベーションは低かった。

 コアなファンはいても大衆ウケするような人気は出なかったことや、高校を卒業して進学したり就職しながらバンドやってたから将来に不安を感じていたことが原因だったと思う。

 ……俺がリーダーとしてちゃんとしてなかったことも遠因の1つだ。

 

 達観した今だからこそ言えることではあるが、『共食いプレデターズ』があの結末を辿ったのは必然だ。

 

「……お前1人のせいじゃない。あの時は人気者になりたいのに燻ってて全員イラついてた」

 

「…………まあ、俺ら4人とも承認欲求モンスターの最終進化形態みたいな感じだったもんな」

 

「お前がバンド抜けなかったとしても、近いうちに別の誰かが似たようなこと言い出していたと思う。あの時はたまたま、お前が先に思い切っただけだ」

 

 フォローするように言うと少し表情が和らいだ。

 それでも、まだ少し苦い顔をしているのは感じなくてもいい罪の意識に苛まれているからだろうか。

 昔からこうだ。

 口が軽く、後先考えない性格のくせに変なところでマジメだから後になって自分の行いを思い返して苦しんでいる。

 ……いっそ罪悪感なんか感じないクソ野郎だったらもっと気楽に生きれるのに不器用な奴だ。

 

「なあ、お前はどうしてたんだよ?なんでVtuberに?」

 

 話題を変えるために今度はこっちが質問を返す。

 

「おう、よくぞ聞いてくれた。大変だったんだぞ?聞くも涙語るも涙……」

 

「簡潔に頼む」

 

「うい」

 

 暗い雰囲気になってもすぐに明るく切り替えれるのはこいつの魅力の1つだ。

 ……尤も、空気読めてなくて更に雰囲気悪くすることも度々あったが。

 

「まあ、アレよ。俺はゲームが好きで、音楽以外にもそっちの道で生きていきたいってヒビキに相談したじゃん?」

 

「したな。当時は全く理解できなかったけど」

 

「あの時は漠然と有名人になる夢だけあって、あのバンドで頑張ればそれが叶うと思ってた。……でも分かるだろ?俺たちは埋もれてた。このままアグレッシブな20代を無駄に消費することに焦ってたんだ」

 

 その気持ちは分かる。

 恐らくだが、あの時のバンドメンバーは全員同じ焦燥感を抱えていたと思う。

 実際、同じような相談は他のメンバーからも受けていた。

 正しい返答を用意できなかったのは、俺自身も同じ焦りに取り憑かれていたからだろう。

 

「そんで『共プレ』抜けた後は、いくつかのプロゲーマーのチームに連絡取りにいってたりしたんだ。そのうちの1個のチームからさ、試用期間みたいな感じで期間限定でチーム入りさせて貰える話も出てたんだよ」

 

 あの時はマジでゲームで食っていくつもりだった、と語る。

 ……実際、凄まじい熱量だったのだろう。

 今まで培ってきた音楽……ドラムを捨ててでも栄光を掴み取るつもりでいたのだ。

 生半可な覚悟でなかったことは容易に想像がつく。

 

「でも、思ってた理想と実際にやる現実って絶対に噛み合わないもんだよな」

 

 そこから先の話は、まあ一言でいってしまえば金の話だった。

 プロゲーマーが食い扶持を稼ぐには基本的にはでっかい大会で優勝して賞金を手に入れるか、広告塔としてパトロンになってくれる企業を探すかの2択だ。

 

 どちらも駆け出しの人間には敷居が高く、誰にでもできることではない。

 大会で優勝するにも、企業が目をつけるくらいゲームが上手くなるにも、相応の技術と身につけるための練習が必要になる。

 生活していくために他の仕事をしながらとなると、かなりハードルが上がることになるのは俺でも分かる。

 

「そんな時さ、ある話を聞いてんだよ。最近のゲーマーはストリーマーを兼業して稼いでるって」

 

 話が見えてきた。

 配信の世界に足を踏み入れ始めたのは収入のため……ひいては自分のやりたいことをやるための土台を固めるためか。

 

「とはいえ元から有名なゲーマーならともかく、ぽっと出の有象無象が急にストリーマーになったって結果はたかが知れている」

 

 そこで目をつけたのが今をときめくVtuber。

 大手に入って大成すれば安定した収入と企業の目にも留まる評判を手に入れることができる。プロゲーマーとの交流も盛んで、コネクションも作れる。

 大手の倍率は高く、仮に大手に入ったとしても確実にバズるとは限らない。

 あまりにも分の悪い賭けではあるが、リターンも大きい。

 

 そしてどういうわけか、この男は分の悪い賭けに勝ちやがった。

 

 今やVtuberの大手箱2clock 3clockの看板ライバーの1人となり、大活躍している。

 

「実際になってみると大変でさ。常に企画や配信のこと考えなきゃいけないし、横の繋がりを常に意識しなきゃいけないしで、色んな所に頭下げっぱなしよ」

 

 好きなゲームで有名人になりたくてプロゲーマーを目指し、プロゲーマーになるためにVtuberになったが……どういう訳かVtuberとして有名人になってしまった。

 

 目的と手段が物の見事に逆転した形になる。

 

「必然的に競技性の高いゲーマーとしての活動よりもエンタメ性の高いVtuberとしての活動に力入れざるを得なくてな、プロゲーマー目指す話も気づいたら何処へって感じだ。……それでもいいかって思っちまう自分にたまに本気で嫌悪感が湧くよ」

 

 俺は一体何がしたかったんだろうな、と力なく呟いている。

 

「承認欲求ってのは厄介だよな。有名人になりたいって想いで頭の中が一杯になって、好きなものが本当に好きだったのかも分からなくなる」

 

 ラッキーストライクの煙が俺とアイツの間を隔てる壁のように立ち篭める。

 

「好きなものと一緒に有名人になりたかっはずが、いつの間にか有名人になるために好きなものを平気で手放すようになっていく」

 

 ……。

 ここでいう好きなものとは、何を指しているのだろうか。

 ドラムなのか、ゲームなのか、『共食いプレデターズ』なのか。

 それはきっとアイツにしか分からない。

 

「……ま、そんな感じだ。気に入らなかったら遠慮なくぶん殴ってくれていいぞ」

 

 こんなフワフワした理由で『共プレ』抜けて今の立ち位置に収まってんだムカつくだろ、とアイツは自虐的に笑っていた。

 

「……1つだけ教えてくれ」

 

「おう?」

 

「お前、今Vtuberやってて楽しくないのか?」

 

 色々語ってくれたが、正直に言ってそこまでムカついたりはしなかった。

 承認欲求に振り回される気持ちは俺だって痛いほどよく分かる。

 ……なんせこの期に及んで妹の力を借りながら再び音楽やろうとしているくらいだ。俺も同類だよ。

 

 ただ一つだけ気になることがあった。

 だからこの質問を投げる。

 返答次第じゃ本気でぶん殴る。

 

「…………」

 

 アイツはすぐには答えなかった。

 タバコを口に運び、身体から煙を出し入れしながら考え込んでいる。

 やがて言葉が纏まったのか、おもむろに口を開く。

 

「楽しくない訳じゃない。色んな奴と知り合えたし、ファンと一緒に作り上げる獅子郷レオンは今や俺にとって掛け替えのない宝物だ。……大変なことも多いけどやり甲斐はある」

 

 一息。

 

「……俺が嫌悪感を覚えるのはVtuberって仕事に対してじゃなくて、半端なコウモリ野郎の俺自身に対してさ。たまに思い出すんだ。今の立ち位置を手に入れるために、一体どれだけの『好き』に背を向けたんだろうなって」

 

 だからさ、とアイツは言葉を続ける。

 

「Vtuberは楽しいんだ。楽しいはずなのにたまに後ろめたくなってさ、喉に魚の骨が刺さったみたいに全力で楽しめなかった」

 

 指に力が入り、タバコがグニャリと曲がる。

 

「ずっと続けてきたドラムをやめたとかそういう話じゃない。プロゲーマーになれなかったとかそういう話でもない。他の何よりも心に引っかかるものがあるんだよ」

 

 自分から目を背けたはずの誰かさんの顔がずっと頭から消えねぇんだ、と呟くアイツの声は少し震えていた。

 吐き出す煙は雲のように揺れている。

 

「でもな、ちょうど一昨日にさ。その誰かさんと胸の内ぶちまけて話す機会があってな。ようやく肩の荷が降りたわけよ。後ろめたくって目を背けてたものに、ようやく向き合えたからさ。だからな……」

 

 

 

 ラッキーストライクの煙とメビウスの蒸気が宙で混じり合う。

 

 

 

「楽しいよVtuber。今は全力で楽しんでる。……これからはもっと楽しくなる。この道を選んだことを俺はもう1ミリも後悔したりしねぇよ。誰になんて言われたってな」

 

 言いたいこと全部言い切った。

 そんな感じ。

 随分と爽やかないい笑顔をアイツはしていた。

 

「……そうかよ。じゃあもう俺から言うことはないな」

 

「怒ってない?怒ってない?」

 

 こいつ本当にすぐ調子に乗る。

 

「あんだけ揉めといて、今の立ち位置に不満あるとか後悔してるとか言い出したら本気でぶっ飛ばしてた」

 

「ですよねぇ」

 

 危ねぇ命拾ったわ、と表情を引き攣らせながらアイツは2本目のラキストに火をつけようとしている。

 ジッポとか相変わらず格好つけやがって。

 

「あれ?……あり?つかねぇ。オイル切れ?」

 

「ほら貸せよ」

 

「あんがと」

 

 ポケットからコンビニで買った100円ライターを取り出し、アイツの目の前で火を灯す。

 

「……なんで加熱式なのにライター持ってんの?」

 

「習慣だよ。誰かさんがよくオイル切らしてたからな」

 

 その言葉に照れたように笑う俺のドラマー。

 気恥ずかしくなって、釣られるように俺も笑う。

 

 しばらくそうやって2人で笑って、飲んで、煙を吐いて過ごした。

 

 

 ここに後2人いたらな、と少しだけ寂しさを感じながら。

 

 

 

 

「まあ、これで過去のゴタゴタは清算できたとして……問題はこれからのことだよな」

 

 ひとしきり飲んでから、改めて俺が切り出すとアルコールで顔を赤らめたアイツも表情を真剣なものに切り替える。

 ……もう結構できあがってんなコイツ。

 俺も人のことは言えんが。

 

「お前が『共プレ』の元メンバーって名乗ったから、視聴者は俺とお前の仲についてメチャメチャ気にしてんぞ」

 

「だよなぁ。正味アレも迂闊だったわ」

 

「迂闊だったわじゃねぇ。どうすんだよ?」

 

 相変わらずの能天気っぷりに少しキツめに問い詰めると、唐突にふふふっと不気味な笑みを浮かべてきやがった。

 

「安心しろ。手は打ってある。ほれ」

 

 そう言って見せてきたスマホの画面にはLOINEのトーク画面が写っている。

 相手は……。

 

「……おいこれ、アートライブのマネージャーか?なんでお前が連絡先持ってんだよ?」

 

「営業担当のスタッフさんから貰った。Vは狭い業界だからな。横繋がりは大事なんだよ」

 

 凄いのは恐らく2clock 3clockの営業担当なのだろうが、なぜかコイツがドヤ顔をしている。

 

「この前コメントしちゃったこと謝る必要もあったし、渡りに船だったんだよな」

 

「……お前、LOINEで謝ったのか?そんな怒られなかった感じか?」

 

「舐めんなよ。まずLOINEで謝って、次に電話で謝って、昨日向こうさんの本社まで菓子折り持って行って土下座してきたわ。ハイ」

 

 めちゃくちゃ怒られてるじゃねーか。

 

「その時にさ、向こうさんのマネージャーと企画担当の方とこれからのこと話してな。1個提案させて貰ったんだよ」

 

 ほう、提案とな。

 

「お前の妹ちゃん……アートライブ3期生の紅アリアってさ、ずっとAP〇XのVtuber杯に参加したがってたんだろ?」

 

 AP〇X?Vtuber杯?

 なんだっけ?

 

 そうだ。FPSの話だ。

 

 AP〇Xは3人1組でチームを組んで最後のチームになるまで戦うバトルロワイヤル形式の一人称視点ガンシューティングゲームだ。

 

 そして、Vtuber界隈にはそのAP〇Xの最強チームを決めるVtuber限定の大会があると妹が確か言っていた。

 それに妹が参加したいと言っていたのも覚えている。

 

「実はな今週の金曜日にそのAP〇X、Vtuber杯の前夜祭エキシビションマッチがあるんだよ。エキシビションマッチは飛び入り参加OKだから、俺こと獅子郷レオンと紅アリアでチームを組んで参加しようと思うんだ」

 

 アートライブと2clock 3clock大手Vtuber箱の初コラボだぜ、と息巻いている。

 

「待て待て。話が急すぎる。そもそもアートライブは他箱……特に男性Vとはコラボできないんじゃなかったか?」

 

「おいおい察しが悪いぜ、相棒?」

 

 イラッ。

 

「AP〇Xは3人1組のチーム戦だ。俺と妹ちゃんとあと一人必要だろ?そこにヒビキが入るんだよ」

 

 ……つまりどういうことだってばよ?

 

「アートライブの子が男性Vとコラボできないのは、色恋っぽい雰囲気になるのがリスキーだからだろ?でも、俺と妹ちゃんの間に実の兄であるヒビキが入るんだぞ」

 

 流石に実の兄妹がいる前で色恋もクソもねぇだろ、とアイツは豪語する。

 

「でもって、俺とヒビキは知り合い。コラボ配信中にゲームしながら俺達の関係については小話みたいな感じで説明すりゃいい」

 

「……ということは」

 

「アートライブと2clock 3clockの初のコラボで話題を呼べるし、俺とヒビキのことについても説明する機会ができるってわけよ。一石二鳥」

 

 そうかな……そうかも……。

 

「アートライブの事務所的にはOKなのか?」

 

「むしろアートライブ的には他所の箱のVとコラボする切っ掛けを探してたらしいぜ?結構乗り気だった。今急ピッチで調整してるらしいぞ。当然うちの事務所もOKだ」

 

「……この2日でよくそこまで話詰められたな」

 

「思い立ったが吉日って奴よ。フットワーク軽いのがうちの事務所の強みだからな」

 

 そうは言うが、コイツ自身もかなり力入れてアートライブに企画提案しに行ったのだろう。

 昔っからコミュ力だけ無駄に高かったからなコイツ。

 

「……どうにかなる……感じなのか?」

 

「おうよ。金曜日で俺との間のゴタゴタは全て解決して、お前は週末に気兼ねなくボーカルレッスン配信に臨めばいいんだよ」

 

 朗らかに笑いながら本日何度目かの乾杯。

 そんなこんなで夜が更けていく。

 

 

 この日は意識が混濁するまで飲み続け、翌日は1日通して半死半生で過ごす羽目になった。

 その間にもアートライブのマネージャーから連絡が届く。

 

 内容は先日アイツが言っていた金曜日のAP〇X、Vtuber杯のエキシビションマッチコラボ配信への参加の提案。 事前に話は聞いていたので当然承諾。

 

 妹も乗り気だった。

 ……というか、エキシビションマッチとは言え念願のVtuber杯に出れるのが余程嬉しいのか跳ね回っている。

 

 そんなこんなで、あっという間に件の金曜日がやってきた。

 

 

 

 

 




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まだまだ未熟な物書きですが、精一杯頑張って参りますので変わらぬご声援をよろしくお願いします。
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