寝落ち配信した妹の横でギターの練習してたら伝説になってた件について   作:五河 緑

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なんか、ランキングに乗っててビビり散らかしてるでござる。



#3 人気者になれた妹と人気者になりたかった俺

 

「みんなー!こんリア!アートライブ3期生の紅アリアです!」

 

 そんなこんなで始まった。始まってしまった。

 場所は馴染みの防音室。ちゃぶ台の上にドンと置かれたパソコンに向かってヘッドセットをつけた妹が媚っ媚っの萌え声で挨拶をかます。

 

 パソコンの画面には配信画面が写っており、件の赤髪の巨乳アニメキャラが笑顔を振りまいている。

 画面中央では例のごとく、大量のコメントが下から上へと流れていた。

 

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 コメント欄

 

 :こんリア!

 

 :こんリアー!

 

 :こんリア!

 

 :待ってた!

 

 :お兄さん連れてきた?

 

 :こんリア!

 

 :例のお兄さんが来ると聞いて

 

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 コメント欄は既にお祭り騒ぎ状態だ。同時接続視聴者数に目を向けてみれば優に1万を超えている。しかもまだまだ増えそうだ。

 

 マジかよ。急に緊張してきた。

 

 バンドやってた頃にステージに立ったりもしたが、観客なんて多くても5、60人がいい所だったぞ。

 こんな1万人もの前でギター弾くなんてやったことない。自然と手のひらが汗で濡れる。

 

「えー、皆さん。事前に告知したので、もうご存知かと思いますが、今日のアリアライブには素敵なゲストが来てくれてます!」

 

 とんでもない数のオーディエンスに戦々恐々としている俺とは対照的に妹は慣れた様子で場を回していく。

 そんな妹を見て、ようやく実感が湧いてくる。

 

 あー、こいつマジで大手企業所属のVtuberになったんだなぁ、と。

 

 なんだかちょっと悔しかった。かつてバンドマンとして人気者になってやると意気込んでた頃、こいつは部屋に篭もってアニメ見たりゲームやったりで自由気ままに生きていた。

 人気者になろうと足掻いてた俺を「大変そうだねー頑張れー」と気楽そうな顔で傍観していた妹。

 それが今や、妹の方が世間に爪痕を残せる人気者になっていた。

 片や鳴かず飛ばずで現実を思い知り、不貞腐れてた俺。俺が腐ってる間にこいつは、Vtuberという舞台でのし上がってたんだ。

「自分にファンがいるのは箱のお陰」なんて言ってたが、その人気が高い大手の箱に入ったのは紛れもないこいつ自身の力だ。

 競争率もえげつない高さだったのは想像にかたくない。それでもこいつは掴み取ったんだ。

 

「昨日のわたしの耐久配信……もといお休み配信に乱入ゲリラライブかましてくれちゃった、我が兄です!」

 

 負けてられねぇ。

 謎の対抗心が胸の内で燃え上がる。

 滑ってもいい。出しゃばり過ぎだと言われてもいい。妹経由ってのが少々複雑なところではあるが、こんな注目される機会なんてもうきっと二度と来ない。

 ここで当たり障りない人気者の身内って扱われ方されたらきっと後悔する。

 ここでなんかやっとかないと、あの日々が無駄になる。人気者を目指して足掻き続けてたあの時の俺が無かったことになっちまう。

 

 意地でも爪痕残してやる。

 

 用意していたギターの弦にピックを走らせる。

 アンプで増幅された音がギュィィンと力強いストロークを奏でる。

 バンド時代、よくMCでやってた手法だ。

 口で何か言う前に軽く楽器で魅せる。ありきたりな言葉なんかよりもずっと印象に残る。

 俺を見ろ。俺に注目しろ。

 

 挨拶替わりの一発だ。

 

「どうも紹介に預かりました、紅アリアの兄です。いつも妹がお世話になってます。……不肖ながらギターをやっております。昨日はお騒がせしてしまったようでして、お恥ずかしい限りです」

 

 ギターで強めに自己主張した後に口頭で軽く挨拶。ここは、むしろ丁寧に腰を低く。

 ここはあくまでも妹のチャンネルで、ここにいるオーディエンスは妹の……紅アリア、ひいては人気Vtuberグループ『アートライブ』のファンだ。

 そこを履き違えてはならない。注目を集めつつ、疎まれない絶妙なバランスを見極めるんだ。

 

 

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 コメント欄

 

 :おぉ!

 

 :キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

 :開幕ギター!

 

 :お兄さんキター!

 

 :待ってました!

 

 :ロックだな

 

 :やっぱいい音してんなぁ

 

 :カッコイイ!

 

 :おにぃ来た!

 

 :かっけぇ!

 

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(いい掴み。ウケてる。その調子でお願い)

 

 好意的なコメントが押し寄せる画面を尻目に妹がボソボソと小声で言ってくる。

 

「いやぁ、流石おにぃ!開幕早々かましてくるねぇ!」

 

 すかさずアニメキャラのような萌え声に戻し、語尾に☆でもつきそうなキャピキャピトークに切り替えてくる。

 コメント欄には、相変わらずポジティブなコメントが流れている。

 

「みんな、今朝のトゥイッターのトレンド見た?おにぃの作った曲が入ってたんだよね!あと、アートライブ3期生とわたしの名前も入ってたの!呟いてくれたみんな、マジ感謝!」

 

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 コメント欄

 

 :見た見た!

 

 :トレンド独占してた!

 

 :トレンド独占はえげつな過ぎwマジすごい!

 

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「それもこれもおにぃのギターの腕のお陰だね!なんか、切り抜き動画にプロギタリストの人もコメントしてたらしいよ?」

 

「いやー、恥ずかしい限りです」

 

「またまた、謙遜しちゃってぇ。アートライブ3期生をトレンドに押し上げてくれたおにぃには、マジ感謝してるんだよ?こんなおにぃを持ててアリアはマジハッピーな妹ですっ!」

 

「……その頭ハッピーな妹に昨日は、部屋から蹴り出されたんすけどね」

 

「ちょっ!?それは言わなくていいから!」

 

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 コメント欄

 

 :草

 

 :蹴り出したんかw

 

 :お兄さんかわいそう

 

 :仲良いんだか悪いんだかw

 

 :頭ハッピーは草

 

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 軽い漫才を織り交ぜながら場を回していく。

 なんとなく敬語で話してるが、どういう距離感が適切かまだ把握しきれていない。

 できれば、もうちょい砕けた感じでいきたいんだが……。

 

「てか、おにぃ堅苦しすぎ。いつもみたいにタメ語にしようよ」

 

 ……どうやらOKらしい。

 

「あー、分かった。じゃあ、こっからは普通に話すわ。……で、この後はどんな感じになるんだ?なんか曲のリクエスト募集したってさっき言ってたけど」

 

「そうなの!みんな、沢山のリクエストありがとうね!」

 

 そう言うと妹は、おもむろにスマホを取り出してトゥイッターを開く。

 

「多かったのはアニソン系だね。ほら、今やってるガン〇ムの新作の奴。OPやってるグループ、確か去年の紅白出てたよね」

 

「お、おう。いや、あのセトリは?俺まだ見せてもらってないんだけど?」

 

「セトリって?」

 

「セットリストのことだよ」

 

「?」

 

 不思議そうに首を傾げる妹。

 こいつマジか。

 

「今日やる曲のリストってこと。どうやって選曲するつもりだったんだよ?」

 

「え?普通にトゥイッターのアンケート結果見ながら決めようと思ってたけど」

 

「……俺が弾けない曲があるかもしれないだろ?」

 

「えー?おにぃってなんでも弾けるんじゃないの?」

 

 とんでもない無茶ぶりをしてくる我が愚妹。

 

「んな訳あるか」

 

「だっておにぃ前に初めて聞いた曲、その場でギターで弾いてたじゃん」

 

「耳コピのこと言ってんの?あれだってできる曲とできない曲があるわ。それ以前に耳コピだと勝手にアレンジしてそれっぽくしてるだけで完璧に弾けてるわけじゃないからな?」

 

 えー、と相変わらず不服そうな妹。

 大手企業所属のVtuberになって大勢の視聴者を捌いてる様子を見て妹も一皮むけたのかと思ったが、どうやら頭の方は相も変わらずのお花畑のままだったらしい。

 ちくしょう。

 

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 コメント欄

 

 :マジかw

 

 :悲報、まさかのセトリ無し

 

 :アリアたんおっちょこちょい

 

 :相変わらずのドジだなぁ

 

 :てかお兄さん耳コピできんの地味にすごい

 

 :耳コピってことはお兄さん絶対音感持ち?

 

 :どーすんの?

 

 :グダグダじゃん

 

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 妹はいつもこんな感じなのだろう。

 コメント欄は、妹のドジっぷりを茶化す感じでまだ平穏だが、グダリそうな雰囲気を危惧するコメントもいくつかある。

 この流れは良くないな。

 とりあえず、なんか弾いとくか。

 

「オッケー、妹よ。とりあえず、一曲弾くから後のことはそれから考えよう。さっき言ってたアンケートで人気だったって奴……ガン〇ムってことは『木星の魔女』のオープニングだよな?」

 

「うん、ヨルアソビの『御祝儀』て曲。おにぃ弾ける?」

 

「それなら弾ける」

 

「おー流石おにぃ。じゃあ、みんな!とりあえず1曲目は『御祝儀』に決定!それじゃあ、3、2、1、キュー!」

 

「チューニングすっからちょっと待て」

 

「あ、はい」

 

 逸る妹をステイさせながらギターのペグを弄って音の調整をする。

 

 ヨルアソビ、女性がボーカルを務めるJ-POPアーティストグループだ。

 去年あたりから勢いを伸ばしてて昨年の紅白にも出ていた。

 曲調にボカロ曲っぽさの片鱗があるのが特徴で割かし弾きやすい部類の曲が多い。

『御祝儀』は、最近の流行り曲ってこともあり俺も何度か練習していたし問題なく弾けるはずだ。

 

 ……っしチューニング完了。

 

「準備オッケー、いつでもいいぞ」

 

「お?それじゃあ、お待ちかね!おにぃのギター演奏スタート!みんな楽しんでってね!」

 

 その言葉を皮切りにピックを走らせる。

 落ち着いた 曲調からスタート。最初の転調のパートまでは、あまり逸らず、落ちついたテンポで音を奏でていく。

 

 

 

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 コメント欄

 

 :おぉ!

 

 :やっぱ上手い!

 

 :うめぇ!

 

 :ヨルアソビだぁ!

 

 :ガン〇ム繋がりで次は鉄血の『ダスト』聞きたい!

 

 :ええやん!

 

 :音丁寧だな

 

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 サビに入る頃には、コメント欄もかなりの盛り上がりを見せ始めた。

 先程までのグダグダしてどーすんの、みたいな雰囲気は問題なく払拭できたようだ。

 ふと隣を見れば妹もキラキラした目でこっちを見つめていた。

 そういや、こいつの前でちゃんと演奏するの随分と久しぶりかもな。

 目の前で練習とかはしてたけど、大抵こいつはパソコン見てたりスマホ見てたりでお互いに相手のことなんて気にもしてなかった。

 昔はライブとかにも呼んだりしてたっけな。いつの間にか、そういうことも無くなってたけど。

 

 ちょっと気合い入れますか。

 

「なあ、次の曲のリクエストさ、コメント欄に書いてもらってもいいか?」

 

 あんまり行儀のいい行為ではないが伴奏を弾きながら隣の妹に話しかける。

 

「リクエスト多くなりそうだから、このままサビだけでメドレーする。コメント欄で弾けそうな奴から適当にピックアップするから」

 

「え?お、オッケー!というわけで、みんな!コメント欄に弾いて欲しい曲ドンドン書いてってね!」

 

 途端にコメント欄に流れてくる人気曲の数々。ジャンルもまちまちだ。

 J-POP、メタル、アニソン、ボカロ。

 どれもこれも売れ線の曲ばかりだ。問題ない。

 何度も聞いてきたような曲ばかりだし、楽譜なしでも音で感覚は分かる。

 1曲目のラストが終わると同時に次の曲に入る。さっきコメント欄でリクエストしてきてたガン〇ム繋がりで、別シリーズのオープニング、鉄血のウルフェンの主題歌の1つ『ダスト』。

 曲調は一気に激しくなり、ピックが高速で弦を弾き始める。

 弾くのはサビの部分だけだ。そこが終わると同時に次の曲のサビに入る。

 コメント欄を流れる大量の曲名の中から今弾いている曲のラストから上手いこと繋げられる曲を選び出し、頭の中で組み立てる。

 曲と曲の繋がりの部分は、滞らないように、それでいて不自然にならないように独自のアレンジでメロディを繋げていく。

 隣を見れば、妹が唖然としたように口をポカーンと開けている。

 

「すご……」

 

 こういうのは、まだ見せたことなかったっけ。

 

 

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 コメント欄

 

 :ダストきちゃぁ!

 

 :メドレーってマジか

 

 :こんなん神回確定じゃん!

 

 :即興!?

 

 :やばww

 

 :上手すぎでしょ

 

 :綺麗に繋ぐなぁ

 

 :バンプの『カルビ』お願いします!

 

 :『ビターソングとシュガーステップ』聞きたい!

 

 :こんな風にギター弾けるようになりてぇわ

 

 :『武士道ハート』!

 

 :やべぇ

 

 :違和感ゼロ

 

 :『リカリカ☆ナイトフィーバー』!

 

 :『千年桜』『千年桜』

 

 :ボカロも行けんのかよw

 

 :お兄さん抑えてる範囲広いな

 

 :転調綺麗にまとめてるの普通に凄いんだけど

 

 :次『一瞬センチメンタル』お願いします!

 

 :ワン億お願いします!

 

 :絶対プロでしょこの人

 

 :上手すぎw

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 

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 曲数にして大体30曲ほど、時間で言えば15分ちょっと。いい感じに一区切りになった所で軽くアレンジして締めにする。

 

「……大体こんな感じか?全部のリクエストに応えれなかったのは、なんかすいません」

 

 一応、できる限り拾うようにしていたが、どうしても拾えきれないのが出てきてしまっていた。

 メドレー自体はやったことあるけど、コメントとして文字でリクエスト受けながら即興でってのは流石に初めてだ。中々ハードだったが、自分にとってもいい練習になった。

 

「おにぃって、マジでギター上手かったんだね」

 

「いや、お前は聞くの初めてじゃないだろ」

 

 ズレたこと言ってくる妹に軽くチョップ。

 コメント欄を見れば大盛況。喜んでもらえたようで何よりだ。

 自分の腕前を披露することなんて長らく無かったけど、こんなにも絶賛して貰えるなら、もっと早く動画とか投稿しても良かったのかもな。

 ……なんて、そう上手くいくはずないか。

 今、こんだけ人が集まってんのは大手企業所属のVtuberの配信だからだ。

 無名の俺がただ演奏したって、きっとネットの海に溢れかえっている似たような連中の中に埋もれていったことだろうよ。

 かつてのバンドと同じでさ。

 結局、人気者になるのに必要な条件ってのは必ずしも技術だけじゃないってことだ。

 

「で?この後はどうすんだ?ギターは弾いたし、これで今日はお終い?」

 

「へ?いやいや、まだ始まったばかりじゃん。こんなに人集まってくれたんだし勿体ないよ」

 

 見れば同時接続者数は、3万を超えていた。

 マジかよ。

 

「うち大手だけど、こんなに人集まるって中々ないよ。1期生の先輩の新衣装お披露目放送レベルじゃん。おにぃこれ、マジですごいよ」

 

 興奮気味に語る妹。

 スケールがでかくなり過ぎて、俺もなんだか実感が湧かない。

 

「3万か……3万は、確かにすごいな」

 

「うん!マジですごいよ!」

 

 画面に視線を落とせば、演奏を褒めてくれるコメントが滝のような勢いで流れている。

 大勢の人が俺の音楽を聞いてくれている。

 

 俺がかつて夢見た景色の1つがそこにあった。

 

 人気者になりたかった俺。でもなれなかった俺。不完全燃焼で、腐ってた俺。やるせなくて、どうにもならなかった後悔の日々。

 いっぱい練習して、走り回って、やらなくてもいいような苦労をして、なんでこんな扱い受けなきゃなんねぇんだ、と憤っていたあの青い日々。

 それがようやく、報われたような気がした。

 

「……なあ、妹よ」

 

「ん?」

 

「ありがとな。今日、呼んでくれて」

 

「ふぇ?」

 

 今、自分でもびっくりするくらい優しい声出たな。

 案の定、妹は鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔してる。

 

「ほら、お前は知ってるだろ。俺が前バンドやってて、全然鳴かず飛ばずでさ、結局バンドも解散しちゃって不貞腐れてたの」

 

 別に放送しているこの場で言うようなことじゃないのかもしれない。

 でも伝えたかった。

 

「ずっと不完全燃焼でさ。もう人前で演奏する気もなかったのに、未練タラタラでギターの練習してるだけの毎日だった。……お前がいなきゃ、この先もずっとモヤモヤしたまま生きてたんだと思う」

 

 これはエゴだ。

 俺がこんなにも苦労したんだぞって色んな人に分かってもらいたい。

 そんでもって、こんな俺に夢見せてくれたうちの妹は凄いんだぞってアピールしたい。

 

 たったそれだけの、俺のエゴだ。

 

「やっと報われた気がするよ、ありがとう」

 

 こんな小っ恥ずかしい台詞、我ながらよく言えたもんだ。

 妹は、気恥しいのか顔真っ赤にして慌てふためいてる。

 ……なんだよ、可愛いとこあんじゃん。ダサTのくせに。

 

「べ、別におにぃの為じゃないし!やめてよ、そんな。わたしがバズりたかっただけだし。……急にそんな声出さないでよ……恥ずいじゃん」

 

 それっきり、妹は真っ赤な顔を下に向けて俯いてしまう。

 つか、いいのか?今生放送中だぞ。コメント放ったらかしになってるけど。

 なんでこと考えてたら、妹も思い出したのか慌ててパソコンの画面に向き直ってる。

 

「ほ、ほら!おにぃ、今配信中だから!コメント読まなきゃ!おにぃへの質問めっちゃ来てると思うから…………いや、ツンデレじゃないし!ラブラブでもねぇわ!ちょっ!?コメント欄、てぇてぇで埋まってるんだけど……」

 

 あたふたと表情を七変化させる妹。

 なんか微笑ましいな。

 

「ねぇ、おにぃも何とか言ってよ!…………あっ!質問来てる!ほら、おにぃ!質問来てるよ!おにぃのやってたバンドについて聞きたいって!」

 

「バンド?いや、もう解散済みだぞ?」

 

「それでもいいじゃん。ねえ、名前出してもいい?」

 

 前のバンドね……。

 まあ、別にいいか。

 

「別にいいよ」

 

「特定とかされない?」

 

「大丈夫だよ、俺ら全員仮面つけてやってた覆面バンドだったから」

 

 懐かしいなぁ。

 バンドメンバーの1人にめっちゃイケメンな奴がいて、最初の頃の客と言えばそいつの追っかけ女子ばっかりだったんだよな。

 結局、自分の演奏じゃなくて顔ばっか褒められたあいつが嫌気さして仮面被り始めたんだっけ。

 で、統一感出すために全員仮面被り始めたんだよなぁ。

 最後は、もうなんかライブの度につけるマスク変えて大喜利みたいなことになったのはいい思い出だ。

 バンド名は、そう……

 

「『共食いプレデターズ』」

 

「……めっちゃ厳つい名前だよね。なんか由来あるのそれ?」

 

 ちょっと引き気味の妹に説明するために記憶の引き出しをこじ開ける。

 

「行きつけのライブハウスのオーナーが付けてくれたんだよ。全員、尖りすぎてて目立ちたがり屋の集まりで、お互いの個性潰し合ってるから『共食い』なんだと」

 

「プレデターズは?」

 

「昔の映画であるじゃん、『プレデター』。シュワちゃんの奴。1回、ライブで全員がそのプレデターのコスプレマスク付けたことあったんだよ。それがなんか知らんけど結構ウケてさ」

 

 今思い返すと異様の光景だよな。なんでアレあんなウケたんだ……?

 

 なんて昔懐かしの思い出話をしているとコメント欄に流れてくる、あるコメントに目が止まった。

 

 

 

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 コメント欄

 

 翡翠エメ【固定】:アリアのお兄ちゃんが『共プレ』のメンバーだったってマジすか!?

 

 

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「なあ、このコメントは?」

 

 他とは違い、色がついてて他のコメントに流されないように固定されている。

 

「ん?あぁ、それ同期のVtuberの翡翠エメちゃん」

 

 なんてこと無さそうに言う妹。同じグループだと他のVtuberが配信見に来るとか珍しくないのか。

 

「面白い子だよ。音楽好きで、マイナーなバンドとか配信で布教してるの。なんかおにぃのバンドも知ってるみたいだね」

 

「へぇ」

 

 なんか嬉しいな。

 マイナーバンドってやっぱり中々広く知ってもらえる機会って少ないからな。

 こうやって、コアなファンが周りに広めてくれるとそれだけでチャンスに繋がるんだ。

 もう解散したとは言え、同じような夢を抱いているバンドマン達に少しでも陽の光が当たるなら、それは素直に喜びたい。

 

 

 

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 コメント欄

 

 翡翠エメ【固定】:ギターボーカルってことは、HIBIKIさんっスよね!?あたし、ライブ見に行ってました!

 

 :出たな翡翠エメ

 

 :出やがったニワカロッカー

 

 :そういや、エメちゃんの配信で紹介されてたバンドにいたなプレデターマスクのバンド

 

 :マイナーバンド好きって、アレは逆張りオタクだろw

 

 :あれは厨二病の亜種みたいなもんだから……

 

 :ロックマニアのくせにギターを弾けないという……

 

 :そのくせスパチャでギター何本も買ってんの最高にアホ可愛い

 

 

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「……なんか、ボロクソに言われてんだけど?」

 

「……アレは、そういう芸風だから」

 

 なんじゃそりゃ。

 

 

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 コメント欄

 

 翡翠エメ【固定】:今からディスコード繋いでいいですか!?てか、繋ぎます!凸コラボしましょう!

 

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「……なんか今から来るみたい」

 

 

 マジすか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想、応援、助言、批評、お待ちしております<(_ _)>

皆さんの声援のお陰で頑張れておりまする。どうか、どうか皆さんのパワーをオラに分けてくだせぇ(:D)| ̄|_

追伸:(:D)| ̄|_⟵この絵文字なんか気に入りました。
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