寝落ち配信した妹の横でギターの練習してたら伝説になってた件について 作:五河 緑
昨日中に投稿するとか言ってたくせに、遅れてしまい申し訳ありませんでしたっ!
お詫びと言ってはなんですが、今回は1万字を超える内容になっています。書きたいもの全部書いたらこうなりました!
これで2日分ってことで勘弁してください!
また、皆さんのおかげで本作が日間ランキングで1位になっています。たくさんのご声援を本当にありがとうございます!
ギターと歌を教える。
俺がそう言った瞬間、「うぅ」だの『オェー』だの呻いてた2人の声に再び生気が戻る。
『そ、それって、つまり……HIBIKIさんが直にギター教えてくれるってことっすか?』
「あー、2人が良ければの話だけどな。俺なんかより、ちゃんとしたプロの講師の方がいいってんなら……」
昔のツテを当たっていい人探してみるから、と言葉を続けようとして出来なかった。
俺が言い切る前にエメの感情が爆発した。
『嫌っす!HIBIKIさんがいいっす!じゃなきゃ、嫌っす!』
めっちゃ食い気味だった。
えぇ?そんな懐かれてんのかよ、俺。
自分から教えるとか言い出した手前こんなこと言うのも変な話だが、できるならちゃんと講師やっている人に教わった方がいいんだよなぁ。
真面目な話、楽器の弾き方のスタイルなんて行き着く先は人それぞれ異なってくる。
みんな結構、感覚でやっているのが実状だ。
技術然り、練習方法然り、楽器の世界は我流が蔓延りやすい。
だから、一番最初に変に癖の強い奴に教えられると後々それが自分に合ってなくて大きな足枷になることもある。
そういう心配を排除してくれるのが、教えることを専門とした講師という存在だ。
彼らには膨大な経験がある。
教え子となる初心者奏者をある程度パターン化できて、それぞれに合った最適解を用意してくれる。
別に俺が教えられない訳では無いが、俺が教えられるのは自分の性に合ってると思って続けてきたやり方だけだ。
それが必ずしもエメにも合っているとは限らない。
「なあ、自分から切り出しといてなんだが、一応言っておくぞ?俺は人に楽器教えたことなんかないからな?正確を期すなら本職の人に頼んだ方が良かったりもするんだ。俺の知り合いにも何人か……」
『嫌っすよ。よく知らない人なんて。……嗤われるかもしれないじゃないっすか』
またしても遮られた。
嗤われるかもって、こいつそんなの気にする性格だったのか。
普段からニワカロック晒したり、さっきも恥ずかしげもなく音割れシャウトしてるから羞恥心とかそういうのは母親の腹の中に忘れてきたのかと思ってたわ。
『……あたしっていつも見栄張ってイキってるだけじゃないっすか。私生活でも、ついいらんことよく口走ってイキっちゃうんす。そんなのがいざギター持って何もできなかったら、絶対に嗤われるっす。……リスナーから弄られるのはいいっすよ。あいつらは、まだ愛ある弄りなんで。でも、本職の人に目の前で鼻で笑われたら、流石にしんどいっす。ギターできる人……尊敬できる人に嗤われながら練習するのは、あたしにはキツいっす』
……。
別に講師やってるような人は生徒を嗤ったりしないと思うがな。
まあ、言わんとしていることは分からなくもない。
そんなことよりも……。
「……俺は、よく知らない人じゃないのか?」
マトモに会話するようになったのほんの10分ちょっと前だぞ。
だが、翡翠エメは迷わずに言葉を返してきた。
『ずっと見てきたっす。ずっと追っかけてきたっす。……HIBIKIさんの書いた歌をずっとずっと聞いてたんです。人を嗤ったり、馬鹿にしたりするのを何よりも許さない人だって、あたし知ってます』
「…………」
『……ファンですから』
さっきまでのテンション振り切れてたニワカロック少女とは雰囲気が違った。
なんなら、口調まで途中から変わってるし。
……こっちが素なのか?
『……ねえ、HIBIKIさん。ちゃんと教えて貰えればマジであたしでもギター弾けるようになるんですか?さっきの動画見ましたよね?あたし何も分かんないですよ?ギター弾くぞーってリスナーに豪語した挙句、よく分かんないからお喋りでお茶を濁すような女ですよ?』
…………。
嗚呼。分かったわ。
これ、あれだ。
昔の俺だ。
不安で一杯で、人から馬鹿にされてもいいように敢えて卑屈になって予防線を張っているような、そんな感じ。
そこらに掃いて捨てるほどいるであろう自分に自信を持てない思春期の少女の声だった。
俺もあんなだった。ギターに会う前の俺。バンドに会う前の俺。
最初から無理だと決めつけて、ただ下を向く。
顔を上げれば進むべき道はちゃんとあって、それは決して険しい訳でもない。
でも、最初の1歩が踏み出せない。誰かが手を引っ張ってくれれば簡単なのに。信用できる誰かが1人でもいいから居てくれれば、それで済む問題なのに。
脳裏をあの青い日々が過ぎる。
口下手で中々バンド組んだり、バンドに入れてもらえなかった俺の手を無理矢理引っ張って最初の1歩を歩かせてくれた、愛すべき馬鹿達を思い出す。
……今度は、俺がこっちの役回りか。
「なれるさ。やる気さえあれば、誰だってな」
画面の向こうにいる緑の髪をした美少女アバターに話しかける。
翡翠エメ……本名は知らない。
ここにいる訳でもない。
画面越し。
インターネット越し。
顔は合わせず、バーチャルなアバターを通してでの会話。
それでもこいつは、今本音で話してくれている。
かつての俺みたいに音楽に憧れを持ってるけど、自分に自信がなくてどうすればいいか分からない。
そんな未来のバンドマン……もとい、バンドガールの卵が相談してくれているんだ。
こんな俺に。
1度は挫折して、音楽から逃げ出してしまった俺なんかに相談してくれたんだ。
正解を教えてやれるかどうかは分からないが、誠心誠意答えて、寄り添ってやるのが筋ってものだろう。
「なあ、いいかエメ。どんなことでもそうだけどさ、練習しなきゃ絶対に上手くなんてならない。恥ずかしくっても、自分が分からないってことを認めて、分かる人に聞かないと上達なんて絶対にしない」
『…………』
「そりゃあ、お前みたいに散々イキリ散らかしてきた奴が分かりませーんって言ったら、まあ何か言ってくる奴もいるだろうよ」
『う゛っ』
痛い所を突かれて変な声出すエメ。
……調子戻ってきたか?
「でもな、その恥ずかしいのとか辛いのを耐えたり乗り越えるのも含めて練習だ。嫌な目に遭ってる時は、なんでこんな想いしなきゃなんねぇんだって思うかもしれない。でも、その経験はいつかきっとどこかで役に立つから」
俺とてまだ20年そこらしか生きてないのに何を偉そうな、と思う奴もいるかもしれない。
ギターを始めたのは中学生から。バンドを始めたのは高校生から。音楽関係の経験なんて7年ちょっとしかない。
でも、その7年の間で得た経験は、絶対に薄いものなんかじゃなかった。
「それでも、しんどい、耐えられないって思うなら頼れる人を探せ。1人ならキツくて無理でも、信用できる奴が傍にいれば割かしどうにかなるから」
『…………』
特に返答はない。
まだ、自分の中の不安を払拭できてないか?
…………。
しゃーない。
ちょっと臭いけど、格好つけますか。
「……どうしても当てがないってなら、俺に任せろ」
『へ?』
「お前が信用できて、尚且つお前の演奏スタイルにピッタリ合う講師が見つかるまで、俺が【お前のことを嗤わない先生】になってやるから」
その言葉を最後に、沈黙が場を支配する。エメも、俺も何も言わない。
俺はエメの答えを待ち、エメは俺の言葉を理解できるように噛み砕いているのだろう。
……。
…………。
……………………。
おい、なんか言えや。
格好つけたのに、格好つかなくなるじゃねぇか。
『……つまり、HIBIKIさんがあたしのギターの先生になってくれるってことで、FA?』
「今日日FAなんて聞かねぇな…………まあ、そういうことだよ。エメさえ良ければ」
スゥーと大きく息を吸い込む音が聞こえた。
あっ、やばいと思って耳を塞ぐ。
『よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!』
本日3度目の音割れシャウト。コメント欄には、『鼓膜ないなった』のコメントが大量に流れていた。
『約束っすよ!?約束っすよ!?おい、コメント欄!エメリスのみんな!よく見ておくっす!これが最強のロックバンド系アイドルVtuber、翡翠エメ伝説の始まりだァ!』
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コメント欄
:うるせぇ!
:だからうるさいて
:おぉ!
:なぜ一々叫ぶw
:鼓膜リロード
:まさかの展開
:この際だから徹底的に鍛えてこい
:良かったなエメ公
:お前、あんなにギター上手い人にここまで言わせてんだぞ。もうサボんなよ
:いい話風にしてっけど、おめぇはサボってただけやろがい
:#練習しろエメ公
:とりあえず次の練習配信に来てもらえ
:そんで1曲完璧にできるまで耐久な
:まあ、何事も練習だからな
:しんどいとか恥ずかしいとか、お前にマトモな感性あったのか……
:普通にええ話だったな
:頑張れよーエメたそ
:マトモに弾けるようになるまで帰ってくんなよ
:アリアたんのお兄さん、歳いくつか知らんけど結構大事なこと言ってたな
:さっさとニワカロッカー卒業しろー
:先輩ギタリストからのありがてえお言葉だぞ、エメ公ちゃんと聞いとけよ
:毎日お兄さんとギター鬼特訓配信しろ
:エメちゃんがんばぇー!
:頑張れ
:次サボったらマジビンタな
:ギター頑張れよ、エメ公
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コメント欄は、相変わらずエメに対してそこそこ当たりがキツイ。
それでも「頑張れ」という応援の言葉が沢山届いているのを見て、こいつも人気Vtuberとして多くの人から愛されているんだな、と感じ取ることができる。
画面内では、テンション上がったエメの立ち絵が左右にブンブンと身体を揺らしながら大声で歓声を上げている。
最初こそ、テンション高めでグイグイくるウザイ系の奴かと思ったが、こうして純粋に喜んでいる様を見ると可愛らしくもある。
なんてことを思いながら、苦笑いを浮かべていると……。
「ええっと、おにい?エメちゃん?誰か忘れてない?」
「『あ』」
隣で目の据わった妹がこっちをじっと見つめていた。
……そういや、元々こいつの配信枠だったな。
エメと話すのに夢中で完全に存在忘れてた。
「よかったね、エメちゃん。おにぃと仲良くなれて。……で、おにぃ。わたしの歌練習は?」
……なんでちょっと怒ってんだよ。
お前、自分の知り合い同士が自分抜きで仲良くしてたらキレるタイプかよ。ちょっと心狭くないか?
お兄ちゃん悲しくなるぞ?
「もちろん、教えてやるよ。……なんなら、この後一緒にカラオケ行くか?」
「…………おにぃの奢りなら」
「……マジかよ。お前いつもカラオケ誘っても来なかったじゃん。今回も断られるかと思ったわ」
途端にムゥっと頬を膨らませる妹。
「だってあんな棒読み聞かれるの恥ずかしかったんだもん。……でも、今のおにぃとエメちゃんの話聞いて何も感じないほど、わたしも馬鹿じゃないし」
改めて妹が俺に向き直る。
その目はいつになく真剣なものだ。
「わたしも歌上手くなりたい。おにぃに下手くそな歌聞かれるのは恥ずかしいけど、わたしだって変わりたい」
覚悟は……決まってんな。
「わたしに歌い方を教えてください」
「わーったよ。任せとけ」
いつもクソ生意気な妹だが、今のこいつは真剣そのものだ。
それを笑ったり、茶化したりするつもりはない。
『じゃあ、次もまた3人でコラボ配信っすね!あたしはHIBIKIさんに手とり足とりギター教えて貰ってるので、アリアたそはその横で歌詞の朗読しててくださいっす』
なお、エメはさっきのウザキャラに戻って安定の煽り芸を披露している。
すっかり元の調子を取り戻したみたいだ。
「は?おにぃは、普通にわたしの方を優先するから…………ってそれどころじゃなかった。エメちゃん!」
煽り返そうとした所で何かを思い出した様子の妹がスマホを手に取り、エメに呼びかける。
「マネちゃんからメッセ来てる!電話出ろって!」
『はぇ?』
間の抜けたアホそうな声のあと、『ゲッ!?』とやばい物でも見たって感じの声が響いた。
『……めっちゃ着信来てるっす』
「何件くらい来てたんだ?」
『…………50くらいっすかね』
「はよかけ直せ」
Vtuberもバンドマンも関係ない。仕事関係の相手から着信が50件も来てたらそれはもう大惨事だろ。
『えー、でもこれ怒られる奴じゃないっすか』
……そういや、こいつ元々運営に許可取らずに勝手に突撃コラボしてきたんだよな。
『まー、しゃーないっす。ちょっと話つけてくるっす。ついでに、今度からHIBIKIさんとギター練習配信する許可も取ってくるっすよ』
腹括ったのか、『じゃ、ちょっとミュートにするっす』と言ってそれきりエメの声は聞こえなくなった。
途端に静かになる防音室。
いや元々静かな場所だったが、ついさっきまでいた馬鹿うるさかったエメがいなくなると相対的に凄い静かになった気がする。
「……なんつーか、嵐みたいな奴だったな」
「……まあね」
「一応、確認なんだがVtuberってのはみんなあんな感じなのか?」
「いやぁ、エメちゃんはだいぶ尖ってる方だよ」
少しばかり表情が引き攣ってるぞ、妹よ。
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コメント欄
:帰ったか。
:あれは、V界隈でもトップクラスにやかましい奴だから
:お兄さんの中でVtuberのイメージがとんでもないことになってそうw
:妹以外で最初に見たVtuberがあれかw
:最悪のファーストコンタクトじゃねぇかww
:誤解しないでください!Vtuber全員があんな歩く騒音災害みたいなわけじゃないんです!
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歩く騒音災害って相変わらずボロクソに言われてんな、あいつ。
「つーか、よく考えたら俺ってVtuberのことあんまりよく知らねぇな」
「まあ、今日初めて見たもんね」
「アートライブってとこに所属してんだっけ?」
配信開始時の妹がリスナーに向けて言っていた挨拶を思い出す。
「そだよ。総勢11人のアイドル系Vtuberグループで、そのうちの4人が1か月前にデビューした『3期生』。わたしとエメちゃんは、この『アートライブ3期生』て枠組みになるかな」
なるほど、なるほど。
つまりうちの妹や翡翠エメと同じ枠組みに入ってるやべぇ奴が少なくともあと2人残っていると。
「ねぇ!いい機会だからさ、おにぃもVtuberについて勉強しようよ!」
自分の得意領域になった途端に生き生きとする妹。
まあ、確かに成り行きとはいえ妹……紅アリアや翡翠エメというVtuberと関わることになってしまった。
知らないまま、というの良くないだろう。
知らないくせにデカい顔したり、頭突っ込んだりすると大概よろしくない結果をもたらすことになる。
どこぞのニワカロックVtuberがいい例だ。
「Vtuberってのは全部で何人いるんだ?」
「正確な数は分からないけど、個人や企業勢みんな合わせたら数千人くらいじゃない?……手をつけ始めるなら、我がアートライブがオススメだよっ♪」
画面に向かってばちこりウィンク。
今のは多分、俺だけじゃなくて視聴者の中にもいるであろうVtuber初心者にも向けて言ったのだろう。
「じゃあ、今日のところは『アートライブ3期生』について教えてくれよ。お前とエメ以外にもあと2人いるんだろ?」
「おっ?さっそくおにぃも興味湧いてきた?きっと推しの娘が見つかるよ!」
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コメント欄
:おぉ、お兄さんにもV布教するか?
:Vはいいぞ
:そのままV沼に沈めろ
:3期生もいいけど、1期生と2期生もいいぞ
:3期生はどの子もくせ強いからなぁ
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「では改めまして!まずはアートライブ3期生の紅アリアについて紹介するね!」
「いや、お前はいいよ。よく知ってるし」
「いいから、いいから。黙って聞いとけ?」
めっちゃゴリ押ししてくるのな。
さっき放ったらかしてエメと仲良くしたの、まだ怒ってんのか?
「わたし、紅アリアはゲーマー系清楚アイドルVtuber!V界隈じゃ並び立つ者のいない、ゲームガチ勢美少女ですっ!」
視聴者には伝わらなそうなのに横ピースまで決めてくる妹。
……ゲーム好きなのは知ってるが、清楚?清楚かこいつ?
「つーか、大丈夫なのかお前それ?並び立つ者のいないとか、エメみたいなイキリ方してっけど」
なんか視聴者から反感買いそうじゃないか?
「はっ、エメちゃんと一緒にしないで。わたしゲームに関して言えば、ニワカじゃなくてガチのガチだから」
同期を鼻で笑う我が妹。
哀れ、翡翠エメ。
「おにぃは知らないかもしれないけど、わたし複数のビッグタイトルのゲームで上位ランカーの常連だからね?」
めちゃめちゃドヤ顔してんなこいつ。
視聴者的にはどうなんだ、このキャラ?
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コメント欄
:ドヤアリア可愛い
:お兄さんにいいとこ見せようと頑張ってるw
:清楚の部分は最近ちょっと怪しいけどなw
:最近のアリアたん、結構素が出ててスこ
:ゲームの腕はガチ
:ゲームはマジでやばい
:アリアたそ、FPSの時は人変わるからな
:APOXでチーターパーティ相手に1人で3タテしたのはマジで伝説
:人力チートエイム
:オートエイムチートと同じレベルの精度してるのマジで謎
:「チートでエイム良くしてもろくに動かない雑魚は、的と一緒。オートエイムじゃなくて立ち回り良くしてくれるチート使えば?」はマジで名言
:チーターが勝つの諦めて逃げるの初めて見た
:地の果てまでチーター追いかけ回して56しに行くアリアたそマジ恐怖
:最推し
:一時期チーター疑惑かけられてたよな
:やば可愛い
:チーター疑惑かけてきたプロゲーマーとリアルコラボして対面でボコボコにして速攻で疑い晴らしたのホント草
:正味、eスポーツで食ってけるレベル
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……どうやら、ゲームの腕に関しては本当に凄いらしい。
隣を見ればファン達から絶賛されているのが余程嬉しいのか腕組んでめちゃくちゃドヤ顔している。
なんなら、鼻息まで荒い。
「……お前、実は凄かったんだな」
「やっと分かったぁ?」
どうしよう。ちょっとウザイ。
このまま、妹のゲームの腕自慢がしばらく続くのだろうか?
なんて考えていたら、コメント欄に再び他とは変わったコメントが流れてきていた。
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コメント欄
蒼羽シズク【固定】:お疲れ様です、アリアさん。凄い盛り上がってますね
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「あっ、シズクちゃん来てる!」
どうやら、エメと同じ他のVtuberらしい。
コメントの横についているアイコンには、長い青髪の美少女が描かれている。
「この子は?」
「次に紹介しようと思ってた蒼羽シズクちゃん。わたしやエメちゃんと同じアートライブの3期生だよ。超いい子なの」
「へぇ、この子も今から凸コラボとかしてくるタイプ?」
正直、今俺の中でVtuberのイメージは翡翠エメが大半を占めている。
この子もエメと同じく、突撃コラボかましてきて今から話に加わるのかと思ったが……。
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コメント欄
蒼羽シズク【固定】:申し訳ありません。運営さんから許可を頂けていませんので遠慮させてください。
蒼羽シズク【固定】:アリアさんのお兄様。お初にお目にかかります。アートライブ3期生の蒼羽シズクと申します。アリアさんには、いつもお世話になっております。
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「シズクちゃんめっちゃ真面目な子だから、そういうのないよおにぃ」
ほぉ、なるほど。
確かにコメントの文面見たところ、妹やエメとは似ても似つかない。
文章見ているだけで物凄い生真面目なのが伝わってくる。
良かった。
どうやら、ちゃんとした子もいるみたいだ。
自分の中で変なイメージが形成されつつあったVtuberへの印象が修正される。
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コメント欄
蒼羽シズク【固定】:軽く自己紹介をさせてください。蒼羽シズク、アリアさんと同じ16歳です。趣味はクラシック音楽、古典映画作品の鑑賞です。特にSF作品が好みです。
蒼羽シズク【固定】:お兄様の演奏、歌唱を拝聴させて頂きました。同じ音楽を嗜む者として非常に感銘を受けました。ロックミュージックに対する見識はあまり無かったのですが、とても独創的でインスピレーションを掻き立てられました。
蒼羽シズク【固定】:本日は難しいと思いますが、いつか実際に言葉を交わしてお兄様が学んでこられた音楽について色々とお話したいです。
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「おぉ、クラシック音楽」
なんというか本当に意外だ。
ゲームとかニワカロックとかそんなんじゃない。
本当に教養が求められそうな趣味を公言している子もいるのか。
「シズクちゃん、いいとこのお嬢様だったらしくてさ。言葉遣いも丁寧だし、頭もすごくいいんだよ。……たまにちょっと天然だけど」
「天然?」
「箱入り娘っていうの?あんまりネットとかサブカルに詳しくなくてさ。ちょっとズレたこと言っちゃったりもするけど、いつも視聴者さんに色んなこと教えて貰いながら配信してるの。凄い人気なんだよ」
へえ、 ネットの世界ではそういう感じのキャラも人気なのか。
かつて人気者になり損ねた者として少し勉強になるな。
視聴者の反応はどんなもんなんだ……。
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コメント欄
:シズクちゃん来たっ!
:シズクちゃん!
:ガチのお嬢様
:最推しです!
:マジで人気になって欲しい。報われて欲しい
:本当に無垢なんだよなぁ
:天使
:ちょっと危ういまである。ホント清楚
:アートライブ真の清楚枠
:お兄さんも推してやってください!
:丁寧でいい子なんだよ
:俺らが何か教えると逐一お礼言ってくれる本当にいい子
:シズクちゃん素直でいい子だからな。なんでも教えたくなる。
:こんな無垢な子に「感度3000倍」とか「アヘ顔ダブルピース」とかいらん言葉を教えたアンチ共マジで許せねぇ
:絶許
:俺はそんなことよりも、エロゲの耐魔忍をSF映画「ブレー〇ランナー」のスピンオフ作品って嘘教え込んで、画像検索させた奴の方が許せねぇわ
:草
:確かにどっちも近未来サイバーパンクだけどさぁw
:ハリ〇ン・フォードがカメオ出演してるって嘘を真に受けてウッキウキで検索してたもんなぁ……
:直後のあの惨劇よ
:人間、本当に理解できないものを見たら結構長い時間フリーズするんだなって
:あれは地獄だった
:あの時、ガチで嘔吐してたよね
:この子にいきなり触手とか箱化とかボテ腹とか蟲姦とかは刺激強すぎるって
:ごめん、なんか草
:笑い事じゃねぇぞ
:あれのせいでシズクちゃん3日寝込んで配信休んだんだからな
:可哀想
:不憫な子
:でも。あれ以来そういうのに関心持つようになっちゃったシズクちゃん、正直シコい
:いや、本人は認めてないから
:今や検索履歴と予測変換がエロゲ塗れなんだよなぁ
:しかも割とハードコアな奴ばっかり
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…………。
おい、なんかとんでもない話が流れていたような気がするんだが。
……なんで、目を逸らす妹よ。
「なあ、妹よ。この子は、真面目でいい子なんだよな?」
「…………表面上はね」
おいこら、それどういう意味だ。
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コメント欄
蒼羽シズク【固定】:すいません、わたしを快く思わない方々が事実無根のデマ、誹謗中傷を書き込んでいるようです。
蒼羽シズク【固定】:配信を荒らしてしまい、申し訳ありませんでした。この辺りで失礼させていただきます。
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そのコメントを最後に蒼羽シズクというVtuberは帰ってしまったようだ。
…………。
なんか、まだイマイチ情報を整理できないんだが。
「ちょっとみんな、シズクちゃん真面目で思い詰めちゃう子なんだからね?あんまり変なこと言っちゃダメだよ?」
妹がコメント欄に注意喚起を行っているが、さっきの話を否定しないあたり、アレ嘘とかデマじゃないのか。
「……なあ、妹よ。アートライブ3期生には、あと1人メンバーがいるんだよな?」
「うん。紫マムシちゃんって子」
紫マムシ……ね。
なんかもう名前からして、結構パンチ聞いてるけど。
ひょっとしてこの子もなんかヤバい個性があったりするのだろうか。
「その子もコメント欄に来てたりするのか?」
「うぅん……来てないね。ていうか、来ないと思う。こういう所に来るタイプじゃないから」
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コメント欄
:マムシちゃんはなぁ
:あの子は来ないでしょ
:群れるの嫌いそうだもんな
:なんなら「馴れ合いに興味はない」て明言してるもんな
:まだ誰ともコラボしたことないんだっけ
:あの子は、エメとは別ベクトルで厨二病拗らせてっから
:厨二病というかあれは、ヤンデレとかメンヘラって類では?
:トゥイッターの固定トゥイートが毎回精神状態不安になる一言ばっかりなんだよなぁ
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コメントを見る限り、どうやら少し気難しい性格のようだ。
「でも、おにぃはマムシちゃんと凄い話し合うと思うよ。マムシちゃん、Vになる前から音楽活動してたから。実績アリの枠で入ってきた子なの」
「音楽活動?バンドか?」
「ううん。ネットで活動してたんだって」
ネットで音楽活動……となるとあれか、歌い手とかか?
「ボカロPだったんだよ、マムシちゃん。それも結構有名な人でさ」
ボカロP。
ボーカロイドを駆使して曲を作り、世に発信する音楽家か。
「作詞、作曲の経験があるってことか。……確かに少し気になるな」
「新曲作る過程をライブ配信してて、すっごく面白いから今度見てみてよ」
という一言で妹は紫マムシというVtuberの説明を締め括った。
紅アリア、翡翠エメ、蒼羽シズク、紫マムシ。
この4人がアイドル系Vtuberグループ、アートライブ3期生のメンバーってわけか。
どいつもこいつも一筋縄ではいかなそうな個性をしているのが面白い。
今までVtuberとか興味なかったが、こうして目を向けてみると人気なのも納得できる。
この先、どうなるかは分からない。また人前で音楽活動を再開するのかどうかさえも。
だが、もう少し広い目で世の中を見よう。食わず嫌いをせずに、色んなものを見てみよう。
そう思った。
妹が活躍する、このVtuberという世界には個性が溢れている。
かつてのバンドにいたアイツらのように。
また、あの頃に戻りたい。
個性と個性がぶつかり合って、芸術へと昇華していくあの光景をもう一度この目で見たい。
Vtuberを見ることで、Vtuberと関わることでそれが叶うかどうかは分からない。
でも何かが掴める。何かが始まる。
そんな気がしたんだ。
『ただいま戻ったっすぅ!お待たせしましたっす!!』
唐突に鼓膜ぶち抜くような爆音を聞いてたまらず耳を抑える。
隣の妹も余程びっくりしたのか後ろにひっくり返っている。
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コメント欄
:うるせぇぞ!
:だからうっせぇつってんだろエメ公!
:声量考えろやボケ
:マジビビった
:耳いてぇ
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コメント欄から総バッシング。
しかし、当の本人は全く気にしない。
『いやぁ、バチクソ怒られたっす』
色々言いたいことはあるが、黙っとく。このバカ声は何を言っても一生治らないのだろう、そんな気がしたから。
『もうマジやばかったっすよ。勝手に凸コラしたこともっすけど、昔HIBIKIさんのライブ言った時の話したことめっちゃ怒られたっす。「身バレしたらどうすんだー」てマネちゃんカンカンでしたわ』
「……そりゃあ、そうでしょうよ」
起き上がった妹がこめかみ抑えながら恨めしそうに呟く。
「で、どうなったんだ?」
『ふっふっふっ、聞いて驚くがいいっす!ちゃんとHIBIKIさんとの音楽指導コラボの許可とってきたっすよ!』
おお、マジか。
『でも、いくつか条件があるらしくって代表からの伝言預かってきたっす。配信だと流石に言えないんで、この後どうします?』
その言葉に俺と妹は目を合わせる。
そろそろ頃合だよな。
「じゃあ、一旦締めようかな。みんな、今日はアリアの配信見に来てくれてありがとねー!次回の配信については、トゥイッターで告知するからそっちを要チェック!……おにぃ最後になんかある?」
ふってくれた妹に小声でお礼を言いながら、俺も締めの挨拶をする。
「えっと、皆さん。今日は本当にありがとうございました。配信とか初めてで、凄い緊張したんですけど暖かく迎えてもらって、とても楽しかったです。これからも、妹の紅アリアと……ついでにその友達の翡翠エメを応援よろしくお願いします。あと、You〇ubeに『共食いプレデターズ』の昔のライブ動画とかあるんで、もし良かったら見てみてください。以上です」
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コメント欄
:お疲れー!
:凄い楽しかった!
:こちらこそ出演してくれてありがとう!
:エメ公たまには役に立つじゃん
:また配信来てください!
:うちのエメをお願いしますっ!
:エメを真人間にしといてください
:音楽指導配信楽しみー
:アリアたん、お歌練習頑張れー!
:共プレの動画見に行ってきます!
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こうして、俺の人生初の配信は幕を閉じた。
ご愛読ありがとうございました!
良ければ感想を送ってください。感想は全て読ませて頂いています。感想を読む度に、今日もまた筆をとろうと力が湧いてきます。
どうかこれからも、応援をよろしくお願いします!