寝落ち配信した妹の横でギターの練習してたら伝説になってた件について 作:五河 緑
今回の話ではLINEのトーク画面みたいなのを小説で表現しております。
補足しておきますと、末尾に『既読』とついている台詞は主人公が書いているメッセージとなっております。
読みにくいと感じた方には大変申し訳ありません。これからも精進して参りますので何卒ご勘弁を。
動悸が早くなる。
見てはいけないものを見てしまったような、開けるなと言われていた蓋を開けてしまったような、そんな心地の悪い後ろめたさが胸の内を覆っていく。
「……っ」
それでも弦を弾く手は止まらない。
長年身体に染み込ませてきた技術が土壇場で俺を救ってくれた。
精神的な動揺をものともせずに無意識で動き続ける指が演奏を続行させる。
最後のサビは引き終わった。
後はラストパートの伴奏だけだ。
ふと、顔を上げてみると妹の顔が目に入った。
心配そうに眉を寄せて両掌をこちらに向けている。
あのジェスチャーには見覚えがある。
『落ち着いて、落ち着いて、ステイクール』
俺と親父が喧嘩した時や親父とお袋が言い争いした時、妹は決まって間に割って入ってあんな風に宥めようとする。
そんな妹を見て、今の状況を思い出す。
そうだ。今は配信中だ。
それも企業から金を貰って行っている、言うなれば仕事の真っ最中だ。
演奏を続けながら一瞬だけ目を閉じて息を深く吸う。
カチリ、と頭の中でギアが切り替わる音が聞こえた気がした。
アンプが増幅する音が頭の中に充満する。
今弾いている曲への想いが、音楽への熱が胸の内に溜まっていた暗いモヤを押しのけて俺を満たしていく。
もう大丈夫だ。
意識は脳内の譜面に集中している。
このまま最後まで弾ききる。
妹は依然として不安そうに俺の顔とコメント欄を映しているPCを交互に見ている。
両手は祈るように胸元で組んでいる。
……あんな顔をさせるためにギター弾いてるんじゃねぇだろ。気合い入れろ。
ラストスパート、一気にボルテージを上げるように一層激しくピックが弦を弾く。
本来想定していたよりも更に荒々しくメタルアレンジを加えていく。
最後にダウンストロークでピックを下に振り抜いたところでようやく演奏が終わる。
「…………」
暫し、沈黙がスタジオを支配する。
無音の時間がやけに長く感じられた。
いつもは意識する間もなく過ぎ去っていく1秒が、泥のようにしつこく意識に纏わりついてくる。
「おぉー!流石っす!ヤバくないっすか今の!?めっちゃメタルであたしの知ってる曲じゃくなってたんすけど!」
沈黙を破ったのはエメだった。
いつもと変わらない快活で元気一杯のカラッとした声音で大袈裟なくらい喜ぶ。
周りの空気なんて気にしない。空気を読まないエメの真っ直ぐな性格に少し救われた気がした。
「だ、だね!これマムシちゃんもきっと喜ぶよ」
ワンテンポ遅れて妹も手を叩いてリアクションをとる。
「いや、でも本家のようにはいかないな。あの独特な世界観はやっぱり作曲者本人のものだと思う」
「またまたぁ謙遜しちゃって」
茶化すように笑う妹。数秒前まであった気まずい沈黙は払拭できたと思う。
……実際のところ、上手く演奏できたか自分でも自信がない。
途中かなり動揺したのは紛れもない事実だ。
できる限りのことはしたつもりだが、自分では気付いてないだけで粗い箇所があったかもしれない。
不安が払拭できない。
気になってコメント欄を見たくなる。
……それにさっきのアレも気になる。
恐る恐るテーブルのうえに置かれたPCへと目をつけて思わず目を見開いた。
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コメント欄
:おお!獅子郷じゃん!
:獅子郷来てる!
:上手かった!
:2clock 3clockの獅子郷?
:マジかよ
:獅子郷レオン!?
:なんで???
:めっちゃ大物来てるじゃん!
:そういや獅子郷、共食いプレデターズのドラムやってたって言ってたな
:お兄さんと同じバンドだっけ?
:マジ!?
:そうなん!??
:まさかの再会
:こんなことある!?
:話聞きたい
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「え、あ、えっと……」
視界がグニャリと歪む。
やっぱり見間違いなどではなかった。
アイツだ。アイツが今ここにいる。
なぜ?なぜ今?なぜ今になって?どういうつもりで?なんで今まで……。
いろんな『なぜ』が頭の中でグルグルと渦をまいている。
聞きたいことがあった。聞きたいことが沢山あった。
言いたいことがあった。あの時言えなかったことがあった。
問い詰めたいことがあった。自分勝手かもしれないけど、俺の中で納得できていなことを納得いくまでアイツに問い詰めたかった。
謝りたかった。もっとちゃんとお前に向き合うべきだったと直に言葉を交わして謝りたかった。至らない所だらけだった俺がアイツを失望させたことを心の底から謝りたかった。
色んな言葉が頭に浮かんでは消えていく。
油断すれば口から留めなく溢れてきそうな言葉達を必死に押し留める。
今は配信中だと、理性が必死に口を塞いでいる。
言いたいことは沢山あるが、少なくとも今この場で言うべきではないと理性が頭蓋骨の内側で必死に叫んでいる。
再び妹に目を向ける。
泣きそうな顔で必死に首を横に振っている。
口パクで何かを伝えようとしている。
幼い頃からずっと一緒に育ってきた。
声は聞こえずとも、何を言いたいかは理解できた。
『おにぃ、抑えて。今はダメ。今だけは絶対ダメだから。一生のお願い。今度こそ本当に一生のお願いだから』
我に返る。
そうだ。
今じゃない。
絶対に今じゃない。
今はアートライブのために配信をしているんだ。俺とアイツの個人的な話をする場所ではない。
でも、何を言えばいい?
コメント欄を見た感じ、見に来ている視聴者もアイツのことを認知している。
俺とアイツが過去に同じバンドにいたことも知っている。
皆気になっている。
俺の演奏を褒めてくれるコメントもチラホラ見かけるが、大半はアイツ……獅子郷レオンのことを気にしている。
でも、配信前にマネージャーはエメに他所のライバーの名前を出すのはNGと言っていた。
この場合はどうなる?
反応した方がいいのか?
無視した方がいいのか?
どうすればいい?
どうすればいい?
どうすれば……。
「お見事でした」
パチパチと手を叩く音が俺の思考を打ち切る。
シズクだ。
「本当に凄かったですね2人共。普段聞かないジャンルの曲調だったのですが、音圧に圧倒されました。ハマってしまいそうです」
一息。
視線をテーブルの上に置かれたPCへと向ける。
「視聴者の皆さんも大盛況ですね。おや?Vtuberの方もいらしていたみたいですよ?是非とも感想をお聞きしたいところですが……お時間が迫ってますね。うぅーん、残念です」
わざとらしく肩をすくめる。
「そうだ!宜しければトゥイッターの方で感想を呟いてもらえばいいかもしれませんね。もちろん、視聴者の皆様の感想もわたし見てみたいです!ついでに曲のリクエストなんかもして頂けたら、来週のコラボ配信で弾いてもらえるかもしれませんよ?」
ですよね先生、と目配せしてくる。
「あ、ああ。もちろん」
上手い。
蒼羽シズクは上手かった。
言葉に詰まってた俺を見かねて場を回し始めた。
締めに入ろうとしている。視聴者は納得しているのかと思ったが、そこはアイドル系Vtuber。流石の一言だ。
彼らは基本的に推しには迷惑を掛けない。
今のシズクは明らかに流れを変えようとしている。
このまま配信を終える流れに持っていこうと誘導している。
それは視聴者の方から見ても明らかだろう。
それ即ち、今はこの話題に受け答えできないと暗に伝えているのだ。
推しが婉曲に意図を伝え、誘導している。
少なくともこの場にいる蒼羽シズクのファンはそれを読み取って従おうとする。
コメント欄に変化が現れ始める。
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コメント欄
:はーい
:トゥイッターのトレンドにしようぜ!
:はーい
:時間かぁ、残念
:えー
:獅子郷は?
:しゃーなし
:来週も楽しみ!
:2期生のオリ曲リクエストいけますかね!?
:獅子郷とは今どうなん?
:シズクちゃんメタルハマるか!?
:マムシちゃんの曲良かったよ!
:次はマムシちゃんも呼びたいなぁ
:お疲れー
:乙リアー!
:お疲れ様!
:乙リア!
:エメ公、ちゃんと練習しとけよ
:エメち頑張れ!
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まだ獅子郷のことを聞いてくるコメントはあるが、シズクのファンが彼女の意図を汲み取って締めの流れに入ろうとしている。
すると妹やエメのファンもそれに迎合する形で定番のお別れの挨拶をコメント欄に打ち込んでいる。
これは箱推し文化を育んできたアートライブならではの強みだ。
「では名残惜しいですが、そろそろお別れのお時間です!来週もあるから見てねー!次回はボーカルトレーニングだよ!音痴だけど頑張るから応援してねー!」
「#アートライブ3期生でトゥイート頼むっすよ!皆の声援でマムシたそを召喚するっす!マジで頼むっすよ!」
妹とエメも締めの挨拶で援護射撃。
「ほら、おにぃもなんか一言!」
「え?お、おう。……皆さん、今日はありがとうございました。シズクさんは勿論のこと妹やエメも凄い才能あると思いますので、これからも応援してやってください」
俺もできる限り頑張ってわかりやすく教えていきます、という言葉で締め括る。
「それでは皆さん!乙リアー!!」
妹の元気のいい掛け声を最後に配信を終了する。
テーブルに乗せられたPCの画面が配信を終了したことをアナウンスしている。
それをダブルチェックし、マイクをミュート設定に。
モーションカメラの電源をオフにする。
「「「「はぁ」」」」
完全に配信を終了したことを確認した瞬間、全員が椅子にもたれかかって深いため息をついた。
セーフっす、とエメが額の汗を拭う。
良かったぁ、と天井を見る妹。
シズクは何も言わずにポケットからハンカチを出して頬の汗を拭いている。
「おにぃ」
「ん?」
「ありがと」
我慢してくれて。
最後の一言は声に出されなかったが俺には伝わった。
お袋そっくりの優しい笑みを浮かべて、妹は俺に礼を言ってきた。
昔、同じようなことを言われた気がする。
親父と喧嘩した時だ。
結構、尾を引いてしまって家の中の空気が悪くなっていた。
俺も親父も頑固でお互いに中々謝ることができなかった。
暗い雰囲気に耐えられず、妹が俺に親父と仲直りするように泣きながら頼みに来たっけ。
渋々親父に頭を下げに行って、それで親父とは和解した。家の中の空気も元に戻った。
親父に謝りに行った俺を妹は褒めてくれた。
あの時も、こんな風に妹は優しく笑ってくれた気がする。
「……礼なんて言うなよ。むしろ俺が謝るべきだろ」
今回のことは完全に俺のせいだ。
俺がちゃんとアイツと向き合ってなかったから。
バンドを解散した後、気まずくなって疎遠になってろくに連絡を取ろうともしなかった。
意固地になっていた。
時間だけが過ぎていって余計に連絡を取りずらくなって、結局今日まで来てしまった。
その結果がこのザマだ。
思いもしない場面でアイツとばったり出くわした。
危うく俺が感情任せにいらんこと口走ってアートライブに、ひいては妹やエメ、シズクに迷惑をかけるところだった。
本当に何やってんだ俺は。
アイツがネットで活動しているのを知って俺がショックを受けたようにアイツも俺が配信の世界に現れ始めたのを知って気になり、見に来たのだろうか。
どういう腹積もりなのかはまだ分からない。
……ずっと俺だけが悶々としているだけだと思っていたが、本当はアイツもなにか思う所があったのかもしれない。
お互いに切っ掛けを見つけられないまま今日まで来てしまった。
さっきのコメントは、アイツなりに何かを伝えようとしていたのかもしれない。
やり方や伝える場所が正しかったのかと言われたら疑問が残るが、それでもきっと何か意味があってのことのはずなんだ。
これを無視したらきっとろくなことにならない。
また同じようなことが起きるかもしれない。
それに……。
今日は乗り切れたが来週末にも俺と妹達とのコラボ配信が控えている。
妹もエメも俺とまだまだ関わる気満々だ。
でも、俺が配信に映る度にアイツ……獅子郷レオンのことを聞かれることになるのは明白だろう。
このままでいい訳がない。
いい加減過去と向き合うべきだ。
眼前ではエメがさっき教えたコードを奏でながら「ギター弾けるようになったっす」と妹に自慢している。
妹は苦笑いしながらそれを聞いている。
手を叩いてエメを褒めちぎっているのはシズクだ。
収録室のドアが開いてマネージャーが中に入ってくる。
よくやった、と3人を褒めていた。同時視聴者数、SNSでの反響はまずまずのようだ。
皆、楽しそうに笑っている。
かつての俺のように。かつての俺達のように。
これを曇らせるのはダメだ。絶対にダメだ。
ましてやその原因が俺の過去の拗れた友情だなんて絶対に受け入れられない。
そう思ったんだ。
★★★
帰り道、赤い夕焼けが電車の車内を緋色に染めている。
今日の配信で余程メンタルが疲れたのか、妹は座席に座って頭をガックンガックン上下させながら寝ている。
……出来の悪いヘビメタ系バンドのヘドバンみたいだな。
俺は楽器持ってる時は座る気にならないが妹は気にしないらしい。
前に抱えているギターが倒れそうだったので、俺が持っておく。
「……今日はなんか苦労かけちゃったな」
悪い、と聞こえている訳ないのに謝りながら妹の頭をクシャッと撫でる。
「ぅあ゛あ゛あ゛」
寝ている時の機嫌がすこぶる悪い妹はキレた猫みたいな唸り声を上げながら俺の手を振り払い、再び頭を上下させながらなんちゃってヘドバンに勤しんでいる。
そんな妹が可笑しくって思わず笑みを零しながら、ポケットからスマホを出す。
画面を起動し、世界でも有数のユーザー数を誇るSNSアプリ『トゥイッター』を起動。
ユーザー検索。
獅子郷レオン。
ヒットした。
獅子郷レオン、Vtuber事務所2clock 3clock所属。公式マークもついている。
間違いない。
アイツのアカウントだ。
ダイレクトメッセージを送信すべく、チャット画面を開く。
……なんと送るか。
『謝りたいことがある。よければ話がしたい。 ヒビキ』
送信。
すぐに返信が来た。
メッセージじゃない。数字とアルファベットの羅列。
トークSNSアプリ『LOINE』のIDだ。
……こっちで話そうってか。
LOINEを起動してアイツが送ってきたIDで検索。
ヒット。
出てきたアカウント名は獅子郷レオンではなかった。
俺のよく知る名前。
高校で知り合って、奥手だった俺の手を無理やり引っ張ってバンドの世界に引きずり込んでくれたアイツの名前。
俺の知る限り最高のドラマーのアイツの名前。
アイツがバンド抜けて。その後、皆の心がバラバラになってバンドを解散した。
めっちゃしんどくて、見たくない現実から目を逸らすように俺のLOINEの友達の欄から消してしまったアイツの名前。
アイコンが変わっていない。
新宿のライブハウスでバンドメンバー全員で撮った写真。
目の奥が熱くなる。
……なんでずっと目を逸らしていたんだろうな。
友達申請。
即座に承認。
メッセージを送る。
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トーク画面
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変な気分だった。
連絡する前はあんなにも怖かったのに。
いざ話し始めてみれば、違和感なく会話ができる。
まるで、あの頃に戻ったような。
ずっと止まっていた時計の針が動き出したかのような、不思議な感覚。
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:『今度飲みに行こうぜ』
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顔を上げる。
窓の向こうに広がる都市の風景を夕焼けが真っ赤に彩っている。
美しい景色なのに、少し滲んで見えるのはなぜなんだろうな。
「おにぃ?」
いつの間にか目を覚ましていた妹が不思議そうに首をかしげている。
「なにその顔?」
「顔?」
「すっごい変な顔してるよ。泣きそうなのに口元めっちゃニヤニヤしてるみたいな」
キモイよー、と生意気なこと言ってくる妹の頭を軽く小突く。
再びスマホに視線を落とし、指で文字キーをタップする。
了解いつにする?と打ち込み送信。
胸の内を覆っていた暗い淀みはもうない。
視界は澄みきっていた。
ご愛読ありがとうございました。
もし宜しければ感想をおきかせください。執筆の励みになります。本当に励みになっております。
感想は全て読ませて頂いております。「ここが良かった」「ここがモヤッとした」全て読ませて頂いており、糧にさせて貰っています。
これからも変わらぬ声援よろしくお願いします。
また一部、キャラの迂闊な言動などが目立つ作品となっておりますが、それも含めてキャラクターの若さや個性だと思っていただけると幸いです。
これからも何卒よろしくお願い致します。