魔術を愛する残念男?   作:ルベ

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できるメイドと浮浪者

2話

 時は流れて10年後、サルーム王国王城にて人のほとんどいない通路をこそこそと小走りで移動する一人の少年がいた

 

「王子!」

 

 人の声のほとんどしない通路に響く男性貴族の声は少年を驚かせると共にバレやしないかと緊張状態にもさせた。

 

「悪いが俺がここにいたことは誰にも内緒で頼む、特にメイドにはな。」

 

「心得ました.....ならば、我々と共にこれより狩りでも行きませぬか!王族たるもの狩りを少しくらいは....ってロイド様!」

 

 期待に目を光らせた少年はとうに先へ行ってしまったことに気づかず、一人話す男性に共にいた男性貴族は呆れた目を向けていた

 

「また、逃げられたか。」

 

「いやいや、彼は第七王子ではないですか。王位争いとは無縁の存在。そこまで取り入ろうとしなくても」

 

 彼は王城に入って間もなく知識がないのだろう。そう思いつつ第七王子の期待値の高さの理由を自慢げに語った。

 

「馬鹿を言うな。生後すぐに言語を理解し、赤子が絵本を読む頃には魔術書を読み、母乳を嫌う様はまさに紳士。それに私は彼はかのウィリアム・ボルドーの生まれ変わりとさえ思っているぞ。」

 

 

 

 そう、俺は生まれ変わった転生者だ。ただ、中身はこの国の国民であったが。

 

「ロイド様ー、どこですかー?」

「ロイド様〜」

「王子〜」

 

 なぜか気がついたら元々住んでいた国の第七王子となっていたわけだが....何故このようなことになったのかは解らない....が、地位も名誉も前世と同じようにどうでもいい

 俺のやりたいことは変わらず一つ。魔術を知ること。

 

 そして少年....ロイドは周囲にメイドがいないことを確かめ、重厚な扉を開いた

 

 即ち、今はこの王城に俺をワクワクさせる魔術書が魔術を読むこと!

 俺の興味はそれだけだ.....!!

 

 視界いっぱいに広がる魔術書を貯蔵する王城の図書館。これは前世の魔術図書館と同等の大きさで蔵書も素晴らしい。そんな夢の広がりに興奮していた......が、

 

「おい」

 

 その素晴らしい蔵書の中に床で本の山に囲まれた白髪の浮浪者のような人がいた

 

「.....ムニャムニャ........ウヘヘ....」

 

「.....」

 

「....火きゅ「おい!」イタッ.........ロイド...様、何ですか?」

 

「眠るのやめろって言ったよな。過去に俺の読んでない蔵書燃えて結局読めなかったこと忘れてないからな。」

 

「いやでも「なに?」......何でもないです」

 

「まったく...」

 

「まったくなのはこちらのセリフです」

 

「「!!!!」」

 

 魔術に関することになると本当にダメになる二人に、ロイドの背後から現れたメイドはあきれた目を向けていた。

 ロイドを呼びに行くところから、ロイドが不在で王城の何処かで魔術の本を読むところを探すまで、コレは残念ながらこのメイドの日課になっていた。

 

「見つけましたよ、ロイド様。剣術の鍛錬のお時間です」

 

「シルファ....」

 

 そして彼女が剣術の鍛錬をロイド相手にするところも日課だ。

 

「まあ、待って。今日はまだ本を読んでないから、ロイド様に本を読ませてあげても「ダメです」....」

 

「本を読むにしても適度な運動をしなければあなたみたいな浮浪者になってしまいます」

 

「そ、そこまで言わなくても」

 

 シワまみれの服にぼさぼさの髪にヨダレのあとの残る顔。普段の生活のほとんどを本とともに過ごし、風呂や食事などの人として最低限すらできていない残念な男にできるメイドであるシルファは冷め切った目を向けてた。

 

「わかった、わかったから。」

 

 自分を見つめる冷たい視線に急かされるように彼は指を鳴らした。それと同時に服の汚れが消え身だしなみを整えた。

 

 これでいいのだろうと男は胸を張っているが、身だしなみの手抜きさが彼をダメ人間と呼ばせる要因だと彼は気づかない。

 きっといつまでも気づかないだろうなと、主従二人は同じように思った。

 

「では剣術の鍛錬をしに行きましょうか。」

 

 

 

 王位継承の可能性のない俺には剣術は必要ないと思うんだどな................興味もないし。

 前世から苦手なんだ、運動は。

 

「王位継承があろうとなかろうと、剣術は教養として嗜めて然るべき。」

「ロイド様の剣術指導を始めてすでに3年、この時間は私の生きがいにもなっているのです。」

 

 早く終わって欲しいけど、不甲斐ないと長引くからなぁ。

 

 シルファの剣の風を切る音に合わせて剣を振るう。恐ろしく早い突き出しから鍛錬は始まった。俺はその突き出しと同時に突き出しをはなった。剣の突き出しには剣の突き出しを、剣を振るう時には剣を振るう。

 素早く、そして鋭いシルファの剣術にロイドは完璧に合わせていた。

 

「素晴らしい剣術....日に日に強くなられてますね、ロイド様。」

 

 それはそうだろう。シルファはいつも手加減していて、それを日に日に緩めているのだから。

 俺は今『制御魔法』でシルファの動きをトレースしている。つまりシルファは自分と戦っているようなもの。ふっふっふ....ズルをしているのだ................早く魔術書を読みたい。

 

 連打連打連打連打。

 縦横無尽に走り抜ける無数の斬線。短い時に幾度となく振るわれる剣は徐々にロイドを封じていた。

 

 身長、腕力、体力.....技術を完璧にトレースしたところでこの差でいつも負ける。

 今日はその差を....

 

 

 更なる魔術(ズル)で補完する.....!

 

 

『生命成長』で剣を伸ばしリーチを伸ばす。『身体強化(弱)』で身体能力の差を埋める。そして....『ふゆう!』

 

 ふっふっふ....今日こそ剣術の鍛錬を早く終わらしてみせる!

 

 

 ロイドの動きは近くで剣術指導を見ていた浮浪者と呼ばれた男から見ても急に変わっていた。男は近接戦闘をシルファほど得意としてるわけではないが、そんなものから見てもロイドの剣閃が鋭くなっているのは見てとれた。

 

 大人の女性とその腰くらいの身長の少年が真っ向から衝突し、鋭い剣閃をかわす。

 自然と男はその剣術に引き寄せられていた。剣士でない男であっても、思わず集中して見てしまうような闘争。

 それは二人の剣術が美しいからか、それとも鋭く無駄のない剣さばきが舞のようだからか、あるいは剣を交わす二人が思わず笑ってしまうほど楽しんでいるからか。

 

 結局運動は嫌いと言っていても、ロイドは闘争が好きなのだろう。剣術の鍛錬が本当に嫌なら王族として断る手段などいくらでもあるように思える。

 あるいは高いレベルの闘争の本能から望んでいるか......

 

 

 普段なら対応できないスピードや力にも対応できる。そして合わせ鏡のような剣術の工房の中、相手が急にそこから外れたらどうする!!

 トレース解除!

 悪いな、これで俺は本を読みに行く!

 

 トレースを解除して背後に回ったロイドはシルファに必殺の剣閃をみまった。

 

 

 獲った!!!

 

 

 

 

 

「ロイド様」

 

 

「ズルしてますね」

 

 そう言って軽々とロイドの剣閃を受けると、木刀を捻るようにロイドの手から回収し、ロイドを弾き飛ばした。

 

「この私が剣の間合いを見誤るはずがありません」

 

 そう言ってロイドの剣を拾いその剣先を見つめた

 

「木刀を『成長』させ、刀身を伸ばすことでリーチの拡張、浮遊で身長のカバー、そして身体強化で身体能力の差を埋める。」

 

 ロイドの行った小細工を説明するとシルファはロイドを後ろから抱き上げるように持ち上げた。

 

「ああ。何という愛らしい才能か。」

 

 頬を赤く染め興奮した様子でロイドを左右に振り回した。

 

「同時に3つの魔術を発動させるなんて、王宮の魔術師でもほとんどできないのに....!」

「そんなに焦らなくてもシルファはずっとお相手をしますよ〜!!」

 

 一方ロイドは制御魔術も合わせて4つの魔術を同時に発動させていたことは流石に黙っておこうと思い、バレなかったことにドキドキしていた。

 

 そんな二人を見て、剣術の鍛錬の鑑賞に満足した浮浪者は帰ろうとしていた。

 

「さて、次は貴方です。浮浪者さん。」

 

 そんなことをできるメイドが見逃すはずもなく、頭への手刀の衝撃とともに浮浪者は止められた。

 

「貴方の剣術の鍛錬は、怠け放題の貴方を心配した貴方のご両親の依頼ですから、逃しませんよ」

 

 そう言うと、シルファは彼に木刀を手渡し、引きずるように鍛錬の場へ運んだ。

 

「さて、始めましょうか。」

 

 先ほどのロイドとの戦い同様、シルファはすぐに始めようとしていたが、男はそれに待ったをかけた。

 

「今日こそお前に勝つために秘策を用意してきた。それがこれだ!」

 

『制御魔術:トレース・シルファ』

 

 先ほどの戦いと同様に、シルファの鮮烈な風切り音を伴う剣の突きから始まった。

 

 普段なら受けれないこれを、ロイド様の制御魔術でシルファの剣技を再現すれば...

 

 普段なら当たっていた攻撃を自分と酷似した剣技で返された。急に剣術のレベルが上がったことを疑問に思いつつ、シルファは手加減を緩めた。

 

.....シルファの剣術についていける!

 

 普段なら魔術による身体強化による膂力で打ち勝っているものの技で打ちのめされていた彼はいつもと違っていた。

 

 高い技量の剣技と高い身体能力、この二つでシルファに匹敵するような剣術をみまっていた。

 

 広い鍛錬場を二人は高速で動き回り武器を振るった。二振りの木刀が、大気を切り裂き激突する。

 

 高い技量と高い身体能力を持つ二人は、互角のようで、やはり押されているのは彼だった。

 

 高い技量を魔術で身につけようと、彼を怯ませるのは高度すぎるシルファの剣術の鮮烈な剣閃だった。

 ロイドに及ばない男の制御魔術ではシルファの高すぎる剣術の技量を再現できずにいた。

 

 受けれる者のほとんどいない剣閃を受ける男を見て、必死に追随しようともがく男を見て、シルファは喜びを感じるとともに笑っていた。

 

 視界を埋め尽くす剣閃と、笑いながら剣を振るうシルファはもはや悪夢である。

 身体能力で優っていても防げないシルファの剣閃。シルファの剣閃の迫力と高い威力の剣撃に押され大きく後退した男を、シルファは下策とばかりに追撃した。

 

 男の顔に叩き込まれるシルファの剣撃。

 木刀が顔にめり込み、次には吹き飛ばされる。鍛錬場を何度も跳ねるように吹き飛ばされる鍛錬場の壁にぶつかることでようやく止まった。

 そして男は気絶した。

 

 

 

 

 




 更新遅れてすいません。前回の1話はかなり衝動的に投稿したので2話投稿が遅れました。
 今更ながらちゃんと最初の数話をまとめて投稿する投稿者さんはすごいのだと、投稿者になって初めて実感しました。
 2話まで来た感想としては「主人公の名前決まってない!」ということ。
多分次回で出ると思います。
 最後に、この作品が「転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます」を読むきっかけになってくれれば幸いです。
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