真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様 作:水の虎
まあ、元々他のキャラも掴めてるとは言い切れないですけどね!
という訳でキャラ崩壊注意。
九十九由基が椎名夕の存在を知ったのは偶然だった。
たまたま用事で足を運んだら、その近くにいた呪霊が祓われていた。
大した強さではないし、先に用事を済ませてから適当に祓おうと思っていたが、少し目を離した隙にその呪霊が祓われていて、おまけに残穢もほとんど残ってなかった。
気になった九十九は僅かに残った残穢を頼りに周辺を捜索すると、丁度アイに会いに施設を訪れた夕を見つけたのだ。
淀みのない呪力の流れ。年齢を考えれば破格といってもいい夕の呪術師としての力量に九十九は興味を持った。
だから施設から帰る夕を見て、接触を試みた。ちょっと夕焼けをバックにするという茶目っ気を見せて······。
呪術師としての力量同様、その立ち振る舞いも中々に大人びていたし、こちらを呪術師と見抜いたことに九十九は驚いた。しかし────
(危ういな、圧倒的に。あの年で既に自分の終着点を定めていた)
その終着点がどこなのかは九十九にもわからない。
だが、かつて星漿体という宿命を持っていた故に彼女は気づいた。目の前の少年の危うさに。
何よりも問題なのが、夕自身が自棄でも諦めの境地でもなく、それを自らの使命だと、強い決意の下に定めていたことだ。
周囲から望まれたからとかはなく、本当に本心からそれを受け入れていた。
自分もかつて定められた場所まで歩むことを強いられた人間。だからからか九十九は彼に手を差し伸べ、導こうとした。せめて少しでも夕に変化があることを願って······。
本人も九十九の申し出を受けて弟子入りを希望してきて、指南をしたところ彼はみるみる内に腕を上げていった。
体術は独学と経験不足のせいで当初は並み程度だったが、徹底的に普段から基礎を鍛えていたからか、九十九に師事して以降はかなりの速度でそのレベルを上げた。
術式に関しては言わずもがな。呪力制御はもちろん、本人なりに自分の術式に向き合って必要なものを取り入れていたから、時々アドバイスをすればすぐに自分のものにしていった。
あとやったことと言えば、簡単な結界や式神のやり方と、偏った呪術関連の知識の補完くらいだった。
夕自身は否定するが、紛れもなく彼は天才で、九十九が教えられることは一年ちょっとですべて教えてしまった。
それでも結局椎名夕の考えをその間に変えることはできなかった。
指南をしてから数ヶ月ほどで自分ではきっと彼を変えられないことに気づくと、やるせない気持ちになったが、ならばせめて彼の定めた終着が訪れても死なないくらい強くしてやろうと気持ちを新たにしたが、それでもやはり後悔は残った。
「死ぬなよ、夕」
「······何ですか、いきなり?」
修行の終わりの日にそんなことを言うと当の本人からは怪訝な顔をされたが、九十九は願う。どうかその日が来ても彼が生きることを。
「なに、流石にそれなりの時間をかけて鍛えた弟子が簡単に死ぬのは私とて勘弁願いたい、ということだよ」
「まあ、簡単に死ぬつもりはないですけど······。とりあえず姉の結婚式、いや、子どもくらいまでは見たいので」
などと宣うシスコンの頭をグリグリと撫でながら九十九は笑った。
そうして再び呪霊根絶の研究を再開すべく旅立った。
呪霊を根絶させて星漿体の同化先である天元の必要性を失くし、後に生まれる星漿体を宿命から解放するという決意。
九十九が呪霊根絶を目指した理由。
だがもう一つ────
────弟子が命をかけなくていい、そんな世にするために呪霊を根絶させる。
そんな決意が彼女の胸には加わった。
この小説の九十九さん、めっちゃいい人。