真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様   作:水の虎

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思いつき第一弾。
第二弾も即投下します。
第二弾はともかく、こっちは蛇足というか、わざわざ描く必要あったかと思ってる。
けど、これを描いたお陰でアイとの絡みのネタを思い付いたから結果オーライ。



番外編 椎名夕の中学校生活○

 

 

 

 僕、椎名夕は呪術師(これは隠してる)であり、主に舞台で活動する役者(隠してないけどあんまり周りに言ってはいない)であるが、その本分は一応学生、中学生だ。

 そんなわけで長期の休みでなければ基本的に生活の中心は学校に置かれる。

 

 

「頼む、椎名!」

「どうしたの突然?」

  

 

 朝登校したら開口一番で何やらクラスメイトの一人が頼み込んできた。

 何部かは忘れたけど、所属してる部活で一年ながらそこそこ活躍してるって奴だっけ? 良くも悪くも普通のクラスメイトとして今日まできたから、とくにこれといった何かはない。 

 あれこれ考えていると、下げていた頭を上げて訳を話し出す。

 

 

「────なるほど。要は目も当てられないテストの点数を何とか目が当てられるくらいにはしたいと」

「うぐっ! 事実だけど胸に刺さる······」

 

 

 どうやら期日の迫った定期テストが事の発端らしい。

 

 

「で、何で僕?」

「ほら、俺こんな顔だろ? だからあんまし話したことない奴は怖がることが多い。よく話す連中は自分の勉強に手一杯で俺に手を貸す余裕はあんまなくてな。椎名は俺のことを全然怖がってなさそうだし、勉強もできる」

 

 

 そう言うクラスメイトの男子改め真中君。

 ちなみに本人の言う通り彼の顔は怖い。加えて一年ながら部活で活躍するとあって恵まれた体格をしているから、余計にそれを助長させる。

 

 

「そうだね~」

 

 

 正直面倒だ。ただでさえ最近九十九さんの体術講座がキツくなっているのに、彼に時間を割くのは歓迎できない。

 結論、断ろう。

 

 

「悪いけど······いや────」

 

 

 そこで僕は一度口を噤んだ。

 

 

「······ねえ、真中。君って確かバスケ部だっけ?」

「え、あ······そうだが」

 

 

 断られると思ったところで突然関係なさそうなことを聞かれて彼は困惑する。

 

 

「そっか······。うん、いいよ。手を貸すよ」

「い、いいのか!?」

「うん。とりあえずそのことについて昼休みにでも話そうか。もう朝のホームルームだし」

「お、おう、わかった」

 

 

 返事をして席に戻っていく真中。

 それを横目に僕は大雑把な学習計画を考え始めた。

 

 

 ○●

 

 

「やあ、悪いね。時間貰っちゃって」

「いや、それはこっちのセリフになるんだが······」

 

 

 昼休みになり、僕と真中は話し合いの場を設けていた。だが────

 

 

「気になる? 話すにしても何でここなのかって」

「いや、まあ······」

「別にそこについては濁さなくていいよ。僕もそう思われるのはわかってここに呼んだから。────それより、しばらく静かに、できるだけ物音はたてないで」

「お、おう」

 

 

 展開についていけない真中だが、とりあえず言う通りにしてくれる。

 ちなみにここは体育館裏だ。

 何故こんなところにいるかって?

 

 

『お待たせしました』

『待ってたよ、椎名さん』

 

 

「お、おい、椎名?」

「······」

 

 

 真中は状況を察して声をかけてくるが無視する。

 

 

『それで私に何かご用でしょうか?』

『そうだね。椎名さん、君が好きだ、僕と付き合って欲しい』

『······申し訳ありません。貴方とはお付き合いできません』

 

 

「······っ」

 

 

 真中は気まずそうな顔をしているが、悪いが受け入れて貰う。

 幸い、告白した側は食い下がるようなことはなく、すぐに立ち去っていく。

 遅れて真昼も戻っていくのを見て、僕たちは建物の陰から出る。

 

 

「悪いね」

「いや、いいけどさ······」

「ふーん。やっぱ真中は姉さんに興味なさそうだね」

「······人気なのは頷けるけど、それだけだ」

「うん、百点満点」

 

 

 お陰でこっちも憂いなく頼み事をできる。

 

 

「真中、今回に限らず、この先のテストの面倒も見てあげるよ」

「は? いや、流石にそれは······」

「僕に悪いって思ってるなら気にしないでいいよ。何もただでやるわけではないから」

「······もしかしてお前の姉が関係するのか?」

「うん。今回は昼休みだったけど、姉さんはよく放課後とかにも告白されてるからね。真中にはその時にちょっと姉さんを気にかけてほしいんだよ」

「気にかける?」

「そ。告白を断られても中には食い下がるのもいるからね。場合によってはちょっと強引なのもいるだろうし。────そこで君だよ」

 

 

 この学校で一番の告白スポットはこの体育館裏だ。そして時間帯としてはやはり放課後が多い。

 

 

「バスケ部の君なら放課後は基本体育館にいるからね。だから、そういう時に気にかけてほしいんだよ」

「あー、つまり直接的に何かしようとする奴への対策のためってことか?」

「うん。真中は気にするだろうけど、大抵の奴は君が出ていけば及び腰になるだろうからね」

「複雑だ······」

「後は、真中は姉さんが好みじゃないのか知らないけど興味もなさそうだ。僕から頼まれたことを理由に姉さんに近づく奴もいるだろうから、そういう意味で君の存在はありがたい」

「······」

「どうした真中?」

 

 

 こっちの事情を説明していると、真中は意外そうな目を向けてきた。

 

 

「いや、何か意外というか何というか······。椎名って姉のことを大事にしてんだな。そんな素振り普段見せてなかったからちょっと驚いた」

「別にこれくらい普通じゃない?」

 

 

 そうは言うが、自覚はある。

 僕は学校ではそこまで真昼と関わらない。双子だからクラスが違うというのもあるが、真昼には真昼の人間関係があるし、異性の対応に関しても僕が介入すると真昼自身で捌く力がつかない可能性がある。

 そういう訳で昔から僕は学校での真昼の人間関係は基本傍観している。

 

 

「いや、俺も姉がいるがここまでしないぞ。······双子だからと言えばそれまでだが」

「まあ、余所は余所、うちはうちってところだね。────さて、話を戻そう。今言ったことをやってくれるなら、これから三年間、テストの度に面倒を見るけど、どうする?」

「······わかった。よろしく頼む」

「うん、任された」

 

 

 そうして昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。

 

 

「ありゃ? 予想以上に時間食ったか······。悪いね真中。勉強についての詳しい話しはまた後でになりそうだ」

「いや、大丈夫だ。結果的にこれから三年間のテスト勉強を見てくれることが確定したしな」

 

 

 僕たちは話しながら教室に戻る。

 

 

「────それにしてもテストの点が悪いと部活をやめさせるって結構珍しい親だね?」

「そうか? 聞いた話し、何年か前に卒業した先輩の親もそんな感じだったらしいぞ」

「へぇ······それはまたよくわからん」

「そりゃあ椎名は勉強できるからとくに親も何も言わないんじゃないか?」

「······確かに何も言われないね」

 

 

 人によっては羨ましく思われるのかもね。

 そんな普通の中学生らしい話が教室に着くまで続いた。

 

 

  ○ ●

 

 

「────椎名」

「自己採点で大体の点数はわかってるけどどうだった?」

「ああ、問題なかった」

「それは良かった」

「本当にサンキューな。お陰で部活を続けられる」

「うんうん、それは何より。部活ができないと僕の頼み事もしづらいしね」

 

 

 時は流れ、テストの返却日を迎えていた。

 結果は無事彼の部活の継続が決定した。

 

 

「良かったらこの後一緒に帰らないか?」

「部活はいいの?」

 

 

 既にテストは終了し、部活の活動は再開している。

 

 

「ああ、今日はうちの部活オフの日なんだ」

「へぇ~」

 

 

 教室を出ながらそんな他愛もない会話をする。 

 今回の件がきっかけで真中とはよく話すようになった。

 

 

「────そういえばさ、椎名って部活とか入らないのか?」

 

 

 不意に真中がそう言ってきた。

 

 

「うん。別にいいかな」

「ちょっと勿体ないな。椎名って運動もできるだろ? 体力テストとかぶっちぎりの記録出してたし」

「そんなこともあったね~」

 

 

 ぶっちゃけ兎と亀が競争しているような感覚だった。

 

 

「······」

「ん? どうした真中、急に黙って」

「いや、椎名ってやっぱスゲェなって」

「え、ホント急に何?」

「椎名は運動もできるのに、同じくらい勉強も頑張ってるからさ。俺は運動はともかく勉強はできないからさ」

「別に大したことないよ」

「いや、大したことだ。勉強の方はあんまりわからんが、俺だって運動、とくにバスケには自信がある。だからわかるよ。お前は勉強だけじゃなくて、それと同じくらい運動も頑張ってきたんだってさ。きっと見えないとこで努力してんだなってさ」

「······」

 

 

 真中は僕のことを意外と見ていた。

 基本的に人は表面上のものを見て、その人の努力を見てこない。実際中学に入学して、色々と高い水準で物事を進めても「出来が違う」、「流石天才」の一言が時折耳に入った。

 まあ、僕の場合前世ボーナスがあるから否定できない面はあるんだけど、真昼はきっと少なからずそれがしこりになったと思う。

 

 

 

「────だからさ、お前を見て俺も頑張らなくちゃいけないって思った」

 

 

 そんな真中の言葉に────

 

 

「そっか······」

 

 

 僕はそれだけを返した。

 

 

  ○ ●

 

 

 それから二年ほどの時が流れた。

 

 

 あれ以来真中とは良き友人となった。

 彼との付き合いを通して話すようになった友人たちと一緒に遊びに行くこともあり、二度目の中学校生活も存外楽しめるものだった。

 

 

「────よっ、椎名。卒業おめでとさん」

「お互いにね」

 

 

 そうして今日、僕は卒業の日を迎えていた。

 

 

「······それにしても椎名の進路を聞いた時は驚いたな」

 

 

 僕は当初、真昼と同じ高校に進学するつもりだったが、結局呪術高専に通うことになってしまった。表向きは宗教系の学校だから、真中がそういうのも無理はない。

 

 

「逆に真中は順当だね。スポーツ推薦での推薦入学でしょ?」

「ああ、推薦条件に一定の学力があったが、お前が勉強の面倒を見てくれたから問題なかった。ありがとな」

「別に元々そういう条件で引き受けたから気にしないでいいよ。それどころか半分くらいは面倒見れなかったし」

「代わりに俺のレベルに合わせた解説ノートを作ってくれただろ? それだけで十分助かったよ。まして高校三年間分のノートまで貰ったのに誰が文句言うか」

「そっか。まあ頑張ってね、高校バスケ界の期待の星さん?」

「からかうなよ。そういう椎名だって期待の舞台俳優だって姉貴が言ってたぞ」

 

 

 真中にはこの三年の間に僕が役者をやっていることを話していた。というより、以前お邪魔した彼の家で鉢合わせ彼の姉が舞台を見るのが趣味でバレた。

 

 

「────結構色々あったな」

 

 

 改めて中学生活を振り返りながらぼやく。

 正直呪術漬けの日々になるかと思ったら、ララライの方の活動も意外とすることになって、普通の学生らしい日々も送った。

 

 

「そうだな。俺も楽しかったよ」

「うん、そうだね······」

 

 

 でも、ここからはそうはいかない。

 結果的に入ることになってしまったが、それでも入る以上は高専で学べることは全部貪る。

 踏み入れてしまったのなら、どうせ胸糞悪いものが待っている。

 それら全部を糧にして僕は────

 

 

「······さて、そろそろ帰ろっか。真中は打ち上げとか行くの?」

「いや、俺は入学前から練習に合流するから、この後新幹線に乗る」

「それはまた。仲いい奴らとのお別れはいいの?」

「この前済ませた。だから今日はお前と話してるんだよ。その時お前は学校休んでたし。何か撮影とかでもあったのか?」

「当たらずとも遠からず、かな」

 

 

 三年間通った通学路をなぞり、少しずつ分かれ道が近づいてくる。まるでこれから先に身を置く、非日常の日々の境界が迫ってくるようだった。

 

 

「────ここだね」

「ああ······」

「お互い死なない程度に頑張ろうか」

「例えが物騒だな。まあ、怪我には気をつけるよ」

「うん。じゃあね、真中」

「ああ······またな、椎名」

「うん、また」

 

 

 そうして僕たちは別れた。

  

 

「────悪いね。多分それはできない」

 

 

 振り向くことなく進む真中の背中に、振り向いた僕はそう言った。

 

 

 ────結局最後は嘘ついちゃったか。

 

 

 届くことのない言葉を胸に、僕も歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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