真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様   作:水の虎

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時系列は第二章終盤、第二十二話と二十三話の間の話です。
名前だけですが以前の番外編で出したオリキャラが出ます。



番外編 付き合ったお隣さんたち●

 

 

 

「なあ、真昼」

「どうしましたか周くん?」

 

 

 付き合ってから半年ほど経ち、今年も残すところ数日という今日この頃、藤宮周は恋人の椎名真昼と一緒に家で寛いでいた。

 

 

「今ふと思ったんだが······」

「はい」

 

 

 おもむろに口を開いたのに対して律儀に顔を上げ真昼は首肯するが、次の周の言葉で一瞬身体の動きが止まる。

 

 

「────あいつっていつから俺らのことに気づいてたと思う?」

「·········確かに」

 

 

 硬直が解け、そう呟く真昼。

 

 

「少なくともゴールデンウィーク辺りで絶対に把握してたよな?」

「でなければゴールデンウィーク明けの勉強会の時の電話はありえませんからね······」

 

 

 二人は思い出す。付き合うきっかけとなった体育祭の1ヶ月前、クラスでの勉強会に爆弾(色々な意味)を放り込んでいったのを。

 ふと思えばあれがきっかけでより学校で話す機会が増えたし、後日送られてきた公演のチケットはデートの口実にもなった。

 

 

「ですが公演の後は色々と大変でしたね······」

「·········だな」

 

 

 とにかくからかわれまくったことを思い出して遠い目をする二人。

 

 

「────っと、脱線したな。でも今色々と振り替えると、あいつにさりげなく誘導されている節があるんだよなー······」

「周くんもですか······」

「真昼も?」

「はい······」

 

 

 それを聞いて周と真昼はお互いの心当たりを出していく。

 

 

「去年の真昼の誕生日プレゼント、やたらあいつぬいぐるみを推してた······まあ千歳のアドバイスもあったけど」

 

 

「近況報告の電話で料理の話をしたんですが、ある時から卵料理の話題がよく上がるようになりました······」

 

 

「「·········」」

 

 

 二人は顔を見合わせ────

 

 

「真昼が俺の家に来るようになってから用意するようになったお茶請けだけど······」

 

 

「私の好みでしたね······もしかしてそれも?」

 

 

「ああ、夕のオススメだ······」

 

 

 贈り物に料理や甘味の好み、どれもお互いにとって好みのもので、まるで誰に対して用意するかを知っていたかのようだ。

 

 

「······周くんを好きになってからはその·········より一層ファッションに気を遣っていたのですが······」

 

 

「お、おう······」

 

 

 さらりと付き合う前の恋人のいじらしいところを聞いて、胸をドキリとさせる周だが────

 

 

「そのファッションは、夕が送ってきた雑誌のものを参考にしました」

 

 

「·········」

 

 

「あ、周くん······?」

 

 

「待って······ちょっとあいつが怖いんだけど······」

 

 

 言われてみれば確かに、自分の好みに近づいたコーディネートを真昼がするようになっていったと周は振り返りながら思う。

 

 

「一応言っておきますけど、周くんと夕の付き合いを私が知ったのはクラスでの勉強会の時ですよ? それまで特に周くんのことは夕に話してません」

 

 

「それは信じてるよ。俺も特に夕との話の時に真昼の名前を出してないし······ああでも、恋してることはすぐにバレたけど······」

 

 

「そうなのですか?」

 

 

「ああ······」

 

 

 真昼への好意を明確に自覚してから初めての夕との電話口で「藤宮ちゃん·········恋したね?」と言われたときの驚きは未だに忘れられない。いや、本当に何故バレた? と周は思う。

 

 

「ちなみにそのことで夕に相談したりしたんですか?」

 

 

「······したよ。まあからかわれまくったけど、最後にはアドバイスくれたしな。今思えば、恋した相手が真昼って知ってたからあんな的確なアドバイスになったんだろうな」

 

 

「なるほど······。そういう意味では私も同じですね。というかお互いが同じ相手に相談してたから······」

 

 

「だろうな」

 

 

 何てマッチポンプだと両者とも思う。しかしこの場合、夕が巧妙だったのか、それともこの二人が盲目染みた恋をしてたからなのかが気になるところだ。

 

 

「────ですが少し思うところがあります」

 

 

「? 何がだ?」

 

 

「何だが私より夕の方が周くんのことを知っていたようで少し不満です」

 

 

「いや、それを言うなら俺だってそうだろ。家族として接したきた分、俺の知らない真昼を夕は知ってる訳だし」

 

 

「「······ぷっ!」」

 

 

 そんな言い合いをしたかと思えば、二人とも顔を見合わせて笑い合う。何だが同じ相手に嫉妬しているのが馬鹿らしくなったのだろう。それに────

 

 

「夕の知らない真昼をこれから見つけていけばいい」

 

 

「ええ、時間をかけてお互いのことを知っていくのは楽しそうですね」

 

 

「「────そしてまた好きになる」」

 

 

「······顔が赤いですよ周くん」

 

 

「真昼だって同じだぞ······」

 

 

「ならこうします────」

 

 

 そう言って腕に頭突きでもするようにして、真昼は顔を押しつけてくる。

 周もそれを受け入れ、もう片方の腕を彼女の背中に回す。

 そうすると頭の位置をずらし、真昼はポスンと周の胸に身体を預ける。

 そんな腕の中の彼女を、周は抱きしめ直す。

 

 

「顔を隠すのはずるくないですかお嬢さん?」

 

 

「·········本当はただこうしたかっただけと言ったら?」

 

 

「俺としてはそんな理由がなくても、いつでもウェルカムなんだけどなぁ······」

 

 

「バカ·········」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「······そういえば、夕からの連絡は来ましたか、周くん?」

 

 

「無事に付き合えたって報告のことか? なら来たぞ」

 

 

「無事にうまくいって何よりです。今度来た時にはお祝いしましょう」

 

 

「そうだな。ついでに、俺たちをからかってくれた分のお返しもしないとな」

 

 

「ですね」

 

 

 ちなみにその夕と、彼の隣にいる彼女は────

 

 

  ○ ●

 

 

「♪~~」

「アイ、くっつくのは構わないけどその体制逆にきつくない?」

「全然♪」

「······ならいいけど」

 

 

 場所は夕の部屋。

 現在アイはソファーの背もたれ越しに夕の背中に抱きついていた。

 

 

「それより夕、何か飲み物とか用意したみたいだけどテレビでも観るの?」

「うん。知り合いが出るからね」

「何かのドラマ?」

「いやバスケの試合」

「バスケ?」

「そ、高校バスケ。今日はその決勝だね」

 

 

 テレビからはこれまでの試合がダイジェストで流されており、これから始まる決勝の期待を高めている。

 

 

「夕の知り合いはどの人?」

「ん? 興味ある?」

「少し」

 

 

 この手のスポーツの試合はほとんど観ないアイだが、せっかくだからと夕の隣に腰を下ろしながら尋ねる。ちなみにナチュラルに身体をしっかりと寄せている。

 

 

「そっか······あっ、丁度先発の選手が紹介されるね」

 

 

 すると夕の言う通り各チームの選手をアナウンスで名前を呼ばれてコートへと入っていく。

 

 

「────あいつだよ」

「この真中って人?」

「そう」

 

 そして何度目かのアナウンスと共に夕の中学時代の友人が姿を現した。それを指差しアイに教えると、アイもその名前を口にして聞き返してきた。

 

 

「この人は中学が同じとか?」

「うん、その時の同級生で、同性で一番過ごす時間が長かったね」

「へ~············ちなみに異性の人だとどれくらい付き合いがあったの?」

「気になる?」

「気になるよ。彼氏のことだもん······」

 

 

 からかうように聞いてくる夕にアイは少し拗ねたようにそう答える。

 

 

「あはは、ごめんごめん。大丈夫、基本的に女子とはほとんど付き合いはなかったよ」

「·········ちょっとはあったの?」

「ていってもほぼほぼ事務的な会話だけだよ。後はイベント事で少しだけ。それ以外は野郎で連んでたよ」

「そっか······」

「もしかして嫉妬した?」

「·········」

 

 

 口を噤む彼女。ただでさえ年が二つ異なって学校も別な上に、夕が進学したのは高専であるため、二人とも学生らしい関わりができていない。だからどんな形でも夕と一緒に学校生活を送った者が羨ましいのだろう。

 けれど夕としてそんな姿がいじらしくてとにかく可愛かった。思わず肩に手を回し、自分の方に引き寄せるくらいには。

 そのまましばらく触れ合いを楽しんでいる内に試合は始まった。

 

 

「·········」

 

 

 点を獲って獲り返す。攻守の入れ替わりの激しいバスケットは基本展開が速い。

 そのため気づけば夕は試合の内容に引き込まれていた。

 

 

「────」

 

 

 本人としてはいつも通りにしているつもりなのだろうが、見事に夕のテンションは上がっていた。表情にはほとんど出てないが、彼を知るアイからすれば普通にそれがわかった。何より肩に置かれた手が興奮からかいつもより力が入っているのがその証拠だ。

 もちろんアイが痛がるほどの力ではなく、彼女からすれば何かに夢中になる子どもみたいな夕にむしろ微笑ましさを覚えた。

 大事な友だちなんだろうな、と彼の心情を察しつつ、アイも試合を見守る。

 とはいえあまりルールに詳しくないしバスケ自体にも興味がないため、途中から試合そっちのけで夕の顔を見ていたのはご愛嬌と言えるだろう。試合が動く度に表情を変化させ、一喜一憂する夕の様子はアイにとって新鮮だった。

 

 

 ビーーー!!!

 

 

 テレビ越しに鳴り響くブザー音。第一クォーターが終わる。

 

 

「上々だね────ん? アイ、どうしたの僕の顔を見て?」

「ううん何でもないよ。ただ凄い夢中になってたなって」

「何か途中から視線を感じるとは思ってたけど、さては試合じゃなくて僕を見てたね? 別に退屈なら無理に付き合う必要はないんだよ?」

「大丈夫。試合を観る夕を見るのが楽しいから」

 

 

 そんなアイの言葉に苦笑しながら夕は飲み物を口にして渇いた喉を潤す。

 結局その言葉通り、彼女は第二クォーターもずっと夕の顔を眺め続けた。

 

 

「飽きないの? 僕ばっかり見て」

「全然」

 

 

 アイからすれば恋人の顔を眺めることは苦でも何でもない。そしてそれを言えば自分も同じだと夕も返してくれるだろう。それを想像してアイは少しニヤケた。

 それに夕は首を傾げつつ、彼女の髪を梳くように撫でていく。気持ち良さそうに目を細めながら身体を預けてくるアイ。そしてそれを受け入れる夕。

 付き合って二ヶ月でありながら、すっかりバカップルが板についていた。

 

 

「────ん~、でもあれだね。やっぱりみんな背が高い」

 

 

 たまたまテレビに表示された出場選手情報の身長を目にして、そんなことを呟く。

 かと思えば預けていた身体を少し起こし、夕を見上げたアイは彼にこんなことを尋ねる。

 

 

「そういえば夕は身長いくつ?」

「今年の四月に測った時はまだギリギリ百八十はいってなかったね。今ならもしかしたら越えてるかも?」

「む、そんなにあるの?」

「そうだけど······何か問題とかあった?」

 

 

 はて何かまずいことがあったかと頭をひねる夕だが答えは出ない。

 

 

「だって立ってキスする時大変なんだもん」

 

 

 しかしそれを聞いて夕は納得した。確かに二人の身長差は三十センチ近くあり、アイの方は立ちながらキスする場合は背伸びをする必要がある。

 

 

「とはいえ身体の成長は僕も預かり知らぬものだしねー······」

 

 

 もちろんある程度なら食事や睡眠などよって多少の影響があるだろうが、既に成長期はほぼほぼ過ぎ去っている以上、今からそれをやっても遅いだろう。

 

 

「夕」

「何だい?」

「────キスする時ちょっと意地悪してるよね? あんまり屈んだりしてくれないし。多分わざとでしょ?」

「あー············バレた?」

 

 

 その指摘を夕は認めた。だが待って欲しいとも夕は思う。一応彼には彼なりの事情があるのだ。

 

 

「────ぶっちゃけアイが必死に背伸びしながらキスするのが可愛い。何というかその必死さが愛くるしいというか······うん、そんな感じ」

 

 

 もっとも思いっきり自分の欲望丸出しというか、とにかく割とあれな理由だった。

 夕個人としては頑張って爪先立ちしてキスしてくるその健気な感じがツボにはまるようだ。

 そのため、アイの言う通りそこそこの頻度でキスする際、身体を屈めるのを控えめにしていた。

 

 

「ッ~~!」

 

 

 そんな言い分にアイは当然のようにムッとした顔をし、またその顔を赤らめながらポカポカと叩いてくる。

 それを甘んじて受け入れ、されるがままに夕はしていた。

 

 

「アイ────」

 

 

 けれどしばらくしてアイの名前を呼ぶと、それに反応して手を緩めた彼女の隙を縫うように口付けする。

 

 

「んっ······んん······ぷはっ!」

 

 

 唇を離すとアイは突然のキスによって呼吸が荒くなっていた。それでも────

 

 

「······もう一回」

 

 

 彼女は再びそれを求める。

 それに夕は応じて唇を重ねる。今はソファーに腰かけており、また最初のキスで夕の膝の上に移動させられたこともあって目線の高さは一緒だ。

 薄く目を開け視線を交わし合いながらお互いの唇を啄む二人。

 そうして蕩けるような口付けをしていると次第に夕は自分の理性が限界に向かいつつあるのを感じた。

 

 

「······終わりだよ。もうすぐ試合が再開するしね」

 

 

 キスを止め、誤魔化すようにアイにそう告げる。テレビに目をやると選手たちがコートに戻り、後半が始まろうとしていた。

 

 

「────」

 

 

 だがそうやってテレビに意識を向けたのは失敗だった。今度はその隙にアイが夕をソファーに押し倒した。

 

 

「っ······アイさん·········ちょっとどいてはくれませんか?」

「駄目」

 

 

 ソファーに転がり、押し倒された状態の夕の顔の横に手をついたアイは、吐息を感じる距離まで顔を近づける。

 

 

「あれだけじゃ全然足りないよ夕······んっ」

 

 

 そう言って三度目のキスをする。

 テレビからは始まった試合の音が聞こえてくる。しかし今の二人にとってそれは遠い世界の話だ。

 感じるのはお互いの存在だけ。

 そのまま二人は試合が終わるまで口付けを交わし続けた。

 夕も途中からはすっかりアイに溺れていたことをここに記しておく。

 

 

 





椎名真昼・藤宮周
付き合う前から色々としていたであろう夕に戦慄していた。でもその後にイチャつきだすのはある意味お約束。
どんなにありふれたで出来事でもそれをイチャイチャする燃料にしている感がこのカップルにはある。
原作にもある、周の腕に頭突きする真昼さんはマジ可愛いと作者は思う。

 
椎名夕・星野アイ
あの後も滅茶苦茶キスしてた(ここで初めてディープな方もした模様)
ちなみにどうでもいいかもしれないがちゃんと真中君の高校は優勝した。試合内容は録画で見直したとか。
友人の応援をダシにイチャつくとんでもねぇカップル。
元々距離感バグってたとはいえ、やり過ぎたと思わなくもない作者であった。



それにしても、主に口(言葉)で愛を伝える付き合って半年の真昼と周に対し、口(キス)で愛を伝える付き合って二ヶ月の夕とアイ。

対比を意識して描いたけど、改めて文字にしてみるとヤベー······
あれで付き合って二ヶ月とかマジ? 
 
付き合ってからもアイのアクセルはフルスロットル。肉食系アイドル様だった。
かろうじて夕の理性は助かったが、ここからは八ヶ月に渡り彼の理性は滅茶刺しにされる。むしろよくそんなに保ったものだと思う。



第四章は鋭意執筆中です。
次は会話集⑥を出すつもりなのでご了承ください。
それではまた。
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