真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様 作:水の虎
九十九由基。
数少ない特級呪術師の一人だが、任務をロクに受けずにフラフラしていることで有名だ。
呪霊をこの世から無くす研究をしている人で、
さて、そんな九十九由基に彼女流の挨拶(?)を受けてる訳だが······。
「······」
「どうした少年、もしかして聞こえなかったのか? ならもう一度言おう。────どんな女が「聞こえてたので大丈夫です」······そうか。であるならば是非答えてくれ」
僕が黙ったままだから、同じセリフを繰り返そうとするが、とりあえずそれは止めておく。
······それにしても好みか。別に答えてもいいが───
「······とりあえず、場所変えません? 好み云々は問題ないですけど、呪術のことをここで話したくはないんで」
「ほう······」
感心したような声を出す九十九由基を先導するように僕は歩き出す。
「どうして私が呪術師だとわかったんだい?」
「······話聞いてました? それをここで話したくないから今移動してるんですよ」
「なあに、ちゃんと周囲に人がいないのは確認してしゃべっているよ」
横に並んで歩く彼女にジト目を向けるも、アッサリと流される。
「······はあ。別に大したことはないですよ。そんなだけ洗練された呪力の流れを見ればわかりますよ。正直貴女を見ていると自信を失くします」
「なるほど、いい目をしているが······ふむ。少年、君はどこで呪術を、呪いのことを知った? 見たところ鍛えてはいるようだが、独学だろ?」
「······そこまでわかるんですか?」
「ああ、荒削りながらも中々いい才能を持っている。しかし、どうにもチグハグな印象も受ける。まるで呪いの一部の知識だけを頼りに鍛えたような、そんな感じだ」
鋭い、そう思った。
先に言っておくが呪いのことを知っている風に話したのはわざとだ。多少怪しまれることは覚悟しても、僕はここで彼女との繋がりを持ちたいと思ったのだが、正直予想以上に九十九由基が鋭くて困っている。
「······昔────それこそ呪力を知覚した直後くらいに、たまたま術師と会ったんですよ。その人は最低限の呪いに対する知識を教えたら、それっきり姿を見せてません。また来るとは言ってましたけど、結局以降姿を見せなかったので死んだんじゃないですかね?」
適当にでっち上げたカバーストーリーを話す。さて、彼女はどう反応する?
「随分とドライだね」
「はぁ······そう言われましても、その時はその術師の言ったこと信じてませんでしたし、目の前で死んだのならともかく、自分の知らないところで死んだのならこんなもんじゃないですか? 例えば迷ってる自分に目的地への道を教えてくれた人が、後日死んだと聞いてもそこまで心動かされないでしょ?」
見た範囲ではそこまで怪しんでいる訳ではなさそうか? どちらかと言えばあるのは興味? 何かが彼女の琴線に触れたのか?
どちらにしてもここで押せ。演じろ、九十九由基の興味を引く人間を────
「別に責めている訳ではないよ。それにその考え方はある意味呪術師向きとも言える······ここかい?」
話していると目的地の公園に着いた。アイと出会った公園だ。基本的に外周には木が植えてられているから、人目につきにくい。
「さて、話を戻そう────」
適当に腰かけた九十九由基は再び口を開く。
「どんな女が
「ああ、そこまで戻るんすね······」
思わず毒気を抜かれた。
最初に言った通り、別に話してもいいと思ったが、さっきまでの流れでそこに戻るのかよ。
そんな僕の心の内を見抜いたのか、九十九由基はニヤリと笑う。
「なに、性癖には人柄が出るからね。言ってしまえば品定めだよ。色々と聞く前に君のことを知っておきたい」
そこまで拘るか、と思わず彼女の筋金入りさにやや面食らう。
「······ちなみに、揺るがない人間性があれば十分、って言ったらどうします?」
なんとなくこのまま主導権を握られるのが嫌だったので、軽いジャブとして原作の伏黒同様のセリフをぶつけてみる。
「ふむ······。まあ、それならそれで構わない」
僕は驚いた。
(マジか······)
────殴りかかってこない!
······いやまあ、そこまでいかなくても「つまらん」って吐き捨てられるくらいは覚悟してたんだけどなぁ。というか普通に伏黒の答えいいよね! 僕は滅茶苦茶好きだよ。
さて、とりあえずちゃんと答えるか。好み、好みか······。
「────とりあえず、僕より先に死なない人ですね」
「······なるほど」
九十九さんは僕の言葉を吟味するように何度か頷く。
「────君は危ういな」
「······どういう意味ですか?」
「あくまで予想だが、君には大切だと思える人がいるんじゃないのか? 当初は呪いを信じていなかったと言っていたのに君は呪術を学んでいる。手を伸ばしたのは興味本位かい? それとも必要にでも駆られたかい? だが、聡い君ならどこかで気づくはずだ。呪術師を目指すことはその大切な人を巻き込みかねないことを。にもかかわらず君はこのまま呪術師としての道を進もうとしているように見える。時がきたら君はその人と距離を置くのかな? しかし、そこまでして呪術師となる理由が見えてこない。一体何が君をそうさせる?」
────何故、か。
「罪滅ぼし······まあつまるところ罪悪感ですね。それがすべてではないですが、少なからずそれが僕の根幹にありますね。······でも一番の理由は────」
そう、結局のところそこに帰結するに。
例えどれだけそれが独善的なものだったとしても、たどり着くと決めた。
「描きたい未来があるから」