真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様   作:水の虎

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今回はかなり難産で話もあまり進みませんでした。
あと、予告通りかなり時間が本編中で飛んでます。
そして説明みたいな話な上にほとんど呪術路線です。
すみません、番外編か何かで飛ばした部分の時間の話は描くので許してください。『縛り』使ってもいいんで······。
そんなわけで本編をどうぞ!


第十三話○

 

「────はい、もしもし」

『あ! 夕、今大丈夫?』

 

 

「ええ、今さっきスケジュールを全部消化しました。しばらくはオフなんで明日の朝にそっちに戻ります。昼は作ろうと思ってますけど、なんなら先輩も食べます?」

 

 

『えっ、いいの? 嬉しいけど、それじゃ休めないでしょ?』

 

 

「いえ、むしろ作りたいんですよ。確かに千秋楽を迎えたと思ったら、即拉致られて居酒屋直行からの中年おじさんたちからのありがたーいお話を聞かされてで、主に精神的に疲れてますけど! だからこそ好きなもん食べたいんですよ。ここ最近はカツカツスケジュールでロクなもの食べてないし、居酒屋で出てくるものは酒に合わせた食べ物ばっかりで、とても満足できるもんじゃありませんでしたからね」

 

 

『ならいいけど······というか滅茶苦茶饒舌ね。お疲れ様』

 

 

 電話越しにもこっちの苦労が伝わったのか、そう労いの言葉がかけられる。

 

 

「ええ、料理はとにかく色んなものを作って摘まみたいんで、むしろ人を呼んでください。────そうそう聞きましたよ? 今年の新入生はなかなか癖が強いそうじゃないですか」

 

 

 愉快そうに僕が語りかけると、今度は逆に電話越しから苦労、というよりは怒気かな? を帯びた声が聞こえてくる。

 

 

『癖が強いなんてもんじゃないわよ!!! ホンッッッット! あいつら生意気なんだから!! あ! でも硝子っていってね? すごいいい子がいるの! 反転術式の治癒を他人にも使えるすごい子でね? 本当にいい子なの! それでねそれでね────』

 

 

「────滅茶苦茶ループしてますよ~歌姫先輩? 言いたいことはわかりましたから落ち着いてくださーい」

 

 

『あ、ご、ごめん、つい······と、とにかく! 他二人はともかくその子はいい子だから、夕も仲良くしてあげてね?』

 

 

「ええ、僕にとって初めての後輩ですからね。その子はもちろん、他二人とも仲良くしますよ」

 

 

 そう言うと、『えー·······』と歌姫先輩の声が聞こえてくる。

 

 

『────夕の対人スキルは高いけど、あの二人は流石に難しいんじゃないかしら······』

 

 

 どこか渋ったようなその返事に僕は「嫌われてんな~」と苦笑する。

 

 

「僕は役者······まあ、役者に関わらず芸能界に身を置くなら、うまく関係が築けるように立ち回っていくことぐらいできないと生き残れませんからね。その二人ともうまくやってみますよ」

 

 

 ならいいけどさ、と一応納得した声を聞き、最後にいくらかやりとりすると通話を終える。

 

 

「────まっ、実際のところどうなるかは僕もわからないけどねー······」

 

 

 それでも僕は笑う。

 大胆不敵に、だけど胡散臭く。

 

 

 ────東京都立呪術高等専門学校、第二学年、三級呪術師、椎名夕。

 

 

 ────劇団ララライ看板役者、椎名夕。

 

 

 それが今の僕の肩書きだった。

 

 

  ○ ●

 

 

 今ここにはすべてがある。

 

 

 揚げ物のはねる音が、フライパンをかき回し転がる食材の感触が、よく煮込まれ匂い立つ鍋からの薫りが、ところ狭しと並べられた皿の上を彩る色彩が、それを見て連想される料理の味、すべてがそこにある。

 

 

「────よし」

 

 

 火を止め、仕上げを行って手も止める。

 最後に出来上がりを改めてチェック。

 

 

 ────できた。

 

 

  ○ ●

 

 

 というわけで完成した料理を僕は運ぶ。

 

 

『────!?』

 

 

『────』

 

 

「?」

 

 

 何か厨房の外から声が聞こえてくる。

 

 

「────五条! 何度も言ってるけど敬語を使いなさい!」

 

 

「はっ! 何で弱っちぃ歌姫に敬語なんて使わないといけねぇんだよ?」

 

 

「悟、例え本当のことでも口にしちゃいけないこともあるよ」

 

 

「~~っ! 夏油! あんたはあんたで舐めんとんのかッ!」

 

 

「歌姫先輩、もー、いいじゃないですか。そこのクズ二人は小学生でもできることができない可哀想な奴らって考えればいいんですよ」

 

 

「おい硝子、それはどういう意味だ?」

 

 

「流石に私も小学生以下扱いは抗議したいところだね」

 

 

 

 ワイワイガヤガヤ

 

 

 

 

「······平和だなぁ」

 

 

 実際に見るのは初めてだが、前世がある僕からすれば、その光景は平和そのものだ。

 

 

「とはいえ、このままだと料理冷めちゃうしなぁ······」

 

 

 そんなことすればせっかくの美味しさが半減してしまう。

 それは僕としては許容できない。

 料理、無駄にする、ダメ絶対。

 

 

「··········今は放置でいっか」

 

 

 とりあえず料理運んじゃお、と未だに言い争う彼等から離れたテーブルにせっせと運んでいく。

 その間、一切気づかれることなく(・・・・・・・・・・・)

 

 

(おー、まだ続いてる)

 

 

 かなりの量を作ったから、厨房を何往復かしてるのにまだ言い争いは終わってなかった。

 ·········仕方ない────

 

 

「『全員食堂で何を騒いでいる』」

 

 

「げっ、夜蛾────はっ?」

 

 

 全員がドスの効いた声を聞いてビクッとなった。

 まあ、正確には僕が夜蛾さんの声を模倣したんだけどね。

 というか五条、君入学してそんなに経ってないのにその反応って······。

 

 

「食堂は食事をするとこ。────そんなわけで皆でご飯にしようか」

 

 

 連想した声の主と実際は違ったことに全員が困惑する中、僕は笑顔を浮かべてそう言った。

 

 

  ○ ●

 

 

「さてと、順番はゴッチャゴッチャになっちゃったけど、まずは自己紹介だね。二年の椎名夕、階級は三級。改めて一年生三人は入学おめでとう。弱っちぃ先輩だけど何かあったら相談してね」

 

 

 料理も遠慮しないで食べていいからね~、と言って手を伸ばしやすいように僕の方も適当に料理を取り皿に乗せていく。

 

 

「ほら硝子、夕もそう言ってるし、遠慮しなくていいからね。すごい美味しいのよ、夕の料理は」

「ありがとうございます、歌姫先輩」

 

 

 ご機嫌そうな歌姫先輩と、彼女に料理をとってもらってるヒーラー女子こと家入硝子の二人は楽しそうにしている。

 

 

「あれ? 二人とも手が止まってるよ······もしかして苦手なものでもあった?」

「······」

「······」

 

 

 沈黙している最強コンビに声をかけるが、何故か二人とも無言だ。はて、何かしただろうか?

 

 

「······こんだけの料理をどうやって運んだんだよ?」

 

 

 すると、五条がようやく口を開いてきた。

 

 

「どうやってって······普通に?」

「いや、どう考えてもこんだけの料理が運ばれてたら、多少離れていても気づくわ!」

「それなのに私たちは声をかけられるまでまるっきり気づきませんでした······何をしたんですか椎名先輩?」

 

 

 あれま、そこに気づくか~·········でも今ので確信した。

 

 

「五条君ならわかるんじゃない? 噂の『六眼』なら僕の術式が何かわかるでしょ?」

「······確かにわかる······でもだからこそだ。────どうやって俺の眼を誤魔化した?」

「うーん、滅茶苦茶警戒されてるな~······まあ、あれだよ、知覚と認知は異なるってこと」

「どういうことだ?」

 

 

 首を傾げる五条に僕は「そうだね~」と口にしながら、例え話を考えて────

 

 

「突然だけど最近コンビニとかって行った?」

「は? なに急に······」

「真面目に答えてくれませんか?」

 

 

 流石に突拍子過ぎたか······

 というか二人とも沸点低いな······爆弾処理してるみたいだ。

 

 

「ごめんごめん、ちょっと端折り過ぎたね。その方が説明しやすいからさ、こっちを助けるって思って答えてよ」

 

 

 お願い! と軽く手を合わせると、まあそれなら、と二人はなった。

 

 

「それで? コンビニには丁度昨日行ったけど、それが何なの?」

「そうなると当然レジにも寄ったよね? レジ横にある商品の種類とか、その数とかって覚えてる?」

「は? んなもん覚えてる訳ないだろ······」

「でも、レジ横に商品があることはちゃんと覚えてるでしょ? それが僕が言った知覚だよ。そしてそれを何かまで答えられるかが認知との境界線。────僕がやったことはこれに基づいた幻術の応用だよ」

 

 

 要は人間の情報の取捨選択、優先順位の問題だ。

 

 

「────聞いた感じ『六眼』ってのは高性能なサーモグラフィみたいなもんでしょ? でもそれによって得られた情報を処理するのはあくまで持ち主であり使い手の君だ」

「······つまり俺が無意識であんたの術式による幻術を不必要な情報って判断した······いや、させられたってことか?」

「幻術ってほど大袈裟な使い方はしてないよ。むしろそこまで行くと逆に気づかれるからね。まっ、弱いなりに頑張った結果だよ」

 

 

 はい、説明終わり! と言って僕は集中して料理にありつこうとするが────

 

 

「私からもいいですか?」

 

 

 と、今度は夏油の方がそう言ってきた。

 

 

「いいよ~、でも食べながらねー」

 

 

 警戒もなくなり始め、疑問の答えがわかった五条も、表面的は人当たりの良い夏油も僕が差し出した皿を受けとる。

 

 

「「────!?」」

「どっ? 口にあった?」

「······ええ······これは、美味しいですね······」

「ああ······ウメェ······」

 

 

 思わず感嘆の声をもらす二人はさらに一口、二口と手を動かし、しまいには先程まで手をつけなかったのが嘘だったかのようにハイペースで食べていく。

 それを見ながら僕は僕で料理を口にしていく。

 

 

「────それで夏油君の聞きたいことって何かな?」

 

 

 むぐっ、と二人は料理を口にしながら顔を見合わせる。

 

 

「······先輩が三級呪術師って本当ですか? 立ち振舞いを見る限り、結構やりそうに感じるのですが」

「あ、それ俺も思った。ぶっちゃけ歌姫なんかより全然強そう」

「······五条君、いちいち歌姫先輩をからかわないと死ぬの? せめて食事の席でくらいはやめてね? また騒がしくなって気持ちよく食べられないでしょ─────僕が」

 

 

 ちなみに今の会話は術式を使って女性陣には聞こえないようにした。

 尚、二人は「あんたも大概じゃね?」とか「先輩も割とアレなこと言ってますよ?」とか言ってるが知らない。

 まあ、そんなことより(閑話休題)────

 

 

一応(・・)、三級なのは本当だよ。僕の術式は対人特化だから火力がないし、呪霊は幻術が効きづらい場合があるからね。────まあ、それでも二級として普通にやっていけるくらいの実力はあるけどねー」

 

 

 基本的に術式を含めた呪術師としての実力は嘘ついて過少申告してるが、あえて含みを持たせた言い方をする。それをした上でこっちの望む答えに誘導するために······。

 

  

「────じゃあ、何で未だに三級なのかというと、これにはある事情がありま~す」

「その事情とは?」

「聞いて驚け~、僕は何と、舞台俳優として芸能界にも身を置いているのだー」

 

 

 ちなみに高専どころか上層部公認だよ~、と付け足すと二人は「はっ?」って顔になった。

 

 

「······何でそんなことを?」

「んーとね······純粋に高専にスカウトされる前から役者として活動しててさ、僕としては役者を続けたかったからちょっと提案してみたんだ」

「提案?」

「そ、提案────」

 

 

 呪術界は呪いの存在を一般人に秘匿する関係上、ある程度の表の権力も持っているが、芸能界にはあまりその権力は及んでいない。

 例えば芸能界と聞くと真っ先に思い浮かぶであろうアイドル。これは新陳代謝の激しいことでよく知られており、アイドルほどでないがやはり芸能界というのはそこら辺の浮き沈み、入れ替わりというのが頻繁にある。

 そのため、その時点での影響力を持った人間に近づいても、何かの拍子にアッサリと彼らが業界の中心からいなくなってる、なんてことが結構あるのだ。

 

 

「────まあ、それでも最低限大手の事務所あたりとの繋がりはあるんだけど、上層部としてはもう少し手を広げたいみたいでね。だから僕の提案にも乗ってくれた」

「具体的には?」

「察しはついてると思うけど、呪術界(こっち)の事情を知ってる人間を増やして、色々と風通しを良くすること────そのコネクションを役者をしながら築くことを条件に、呪術師としての階級や任務に融通を効かせる、大枠はそんなとこ」

 

 

 そこまで聞くと、五条の方は「うへぇ······」と露骨に顔をしかめた。ちなみに夏油も五条ほどじゃないが、ため息をついてその心情を表している。やっていることは上層部の権力拡大の手伝いだからね。

 

 

「よくそんなことできんね、俺はゼッテーやりたくねぇ······」

「結構気を遣うでしょうに先輩はつらくないんですか?」

 

 

 二人は既に上層部のどうしようもなさを理解しているのか、彼らへの呆れと僕への同情を混ぜた目を向けてくる。

 

 

「────これが意外とそうでもないんだよねー」

 

 

 まあ、確かに面倒なことはあるけど、僕にとっては結構メリットもある。

 芸能界となると企画か何かで地方にロケをしにいくことがあるが、場所によっては普通に曰くつきなところもあるし、それ以外にも実は結構呪い絡みの案件は転がっている。

 僕はバーターとしてそれを対処することを条件に、こっちに都合のいい条件を引き出したりしている。

 こっちとしても交渉の席で呪術界のことを堂々と口にできるのは実のところ結構ありがたく、お陰で芸能界で僕が動きやすい環境を作るのに一役買っている。

 

 

「────それ、上層部のコネクションっていうよりは先輩のコネクションになってませんか?」

 

 

 夏油のその言葉に僕はニヤリと笑って返した。

 そんな僕の様子に二人も嫌いじゃないという表情をした。ハハ、流石跳ねっ返り問題児。

 その後も僕が上層部を歯軋りさせた話しをすると二人はゲラゲラ笑いながら食い付いてきて、すっかり僕たちは意気投合した。やっぱり人を団結させるのは敵の存在らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────め、滅茶苦茶仲良くなってる······」

 

 

「あのグズ二人と意気投合するとかウケる」

 

 

 なお女性陣二人は、僕たちに対してそんなことをもらしていたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





椎名夕
この一年でよりぶっ飛とび具合が増した人。彼の姉はそれに頭を悩ませているとか。
役者として活動する傍らで呪術師としても色々とやっている。お陰で彼の名は良くも悪くも芸能界のお偉いさんたちに知られているとか。

五条悟・夏油傑
最初はちょっと警戒してたけど普通に気が合った。この日の夜三人でマ○カーして盛り上がった。主人公が高専にいる時は料理をねだりにいくようになったとか。

庵歌姫
いい子な後輩のコミュ力はハンパなかった。でも仲良くなりすぎて生意気な後輩二人に影響されないか不安。

家入硝子
見た感じ二人のようなクズじゃないのに仲良くなってるのスゲェー。でも普通っぽいのにそれができてるのがそもそも逆に異常なのではとも思った。


その頃の天使様

想い人を射止めるために小悪魔ムーヴをし始め、ガンガン攻めている人。恋する乙女は無敵、彼女が天使じゃなくなる(呪いを解く)日も近い。弟が想い人と交友を持っているとはまだ知らない。


その頃の駄目人間さん

もうすぐ過去のトラウマやら色々と吹っ切る人。ちなみにぶっ飛んだ友人が想い人の弟だとはまだ知らない。その友人には一瞬で恋していることがバレたとか。


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