真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様   作:水の虎

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番外編との温度差がスゴい······


第十五話●

 

 

 東京都立呪術高等専門学校······通称呪術高専。

 多くの呪術師の活動拠点であると同時に、若い呪術師を育成する教育機関でもあるそこはしかし、立地と少数派(マイノリティ)である呪術師の圧倒的少なさという関係上、閑散としていることが多い。が────

 

 

「離してください、夜蛾先生! いかないといけないんです! 僕にはわかる! 今日運命が動くって!」

「何を意味をわからないことを言っている! お前はこの後任務だ! 昨日そう伝えたし、お前も了承しただろう!」

「知りません、覚えてません、記憶にございません! 離せ夜蛾! 離せ·········HA☆NA☆SE!!!」

 

 

 どういう訳か今日は朝から騒がしかった。

 

 

 高専の教師、夜蛾正道も困惑していた。

 呪術師としては珍しく常識的な振る舞いをすることが多い椎名夕が、何故か今日に限って制御不能な権化と化しているからだ。

 

 

 では何故夕がこんなにも暴れているかというと、彼の姉である椎名真昼と彼女の想い人である藤宮周が関係している。

 今日は二人が通う誠城高校の体育祭の日。

 

 

 ────つまるところこの男、厄介な野次馬をしにいこうとしているのだ。

 

 

 夜蛾のファインプレー(?)によって、夕が高専に通い、ほとんど原作通りに進んだ真昼と周の恋路。

 ちょくちょく真昼と周と連絡をとって、その進捗を確認してた夕は確信したのだ。今日、あの二人はくっつくと。

 

 

 ならばいくしかあるまい。

 例え火の中水の中呪霊の群れの中であっても。

 だって僕は椎名夕、真昼と周の弟なんだから! と。

 

 

 ちなみにちゃんと夜蛾は昨日任務について話をしている。ただ夕が今日のことに気をとられ、普通に聞き流していただけだ。

 だが、当然夜蛾の方はそんなことは知る由もなく、何故か普段は良識寄りな夕が問題児二人(五条と夏油)ばりに厄介な状態で、訳がわからなかった。

 

 

「────朝から何騒いでんだ? えっ、センパイ、どうしたの? ついでに夜蛾も」

「確かに珍しいね。何があったんですか椎名先輩?」

 

 

 すると常習問題児がやってきた。しかし二人も普段の夕からは考えられない姿に困惑する。

 

 

「隙ありぃぃぃっっっ!!!」

「っ! しまった!」

 

 

 五条と夏油が来たことで一瞬夜蛾の意識が夕から逸れ、その一瞬で夕は夜蛾の拘束から抜け出すと駆け出す。

 

 

「くっ! 悟に傑! 夕を止めろ!」

 

 

 咄嗟に二人にそう叫ぶ夜蛾。

 

 

「ったく、何なんだよ······」

「まあ、言われた通りにしようじゃないか悟。今の先輩は普通じゃなさそうだし」

 

 

 そう言いながら二人がかりで夕を止めようとするが────

 

 

「ッ!?」「なっ!? 嘘だろ······」

 

 

 あろうことか二人でも夕は止まらず、互角どころか若干夕が押しているまでである。

 

 

「────邪魔をするな五条、夏油······」

 

 

 夢幻呪法、と呟き、呪力を高める夕。

 

 

「イヤイヤイヤ! 術式まで使うとかマジでどうしたセンパイ!?」

「······私たちも本気でやった方がよさそうだね」

 

 

 こうして、最強二人と夕がぶつかる。

 

 

「どけ!!! 僕は弟だぞ!!!」

 

 

「いや、意味わかんねェーよ!」

 

 

「本当にどうしたんですか椎名先輩?」

 

 

 鬼気迫る夕、それに対抗する最強二人。

 

 

 勝敗は────

 

 

 

 

 

 

 

 

「·········く、くっ、そぉッ······!」

「一瞬だけど負けるかと思った······」

「······結構ギリギリだったね」

 

 

 呆然とする五条、冷や汗を流す夏油、そして地に押さえつけられた夕。

 かろうじて最強二人は夕を止めることに成功した。

 

 

  ○ ●

 

 

 あの後、泣く泣く夕は車に乗り、任務へと向かった。

 送迎する補助監督は、やけに煤けたような見た目の四人に困惑しつつ、夕を乗せて現場へと車を走らせていった。

 

 

「────夜蛾先生、先輩は何であんなに暴れていたんですか?」

 

 

 車を見送った夏油は隣にいる夜蛾に尋ねる。

 

 

「······憶測だが、あいつの姉が関係しているのだろう」

「姉ェ? 何、センパイって姉がいるの?」

「俺もあまり深く知らないがそうらしい。実際夕を高専にスカウトしたのは俺だが、あいつは終始姉と同じ高校にいきたいと渋っていた。だが一方で高専入学にあたり、呪いのことを一切姉に黙っていることの確約を求めてきた。夕にとって、それだけ姉は大切なんだろうな」

「ふーん」

 

 

 夜蛾の見解に五条はあまり興味を示さない。呪術界の御三家の一つである『五条』の彼にとって、世間一般の家族というのはなかなかイメージがわかないのだろう。

 

 

「とはいえ、暴れるにしても突然過ぎませんか?」

「ふむ······確かにな」

 

 

 確かに既に入学して一年以上経ってるのに、今さらそれを理由に暴れるのは不自然だと夜蛾も思う。

 

 

「────これも憶測だが、もしかしたら夕の姉の高校では文化祭でもあるのかもしれないな。高校によってはこの時期にやるところもあると聞く」

「なるほど······つまり、高校に一緒に通えなかった分、せめて文化祭に参加しようとしてたのかもしれませんね」

 

 

 何やら真剣に考察しているが、生憎夕が参加、というより行こうとしてたのは体育祭だ。

 

 

「ってなると夜蛾、あんたそれをぶっ潰したことになるんじゃね? センパイに任務の話した時に予定とか聞いたの?」

「うぐっ······!」

 

 

 まさかの非常識の権化たる五条にそう言われて、思わず夜蛾はきつめのダメージを負う。

 

 

「······夕には帰ってきたら謝罪しておこう」

「文化祭は二日間で行うとこが多いと聞きます。もしかしたら明日もあるかもしるませんし、私たちが明日の先輩の任務を代われば可能性はあるのでは?」

「······傑、それに悟も頼めるか?」

「はい」「まっ、センパイにはちょくちょく世話になってんからね」

 

 

 何度も言うが夕が行こうとしていたのは(以下略)

 

 

 なお、この後任務から戻った夕は真実を知った三人からそれはそれは激しく詰め寄られたとか。

 夜蛾からはグーと説教を受け、五条と夏油からはリクエストした料理を一ヶ月作ることを約束させられた。

 

 

  ○ ●

 

 

「解せぬ······」

 

 

 高専に戻って三人からの洗礼を受けた夕は自室のベッドに寝転がっていた。

 

 

「ひどい······ちょっと体育祭に忍び込んで姉さんと藤宮ちゃんの名シーンを見に行こうとしただけなのに······」

 

 

 ちゃんと変装もするし、なんなら術式の二段構えなのに、とぼやくが、今の彼は致命的に何かがズレていると言えるだろう。

 

 

「ううぅ~~·········!」

 

 

 思わず手足をバタバタさせて、子どものように唸るが、やがてそれが止まると────

 

 

「そっか姉さんは······真昼はもう呪いを解いたんだ······」

 

 

 その事実を噛み締めるように夕は呟く。

 

 

「······なら、『僕』ももうお役御免だね······」

 

 

 どこか寂しそうに笑いながら、そっと自らに被せた(かけた)仮面(呪い)に手を伸ばす。だが────

 

 

(あれ······?)

 

 

 そこで夕は気づいた。

 

 

「『僕は』······いや『俺』? え、あ、あれ······?」

  

 

 その顔にあるのは困惑と焦燥。

 

 

「────僕って······どうやって笑ってた?」

 

 

 ────どうやって感情を、心を動かしてたんだっけ······?

 

 

 その呟きは誰にも聞こえることなく、部屋の片隅に消えていった。 

 




その頃の天使様&駄目人間さん

想い報われとうとう結ばれた。スタートラインに立った(交際し始めた)と同時にゴールイン(結婚)してる系なカップル。二人のたどった道は焼け野原となり、独り身の人間は大抵死ぬ。彼と彼女の行く末に幸あれ。
最近の悩みは交際をいつ弟に伝えるかだとか。


その頃のアイドル様

またしばらく主人公に会えなくて落ち込んでいる。
しかし、次に会ったとき彼は·········。
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