真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様   作:水の虎

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青春させたかった。
ただ、それだけです。


第二十五話●

 

 時刻は日が沈んで頃。

 高専の食堂は喧騒に包まれていた。

 

 

「────ああ!? 傑テメェ、それは俺が狙ってたやつ!」

 

 

「おや、すまないね悟。でもこういうのは早いもの勝ちだよ?」

 

 

 正確には主に上の二人なのだが······。

 

 

「────まったく······卒業してあんまり経ってないけど、あの二人は変わらないわね」

「そりゃあそんな簡単に変わったらあの二人じゃありませんよ歌姫先輩」

「それもそうね······。夕もそれを見越して料理はもちろん席の配置も決めたんだろうし。────はい硝子。あっ、七海くんと灰原くんは何食べる?」

「あ、いえ······自分でやるので大丈夫です」

「はい、お気持ちだけ受けとります。それにしても凄い料理ですね~」

 

 

 一方こちらは比較的和やかな雰囲気だった。

 たまたま任務の報告を終えた歌姫も加わり、去年の今頃の顔ぶれに七海と灰原を足して、今年もちょっとした新入生の歓迎会のようなものが催されていた。

 ちなみに夕はまだ厨房の方で何やら準備している。

 

 

「まあ、七海も灰原もあのクズ二人のことは気にせずに遠慮なく食べな~。────ん~、やっぱ先輩の料理ウマ~」

 

 

 などと早速とばかりに料理を口にしていく家入の言葉を皮切りに、二人も手を伸ばしていく。

 

 

「ッ! これは······」

「凄いおいしいですね!」

 

 

 そうやって全員が思い思いに料理を楽しんでいると、夕が厨房から何かを手に出てきた。

 

 

「おー待たせー! 去年はやらなかったけど、今年はちょっと面白いことするよー! っていっても定番ちゃ定番だけど」

 

 

「お、なになに、センパイ?」

「それは、餃子ですか?」

 

 

 騒いでいた二人が声をかけ、他の人間も夕に注目する中、彼は「フフフ」と何やら怪しげに笑い────

 

 

「そう! この中に豆板醤やら何やら、とにかく辛い調味料をひたすらねじ込んだ餃子が二つある。というわけでロシアンやろうぜロシアン!」

 

 

 今回は中華料理を中心に色々作り、その際に微妙に残った各種辛味調味料を消費するために夕が思いつきでそんなことをしたのだ。

 

 

「いいねー!」

「面白そうですね」

「まあ、いんじゃないですか?」

「そうね。たまにはそんなのも悪くないわね」

「楽しそうですね!」

「まあ、構いませんが······」

 

 

 それぞれが色んな反応をしつつ、夕の持つ皿を中心に集まってくる。

 

 

「────でもセンパイは答え知ってるからズルくない?」

「もちろん僕は最後の一つを選ぶし、皆が選んでる時は顔を背けるよ~。あっ、ちなみに当たった人はコーラ一気ね」

「それ炭酸の刺激で余計痛い奴」

 

 

 などと言い合いつつ、夕を除いた六人は七つある餃子からそれぞれ手に取っていき、最後に残った餃子を夕が取り、全員が同時に口に運ぶ。

 

 

「あ、私は外れだ。いや、ある意味当たりだけど」

「私も違うわね」

「僕も違いました! 七海は?」

「私も違う。······そうなると────」

 

 

 四人の視線が残りの三人を向くが、そのうち夕だけはニヤリと笑う。

 

 

「「~~ッ!」」

 

 

 そして五条と夏油は震えていた。

 

 

「────五条、それに夏油も······」

 

 

 はいこれ、とコーラの注がれたグラス(結構大きい)を差し出す。

 

 

「ほらほら、一気だよ一気一気」

「「·········」」

 

 

 ようやく少し口の中がマシになりつつあるのに慈悲なくコーラを渡しにいく夕。

 諦めたようにグラスを受けとる二人。

 結果はわかりきっていた。

 

 

  ○ ●

 

 

「「────断固抗議する(します)!!!」」

 

 

 再びしばらく悶絶していた二人は声を上げた。

 それに対し────

 

 

「あっ、バレた?」

 

 

 などとあっさり認める。

 

 

「やっぱり何か仕込んでたんじゃねぇーか!」

「失礼だな。精々六人の性格とか色々考慮して餃子の並べ方とかをちょっと意識しただけだよ」

 

 

 実際今日会ったばかりの七海と灰原もいたことから、夕の予想が外れる可能性も十分あった。

 とはいえ、当然二人は納得しない。

 

 

「仕方ない······食堂で暴れるわけにはいかないし、代わりにこれで決着をつけよう」

 

 

 そう言って夕はスマ○ラXのソフトを取り出す。

 

 

「僕が負けたらこの後出すデザートを二人に倍にして出そう。逆に負けたら二人はデザート抜きだ。やる?」

「「上等」」

 

 

 やいのやいのとソフトを奪い取り、二人は準備を始める。

 

 

「夕、あんたあんなこと言って良かったの?」

 

 

 それを見ていた歌姫先輩がそんなことを尋ねてくる。

 

 

「まあ、負けても大して僕に被害はないですしね。それに────」

 

 

 七海と灰原を見ながら僕は口を開く。

 

 

「新入生二人、とくに七海はあの二人がいると安心して過ごせないでしょ? しばらくはゲームに夢中になるだろうからゆっくり楽しみな。デザートも食べたくなったら厨房の冷蔵庫に入れてあるから皆好きに食べてねー」

 

 

 伝えることを伝えて五条と夏油の方に向かう。

 どうやらこの流れは二人の新入生に対する夕なりの配慮だったらしい。

 

 

 ······まあ、もっとも────

 

 

「センパイ何だよこのステージ!?」

 

 

「妙に私たちにオススメしてきましたが、やっぱり何か仕込んでましたね!」

 

 

「もちろん! 何せここは僕が戦いやすいギミックを施しまくって作ったオリジナルステージだからね!」

 

 

「卑怯だぞ!」

 

 

「大人気ないですよ?」

 

 

「フハハハ! 呪術師なのに相手の土俵にノコノコ上がってくるのが悪い! 僕がゲームを提案した時点で疑うべきだったんだよ!」

 

 

 ワイワイガヤガヤ

 

 

 今日の高専もまた、平和な青春の一ページが描かれていた。

 

 

  ○ ●

 

 

 翌朝。

 

 

「────ねむ······」

 

 

 ふわぁ、とあくびをしながら夕は身支度をしていた。

 結局昨日は遅くまで負けず嫌いな二人に付き合ったため、寝るのが遅くなった。

 

 

「ん······んー?」

 

 

 眠気を覚まそうと軽く散歩をしていると、見覚えのある背中が見えた。

 

 

「······早いね五条」

 

 

 少し迷いつつ、結局声をかけたが────

 

 

「ッ!? ────何だセンパイか······」

「そんなに驚かなくていいのに。反転の練習?」

 

 

 質問しながら隣に座る。

 

 

「────やっぱりあれから進展してない?」

「······多少は安定してる。でもやっぱ実戦だとまだ使えない」

「そっか」

 

 

 悔しそうに事実を五条は口にする。

 何だかんだ反転を習得してから結構経ってるが、あまりうまく使えてないらしい。

 

 

「五条」

「何?」

「僕がやり方を提案した手前あれだけどさ、あんまりそのやり方に捕らわれるなよ? そのやり方は間違ってはない(・・・・・・・)のかもしれないけど、正しいとは限らないよ」

「······でも実際にこれでできてるんだから、それを伸ばしていくのが正しいんじゃないの?」

 

 

 まるで今までのことを否定されたような物言いにどこか拗ねたように五条は応じる。

 

 

「まあね。だから言った通り間違いではないよ。でもそれに捕らわれ過ぎるなってこと。一回で何でもかんでもすべて掴める訳じゃないんだよ五条」

 

 

 例えばスポーツ。

 最初は何かの真似から始めて、試行錯誤を繰り返しながら自分に合ったスタイルを見つけていく。

 それは呪術だって同じだ。

 

 

「────もしかしたら今よりも合った方法が見つかるかもれない。でも、肝心のお前が何かに縛られ過ぎてそれを見逃したら元も子もない。去年も言ったでしょ? 知覚と認知は違うんだよ」

 

 

 五条に反転を習得させたが、きっとその教え方は彼に合ってないと夕は思っている。

 しばらく見ていてそれを感じとった。

 そしてやはり、完全に掴むのはあそこ(・・・)だということも。

 でもそれでいいと夕は思う。

 足掛かりさえ示し、然るべききっかけさえあればこの男は、五条悟という人間は勝手に羽ばたいていく。

 自分はただ、きっかけが訪れた時に、より早く羽ばたけるようにしただけに過ぎない。

 ならばその時、その時間(・・・・)を自分が作ればいいのだから。

 

 

「お前は一つのことに捕らわれ過ぎる部分があるからね。せっかくいい眼を持ってるんだから、ちゃんと視なよ(・・・)?」

 

 

 それだけ言って夕は立ち去る。

 

 

「────さて、何だかんだ努力家な後輩のために朝食でも作ってやりますかね」

 





その頃のアイドル様
夕のベッドにて起床。服装はまさかの彼シャツ。
既にほとんど自分の部屋のベッドは使ってない。いっそ二人で使う大きなベッドを買ってしまおうかと考えているらしい。


その頃の隣人カップル
そもそも原作最新巻を越えてしまったから何してるかわからない。ただ、相変わらず仲睦まじいのは変わらないだろう。
彼らの学校のクラス替えの基準は知らないが、二人の進学先も成績もどうせ似たような感じだろうし、また同じクラスになってるのではと作者は予想。
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