真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様 作:水の虎
少しスランプ気味です。
もしかしたら投稿頻度が落ちるかもしれません。
「椎名先輩······」
「やあ夏油、お互い無事だったね」
「······先輩はあんまり無事ではなさそうですけど」
「あはは、そうだね······あいつが来てくれなかったら死んでたかもね~」
五条が伏黒甚爾を『赫』で吹っ飛ばした後、僕は夏油たちと合流した。
結構ボロボロだけど、死んでなければ万々歳だ。
「······悟は?」
「来るやいなやあの男を吹っ飛ばしていった」
「そう、ですか······」
「·········」
どこか夏油は浮かない顔をしていた。
(······世話のかかる後輩たちだね)
悟られない程度に苦笑を浮かべる。
「お前はよくやったよ。お前のできることを。そしてその二人は命を繋いだ。結果的に五条も生きてた。今はそれでいいんじゃない? 何考えてるかは知らないけど、そんな顔して悩んだってロクな答えは出ないと思うよ」
「ですが······」
なおも言い淀む夏油に────
「信じたんでしょう、五条のことを?」
「······」
「そして五条もお前のことを信じた。そして僕もお前を信じたし、お前も信じてくれた。だからこその今だ。────ありがとう、夏油」
「あ、いえ······その······」
突然お礼を言われて狼狽える夏油に、そばにいた二人────天内理子と黒井美里も空気を読んでか、お礼を口にしさらに慌てる。
「────ッ」
「先輩、これは······」
「うん、五条だろうね······」
一際大きな呪力の奔流と轟音がこちらに届いた。
「────夏油」
「何ですか?」
「信じたって言ったでしょ? ならこれからもそれに応え続けな。僕や、他の人たち、そして五条の信頼に」
それと、と僕は続ける。
「お前はお前、五条は五条だよ。お前たちはお互いに、お互いになれない。でもそれでいい。お前にできないことは五条が、五条にできないことはお前がやればいい。────お前たちは、
「·········ええ、そうですね」
目をパチクリさせつつ夏油は頷いた。
その顔は、やっと少し力が抜け、綻んでいた。
そうして五条の下に向かおうとするが────
「あっ、でも、あんまり無理はしないでね? 倒れられたりしたら困るし、何よりお前と五条がそれやると周りがヤバイから。どうしてもやるなら僕に迷惑をかけない範囲でよろしくね~」
「······色々台無しです」
○ ●
そうして数日が経った。
結局、星漿体・天内理子と天元との同化は、本人が拒否したことで流れた。
五条と夏油がいるとはいえもう少し揉めると思ったが、そこまでではなかった。
あるいは天元本人が何か働きかけたのだろうか? いずれにしても真実はわからない。
しかし、結果として天内理子は星漿体の宿命から解き放たれ、今は五条家の庇護下に入り、ほとぼりが冷めるまで高専で過ごしている。
色々と落ち着いたら、お世話係の黒井美里さんとどこかで暮らすらしい。
そんな中、僕の立ち位置がまた一つ変化してしまった。
「────夕、お前は今日から準一級だ」
·········ざぁっけんなッ!!!
○ ●
「はぁ······」
「浮かない顔してますね、椎名先輩」
「そりゃあーね······」
さらに数日経ち、僕は夏油と話していた。
「······どうしてこうなったんだろ?」
「ある意味順当な結果と言えば結果ですよ? 私も後で調べましたが、あの男、裏ではかなり有名だったそうじゃないですか。そして今回、一時とはいえあの悟を瀕死に追い込んだ」
そんな相手に曲がりなりにも渡り合い、時間稼ぎをやってのけた僕は、この度準一級術師に昇級してしまったわけだ。
「面倒事、増えるんだろうなぁ······」
「ですが先輩の場合、上層部と芸能界の活動にあたって任務を融通するって決まりを作っているでしょう?」
「まあね······」
とはいえ────
「準一級以上の呪霊は術式を使ってくる。ものによっては初見で対応の難しいものだってあるんだ······。それらとエンカウントする可能性が高くなる任務を振られやすくなるのに喜べる訳ないでしょ?」
何で死ぬ可能性が上がったのに喜べるんだよ、と僕は思う。
「そこについては本当に変わりませんよね。ですが十分先輩ならやっていけるでしょう。むしろ、まだ階級と実際の実力が見合ってないとすら私は思いますよ?」
「······えらく褒めるね? そんなことしても何も出ないし、お前の言った上層部との決まりがある限り······僕が役者である限り、一級になることはないよ」
呪術師にとって一級とは最上位の位だ。
特級? あれは規格外で、そもそも枠に括れないからノーカウント。
まあとにかく、そんな最高位の人間をいくら事情があるとはいえ遊ばせるのは他に示しがつきづらいだろうし、体面的にも良くないから、僕の階級はここで頭打ちだろう。
「それは残念ですね。悟も先輩が準一級になったことを喜んでましたよ?」
「正確にはそれをネタに歌姫先輩をからかえることを、でしょ?」
「クク、違いないですね」
そもそも大体の呪術師は二級か準一級で頭打ちになることを考えれば、高専を卒業したばかりで二級な歌姫先輩は順当な方だろう。
ただ僕が準一級、五条と夏油が現在一級でそのうち特級だし、七海も後に一級と、ある意味色々と後輩に恵まれてない。
「頼むから五条にはほどほどにしとくよう言っといてね? 僕の所感だけどあの人多分酒癖悪いよ? 飲めるようになったら色々と面倒臭そうだし」
時々芸能界の付き合いで中年の相手してる僕の勘がそう言っている。
「何だかんだそれに付き合うこと前提で言ってますね?」
「そりゃあ呪術師としてはかなりまともな部類の人だからね。僕が高専出た後のことを考えてできる限りいい人脈は持っときたい」
「おや、私や悟とはいいんですか?」
からかうように聞いてくる夏油に僕は肩をすくめる。
「どうせ二人は卒業後も時々食事をたかりにきそうだし、わざわざやる必要はないかなって」
「ハハ、そうですね。お陰様ですっかり舌が肥えましたよ。特に
「······役に立ててるようで何よりだよ」
「これに関しては本当に感謝してるんですよ?」
夏油はそうして大量の黒い球体を取り出す。
「······また随分多いね」
「ええ、私も悟にいつまでも遅れをとるわけにはいきませんからね」
「·········僕が色々言った手前、やめろとは言えないけど、この数日で頑張り過ぎじゃない?」
「私としては祓うことより、その呪霊を取り込むことの方がよっぽど難儀しますからね。それがなくなるだけでストレスも大分なくなって楽になったので、つい張り切ってしまいました」
「まあ、しっかり自己管理はできてそうだし、本人がそう言うならそれ以上言わないけどさ······」
ため息混じりにそう言って、夏油に術式による干渉を行う。
「────むっ、これは·········果物? 味覚をシャットアウトするんじゃなくてこういうこともできるんですね?」
「用途の関係上、あんまり味覚を誤魔化すことなんてしないからね。せっかくだからちょっと試してみた。上手くいったようで何よりだよ」
「ええ、何となく見た目と相まって飴玉を口にしてるみたいに感じます」
「いや、確かに光沢があって飴玉に見えなくもないけどさ······」
全部それ黒じゃん。確かに黒い飴玉あるけどさ。
「────そういえば、さっきも言ってましたが、やっぱり先輩は卒業したらそのまま芸能界に?」
「まあね。ただ、呪術界と芸能界の繋がり、ひいては呪い案件に関する体制も完全じゃないし、一応呪術師としての身分は持つつもり」
ただし絶対にフリーの呪術師としてだ。
高専に籍を置こうものなら、何だかんだで仕事を押し付けられるに違いない。
「なるほど······。ちなみに直近の活動はどうするんですか? 最近は結構こっちにいますけど」
「もうちょい任務を消化したらまたしばらくあっちだね。夏の舞台公演があるし、その後についてはまだ検討中」
「そうなると、次会う時は大変そうですね······。果たして一回で呪霊すべて取り込めますかね?」
「いや、繁忙期とはいえどんだけ祓いまくるつもりなの? 思わず呪霊に同情しそうなんだけど······」
もしかしたら次に会うまでに夏油の部屋は呪霊玉?で、溢れ返っているかもしれない。
微妙に顔をひきつらせながら、僕は少し先の未来に思いを馳せた。
椎名夕
上手い具合に夏油の意識を五条に追いつくことに誘導したが色々な意味で引いた人。
効果覿面過ぎだし、呪霊どんだけ祓ったの?
お互い口に出さないくせにお互いのことを意識しまくってる······こいつら相思相愛にもほどがあるだろ。
······いや、でもこれもまた一つの『愛』か? うん、やはり『愛』は偉大だ(投げやり)
五条悟
前話で少し登場したが、今話での出番はまさかのなし。まあ、幕間で出番作ったし許せ。次は夏油の番だ。
ちなみに描かれない部分でやっていたこととしては、天内理子のアレコレを実家パワーで話つけて、それが落ち着いたら完全習得した反転含む術式の修練+息抜きとして歌姫をからかう。
夏油傑
親友が突き抜けた様子を見て少し影が差したが、夕の言葉で一先ず自分のできることをやっていこうと奮起。ゲロ雑巾問題を夕によって解決され、モチベーションが上がりまくってここ数日滅茶苦茶ハッスルした人。
割と頻繁に夕が連絡(呪霊玉どんくらい貯まった?という建前で)をとるが、五条に追い付こうとして、他のことには見向きもしてなさそうで一安心。
ちなみに数ヶ月後、意図せず高専に夕が顔を出すことになった際に、彼が物置と評す部屋ができていたとか。
庵歌姫
まったく出番がない上に、とうとう夕にも階級を抜かれ落ち込んだ人。この作品では彼女の一つ下(夕の一個上)の学年はいない設定にしてるので、後に七海までの三世代に渡り後輩に階級で負けてしまう運命が待っている。
一応将来的には準一級になれて夕と並ぶが、彼は特級を軽く捻れる階級詐欺者なのでノーカウント。