真昼の弟は転生者で、呪術師兼ララライの看板役者です。でも推しの子は知らない模様   作:水の虎

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何か今回はキリが悪いですね~。
あと、次回の投稿は明後日になると思います。


第三十一話○

 

「今さらですが、大丈夫なんですか、これ?」

 

 

 目的地へと向かう新幹線の中、真昼がそう言ってきた。

 

 

「バレないかってこと? 大丈夫大丈夫、一応軽く変装してるし、意外と堂々としてればバレないもんだよ? こんな感じで何度もデートしてるし」

「そういうもんか?」

「意外と人って見てるようで周りを見てないからね~」

 

 

 もちろん嘘だ。普通に術式使ってる。

 

 

「でも確かに意外とバレないよね。社長からスキャンダルに気をつけろって言われるけど、夕と一緒にいて問題になったことないし」

「アイちゃんのところの社長さんは、二人の関係を知ってるんですか?」

「うん。『アイは貰います。今後は長い付き合いになりますね』って、少し前に挨拶しといた」

「挨拶とは一体······」

「挨拶、それは初手で人の好みを尋ねること」

「「「それは夕だけ(だ)(です)(だと思う)」」」

 

 

 お~息ピッタリ、と僕は笑った。

 

 

「やめなさいと言ったのに結局夕はそれをやり続けましたよね······」

「とうとう地上波でもやったしな······」

「そういえば夕のあれっていつからなの?」

「言われてみればいつからなのかは俺も知らないな。真昼は知ってるか?」

「中学に上がる少し前くらいからでしたかね? 確かその頃に知り合った人にされたからとか言って真似し始めました」

 

 

 真昼の答えに二人はへぇーと相槌を打ち、僕に目を向けてくる。

 

 

「懐かしいね~」

「その人って役者の人とかなの夕?」

「違うよ。そもそも芸能界にいる人がやってることなら、二番煎じになるから意味ないよ。元々役者として顔を覚えて貰うために始めたからね」

「じゃあ、その人は何なんだ?」

「変人」

「その人には悪いが、それは言わなくてもわかる······」

 

 

 というかそれを真似しているお前も変人にならないか、と周は言う。

 

 

「あの人のことねー·········まあ、僕の師匠だね」

「「「師匠?」」」

「また息ピッタリだね三人とも。すっかり仲良しだね~」

「師匠って何······演技の?」

「いや違うよ」

「では何の師匠何ですか?」

「うーん·········体術? まあ、護身術的な武術教えてくれた人かな」

 

 

 あと呪術の基礎とか呪術界の知識とか、とは口に出さずに呑み込みつつ、少し濁した言い方をする。

 

 

「何でその人に弟子入りしたんだ?」

「役を演じる時に、武術とか習ってると使える技術もあるかなって」

「────もしかして忙しかったって言って私にあんまり会いにこれなかったのはその人に弟子入りしたから?」

「そうだけど······まさかまだ覚えてるとは······」

 

 

 だから久しぶりに会った日の一週間後にデートしてご機嫌伺いしたんだっけ?

 

 

「夕、あなた······」

「はい、それに関しては僕が悪かったです。なのでちゃんと埋め合わせもしました」

 

 

 咎める視線が飛んできたので弁明しておく。

 ただし、付き合う前のことだとか忙しかったとかの言い訳はしない。

 真昼もそれを聞いて「よろしい」と納得した。

 

 

 

 

 

 

「────周くん? 何をしてるんですか?」

「ああ、今回の行き先について調べてたんだけど······」

「まあ、あんまり観光地って感じはしないよね~」

「はっきり言いますね夕······」

 

 

 そうは言うが、僕が調べた範囲でも取り立てて目に止まるようなものはなかったのだから仕方ない。

 

 

「まっ、全員あんま羽目を外せる立場じゃないし、丁度良くはあるかもね。ちょっと羽を伸ばす程度の気持ちで行こう」

 

 

 僕とアイは芸能人で、真昼と周は受験生だ。それぐらいにしとかないと思わぬところで足下掬われるかもしれない。

 

 

「それもそうか」

「そうですね。こうして四人で旅行できるだけでも楽しいはずですし」

「······うん」

「アイちゃん?」

「どうした? もしかして乗り物酔いか?」

 

 

 するとアイの反応が少し悪いことに気づいた二人が声をかける。

 

 

「アイ、ほら」

「······いいの?」

「うん」

「ありがと·····」

 

 

 ポスンッとアイが寄りかかるように身体をこちらに倒してきた。

 

 

「やっぱり疲れた?」

「ちょっと······」

「着いたら起こすから寝てていいよ?」

「ん·····」

 

 

 そのまますぐに寝息を立て始めるアイ。

 

 

「······昨日眠れなかったりしたのか?」

「今日が楽しみだったみたいでね」

 

 

 それに加え、やはり思ったより二人との対面には緊張もあったのだろう。

 あるいは昨日見せた遠足前の子どもみたいな様子は、その緊張の裏返しだったのかもしれない。

 本心をさらけ出すのは何だかんだエネルギーを消費するしね。

 

 

「凄い安心した顔をしてますね。夕のこと、信頼しきってるんですね」

「かもね。それで少し心配になることはあるけど、無防備過ぎて」

「ああ······わかる」

「でしょ?」

「······何で周くんも夕もわかり合ってるんですか?」

「だって······」

「ねぇ?」

 

 

 真昼も何だかんだ無防備なところあるしね~。

 周もそれがわかってるから、重々しく頷く。

 お互い恋人の警戒心についての苦労を思いながら、目的地まで揺られて行った。

 

 

  ○ ●

 

 

「────やっぱ今日は移動で一日が終わりそうだね~」

「まあ、それも旅の醍醐味だろ」

「一理あるね。やっぱ周は結構家族で旅行行ってた感じ?」

「······ああ」

「別に気にしないでいいよ」

「そうですよ。今はこうして楽しめてますし、これをこれからも積み重ねて行くのは嬉しいです」

 

 

 残念ながらこの場の四人の内、周を除くと親はロクデナシの部類。

 既に僕と真昼の家庭事情を周は知ってるし、事前にアイの家庭のことも差し支えない範囲で伝えていたからか、少しバツの悪そうな顔を周はした。

 それにかぶりを振りながら、宿泊先の最寄りのバス停から徒歩で歩いていた。

 ちなみにアイも一応起きているが、微妙にまだ寝ぼけていて反応が鈍いため、僕が手を引いている。

 新幹線から更にいくつか電車を乗り継ぎ、ようやく僕たちはバスによって宿泊地にたどり着いた。

 

 

「······それにしても移動も旅の醍醐味か。僕は結構色んな場所行ってるから、少し飽きみたいのがあるんだよね~」

「流石看板役者」

「確かに夕は色んな場所のお土産送ってきますしね」

 

 

 苦笑しながら相槌をする二人に肩をすくめながら応じると────

 

 

「おっ、あれかな?」

 

 

 今一度宿泊券を見て確認し、間違いのないことを確認する。

 

 

「ごめんください────」

 

 

 

 

 中に入り受付でやりとりをすると、特に問題なく部屋に通された。

 

 

「────この後どうする~?」

「そうですね······先にお風呂でいいんじゃないでしょうか? 移動で長い間座ってましたし、意外と身体が固くなってますから」

「だな。食事も結構遅い時間まで対応してくれるみたいだし」

「アイちゃんもそれで大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫だよ」

 

 

 と、なったので、荷物整理してちょっと休んだら温泉に向かった。

 

 

「じゃあ、二人ともまた後で」

「うん、アイのことよろしくね姉さん」

「はい。夕も周くんに迷惑をかけては駄目ですよ? ────周くん、夕のことよろしくお願いします」

「任せろ。初対面の相手にあの挨拶をしないように見張ってる」

「あ、あれ······? もしかして僕って意外と信用ない?」

 

 

 当然のことながら温泉は男女で分かれるため、その前に会話してるとまさかの事実が判明した。

 

 

「·····行くか」

「そうですね。アイちゃん、行きましょ?」

「え、無視?」

「あはは······えっと、夕、またね?」

「────うん、楽しんでおいで、アイ」

 

 

 そう言うとアイははにかみながら真昼の後を追っていく。

 それを僕は見守りながら────

 

 

「周、温泉に入りながらゆっくり話そっか?」

「······いいけど、その事に関しては最終的にお前の挨拶が問題って結論になると思うぞ?」

 

 

  ○ ●

 

 

 入浴を終え、合流した僕たちは部屋に戻った。

 温泉に行く前に食事の時間を伝えており、まだそれまで時間があるため、くつろぎながらテレビを観ていた。

 

 

「────あ、夕だ」

「ん? あー·········、確かにこんなの撮影したねー」

 

 

 いささかキリの悪い時間で番組が終わり、ついで放送されたのは十五分強ほどで構成された僕の特集だった。

 

 

「······改めて思うとすげー不思議だな。テレビに映っている人間が隣にいるって」

「そうですね。最近は夕をテレビで観ることも増えて大分慣れてきましたけど、本人がその場にいる状態だと、また別に感じます」

 

 

 簡単な僕の紹介が流されるのを話し半分に語り合う真昼と周。

 

 

「·········」

「アイ?」

 

 

 そんな二人を横目にテレビを食い入るように観るアイの様子が気になり、名前を呼ぶ。

 ······いや、これはテレビを観てるというより、何かを考えてる?

 

 

「·········ねぇ、夕」

「何?」

「────夕と私って共演したことなくない?」

 

 

 最近は夕もテレビ方面の仕事良く貰ってるのに、と彼女は首を傾げた。

 

 

「そりゃあ僕は俳優でアイはアイドル。微妙に分野は違うし、僕がテレビ媒体に出るようになったのは結構最近だからね」

「むぅ······」

「いや、そんなむくれられても······というか一応言っとくけど、もし共演になっても普段の接し方はできないよ?」

「何でッ!?」

「何でって、どう考えても怪しまれるでしょそんなことしたら······。接点のないと思われてる僕とアイが普段の接し方したら普通に変だよ」

「実際はもう会って六年目なのに······」

 

 

 でもそれは外から見たらわからないし、仮にアイがアイドルになる前からの知り合いと言っても、そう単純な話にならないのが芸能界だ。

 とはいえ────

 

 

「·········まあ、そこら辺は何とかするよ」

「えっ······?」

 

 

 その言葉にアイは顔を上げる。

 何だかんだ言いつつ、彼女もアイドルとして四年近くやってきた以上、僕の言ったことはちゃんと理解できる。

 ただ心が納得できないだけ。

 そんなことを考えながら頭を撫でる。

 お風呂上がりとあり、髪から放たれるいい匂いが鼻孔をくすぐる。

 目を細めるアイに身を寄せながら僕は口を開く。

 

 

「流石にすぐは無理だし、いつも通りは難しいだろうけど、話しても問題ないくらいには持っていくよ。とりあえず少しずつ表向きな接点を作って、徐々に話せる環境にしていこうか」

「うん」

 

 

 嬉しそうに頷いてくれたアイ。

 

 

「────どこかで聞いた話ですね? 周くん?」

「悪かったよ······」

「ふふ、別に責めてはませんよ」

 

 

 何か話を聞いていた二人がそんなやりとりをしていた。

 

 

  ○ ●

 

 

「眠れない?」

「あはは······移動中寝てたからね」

 

 

 普段はなかなか食べない料理を楽しんだ後、軽くトランプに興じていたがやはり移動の疲れが結構あり、明日に備えて早めに休むことになった。

 ちなみに真昼と周は一緒に寝ている。

 トランプで一位になった人が誰と寝るかを決めるルールで勝負し、勝ったアイが僕を選んだため、消去法で僕とアイ、真昼と周のペアで分かれた。

 

 

「────何か不思議だなー······」

 

 

 目が冴えて眠れないアイはベランダに出て、夜空を見上げながら呟く。

 

 

「今が?」

「うん」

 

 

 隣に歩み寄りながら尋ねると、彼女は頷く。

 

 

「······夕がいて、今日はお姉ちゃんとお兄ちゃんもいて、本当に楽しかった。家族がいたらこんな感じなのかなって思えた」

「楽しんでもらえたなら良かったよ。姉さんたちとはどう?」

「うん、凄い良くしてくれるよ。お兄ちゃんとはまだあんまり話せてないけど、さりげなく気遣ってくれるし、お姉ちゃんとはお風呂で髪とか洗ってもらったりしてね、一杯お話もしたの」

「そっか」

 

 

 相槌を打ちながらアイの肩に手を回す。

 すると、彼女はぴとっとくっついてきた。

 

 

「でも······だからちょっと怖い」

「······」

 

 

 肩に置いた手から僅かな震えが伝わり、アイを強く引き寄せる。

 

 

「いつか今の日常が壊れちゃうんじゃないかって、また一人に戻っちゃうんじゃないかって······」

「······そうだね」

 

 

 それが嫌で、僕は呪術師になったからわかる。

 でも、知れば知るほど、もしもを想像してしまいもする。

 

 

「────アイ·········僕はずっと一緒にいるとか、絶対に一人にしないとは言えない。それを言ったら多分嘘になるから」

「うん······」

 

 

 けど、それでも────

 

 

「だけど、絶対に帰ってはくるよ。ずっと一緒にいれなくても、アイを一人にしてしまっても、僕はアイのいる場所に必ず戻るよ。例えどれだけ時間をかけてもね」

 

 

 ────それだけは約束する。

 

 

 困ったものだ。

 愛した人にそれしか確約できないのだから。

 孤独を恐れる彼女に、一人にしてしまうかもしれないと言ったのだ。

 

 

「────本当に帰ってきてくれる······?」

「うん。それだけは約束するよ。まあそれだけしか約束できないのが申し訳ない限りだけど······」

「ううん、嬉しい。ありがとう夕」

「お礼を言うのは僕の方だよ。ありがとうアイ」

「うん────」

 

 

 身体をこっちに向けて胸に顔を埋めてくるアイ。

 

 

「夕」

「ん?」

「愛してる」

「うん、僕も愛してる」

 

 

 顔を上げ、覗き込むようにお互いを見ながら言葉を交わし合う。

 それに彼女は一瞬だけふにゃりと笑ったかと思えば、ついでクスクスと笑う。

 

 

「どうしたの突然?」

「な~んでも、って、言ったら?」

「そっか、って言う」

「ふふ、そっか」

 

 

 じゃれ合うような、取り留めもないやりとりを重ね合っていく。ただそんな時間がこの上なく愛おしかった。

 

 

「────でもね、本当に大したことじゃないんだよ? ただ『愛してる』って自然と言えるようになったんだなって思っただけ」

「······それは意外と大したことだと思うよ? 少なくとも僕たちにとっては」

「そうだね······でも、もうすぐ一年経つんだ······」

「うん。一年前から本当に色々変わったよ······。環境も関係も、そして────心のあり様も······」

 

 

 嘘だったものが本物に変化したとはいえ、やはり当初その想いを口にするのには大げさかもしれないが一世一代の心持ちが必要だった。

 でも気づけばアイの言う通り、それを自然に────もちろん嘘ではなく本心から────口にできるようになった。

 けれどそれは慣れとかではない。

 日に日に、想いが強まっていく結果によるものだ。

 

 

「うん、わかるよ夕。一年前よりも今、昨日よりも今日、今日よりも明日。どんどん私は夕が好きになっていく」

「嬉しいこと言ってくれるね」

「だって本当のことだもん·········夕の気持ちはいつも伝わってる────」

「アイ?」

 

 

 だからさ、と彼女は続け────

 

 

「気にしないでいいよ。それも待ってるから。いつか夕から話してくれるのを」

「·········バレてたか」

「もちろん。だってずっと夕のことを見てきたんだから。まあ、流石に何を隠してるかまではわからないけど」

「そこまでわかられたらちょっと困るね~·········」

 

 

 それを想像して少し遠い目になりながら苦笑する僕。

 

 

「······ちゃんと話すよ。近いうちに」

「うん、待ってる」

 

 

 また胸にもたれかかってきて、背中に回ってる手がより強く引き寄せてくる。

 それに応えるように僕も片手を背中に、もう片方の手はアイの頭を抱えるようにして、強く抱きしめた。

 

 




違うんです! 話が進まないのは作者の頭の中の彼らが(イチャつくのが)悪いんです!←責任転嫁
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